色々なIF集   作:超人類DX

601 / 1034
600話突破したんで。
はっちゃけてみた


はっちゃけ嘘話

 仮な話、もしも全てを失った織斑一夏が逆に……。

 

 

 

 どこかに歪みが起これば、別の歪みが現れない誰が決めたのか。

 抗えば命そのものを壊される事を悟ってしまった小さな少年は、その日を境に本来進む筈であった未来を閉ざされた。

 

 そして信じるべき筈である全てをも奪い取られた。

 それは地獄の日々となるのは目に見えた。

 

 ゴミの様に扱われ、蔑まれ続け。

 

 自分をこの世のカスと思い込むのもまさに時間の問題。

 

 家に居ることが苦痛だった一夏は、土砂降りの冷たい雨に打たれながら、ただひたすら変わってしまった世界の外へと抜け出したいと願った。

 

 まだ幼く、少ない体力を消耗させ、やがて歩くことさえも出来なくなり、誰も来ない忘れ去られた小さな神社にあった小さな小屋の中でこのまま死んだ方が楽になれるのかもしれないとさえ考えた一夏は、変わってしまった・変えてしまった全てに諦めてその短い生を手放した―――――――筈だった。

 

 

 一夏は死んだ。

 確かに一度は死んだ。

 

 しかし彼は再びこの世に舞い戻った。

 

 

「…………………」

 

 

 意識だけが誘われた先に存在したとある人外から聞かされる事で思い出した記憶。

 まるでおとぎ話でしない記憶を甦らせて……。

 

 

「死んで……堪るか……! そう簡単に死んでやって堪るか!!」

 

 

 その記憶は死に体同然であった一夏の身体に活力と熱を甦らせた。

 死ぬ寸前に見たただの夢か幻か……今となっては確かめる術なんて無いし、現実はお伽噺の様に行かないのかもしれない。

 

 だが変わってしまったのなら、その上で生き続けてやる。

 歪んだ世界を呪って死ぬよりも、抗い続け、這い上がり、ザマァ見ろと見下してやる。

 

 

 それに決して自分は独りではない。

 歪んだ世界を憎んでいた事で見失っていたけど、確かに自分は独りなんかじゃない。

  この日より一夏の消されかけた命の炎は再び燃え上がる。

 

 変わってしまった全てに抗い――生きる為に。

 そしてあの時たどり着いた『生まれた意味』の先を知る為に。

 

 

 

 

 これは己の存在理由を知り、確かな幸福と共に死した元王の記録。

 

 

「余は空腹だ、馳走を用意しろ」

 

「一夏……か? 今までどこに行っていた? いやんな事はどうでもいい、飯ならそこにカップ麺があるだろう? 今春人が具合を悪くしていて――ごがっ!?」

 

「二度言わすな。余は飯を作れと命じたのだ」

 

「げほっ!? がはっ!?」

 

「ち、千冬お姉ちゃん!? い、一夏! お前なんて事を……」

 

「黙れ紛い物が。

貴様の茶番に付き合う暇などない。さっさと用意せぬのなら、殺す」

 

「なっ……!?(こ、こいつ……一夏じゃない……!?)

 

 

 ただし、彼にとって大切な思い出の存在以外は基本暴君な王ではあるが……。

 こうしてまず力でねじ伏せた一夏はすくすくと『食べる程に強くなり続けていく』事で、外から来た存在すらも手出し出来ぬ領域へと到達する。

 

 さながらそれは、人の身でありながら、かつての記憶と同じ肉体強度へ――いや、それ以上へと。

 

 そして月日は少しずつ流れ……。

 

 

「お、王様……?」

 

「む……貴様は」

 

 

 王はかつての配下の一人と再会する。

 

 

「お、王! 申し訳ございませんでした! 私は貴方様の護衛軍でありながら……」

 

「よい。

お前は余の命じた通り、コムギを治してくれた。

お陰で死に逝くまでの僅かな時ではあったが、コムギと打って過ごすことができた」

 

「お、王……」

 

「それと今の余は王ではない。

織斑一夏であり――そして、お前には伝えることが叶わなかったが、余の名はメルエムだ」

 

