背負う覚悟をした刀奈の、せめてもの『自由』の為に協力をしたリアスとイッセー。
その協力の際、リアスの中にあったらしい変なスイッチが入ってしまった結果……。
恋人のフリをしていただけのイッセーは刀奈の実家に呼び出されてしまったとさ。
確実に『お送りした写真や映像は全部嘘でした』だなんて言えば、激怒されるしぶん殴られるのも間違いない。
しかし結局の所はお人好しであり、律儀でもあるイッセーは、八つ裂きにされるのも仕方ないと割り切り、刀奈の実家に謝罪と挨拶―――そして嘆願をする事に決めた。
「面接をした時以来だな、こんな格好をするのは」
この日、普段は作業着がデフォルトのイッセーは1年ぶりにスーツに袖を通した。
深い紺色の上下に白いワイシャツ。ワインレッドのネクタイ。黒の革靴。
「こんな所かしら?」
「十二分だぜリアスちゃん」
実にビジネスマンな格好となっているその出で立ちに黒縁の伊達眼鏡まで装着し、適当にしていた髪型もきちんとリアスにセットして貰ったことで、見た目だけなら真面目なサラリーマンに見えなくもない。
「リアスちゃんとデートする時ぐらいだぜ? こんな気合い入れんのは……」
そして最後は普段使ってる安物ではなく、ちょっとお高めの腕時計を付ければ、擬態しまくりな兵藤一誠の完成である。
「こんなもんでどうよ?」
ネクタイをきちんと結び、完成したご挨拶モード状態のイッセーが、実はずっと見ていたリアス達に不備は無いかと確認する。
「ふふ、素敵よイッセー。
これなら第一印象で嫌悪感を持たれる事は無い筈よ。あ、折角だから写真を撮らせて?」
大丈夫だと言うリアスが今のイッセーの姿の写真を撮れば、一緒になって見ていた一夏達も頷く。
「俺達から見ても大丈夫だと思うけど、代わりに山田先生が気絶しちゃったぜ」
「………なんで?」
「色々な意味で刺激が強かったんじゃあないかなと思うぞ」
一夏と箒の言う通り、完全武装状態のイッセーの姿にオーバーヒートして目を回してしまっている真耶。
「刺激……? よくわからんが、問題無しみたいだから、更識さんの実家に行ってくるよ」
「私と本音もお嬢様の従者として同行させて頂きます」
「お嬢様の将来はイッセーさんに懸かってるから、頑張ってよ~?」
「ああ、善処はするよ。善処は……」
そんな真耶を留守番するリアス達に任せて、イッセーはぽわーんとした顔をしたまんまの刀奈、そして刀奈の従者である虚と本音の姉妹と共に出発する。
「じゃあ行ってくるよリアスちゃん」
「行ってらっしゃい。
その……私が変にテンションが上がったせいだというのに、ごめんなさい」
「はは、リアスちゃんから貰う迷惑とやらは俺にとって迷惑にもなりゃしないさ。
だから謝るんじゃなくて―――」
「わかった――――頑張って……!」
「……! ―――フフッ、承知……!」
まさに、割りと長く感じる事になる一日の始まりだ。
リアス達に見送られ、人工島化しているIS学園の外へと続くモノレールに乗り込んだ刀奈、虚、本音――そして社会人的な意味で完全武装状態のイッセー。
運良く誰も居ない車両にて、イッセーは刀奈の婚約者候補の見合い写真基、プロフィールを先日とは打って変わって真剣に確認する。
「暗部と呼ばれる家系って結構日本にも居るんだな。
で、こっちは政治家の息子か……。
こりゃ育ちの良さは完全に敗けだな……俺元は孤児でホームレスだったし」
「育ちの良し悪しは関係ありませんよ」
「そーそー、育ちがいくら良くてもお嬢様の気持ち次第だし――って、ホームレスって冗談だよね?」
「半分はな。
チィ、どれもこれも顔まで良いのか……」
一人一人のプロフィールと写真を見ながら、久しく感じなかった微妙な劣等感を刺激されるイッセー。
「ぜってー浮くじゃんか俺……」
「そこまでご自身を卑下する程とは思いませんが……」
「少なくともお嬢様は思ってないと思うよ?」
「………」
どう甘く見積もっても、容姿と育ちに関しては既に敗色濃厚と判断していく訳だが、刀奈にしてみれば容姿だ育ちの良さなんて何のポイントにもならないし、彼女から見ればイッセーの顔立ちが好みなのだ。
