色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

ラーメン大好きヴァーリ君はどこででもラーメン大好きなのだ


ラーメン大好きヴァーリ君

 人ではない血と人の血。

 

 所謂混血児としてこの世に生まれた少年は半端者と蔑まれる運命を背負わされた。

 

 人である事を望んでも、身体に流れる人ならざる者のか血が許さない。

 

 ならばと人ならざる者であることを選べば、差別の対象として蔑まれる。

 

 どちらにも為れぬ半端者。

 

 人と悪魔の間に生まれた少年の宿命。

 

 それに加えて人の血を持つが故に、少年は白き龍を宿していた。

 

 それが魔である父を恐怖させ、小さき少年は毎日の様に父から暴力を振るわれた――恐怖故に。

 

 人である母はそんな少年を確かに庇ってくれたし愛してくれた。

 だから少年は後の宿敵――そして友となる赤き龍を宿した少年と違い、肉親の愛情を信じる事はできた。

 

 これがもし母までもがその力を恐れたとなれば、きっとこの少年もまた赤き龍を宿した少年の様な――決して取り除けぬ爆弾を抱えたまま成長をしていたのかもしれない。

 

 そう、これが其々赤と白のドラゴンを宿した少年の違い。

 

 どれだけ取り繕っていても拭いきれないトラウマを隠そうとし、虚勢を張り続けて知られる事を怯える少年と、確かな愛を知り――だからこそ大切に強くなろうとする少年。

 

 似ている様で違う。どちらも最強であることを願うが、最新最強――そして最後の赤龍帝と白龍皇なのだ。

 そんな二人は英雄を祖に持つ馬鹿みたいに前向きな青年によって巡り会った。

 

 既に蝕まれた世界に対して抗い、そして勝ちたいと願う者同士という意味では二人は確かに馬が合ったし、確かな親友となれた。

 それもこれも、どこまでも前向きで、どこまでも主人公みたいな青年による廻り会いなのかもしれない。

 そういう意味では、少年――ヴァーリは曹操の子孫である青年ことジンガには決して口には出しはしないけど、確かな感謝している。

 

 

 仲間ではなく、友として手を差し伸べてくれた事に。

 しょうもない理由で喧嘩出来る親友と巡り会わせてくれた事に。

 

 ………己のソウルフードことラーメンに出会わせてくれた事に。

 

 

 切磋琢磨し、強くなっていくヴァーリは故に現在(イマ)を大切に生きる。

 

 最強最後の白龍皇として……。

 何よりも、二人の青年の友として……。

 それはどこに居ても変わらない。

 

 例え地獄であろうが、異界であろうが……。

 

 

 

 

 

 アグレッシブに発生するノイズをぶちのめす一誠とは違い、ヴァーリは基本的にクールにノイズ達を殲滅する。

 所謂雑魚狩りはしないのが姓を捨てたヴァーリの主義であるのだけど、それ以上に彼は異界の地のラーメンの方が気になって仕方ないのだ。

 

 

「まあまあだな。

この店のラーメンのスープは、ちょっと雑味が強すぎる」

 

 

 バイト代の殆どをラーメン屋巡りに叩いてしまうヴァーリは、言葉とは裏腹に実にホクホクとした顔でネットで見つけた『地元の住人しか多分知らないだろうドマイナーなラーメン屋』を後にする。

 

 曹操こと神牙に初めて食べさせて貰ったものがラーメンであり、あの時受けた衝撃と味は今でもヴァーリの舌と胃袋を掴んで離さない。

 それ以降、一誠や神牙も呆れる程のラーメン馬鹿になってしまった。

 

 強者との戦闘好き以外にも趣味を見つけたといえば聞こえは良いのかもしれないけど、彼の場合は色々と極端過ぎてあまり理解されないのだ。

 もっとも、ヴァーリ自体か他人からどう思われようが知ったこっちゃないと言えるタイプなので、これからも彼のラーメン道は続く。

 

 

「次はあの店だな」

 

 