「! め、メルエム……様……」

 

 

 同じように人の身として生まれ変わった護衛軍の一人と再会せし織斑一夏であり、元王であり、メルエムは今度は片時も離れないと再びの忠誠を誓った少女――ピトーと共に次なる領域へと進む。

 

 

「もしかすればプフとユピーもこの世界に居るかもしれぬな」

 

「私という例がありますから、可能性はゼロではないでしょう」

 

「うむ、それにお主と再び会えた事で、念能力も再び仕えるようになれたぞ」

 

「あまり必要になるとは思えませんがね……」

 

「……まぁな」

 

 

 既に姉や弟らしき存在とは別離して独立し、人に生まれ変わった一夏とピトーは生前扱えていた念能力をも蘇らせる。

 

 

「人間として生きた年数もあるせいか、キメラアントとしての本能は薄れている。

余は王の器ではなかったようだ……」

 

「いいえ、恐れながら申し上げます。

私やプフやユピーにとっての王はメルエム様只一人でございます。

例え人間と変わろうとも、それは変わりません」

 

「………ふっ、やはり余には過ぎた者達だな」

 

 

 そして更に月日は流れ――

 

 

「メルエム様ァ!!」

 

「ふ、再びこうしてメルエム様とお会いできる日が来るとは、身に余る幸福ですっ!!」

 

「プフにユピーか……。

お主達も分とナリが変わったな。

しかしお主達から感じ取れるオーラの質は間違いなくプフとユピーだ……」

 

「おおっ……! ま、まさか既に念能力を……!?」

 

「さ、流石はメルエム様……!」

 

「ふふん、僕もメルエム様と一緒に念能力を復活させたんだけどね~?」

 

「くっ、まさかピトーに先を越されるとは……!」

 

「ピトーお前、ちょっと俺達より早くメルエム様の下に戻れたからってチョーシに乗るなよな……!」

 

「わかってるにゃー、そんな喧々しないでよ?」

 

「後はコムギか……」

 

 

 護衛軍全てと再会することにも成功。

 後は最期まで居てくれた少女……コムギだけ。

 世の中にISなるものが広まっても、メルエムと護衛軍達改め、一夏御一行にはなんの興味もない。

 

 

「メルエム様、人間達の間で注目されているISというものですが、どうやらこの兵器に使われるコアというものには、オーラに近い力を宿している様です」

 

「つまり、余がそのコアを食えば更なる力を得られるということか?」

 

「はい。差し出がましいと承知の上で、この奪ったISをメルエム様に献上致します」

 

 

 が、その兵器に使われてるコアは一夏の力を更に飛躍させる食材だったので、取り敢えず奪えたら食っていく。

 

 

「ふむ……」

 

「お口に合いませんでしたか?」

 

「うむ、確かに力の飛躍は感じるが、酷く不味いな。

やはりかつてプフとユピーの一部を喰ったあの極上の味を覚えてしまったせいだろうが……」

 

「はぅわっ!?」

 

「め、メルエム様! お、お止めください! そ、それ以上褒められたら私たちは……!」

 

 

 一応人間の女性として生まれ変わったプフとユピーが、一夏の言葉のせいでキメラアント時代のあのアへ顔悶絶をしたり。

 

 

「へー、メルエム様に食べて貰ったんだ? 良いにゃー……」

 

 

 ただひとり、ゴンさんにボられてしまったピトーには経験のない事なので羨ましく思ったり。

 

 

「IS学園?」

 

「はっ、メルエム様の進化に必要と思い、その兵器が多く集まるであろう施設を独自に調査をしたところ、もしかしたらではございますが、その場所にコムギが在籍をしている可能性がありました……」

 

「私の麟粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)でも確認したところ、確かにコムギと似たオーラを持つ少女を察知しました」

 

「………」

 

「あれプフお前、コムギを嫌ってたんじゃねーのか?」

 

「キメラアントであった時は王の邪魔になると思っていましたが、あの時ご記憶を甦らせたメルエム様の心情を知ってしまえば、仕方ないと思う他ありませんよ……。

まあ、今は今で別の意味で腸は煮えくり返りますがね……」

 

 

 そして一夏として生まれ変わったキメラの王は……。

 

 

「め、メルエム……様?」

 

「コムギ……」

 

「め、メルエム様! わ、ワダす、目が見えるんです!