「私は好きですよ? い、イッセーさんの顔……」
「変な気を利かせなくても良いよ。
まあでも、ありがとうな」
割りと勇気を出して言ってたが、イッセーはお世辞を言われてると思ってるのか、軽く苦笑いだった。
「気なんて利かせてないのに……」
「やはり『今後』の方が大変そうですねお嬢様……」
「最大のライバルがリアス先生だもんね~」
ブツブツと『ここまで来たら金持ちのボンボン共には負けたくねぇ』と、一人変な方向に燃え始めてるイッセーの子供認識フィルターを取り払う道はまだまだ長いのだと、当主と従者の少女達はため息を溢すのであった。
さて、こうして刀奈の『自由』を手にする戦い(?)が今まさに始まった頃、IS学園に居る当然こんな話を知ってる訳も無ければ無関係である織斑春人が簪から聞いてしまったらしい。
「お、お見合い……?」
「そ、あの薄情姉は当主だからね。
後継者を作るって意味で、今日は実家に帰って両親が選んだ良いとこのお坊っちゃん達と見合いしてるよ」
「な、なにそれ……」
どうでも良さそうに話す簪から聞いてしまった春人は思考が完全に止まった。
(お、お見合いってなに? なにそれ……?)
どんな相手なのかもそうだが、それ以上にショックが大きすぎたらしく、簪や友人達の声が環境音の様に耳に入りながら春人は焦り募らせていく。
今日も簪となんとか仲直りさせようと思っていた春人にとってすれば、既にその男とやらに殺意すら沸いてくるし、その話が本当なら一夏は一体何をしているのか。
今居る食堂の隅の席で箒やシャルロットと呑気に談笑しながら食べてるので、春人はその呑気な顔に対する怒りを押さえながら聞いてみる事にした。
「ねぇ、楯無先輩が実家でお見合いって話……」
「んぁ? なんでお前が―――ああ、更識から聞いたのか? おう、今朝従者ののほほんさんと布仏先輩と一緒に帰るのを見送ったぜ?」
「…………………」
コイツ……本当に一回叩きのめしてやろうか。
ヘラヘラと止めもせず見送ったと宣う一夏に歯を食い縛りながら怒りを抑えてる春人は、白けた目で見てる箒と、苦手意識が完全に顔に出てしまってるシャルロットに気付いてない。
「なんで……止めなかった?」
「は?」
楯無が他の男に……考えれば考える程自分の感情を押さえ込めなくなってしまった春人が遂に一夏達の使ってたテーブルを両手で思いきり叩きながら声を荒げた。
「どうして止めないでそんな馬鹿面をしてられるって言ってるんだ!!」
その怒声に、後ろに居たセシリアや鈴音やラウラ――そして簪も驚いてしまい、無関係の生徒達も何だ何だとキレてる春人とポカンとしている一夏を見る。
「いや、お前が何でそんなキレ出してるのかがサッパリわからんのだが」
「ふざけるな! お前は楯無先輩が好きでも無い相手と結婚させられるかもしれないと知った上で何もしなかったんだ!!!」
あくまでポカンとしてるのが余計に殺意を煽られ、大声で楯無のプライベートな話をぶちまけてしまった春人のせいで、他の生徒達まで『え、生徒会長が結婚……?』と知られてしまう。
「……あのさ、声がデカいし、何をお前がそんなにムキになってるのか全然わかんねーけど、前提として言って良いか? 楯無センパイが何をしようとお前に何の関係も無くね?」
「っ……!!」
なぁ? と横に座る箒やシャルロットに振り、二人も揃って頷く。
「お前が更識先輩に妙な執着を持ってるからか何だか私には全く興味なんて無いが、お前が今更ここで騒いだ所で何かが変わるのか? そもそも春人、お前に更識先輩が何の関心も無い事を忘れてないか?」
「………」
「え、えっと……少なくとも生徒会長はご実家と話をする為に帰っただけだから。
ま、まあそのお見合いの結果、生徒会長が相手を好きになったらそうなるかもしれないけど、その事について僕達が口を挟める訳じゃないよね?」
「……………」
やはり辛辣な言い方の箒と、あんまり関わりたくないといった態度が見えてしまってるシャルロットの言葉に春人は何も言い返せなかった。
「その通りだよ春人。