 その内、どこかのラーメン職人見習いみたいに、スタッフにお神輿の様に抱えられてどこかに連れ去られないことを切に願いたい。

 

 

「ふー……」

 

 

 そんなこんなで5件は梯子したヴァーリは、あの時の至高のラーメンの味には巡り会えはしなかったけど、ラーメン自体はどの店も決して不味くはなかったので、とても機嫌が良かった。

 後は最近アルバイトとして入社した組織が用意してくれた家に戻るだけ。

 

 

 ある意味で平和で気楽な暮らしにヴァーリは実の所気に入っていたりする。

 まあ、元の世界と違って自分の命をも脅かす敵が中々居ないというのにはそこそこの不満はあるものの、そんなものは戻る方法がわかるまで我慢すれば良い。

 

 幸い一誠も神牙も一緒なのだから、鍛練相手に困る事はない。

 

 なんて事を思いながら携帯端末を片手に慣れない道を歩いて帰宅するヴァーリだったが、突如その携帯端末に着信が入る。

 

 

「はい」

 

 

 相手は見た目とかではない意味で自分達の義父に何と無く似ている男だった。

 所謂バイトの店長クラスの人だとヴァーリは認識している彼から連絡が入るということはつまり――例のノイズとやらがどこかで発生したのだろう。

 

 

『ヴァーリ君か、今から送るポイントに至急むかってくれ! ノイズが出現した!』

 

「了解した」

 

 

 コンビニで飲み物でも買ってきてくれと頼まれたのを引き受けるようなお気軽感覚で即座に了承したヴァーリは、直後に端末に送られてきたノイズの発生源が印されたマップを便りに現場に向かう。

 

 恐らくは神牙や一誠、それから響といった神器に似てるようで違うものを扱う女達も派遣されている事だろう等と考えながら即座に現場へと到着したヴァーリだが、意外にもその予測は外れていた。

 

 

 

「うん? アレは……」

 

 

 まず現場に一誠も神牙も居ないというのはすぐに理解した。

 何故なら、特に一誠が現場に居たらほぼオーバーキル気味にノイズ達を消し飛ばす筈なのだから。

 

 その力を感じず、尚且つノイズと呼ばれる謎生物がまだ結構な数残っているということは二人は来ていない。

 ならばヴァーリの一番乗りか――という訳でもなく、どうやら先んじて現場に到着してノイズと戦闘をしている者が一人いた。

 

 

 

絶刀・天羽々斬

 

 

「……ふっ!」

 

 

【蒼ノ一閃】

 

 

 蒼いギアを纏い、日本刀に近い武器で一掃していく女性が見えた。

 確か名前は――そう、風鳴翼だったか。

 

 

「…………」

 

 

 ヴァーリはそんなノイズ退治中の翼に加勢する事無く暫く眺めていた。

 接点は無いし、殆どしゃべった事は無いからという理由ではなく、彼女一人でもこの数のノイズを殲滅させるのは容易いだろうと考えたからなのもある。

 

 しかしヴァーリはどうにも彼女は自分達のほんの少し前に組織に入社した響に対して当たりがキツイ事が気になっていた。

 

 

「……………」

 

 

 一誠が響から聞いた話では、響の前任者が響を救う為にその命を散らしたから――という事らしく、恐らくあの翼なる女は響に対して相当複雑なものを持っているのだろう。

 だから現場に到着しても待たずに一人で殲滅を開始するし、もっと言えばヴァーリを含めた三人に対しても良い印象は持っていないだろう。

 

 主に一誠のせいだけど。

 

 

「………まあ良いか」

 

 

 神牙よりは空気が読めるつもりだと思っているヴァーリは、当初彼女の気持ちを少しばかり汲むつもりで黙って見てるだけにしようとした。

 

 が、思いの外彼女にとってはノイズの数が多かったのか、少々苦戦している様にも見えた。

 そこで手出しをした所で感謝なんてされる事も無さそうだし、寧ろ鬱陶しがられる可能性の方が高い。

 

