色々なIF集   作:超人類DX

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……まあ、ねーなの気分で作成したんで、終始ねーなな感じだし、タイトルに全く深い意味はない


執事とマリアさんじゅうななさい

 それは雪の降るクリスマス・イブの夜であった。

 

 

 クリスマスイブという日自体に余り良い思い出は無かったけどそれを表に出した事は無かった。

 

 けれど、16回目のクリスマス・イブの雪の夜だけは恐らくは忘れることは無いだろう。

 

 

 何せ――

 

 

「……………………」

 

「ホワイトクリスマスがブラッドクリスマスになってますね……」

 

 

 手の掛かる『家族』の脱走捜索をする為に自転車を漕いでいた私が見たのは、真っ白な雪を真っ赤に染めながら倒れ伏す男性を発見してしまったのだから。

 

 とんだ殺人現場に出会してしまったせいなのか、はたまたあまりにも真っ赤過ぎたせいなのか、当初の私は逆に冷静になりすぎていた。

 

 

「こんな所で寝ていたら風邪をひいてしまいますよ?」

 

 

 我ながらなんて声の掛け方だと、今になれば思う。

 全身血塗れで倒れている男性に、まるで酔っ払いか何かに話し掛けるより普通に救急車を呼ぶべきなのだから。

 

 

「………ぅ」

 

 

 そんな三周くらい回って逆に冷静になってしまってる私の声が聞こえたのか、その男性は小さな呻き声を上げながら微かに身体を動かしていた。

 その時始めて男性の格好が燕尾服――つまり執事のような格好である事に私は気付いた。

 

 直ぐに気が付いた理由としては、私自身も給仕――つまりメイドという立ち位置であったからに他ならない訳で、彼がどこかの家の執事なのかもしれないと考え、そうなれば一応救護の手配をすべきだろうと考えている内に――――私は見てしまった。

 

 

「………………」

 

「…………………」

 

 

 意識を取り戻し、色々な部分が軋んでいる嫌な音と共に無理矢理身体を起こそうとする男性。

 それまで見えなかった男性は殆ど私と年の変わらないだろう少年。

 そして、その目は手負いの獣を思わせる程に荒々しく……。

 

 

「こ、ここは……どこだ……」

 

 

 異質さと異常さを孕んでいる者。

 そんな気がした……。

 

 それが初めての邂逅。

 

 

 一瞬だけ意識を取り戻したけど、再び意識を失った――見知らぬ二つの紋章を胸元に刺繍された執事服を着た男性との出会い。

 

 去年のクリスマス・イブの出会い。

 

 

 それから一年。

 流石に死んでしまうと思って私が仕えている子に頼んで医療班を手配して貰って彼を取り敢えず保護したのだけど、多分今となっては要らなかった事なのかもしれないと思う。

 

 ……いえ、まさか寝てれば自力で回復できるなんて解る訳もないし、どこのサイボーグだと突っ込みたくなるのも無理はないと思うでしょう? それに意識を取り戻した後の方が大変だったし……。

 

 救護した私達をどこかの回し者と勘違いして、傷が完全に治ってない状態で本調子じゃないどころか、最低値まで弱体化している状態で暴れ回ったりしたし、そのせいで結構な被害額が算出されてしまい、結果的に彼に請求しなければならなくなってしまったし………具体的には数百万円程度ですが。

 

 しかも聞いてみれば、元々仕えていた家には訳あって戻れないらしく、請求する事も儘ならず、仕方なくというか、乗り掛かってしまった船から今更降りられなくなってしまったので私が肩代わりし、その後私個人が彼に返して貰う形にして貰ったり……。

 

 格好だけではなく、執事のスキルは私と同等以上だったので、あの子に頼んで貸したお金を返済するまで働かせてみたり……。

 その際、ウチの執事長とかと大分揉めたりもしましたが、主に対する忠誠心が皆無だけどその能力だけは認められてなんとか擬似的な執事として働いたり。

 

 そんなみみっちぃ真似なんてしないで、適当に反社会的な組織を襲撃して金を奪い取ってくると言い出した時は本気で止めたりと、それなりに大変な一年間だったと思う。

 

 一応主となるあの子も、彼の持つ異質さがツボに嵌まったらしく、それなりに扱ってくれてますし……。

 ただ、彼は一体どんな家に仕えていたのでしょうかね……?