……何でそこまであんな奴の事を気にするの?」
「それは……」
不機嫌そうな簪からにも言われてしまい、とうとう言葉が見つからなくて黙り込んでしまう春人を見て、一夏が『敢えて』言った。
「そこまで先輩を気にしてるから言うけど、あの人が実家に帰ったのは見合いをするんじゃなくて、自分が『好きになった人』を紹介して、そういった話を消滅させる為だよ。だから俺達も見送ったんだ」
「………は?」
一夏の言葉に春人は愕然とした顔だ。
「好きな人って……」
「あれ、前に言われなかった? あの人が片想いしてる人が居るって」
「……………」
確かに二度ほど聞いた事がある。
しかしそれは冗談だと思ってた。
だが一夏の話を信じるとするなら、彼女は今その片想いしてる男と一緒に実家に帰ってるという事になる。
「誰、それ……」
「さぁな? お前の知らない人ってのは間違いねーと思うけどなぁ?」
妙に含みのある言い方だが、今の春人に気付く精神的な余裕はまるでない。
「そこまでショックを受けてる様子から察するに、お前はどうやら更識先輩にそういう気があるみたいだな」
「! 春人!? どういうこと!?」
「そうですわ春人さん! 本当ならば説明してください!」
「そうよ! よりにもよってあの生徒会長なのよ!」
「お前は私の嫁だろう! 浮気は許さんぞ!」
挙げ句の果てに箒がわざとらしく煽ったせいで、簪達が一斉に春人に詰め寄った。
今は不在だが、もしこの場に千冬まで居たら、勢い余って楯無――いや、刀奈に殺意を向け始めてただろう。
(…………殺してやる、ソイツだけは)
それ以上に、春人の心はドス黒い邪悪に支配されてしまった様だ。
(あーあ、無駄な殺意なんて抱いちゃってるよ。
仮に殺意向けた所で無意味にも程があるってのに……)
(イッセー兄さんが相手をするまでもない。
もしそうなったら、徹底的に私が潰してやる)
(弟君の友達の女子達が余計怖くなっちゃったなぁ……)
その相手が、プッツンしたら相手を跡形も無く粉々にしてしまえる者だというのに……。
「……。一応イチ兄達に連絡しとくか」
「それが良い、あの様子を見るに、今すぐにでも更識の伝を利用して実家に乗り込む可能性が高いからな」
「そ、そこまでする程彼って生徒会長さんに拘ってたの?」
「ほぼストーカーに近いレベルではあるな」
「質が悪い所は、更識を理由に近づこうとしている。
そんなに執着するなら自分で正直に伝えれば良いものを、アイツはそれすらも他人の伝でなければ出来んのさ昔からな」
無言無表情となった春人が簪を連れて食堂を出ていくのを見た一夏達が、イッセー達に報告をする為に携帯を取り出す。
「普段はクールぶってるイチ兄だけど、素は全然あんなんじゃないからな……」
「ああ、前にリアス姉さんに言い寄る輩が何人も居たのだが、イッセー兄さんが全員に漏れ無く『二度と近づけなく』したからな……」
「な、なるほど……」
その二度と近づけなくしたという言葉の裏を何となく察したシャルロット。
リアスと一緒に居られる為なら、比喩無しに世界全てを敵に回して喧嘩出来るといった雰囲気を普段から感じてたし、イッセーにとって近しい者達がそうなっても、彼ならば最初こそ『何で俺がリアスちゃん以外の事で……』と小言を言うものの、見捨てる事は絶対にしないのは今回の刀奈の件でほぼ確信できた。
「今は時間を稼いでる僕がデュノアの事で困ったら、助けてくれるのかな……」
その枠に果たして自分は入れているのか……。
知り合えてから会話はするけど、どうも壁を感じるシャルロットはちょっぴり不安を感じていると、メールの送信をし終えた一夏と箒が言う。
「少なくとも、この前シャルの親父さんと直接話をした後、親父さんの正妻だっけ? その人とも話を着けたみたいだぜ?」
「………え?」
「本人には言うなと言われてて黙っていたが、今後もしお前に色々とやって来た正妻が何かしたら、デュノア社というものがイッセー兄さんとリアス姉さんによって、世界地図から消え失せるだろうな」
