色々なIF集   作:超人類DX

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ものっそい! 1発ネタ。
設定とかぶっ飛び突き抜けファイヤー! みたいな……。

※前回までとは別ネタ&胸糞展開アリ故注意


in めだかボックス
やはり2度も負けた俺がラブコメなんてもう嫌だ。


 『高校生活を振り返って』

 

 小さい頃は『高校生』を大人だと思っていた。

 ルーズソックス、丈が短いスカート。まさに女子高生は大人のおねーさんだと思っていた。

 

 しかしイザ自分が高校生となり、大人のおねーさんたる女子高生と共に学校生活を送った所、それは幻想だと言うことに気付いてしまった。

 

 小・中学生から変わらないグループ間での自己満足。

 気にくわない奴が居れば徒党を組んで落とし入れようとする醜さ。

 そして何よりどう見ても餓鬼にしか見えない女っ気無しの生徒共。

 

 自分が幼き頃より憧れていた女子高生おねーさんはそこには居ない。

 あるのはただただ、クソ喧しいノリでつい殴り飛ばしたくなる内輪ノリだらけのつまらねぇ案山子共。

 

 ガッカリを通り越していっそ哀れにしか思えないし、幻想を抱いてた俺は泣いても良い。

 

 

 つまり、女子高生なんて所詮はこんなものだったので、今度からは外資系OLに憧れの目を向けたいと思います。

 

 

 以上・ガッカリな高校生活を振り返って……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、わざわざ私がキミを呼び出さした理由は――勿論わかるよな?」

 

「ええ、そりゃ勿論。先生からの逆告白でワクワクドキドキって奴でしょうよ! ふっふ~!」

 

「………。ハァ」

 

 

 生徒指導室ってドキドキしない? 特に指導する人が妙齢の女教師だったら俺はテンションウハウハだ。

 だからこそ先生に呼び出された時は喜んだし、身嗜みも限界ギリギリまで整えた。

 

 けれど先生が魅せる表情は呆れを通り越した何かであり、若干蔑んだそれだった。

 

 

「本気でそう思ってるなら実におめでたい頭をして居るというべきだな」

 

「そんなに誉めないでくださいよ、照れますぜ」

 

 

 頭が痛いとばかりに額に手を置いてため息混じりにそう呟く先生は俺の言葉を無視して続ける。

 今度はもっと砕けた様な口調で。

 

 

「お前に友達は――まぁ居ないよな? 仲良く談笑している姿を一度たりとも見ていないし」

 

「ひっでぇな先生。

確かにクラスの連中共からは疎んじられてますがね」

 

 

 うん、あんまりにも高校生に対する理想と現実の差が激しくて態度に出しまくった結果、ものっそいクラスでハブられてしまったけど、先生みたいな美人教師の存在で自業自得の陰口にも負けず不登校にはならんかったなんてはのは個人の話でありどうでも良い事だ。

 というか、それをわざわざ今更聞くために呼び出したのかね? 逆告白はやっぱり幻想でしたか……かなぴー

 

 

「まあ、こんな作文を平然と書いて提出するんだ。当然と言えば当然だが……」

 

「嫌だなぁ。

あんな案山子共と友情なんてもんを育めってのが無理な話じゃないっすか」

 

 

 寧ろ友達って関係なんてその場かぎりの何かでしかない。

 都合が良ければ友達で通し、都合が悪ければアッサリとその友達だった者を切り捨てる。

 親にしたってそうだ。ちょっと洗脳されたからってアッサリと騙されて平然と切り捨てる。

 所詮そんなもんなんだよ、人と人との関係とやらは。

 

 

「クラスメートを案山子呼ばわりか……どうしたらそんな風に思えるのか私には未だに理解できん」

 

 

 その点この人は結構良いんじゃねーの? と思うほどにはいい人だと思う。

 俺の鬱陶しさにもちゃんと付き合う辺り大人だなと憧れすら抱くぐらいだ。

 故に抱くからこそ……。

 

 