 

 一年経った今でも彼は教えてくれませんし、以前服以外に彼が唯一所持していた一枚の写真に写る方々が恐らくはそうなのでしょうが、それ以上は聞くことは出来ませんし……。

 

 その写真を見ただけで、本気で殺されるのを覚悟させられる程の殺意を向けられたので……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京のとあるど真ん中には、一般人が引くほどの大豪邸と広大なお庭が存在する。

 持ち主曰く、所持してる屋敷の中では一番狭いから住むだけなら不便は無い……との事だが、そんな豪邸にはその持ち主が気に入ったという理由で執事に登用されるかもしれない一般――いや、家庭環境的には最下層の少年が緊張した面持ちで、仕立てて貰った執事服に袖を通し、ご立派な鏡の前で何度も襟を正していた。

 

 

「…………と、いう訳でして」

 

「…………」

 

 

 そんな空色髪の少年が部屋で待機している頃、部屋の外では、メイド服を着た茶髪の女性と燕尾服を着たこれまた茶髪の青年に、空色髪の少年についての説明をしていた。

 

 

「勘違いが勘違いを重ねたというか、ナギが――あぁ、綾崎ハヤテ君というお名前なのですが、彼を執事にすると言い出しまして……」

 

「…………」

 

 

 メイド服の女性が、外から拾ってきたに近い形で連れてきた彼――綾崎ハヤテなる少年についての説明をしていくのを、茶髪の青年は興味なさげな顔……というか、 ただの無表情で聞いている。

 

 

「まるで去年私がアナタに対して行った事に近いといいますか……まあその話は置いておいて、クラウスさんは彼の登用を反対していまして、とにかく追い返せと……」

 

「…………」

 

 

 言葉の通り、困った様に笑みを溢すメイド女性。

 かいつまんでみると、今部屋で執事服に袖を通してるハヤテはこの館の主である少女と紆余曲折の後に誘拐犯から助けたらしいのと、その直前に盛大なる勘違いなやり取りがあって、主の方がハヤテを気に入って執事にすると言ってしまってるらしい。

 しかし一応この館の執事長―――本当に一応ながらこのメイドと執事の上司に当たるクラウスなる初老の男性は完全に反対している模様で、どうにかしてハヤテに帰って貰う様にこのメイドさんに命じたらしい。

 

 

 以上の一連の流れを聞いた茶髪の青年執事は終始無表情で聞いていた訳だが、ここに来て漸く口を開く。

 

 

「それはアレか? 俺がめでたくクビになるって事か? なら反対する理由が無いな、反対してるあのおっさんは俺が無理矢理にでもオーケーを出させるから、今日付けで俺を解雇しろとあのチビに言って――」

 

「それはありえない話でしょうね。

仮にアナタが解雇された所で私が去年肩代わりした修繕費とその他諸々の残金800万円は消えませんし?」

 

「……。だからそんな金は反社会的な組織を襲撃したら倍にして返せてるって――」

 

「まともなお金しか受けとる気はありませんよ私は? とにかく、アナタがクビになる事はまずありえませんからね。ナギもそれなりにアナタの事は認めてますから」

 

「あんなグータラなガキに認められても嬉しくもなんともねーよ……」

 

 

 代わりに自分が辞めてしまえば良いという青年の提案をにこやかに否定するメイドさんに、青年は露骨に舌打ちをして悪態付く。

 

 この態度の様に、青年はこの館の主に対する忠誠心はほぼ無い。

 にも拘わらずこの館で執事をしている理由は、ちょうど一年前にとある理由で死にかけて倒れていた所を、偶々出会した目の前のメイドに救助されたのだが、彼は治療をしてくれた医療班的な者達を敵と勘違いし、その設備一帯を破壊する程暴れ回ったせいで、賠償金を請求されてしまったのだ。

 

 その賠償金を肩代わりしたのが主――いや主の祖父とも近しいこのメイドであり、その残金を返す為に彼は現在執事をしているのだ。

 

 

「クラウスさんはアナタ以上の執事は居ないと言ってますからねぇ」

 

「他がボンクラ過ぎるだけだ。

ふん、グレイフィアが見たら鼻で笑うぜ、このグループの使用人共はな……」

 

「ああ、アナタが元々仕えていた家のメイド長さんでしたっけ? 私も何時かお会いしてみたいですねぇ……」

 

「……」

 

 

 元々彼はこの家とは全く関係ない貴族の家に仕えていた――というのは少々語弊があるが、それに近い立場だった。

 その家と、もうひとつの家の其々副執事長と執事長を十代半ばにして勤めていただけに、そのスキルは愛想の良さを抜かせば無駄に高い。

 