『一夏と箒の友達だから』その理由だけでシャルロットの知らぬ所で半分は『物理』で黙らせていたと知らされた本人からしたらビックリ処ではないカミングアウトだった。
「ベラベラと話しても何の自慢にもならないって、イチ兄はカッコつけてたけどな?」
「まだ完全とはいかないが、少なくともこれからは道具にされる事は無いんだ。
だから不安になるな……」
「う、うん……し、知らなかったよ。
いつの間にかそんな事までして貰ってたなんて」
もっとも、これがリアスであったなら、警告無しのドラゴン波であったことは想像しやすいし、そういう意味では優先順位は確かにイッセーの中ではある。
「あはは、なんだろうね? 僕が現金な性格なんだろうけど、知った途端とても安心してるや」
しかしそれでも確実に、然り気無く手を差し伸べてくれた事にシャルロットは亡くなった実母以来無かった『無条件に差し伸べてくれる手』に嬉しくなったのであった。
所戻って、更識刀奈は地元となる町の駅に従者である虚と本音――そしてイッセーと共に降り立った。
「…………。チッ」
「え、何かありました?」
「……。一夏の弟の―――なんだったか? 例の小僧にキミの話が妹経由で知られたらしい」
約束の時間まで二時間は余裕があり、近くのカフェか何かで時間を少し潰そうかと話し合っていた所に一夏と箒から来たメールに、イッセーは露骨に舌打ちをしながら三人にも教えてあげる。
「簪お嬢様が織斑春人に教えてしまったのですね?」
「そんな名前だったな。この子の婚約者云々の話に勝手にキレてるんだと」
「かんちゃんも彼が好きなら何で言っちゃうのかなぁ……」
「大方、話せば彼が楯無お嬢様に対する執着をやめると考えたのでしょうが、どうやら逆効果の様ね」
こじんまりした喫茶店で軽食を取りながら、簪の思惑を外れて、織斑春人が変な方向に一人勝手に『暴走』し始めているだろう状況に軽くうんざりする。
「そもそも何でそういう感情を私が向けられているのかしら? 結構キツめに拒否してきたつもりなのに」
「単なるマゾか、キミの胸の感触が忘れられないのか……。
心底リアスちゃんが未だに知られてなかった事にホッとするぜ」
「それには同意せざるを得ませんね」
「イッセーさんじゃないけど、もしリアス先生にお嬢様みたいな真似をやらかしたら、多分殺したくなるもん」
「私が物凄く被害を被ってるんですけど……」
アイスレモンティーを飲みながら、ジト目になる刀奈にしてみれば、本気で気色悪い気分にしかならないし、虚や本音までも同意している。
「そういう意味ではキミ達とは本当に気が合うよ」
「ええ。
触れた瞬間、その指を全部切り落としてやりたくなるのは間違いありません」
「大人しく黙って私達に関係ない連中に可愛がられてれば良いのに。
第一さ、明らかにかんちゃんが出汁に使われてる気がするんだよねー……ホントぶちのめしたくなる」
しかも本音に至っては、のほほんとしてる言い方なのに言動がスイッチの入ってるイッセー並に物騒だ。
「リアス先生loveが三人揃うとこうなるって良くわかったわ……」
「違うな、loveは俺だけで二人は単なるミーハーだ」
「いいえ、敬愛の気持ちはいくらイッセーさんとはいえ負けている気はありません」
「同じく!」
「はっ! 言ってろ小娘共めが」
「………………」
そしてリアスの事になると精神年齢がかなり下がるくらい、リアスがイッセーの中での優先順位が最高位である事にも刀奈は不満そうな表情で布仏姉妹相手に大人気なく張り合おうとするのを見ている。
「って……リアスちゃんの話じゃないだろ今は。
その織斑なんとかが更識さんの妹を利用してこっちに無理矢理にでも来る可能性があるってんなら、早いとこ話を付けなきゃならねぇって事だ」
(こういうのを『惚れちゃった弱味』って奴なのかしらね……)
話を戻すイッセーを暫く不満気に見ていた刀奈だが、やがて心の中で苦笑いをしながらその不満が消えていく。
そもそも脈なんて最初から無いのは解っていた事だし、それを承知で尚恋心を抱いてしまっているのだ。
(でも腐っちゃ駄目よ更識刀奈……! 不満に思う前に、先生に負けない魅力を持たなきゃね……!)