「お前を引き取ってからもう5年近いが、それだけは直せないか?」

 

「……………。へ、仕方ないだろ……。

2度も惨めに叩き落とされれば人と人との繋がりなんてクソ以下としか思えないし信用も出来ない」

 

 

 信じると信じない……相反する気持ちがぶつかり合って複雑なんだよ。

 

 

「しかし完全に諦めてる様には見えない。私にはそう見えるが?」

 

「ケッ、それこそまさかだぜ……。

もうあんな思いをするのは二度とごめんだ」

 

 

 2度も全てを失っても尚、死ぬことが許されず放り出された俺を信じて拾ってくれたこの人の事を……。

 

 

「まあ、それはまた後でにして、お前――いやキミには反省文の代わりにあることをして貰う」

 

「はぁ?」

 

 

 そんな俺はこんな性格となって以来、友達なんて者なぞ一人たりとも存在しなく、課題として出された作文にもその内容として正直に書いたつもりだったんだが、この保護者でもある先生は実にお気に召さなかった様で、何やら罰を与えるとか何とか言ってきた。

 

 

「ちょいちょい? あることってどんなことよ?」

 

「此所で言えばお前は嫌がった挙げ句逃げるだろう? ま、逃げても家で捕まえられるから意味など無いがな。兎に角付いて来い、話しはそれからだ」

 

「ちょ、待てよ……腕引っ張るなし」

 

 

 えぇ……説明の辺りでハッキリと俺にとって嫌な事なとか言ってる時点でロクな事じゃ無いやんけ……その時点でさっさと帰りたいんですけど。

 

 ――等と訴えた所でこのお節介さんが聞くわけも無く、今から逃げても保護者になってて衣食住を共にしてるこの人から逃げられないのは確かなので、黙って連行されるしか今の俺には道がなく、死刑執行一日前の気分だ。

 

 

「マジで何処行くんだよぉ……? 本校舎から離れてるとかわかんねーんすけどー?」

 

「良いから来い、つべこべ言わずに黙ってれば直ぐに分かる」

 

 

 こんな事なら嘘でもそれっぽい事書いとけば良かったか? とまあ、逃がさないとばかりに俺の腕を引っ張って指導室を出る最中後悔する俺だが、それっぽい事を書いても『嘘を書くな』と突っ込まれるのが確定している時点で無駄だと悟り、仕方無く先生に連行されるのだった。

 

 

「何処まで引っ張るだよ……もう」

 

「此所だ」

 

「え? 此所って何室よ?」

 

 

 んで、連れてこられた場所は本校舎ではない西校舎であり、普段俺は授業以外は立ち寄らない場所だった。

 グイグイと男前宜しくに俺を引っ張る先生に連れられ、これまた入ったこともない場所の扉を無遠慮に開けた先に待ち受けるは……。

 

 

 

 

 

 

 私は人生で只1度だけ『優秀だけでは説明のつかないナニか』を目の当たりにした事がある。

 そのナニかとは人の形をしたナニかであり、会ったのは高校に入る前だった。

 

 

『……。チッ、何でこんな事してんだか俺は』

 

 

 歳の頃は恐らく私と同じだろう男子。

 自分の家柄のせいでその日誘拐というものをされた私の目の前で、誘拐犯を叩き潰して救った一人の男子は……。

 

 

『あ、アナタ……そ、その傷……』

 

『あん? あぁ、この連中の中のどれかに刺されたみたいだが……チッ、負けすぎて此処まで力が落ちるとは嫌になるぜ』

 

『そ、そうじゃなくて早く病院―――っ!?』

 

 

 誘拐犯の一人が所持していた大型ナイフで深々と刺された腹部の傷がその男子にはあり、正直に誰かも解らず、助けられた自覚も無いままただ溢れ出る血を見て取り乱していた私は信じられなかった。

 

 

『……。傷を負った現実を否定する』

 

 