 その全ての技術を彼に叩き込んだのが、彼の義姉を勝手に自称して久しかったグレイフィアなる女性と、勝手に母を自称する当主の妻だったりするのであるが、そんな彼を保護したメイドさんは会ったことは無いし、写真でしか見たことがない。

 

 

「どちらにせよ、嫌々でも今のアナタは三千院ナギの執事の一人ですから、この問題について一緒に考えてください。

勿論、アナタが辞めるという案は無しの方向で……」

 

「チッ」

 

 

 訳あって今の青年はその家に戻る事が出来ない。

 その理由は今は語らないが、とにかく今現在は三千院家という世界的にも巨大な大金持ちの家のひとつの執事である。

 メイドさんの言葉に対して遠慮せず舌打ちをする青年は、悪態こそつくものの、受けた恩や恨みは忘れない律儀なタイプなので、渋々付き合う。

 

 

「一人増えた所で問題ないし、あのグータラチビが気に入ったんだったら雇えば良いだろ」

 

「アナタに追従出来る能力があればそれでも良いと思いますが……。

どうやら頑丈さに至っては追従可能っぽいですけど」

 

「なんだそれは……」

 

 

 そして青年が出した答えは、取り敢えず雇えば良いという、軽く適当入ったものであった。

 紛いなりにも主がそうしたいというのなら、つべこべ言わずに雇えば良いし、追い出す方が面倒だろという意見は確かに間違いでもない。

 だがメイドさん的には、去年から雇ったこの青年のスキルの高さをどうにも基準にしてしまっているようで、微妙な顔だ。

 

 

(確かに一々考えずに雇ってしまえば良いとは思うけど、どうもこの人を基準に考えてしまうのよね……)

 

 

 とりわけ、青年の戦闘能力は人智を越えており、以前は三千院本家の私兵部隊を10分も掛けずに全滅させ、それでも手加減していた程度なのだ。

 お陰で三千院家の現当主までも彼の能力を認める他無いとまで言わせるまでだし、彼の存在が三千院家の分家筋にまで知られてから暫くは彼を雇用したいと結構な揉め事にまで発展した。

 

 ………もっとも、一見ターミネーターを思わせる彼にも中々に致命的な『弱点』があると露呈してからはそんな声も無くなったが。

 

 

「では取り敢えずは様子見という事にしましょうか……。

一応お仕事の内容くらいは教えておきたいですし……」

 

 

 そう言ってメイドさんはハヤテが待ちぼうけしてる部屋の扉を開く。

 なるようになるだろう……そんな考えで。

 

 

 

 

 

 綾崎ハヤテの人生は割りと悲惨である。

 毒親としか思えない両親の下ですくすくと社会という名の現実を幼い頃から学び、借金まで押し付けられ、やけくそに身代金誘拐を仕出かそうとして失敗して……。

 

 まあ、身代金誘拐の件は一応誰にもバレなかったし、その誘拐しようとした三千院ナギという少女を結果的に助けた事で執事として働かせてくれる事になったという意味ではほんの少しは運も上方に向き始めた――と、本人は思っている。

 

 

「サイズは合っている様ですね?」

 

「はい、ぴったりです!」

 

「…………」

 

 

 後は押し付けられた借金の1億5000万円さえなんとかする事が今のハヤテの目標だった。

 その為にはこの度掴んだこのチャンスは逃してはならない――と、クリスマスイブの夜に出会ったメイドさん……マリアという女性から仕立てて貰った執事服についてのお礼をするハヤテは、ふとそのマリアの後ろに自分が今着てる執事服とは根本的にデザインが違う執事服を着た、自分とそう年の変わらないだろう青年の存在に気づく。

 

 

「えっとマリアさん……この方は?」

 

 

 無表情でマリアの三歩程後ろに佇む茶髪の青年の醸し出すなんとも言えない雰囲気に一瞬だけ呑まれそうになりつつも、気になって質問するハヤテに、マリアは微笑みながら青年を紹介する。

 

 

「日之影イッセー君。

一応アナタの先輩になるこの家の副執事長さんです」

 

「………………」

 

 

 この場に居る者にはその意味はわからない、二つの紋章が金の糸で刺繍された燕尾服を身に纏う日之影イッセーという青年をマリアが紹介する。

 

 

「先輩ですか! 綾崎ハヤテです、よろしくお願いします!」

 

「………………………」

 

「あ……あれ?」

 

「あ、ご心配しなくても良いですよ? 彼は人見知りが強いだけですから」

 