 

「行くぞアルビオン」

 

 

 けれどヴァーリは動いた。

 これが神牙だったら黙って見てるだけに留める訳がない。

 一誠だって色々あるけど、何だかんだで良い奴だから動くに違いない。

 

 そんな二人の親友の生き方を見てきたヴァーリだからこそ、彼もまた動くのだ。

 

 

『Divide!』

 

 

 その背に龍の翼を背負い、魔ではなく人として生きる事を誓った『挑戦者』として。

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……!」

 

 

 思わず舌打ちが溢れてしまう翼は、思いの外数の多いノイズ達を前にアームドギアである天羽々斬で次々と切り捨てていく。

 慣れた作業、慣れた日常……その動きに淀みはない。

 

 しかし今の彼女には足りないものがあった。

 それはかつて肩を並べていた親友の存在。

 

 もし彼女が生きていて、今も肩を並べて戦ってくれていたのなら、こんなに手こずる事もない。

 

 彼女が――奏さえ生きていたら。

 

 

「っ!?」

 

 

 そんな後悔にも近い雑念が彼女の冷静さをほんの少し揺るがしたのか、未だ残るノイズのひとつが気づかぬ間に翼のすぐ背後まで迫っていたのだ。

 

 

「このっ……!!」

 

 

 不覚。

 戦場で余計な事を考えて集中力を失うなどあってはならない愚行だと翼は目の前にまで迫ったノイズを迎撃しようとその武器を無造作に振るおうとし――

 

 

「え……」

 

 

 ノイズではなく空を斬った。

 そして目の前に居た筈のノイズのひとつは、白い閃光の様な光によって消し飛ばされたのだ。

 

 

(何が……)

 

 

 未だノイズ達は蠢いている中、翼は閃光が横切った場所へと視線を向け――そして見つける。

 

 

「……………」

 

 

 深い海を思わせる蒼い瞳。

 銀の頭髪。

 

 そしてその背に輝く白き翼。

 

 

 そう、彼の事は知っている。響のすぐ後に掃除のバイトとして入ってきた――シンフォギアのシステムと同等かそれ以上の力を宿す三人の青年の内の一人。

 

 

「…………フッ」

 

 

 名は確かヴァーリ。

 人指し指を向け、小さく笑みを溢したヴァーリの登場に――そして恐らくは助けられてしまったことに少しばかり動揺翼だったが、次の瞬間翼はヴァーリの『退いてろ』という言葉を聞く。

 

 

「アンタを巻き込まずにやれる自信はまだ俺にはないんでね」

 

「な、何を言って……! 別に私は――ぁ………」

 

 

 思えば三人の中でヴァーリが一番よくわからなかった。

 というか、イメージがラーメンばかり食べてるしかなかった。

 

 強さに関しては確かなものはあるのは肌で感じてはいたが、まともに戦うヴァーリを見るのは初めてだったし―――なんか普通に目にも止まらぬ速度で接近されたあげく、なんか普通に抱えられてるのも初めてだった。

 

 

「な、何をしているの!? ノイズはまだ……!」

 

「半分はアンタがやったんだろ? 俺も食後の運動くらいはしたいんだ。だから残りは俺に譲ってくれ」

 

「馬鹿な事を……! これは遊びではないのよ!?」

 

「そんなもの、アンタ達を見てればわかってるよ。

だがな、余計な事を考えて戦いに支障をきたしている今のアンタは危なっかしく見えてしょうがないんだ」

 

「な……」

 

 

 そう言って自分の意思ではないのに『ギアが解除されて』生身へと戻っていた翼はヴァーリに抱えられたまま跳躍し、ノイズ達から少し離れた場所に降ろされると、見透かされたような事を言われた事もあって、ヴァーリをキッと睨む。

 

 

「アナタに忠告される程、私は落ちぶれてはいないわ」

 

「それならそれで良い、別にアンタが弱いだなんて思ってはいないからな。

とにかく、ここからは俺にやらせてくれ」

 