『楯無』の名を背負う覚悟を決め、出会う前はきっと本当の意味で『恋心』を抱くことは無いだろうと思っていた。
でも出会ってしまった。
『キミが俺に抱いてる想いとやらを馬鹿にする気は無い、だが良く考えろ。
俺はただ単にキミの悩みを聞いただけで、適当な事を言ったに過ぎない。
その結果、偶々良い方向に転がったのかもしれないけど、それは本当に偶々であって、ひょっとしたら俺の余計な一言でキミの可能性を潰してしまったかもしれないんだ。
だからもう一度よく冷静に考えてみな―――きっと一時の気の迷いだったと気付く筈だぜ』
既に心底大切にしているパートナーが居ると解ってても、彼にそんな気なんて全く無いと何度も言われたけど、それでも気の迷いじゃないと言える。
ちょっと優しくされたからといった曖昧な理由じゃないと胸を張って言える。
「簪の彼氏さんがもしかしたら余計な事をする可能性があるのなら、そろそろ行きましょう? ちょっとやそっとじゃ崩れない程徹底的に決めなきゃね……!」
「そうだな。
菓子折りだけは絶対その前に買うが」
悪態は付くけど、本当に困っていた時は不器用に手を差しのべててくれる。
然り気無い言葉で慰めてくれた。
誰が見てもその恋心は間違えてると言うのかもしれない。
けれど差し伸べてくれたあの手に嘘なんて無い。
最初で最後―――そしてこの先永遠に抱き続けるこの想いはきっと……。
「28にもなる男が17の女の子に手を出して――――いや、実際出して無いけど、出してるって体は冷静に考えなくても犯罪だよな……。
キミの両親によくて半殺しにされるか……まあ、下手したら殺しに来るだろうが、こうなったらなるようになれだ。俺は一切の抵抗はしねぇぞ」
「普通、そこまでしてくれる人なんて居ないし、会ったことなんて無いですよ……」
「知らない間柄ではない子が、昔のリアスちゃんがそうなりそうだった事になると聞いて無視は出来なかったからな。
……大丈夫だ、キミの両親に例えクソ呼ばわりされても確実にキミに選べる自由を約束させる」
「……………………。ほら、やっぱり気の迷いじゃない」
「は?」
リアスと同じ……正真正銘の気持ちだ。
「なんでもありません。
それより、実家まで手を……繋いで良いですか?」
「……今日だけだぞ」
「え、こ、断られると思ったのに……。
え、えっとじゃあ……」
「自分で言っておきながらテンパるなよ。
ホントに思ってた以上に初だな」
「ち、違いますぅ! 不意打ちに何時も優しくなるならですぅ! それといい加減私を更識さんだとかキミと呼ばないで真名で――――」
「わかったわかった、良いから早く行こうぜ――刀奈?」
「あぅっ!? は………はい……! お、おにぇがいしましゅ……!」
覚悟を背に羽ばたく心へと至る彼女の想いは誰にも止められない。
補足
……まあ、簪経由で知ったら黙ってる訳もないですね。
………………まあ、千冬だお友達のせいで身動きが取れるかどうかまではわからんが。
その2
たっちゃんのスキル……。
えーっとね……うん、実はまだふわーっとしか考えてねーのよ。
その3
手を繋いで貰えたらテンパり、名前を呼んで貰えたらあわあわしたり。
……頑張れたっちゃん! とでも言ってあげましょう。