「は、はぁ……」

 

 

 人の身でありながら、悪魔であるグレモリーとシトリーの両家の執事をしていた進化の権化――なんて知るわけもないハヤテは、執事としては致命的過ぎる弱点であるコミュ障の青年と上手くやれるのか……ちょっとだけ不安になるのであった。

 

 

「えっと、それでお仕事は何を……?」

 

「年末なので屋敷全体の大掃除――と言いたい所ですが、昨日の時点でイッセー君が全てやってしまいましたからねぇ……。

お庭も今朝やってしまいましたし、考えてみたらありませんね、お仕事……」

 

「え……」

 

 

 無駄にスキルだけなら高いせいで、早速ハヤテの仕事が無く、下手したらその流れで追い出しをくらうピンチのハヤテの明日は果たして……。

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 盛大なる勘違いの応酬でなんとか三千院ナギの専属執事としての居場所を手に入れたハヤテ。

 そんなハヤテはコミュ障でありながらも仕事が一々早すぎる先輩執事から色々な事を学ぼうと必死だ。

 

 

「イッセーは変身する度に戦闘力を増すし、しかも後二回も変身を残しているんだぞ? ハヤテもできるだろ?」

 

「えっ!? ぼ、僕宇宙人じゃないですし、無理ですよ? というか、イッセーさんは本当に……?」

 

「変身というよりは、髪の色が変わるのでサ◯ヤ人みたいな感じかもしれませんね。

曰く、状況に応じて身体のリミッターを外してるだけだとか」

 

「そればかりではなく、アイツは影分身までするんだぞ! ハヤテもできるだろ?」

 

「そ、それくらいならギリギリ……」

 

「あら出来るんですか……。ハヤテ君も大概ですね」

 

 

 ただ、一人だけ文字通り別世界の住人みたいな領域に居るせいで、ハヤテはついていくのに精一杯だ。

 

 

「あ、あの……。

僕の見間違えでなければ、イッセーさんが手からビームを出した気が……」

 

「ああ、ビームだけではなく、ブ◯ザジャやウォタ◯ャばりの魔法まで使えるぞイッセーは。

ハヤテもできる――」

 

「む、無理に決まってるじゃないですか! あ、あの人失礼ですけど本当に人間なんですか!?」

 

(……。イッセー君曰く、元々は彼の主の方々の固有能力を真似ただけらしいですけど……)

 

 

 イッセーの異次元の力を見て、執事たるもの手からビームを出せなきゃ一人前ではないと勝手に勘違いまでするハヤテだったり。

 

 

「ええっ!? い、イッセーさんとマリアさんって同い年だったんですか!? し、しかも17歳って……!」

 

「その驚き方はどういう意味でしょうかハヤテ君? 私はまだピチピチの10代――」

 

「ふっ……くくくっ……!」

 

「あ、珍しくイッセーが笑ったぞ」

 

「……。何でアナタが笑うのかしら?」

 

「くく、一々反応するから余計気にしてるように思われるんだろう? てか、俺だって最初はお前の方が一回りは年行ってると思ってたしな……くくくっ!」

 

「………」

 

「ちょ、い、イッセーさん、いくらなんでもそんな……」

 

 

 あきらかに怒ってるというのに、珍しくケタケタと笑うイッセーにハヤテは二度とマリアに対して年齢に関するワードは言わないと誓う。

 

 

「リアスとソーナの一個下とは思えねぇわな……。改めて見ると……ククッ!」

 

「…………………………」

 

「お、おぉ……マリアが怖いぞハヤテ」

 

「な、何て怖いもの知らずな……」

 

 

 というか、ナギですらマリアのその辺の事は弄れないというのに、イッセーだけはその辺の事になると結構お喋りになるらしい。

 

 とはいえ、数少ないイッセーとまともにコミュニケーションが取れる存在の一人だし、マリア自身も最近ではそれでイッセーが笑った顔を見せるなら良いかの精神になりつつあったのだが……。

 

 

「…………………」

 

「お、おいイッセー? マリアがかつてないくらいに怒ってるのは何でなんだ?」

 

「今日は仕事が休みの日だったから少しだけ多く寝ようと思ったんだよ。

そしたらアイツが起こしに来て……えーっとなんだっけかな? 外へ出掛けるから一緒に来い的な事を言うんだよ……それも結構しつこく。

それが鬱陶しかったから、つい無意識に『うっせーな、眠いんだからもうちょい寝かせろよ、このババァ』―――って言ったら、思いきりビンタされた……で、泣かれた」

 