 

 睨む翼に対してヴァーリは苦笑いを浮かべると、その背に再び光翼を広げる。

 ヴァーリにとっては自分の一部そのものとなった慣れた翼。

 

 

「………」

 

 

 しかし翼にとっては未知の力であり、淡く輝くその光翼に不覚にも一瞬だけ目を奪われてしまう。

 

 飛翔するその姿も。

 

 ノイズ達を見下ろす自信のある表情も……。

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

 空高く飛翔し、両手に輝く光を溜め、それを地上のノイズ達に向かって撃ち放つヴァーリ。

 白龍皇の光翼によって常に全開状態で戦うことが可能なヴァーリが、一誠のドラゴン波や龍拳を見て参考にし、独自に編み出した技。

 

 

 ソウル・ドラゴン・フォール

 

 

 周辺の力を半減させ、その分己の力に変換した力をシャワーの様に放射線状に放つ。

 その力はほんの少しながら翼の技にも似ていた。

 

 だがあまりにも規模に違いがあったらしく、降り注いだエネルギー波は瞬く間にノイズ達を殲滅し、地形すらも変えてしまった。

 

 

「チッ、加減が難しいな……」

 

 

 しかもこれで加減をしているらしく、翼は未知の存在とも言えるヴァーリに戦慄すら覚えた。

 

 

「こっちのノイズは殲滅したぞ」

「…………」

 

 

 そうとは知らず、呑気な顔で殲滅報告を終えたヴァーリは、携帯をしまうと―――別に翼に一声かけるでもなくさっさと帰ろうとした。

 

 

「ちょ……!?」

 

 

 あまりにも普通に帰ろうとしたものだから、つい反射的に翼は声を出してしまった。

 つい先日ヴァーリの仲間の一人である一誠に最低きわまりない事を言われので、てっきりヴァーリに何か言われるのかと思ってたらしい。

 

 

「なんだ?」

 

「あ、い、いや……」

 

 

 翼の声が聞こえたのか、立ち止まって振り向くヴァーリに翼は目を泳がせた。

 余計な事はしないでとか、色々と言ってやりたかった筈が、あまりにもヴァーリがマイペース過ぎてその言葉が喉から出てこなくなってしまったのだ。

 

 

「無いなら帰るぞ。

アンタも早く帰って休むんだな」

 

「…………」

 

 

 そう言ってやっぱりマイペースに帰ろうとするヴァーリの背中を翼は言ってやりたい事も言えずに見送るしか出来ない。

 

 仕方ないので文句は止めて自分も帰ろうとヴァーリとは反対方向に向かって歩こうとした翼だったが……。

 

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 

 今度は何故かヴァーリの方から呼び止められた。

 そのままさようならだと思ってただけに、ちょっとビクッとなった翼は恐る恐る振り向くと……。

 

 

「これを君にやる」

 

「………は?」

 

 

 ヴァーリの手にはそこら辺で引っこ抜いて来たのだと思う一輪の花があり、それをいきなり翼に差し出してきたのだ。

 

 

「え……え……?」

 

 

 これもまた突然の事で困惑しかない翼は、何か思わずといった調子でその名前もよくわからない花を受け取ってしまった。

 

 

「アザゼル――あぁ、俺達の義父や一誠が言ってたんだ。

元気の無い女には優しくしとけと……まあ、見た限りイマのアンタは元気が無さそうだったからな、だからそれで元気を出してくれ」

 

「……………………」

 

 

 と、本人すら意味もわかってないらしいヴァーリの言動に、軽く地形が変形してしまっている現場跡のど真ん中で暫く呆然と渡された花を持っていた翼は、地形をこんなにしてしまってる力を持ちながら、行動が読めないし、天然っぽい男子に対して段々肩の力が抜けていき――

 

 

「ふ……ふふふっ……!」

 

「?」

 

 

 笑った。

 一々警戒していたのが馬鹿馬鹿しかったとか、本人は意味すら知らずにやっているのかと思うと、翼はこの瞬間だけは抱えている色々を忘れて笑った。

 