ま、まさかこうして再びメルエム様とお会い出来たばきりか……こ、こんな男前だったなんてー!」

 

 

 口調こそまったく変わってないけど、盲目ではなくなった――意外と身形を整えたら美少女ではあったコムギと再会した。

 

 

「よしコムギ、打つぞ!」

 

「え、ぐ、軍義をですか?」

 

「それ以外に何がある? 確かにこの国――いや世界には軍義は存在せぬが、駒と盤は此方で用意した何の問題もあるまい?」

 

「い、いやー勿論メルエム様とは何時まででも打ってはいたいんですが……」

 

「? なんだ……」

 

「い、一応ワダす、今学生というものをやっておりまして……」

 

「…………」

 

 

 無論こうなった以上、一夏と護衛軍達の目標は決まった。

 

 

「余はメルエム――いや、織斑一夏だ。一応ISとやらを起動させられたのでここに入る事にはなったが、そんな事には興味はない」

 

 

 IS学園の二学年となったコムギと思う存分打つ為に、以前コアを喰らった影響で動かせる様になっていたのを利用してめでたく護衛軍三人と一緒にピカピカの一年生として入学。

 だが、久しく見なかった姉と弟は、まさかの再会にトラウマもあって吐く程の恐怖におののくし、一応昔馴染みであった少女は、見知らぬ三人の女子や二年の先輩とそれはそれは仲良くしてそうな一夏に怒ってたりとか色々あったが、一夏は全部無視で暇さえあればコムギと軍義だった。

 

 というか、それが高じてIS学園にコムギを部長にした軍義部が発足されるくらいだった。

 

 

「あ、あのメルエム様……?」

 

「なんだ?」

 

「そのー……ワダすの部屋は他の方と相部屋なので、男性であられるメルエム様が来られると相部屋になっている方が驚いてしまうといいますかー……」

 

「そうか。おい女」

 

「は、はい?」

 

「貴様は余の部屋と替われ」

 

「はい!?」

 

 

 あまりにこだわり過ぎて、コムギと相部屋になってた名も知らぬ女子生徒に替われとまで言い出す始末。

 

 

「き、キィィッ!! く、悔しい! メルエム様があんな小娘にぃ!」

 

「そんなに怒ったってしょうがないにゃー? ……まあ、ちょっと寂しいけど」

 

「でも突っかかったら、メルエム様の幼馴染みなんて自称してた女みたいに嫌われるぜ?」

 

「わかってますよっ!! ぐぅ、この学園の女共がメルエム様の魅力に膝づくのは結構ですが、それはそれで何故か腹が立つんですっ!」

 

「うーん……わからなくもないかな? あ、今思ったけど今の僕達は人間の女で、メルエム様は人間の男じゃん? ……子供産めるのかな?」

 

「「!?」」

 

「え、二人してそんな『その手があったか!』みたいな顔されるとは思わなかったにゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

「む……無い」

 

「ふふん、まだまだメルエム様には負けませんよー? さぁ、もう一回!」

 

「ふふ……ああ」

 

 

 生まれた意味を教えてくれた少女と今度は少しでも長く。

 人として一度は死に、そして生まれ変わった王は今がとても充実していた。

 

 

終わり




補足

コムギさんと軍儀やってれば害のない優しい王様。それが今のメルエム様。

護衛軍も忠誠心はそのままにキメラアントとしての本能がなくなってるので、地球に優しい護衛軍。

ただし、邪魔したら念能力だけどな!


その2
盲目ではなくなったコムギさんは一般家庭に生まれ変わったお陰で身形も整っており、意外な程に美少女らしい。
鼻も垂れてませんしね(笑)

が、癖で軍儀は基本読み駒。


その3
と、言いつつコムギさんと護衛軍以外は基本どうでも良いので意外と暴君。

仕方ないね


そして勿論続きもない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。