「「……………」」

 

「え、揃ってなんでそんな目を……? 俺が悪いのか? だって俺休みじゃん、少しくらい多く寝てたって良いじゃん? つーか今日休みなのはアイツも知ってる筈なんだぜ? それをしつけーくらい起こそうとするわ、外出るから着いて来いなんて言われりゃイラッともするだろ?」

 

「先輩相手ですが言わせて貰いますけど、最低ですよそれは……」

 

「私でも流石に謝るべきだと思う。そもそもお前がやらかした借金を肩代わりしてくれたのはマリアなんだぞ?」

 

「………」

 

 

 基本的にイッセーに対してグレイフィアとヴェネラナを足して2で割った様な感じなのがマリアなので、つい反射的に二人に対して反抗期宜しくに口に出してたワードが飛び出してしまったイッセーは、あのナギからにすら謝れと言われてしまう。

 

 その結果、謝りはしたし取り敢えず許しても貰えたのだが……。

 

 

「あ、あのさ……わ、悪かったよ。

ば、ババァは言い過ぎたし、別にそんな言うほど老け顔でもないから……うん」

 

「……………」

 

「そ、それによく見たらナリはそこそこだし、人気者になれそうな気はしないでもないとは思わなくもない」

 

「……。どうせ私は桂さんの人気には勝てませんよ……」

 

「桂……? …………………。一瞬誰の事かわからなかったが、あのピンク髪の事か。

俺はあんまり興味ねーからよくわかんねーけど、めんどくせーイメージしか持ってねーぞ? 前に知らないけど、剣道だかの試合を挑まれたから、枝で持ってた竹刀をぶったぎってやったら、それ以降マジでうぜーくれー絡んでくるし。

アレが人気の理由が全然俺にはわかんねーよ」

 

「………」

 

「とにかく! あの小娘に比べたらお前の方が物わかりが言い分全然マシだとは思ってるぞ! なっ!?」

 

 

 グレイフィアとヴェネラナを足して2で割ってる感じがするせいか、あまり非情にはなれないイッセーは、『マリアさんじゅうななさい状態』のマリアにそれ以降尻に敷かれ気味になる。

 

 

「さあ、早く準備してください?」

 

「チッ、あの二人みてーな事を言いやがって……」

 

「こうでもしなければアナタは言うことを聞かないでしょう? 会ったことはありませんが、そのお二人は実にアナタをよく見てますよ」

 

「……だからババァって言いたくなるんだっつーの」

 

「………は?」

 

「なんでもねーよ!」

 

 

 

 親に捨てられた者と、親と名を奪われた者。

 近いようで遠い二人の奇妙なやり取りは続いていく。

 

 

 

「おいイッセー、お前は本当にマリアに何もしていないんだろうな?」

 

「……。逆に聞くが、俺がアレに何かをした事があったか?」

 

「色々な意味を込めれば毎日やってると思うぞ。

それで今度は何をやったんだ? マリアがあんな若い感じの服を揃えて鏡の前で選定してるのなんて見たことないぞ」

 

「知らねーよ。

若く見られたきゃ、少しはそう見える服でも着てみろと言っただけだ。

だがよ俺は言いはしたが、ナギが着るような年齢の服にしろとは一言も言ってねぇ……」

 

「な、何でしょうね、怖いもの見たさで見てはみたいような……」

 

「……。綾崎君も大概な事を言うようになってきたな……」

 

 

 その後、センスが10代前半までしか許されなさそうな服装に手を出そうとするマリアが居たとか居ないとか。

 

 

 

終了




補足

手からビーム(リーアたん)、氷パワー(魔王少女)、水パワー(ソーたん)、執事スキル(自称義姉さん直伝)、軽い潜在的マザコン(自称ママンのせい)、吐血する程度のコミュ障。

とんでもない拾い物をしたマリアさんの明日はどこへいく……。
肩代わりの借金の残金は残り800万。


その2
態度そのものは悪いが、仕事だけは条件反射敵に律儀にこなすので、それなりに重宝はされている。

ただ、ほぼ同い年の癖に年齢ネタでケタケタ笑ってくるのだけはマリアさん的には頂けないとか。
というか、寝ぼけた拍子にババァと呼ばれた時は流石に半泣きでひっぱたいた。

その後、完全に尻に敷けたのでイーブンとは思うことにしたものの、私服のセンスがそのせいで小学生になりつつあるとかなんとか……。

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