 

「アハハハ! あ、アナタって人は……! あっははははは!!」

 

「?? よくは解らないが、元気は出たらしいな?」

 

「ま、まぁね……! ふくくくっ! で、でもそのキョトンってなった顔はやめて……! あははははは!!」

 

「???」

 

 

 ああ、やっぱり三人共どうやらアホ。

 それも筋金入りで徹底的な大アホ達だった、

 

 確かにこれなら敵ではないだろう、だってアホだもの。

 

 

 そう思った翼は響の事はまだあるものの、今だけは忘れて笑った――久し振りに。

 

 

終わり

 

 

 

 

 ラーメンばっかり食べて、バイト代すらラーメンにつぎ込むアホの子さを見かねた翼は――

 

 

「許可が降りたから、今後アナタのバイト代は私が管理します」

 

「な、なんだと!? 何故そうなる! 俺が働いた金をどう使おうが勝手じゃないか!!」

 

 

 まだ成長期なのにラーメンばっかりなのを阻止する為に一誠と神牙にも許可を貰い、ヴァーリの金銭管理をしてあげる事になった。

 

 

「何もアナタからラーメンを取り上げるとは言ってないわ。ラーメンばっかりの食生活を改善しなさいって言っているのよ」

 

「野菜ラーメンだって俺は食べるぞ!」

 

「それは言い訳になってないわよ……。

とにかく! 何か必要な事があればその分の金額を渡してあげるから……」

 

「じゃ、じゃあ今から駅前のラーメン屋に行きたいから――」

 

「今日の食事は私が用意するわ」

 

「なっ!? あ、あんなゴミ屋敷みたいな部屋にしてしまう程の生活能力が死んでいるアンタが用意する飯だと!? く、食えるものじゃないだろ絶対!!」

 

「大丈夫よ。最近ちょっと改善し始めてるから」

 

「は、離せ! アンタは俺の母親かっ!!」

 

「それも良いかもね……ふふ」

 

 

 響の親友ばりのオカン属性が何故か覚醒してしまった翼によってヴァーリは連れていかれてしまう。

 それを見ていた一誠と神牙達は―――まあ、見送るしかできなかった。

 

 

「逆に怖いんだけど……」

 

「まあヴァーリなら大丈夫だろ……きっと」

 

 

 最初の方、翼に対してやらかしてしまった一誠はイマの翼の様子が逆に恐怖でしかなかったらしい。

 食らったショートフックと右ストレートの痛みを思い出すかの様に鼻をさすっていると、響が半目になりながら言う。

 

 

「そういえば、最初の方一誠くんが随分スケベな事を翼さんに言ってたよね?」

 

「んがっ!? あの時も言ったけど、不本意だったよ俺だって!」

 

「? なんて言ったんだ?」

 

「えっとね、無駄にカッコつけた顔しながら……『お嬢さん、あんなノイズより、俺とお股のノイズを退治しに行きませんか?』って………」

 

『…………………………………』

 

「だ、だから! 元は響があの人と仲良くなりたいけど上手くいかないって落ち込んでたから、空気を和ませようと思ったんだよ! 別に本当にそんなつもりで言った訳じゃないし!」

 

 

 全員から何とも言えない目をされ、ちょっと居たたまれなくなった一誠は小さくなっていく。

 もっとも、神牙は自分でもわからないくらいの頻度で女性に対してやらかしてしまうので、とやかくは言えずにそっぽ向いてしまうのだが。

 

 

 

例えば一仕事を終えてリフレッシュしたいなと思いながら腕を伸ばしたら……。とある人の胸を鷲掴んでしまって大変だったとか。

 

 ひっくり返った拍子にとある人を押し倒してアレだったとかとかとかとかとか……とにもかくにも神牙は呪われてるレベルの才能が何故かあるのだ。

 

 しかし、だからこそある意味でとある人物達の心をヴァーリや一誠がそうだった様に、解かしていったのかもしれない。

 

 

「乗り掛かった船を途中で降りるのは主義ではないんだ。

響がアンタ等ともちゃんと話がしたいと言ったせいで、俺もアンタと話がしたくなってしまった……」

 

 

 どんな苦境でも馬鹿みたいに前向きに生きて。

 

 

「見せてやろう、俺だけが掴んだ黄昏の聖槍の姿を……!」

 

 

 決して折れず、決して挫けぬ青年の姿は――

 

 

「我が名は狼是! 影煌騎士・狼是!」

 

 

 灰色の鎧から輝きを放ち、その者達に手を差し伸べるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ帰る方法を探さないと。

つい居心地が良すぎて忘れてしまうな……っと?」

 

「…………………………」

 

「ち、違う……違うからな? そ、そんなつもりじゃないからなっ!?」

 

「ま、毎度毎度こうなるとわざとにしか思えないのだけど……?」

 

「お、俺だって何でこうなるかわからないんだ! す、すまん! 本当にすまんっ! いやすいませんでしたっ!!!」

 

「そ、そんな必死に謝らなくても……」

 

 

 身体をほぐすつもりで腕を前に伸ばしながら歩いていたら、ちょうど曲がり角で鉢合わせしていたとある者の胸を通算55回目となる回数で掴んでしまったり、ピンポイントで衝突してひっくり返ったら、その者の股ぐらに顔を突っ込んだりと……彼はやっぱりそういう星の下に生まれし者なのかもしれない。

 

 

「彼女のファンが見てたらぶっ殺されるんじゃねーか……?」

 

「まあ、良くて暴動はまず確定するだろうな。最近じゃ彼女は寧ろ喜んでる様に見えるし……」

 

「は、ははは……一誠もヴァーリもそんな事を言うが、そんな訳ないじゃないか。

きっと最近は疲れてるだけなんだ……! そうだろう? そうに決まって―――」

 

 

 もにゅん☆

 

 

「「あ……」」

 

「る…………う?」

 

「あ、あのジンガ……。

そ、その……ちょっと確認したいことがあって探してたのだけど……」

 

「わ、わかった……。

よ、よーし、まずは互いに冷静になろうじゃないか。

お、俺は今二人としゃべってて、腕をちょっと振り回しただけなんだ。そこで偶々キミが来て、そ、その……嘘みたいな感じでまた……」

 

「………………………」

 

「ひょ!? な、何故泣く!? す、すいません! ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺知らねぇぞ、ホントこの先どうなっても……」

 

「あの妙な運が今のところあの女かもう一人くらいにしか出てないから良いが、満遍なかったら大惨事だったぞ……」

 

 

終わり?

 

 

「にしても、俺にもあんな運が欲しいぜ。

そうなりゃ今頃……」

 

「今頃……なんだって?」

 

「のわっ! ?」

 

「わっ!?」

 

「な、なんだクリスかよ……。脅かすな……よ……?」

 

 

 ぽよん☆

 

 

「…………………」

 

「あ、い、いや違うぞ? 俺は確かに変態かもしれないけど、こ、こればっかりは本当に違うからな!?」

 

「わ、わかったから放せよ……」

 

「……悪かった」

 

「い、良いよ別に。だってわざとじゃねーんだろ?」

 

「お、おう……。ち、ちくしょう、最近お前見てると上手く喋れなくて困るぜ……」

 

「ふ、ふーん……なんだそりゃ? ………へへっ」

 

 

 

終わり

 

 

 




補足

ソウル・ドラゴン・フォール

元ネタ、某ゴジータがブロリー映画でブッパしたアレ。

ヴァーリきゅんは常に全開で戦闘できるので、意外な程一誠よりも色々と豪快な面があるとかないとか。

その他には某ソウルパニッシャーだの、メテオエクスプロージョンだのが習得してるだとか。


その2
ラーメンばっかのせいで結果バイト代の管理をされてしまった模様。

仕方ないね……

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