 普通なら命に関わる程の深い傷を……その男子は私が見ている目の前で『消した』のだ。

 夢なんかじゃない……何度頭を振っても血塗れだった傷口は無くなり、流れ出ていた血も無くなっている。

 こんなお伽噺みたいな現実を見せつけられた私は目の前の視界が弾けるような衝撃と、何より不気味さを抱いてしまい……。

 

 

『よし、これで大丈夫っと……。ほら、大丈夫か? 何かキミあの連中に拉致られたみたいで――』

 

『こ、来ないで!!』

 

 

 私はその人から差し出された手を振り払ってしまった。

 あまりにも現実離れした何かを見せつけられたから……そんな理由で私は本能的な恐怖に屈して、助けてくれた相手を拒絶してしまった。

 

 

『う……』

 

『……………』

 

 

 その時彼が見せた表情は分からなかった。

 けれど後悔した時点で最早遅く、ハッとなった私に彼はヘラヘラ笑って言ったのだ。

 

 

『ま、そんだけ元気があれば大丈夫か?』

『え……ぁ……』

 

『何、気にするな。俺が勝手にでしゃばっただけなんだからよ……んじゃお達者で』

 

 

 気にしてない。そう言っていたものの、私には彼が本気で傷ついた様にしか見えなかった。

 けれど拒絶してしまった私に声を掛ける資格なんてなく、気が付けば私は今更駆け付けてきた警察官と父と母と姉に囲まれ、あの男子の姿は消えていた。まるで幻想だったかの様に……。

 これが私の人生で1度見た不思議な体験と後悔と……抱いた望み。

 もしも……もう一度だけ面と向かって会う事が出来たら。

 もしも……もう一度だけ手を差しのべてくれたのなら私は――

 

 

 

 

 

「入るぞ」

 

「……。先生、入る時はノックをちゃんとして――――っ!?」

 

「何だ此処? 初めて入るぜこんな所」

 

 

 ちゃんと……ちゃんとお礼を言って謝りたい。

 それが勇気の無い私の願い。

 

 

 

 ……。さてと、先生に入ったこともない無いところに連れて来られたは良いが……。

 

 

「……。だ、誰ですか? その人……は……?」

 

 

 連れて来られるや否や、先に居た女子生徒に思いきり驚かれた顔をされてるのは何で? と俺は聞きたいが、俺の保護者は妙にニヤニヤしながらその女子生徒に対して口を開く。

 

 

「キミが話したがっていた新入部員だ」

 

 

 ほう新入部員とな……この季節に珍しい――って。

 

 

「「はぁ!?」」

 

 

 おい保護者、思わず女子生徒とハモったが、聞き慣れねぇ言葉が出てきたぞ? どういうこっちゃ!

 

 

「だから言っただろう罰だと。

お前には今日からこの『奉仕部』で部長である彼女と奉仕活動をしてもらう」

「いや、は? いえ、はぁ!?」

 

 

 思わずハモり、思わず女子生徒を見てしまい、その女子生徒から思いきり顔を逸らされて若干凹んだというのに、そんなもん知らんとばかりに俺の保護者はドヤ顔で宣った。

 それを聞いた俺は思わずもう抗議だ。

 

 

「いやいやいや、待とうぜティーチャー! 奉仕とかエロチックな響きもそうだけど、何で俺が部活動なんぞに――」

 

「もう忘れたか? あんなふざけた作文を提出してわざわざ呼び出しをさせた罰だよ罰」

 

 

 罰て……罰ってアンタ。

 そんな横暴な……いや、出会ってからずっとこんな感じなのは解ってたつもりだけど……。

 

 

「………」

 

「ほら見ろよ。アンタが唐突過ぎる話をぶちまけたせいで、あの女子生徒ちゃんったら放心してますぜ」

 

「そうか? 彼女は確かに突然の事で驚いてる様だが、なに、心配しなくてもお前なら彼女とですら直ぐに仲良くなれるさ」

 

「はぁ? 何を言って――」

 

「おっと、そろそろ戻って書類整理をしないといけない。後は二人で親睦を深めてくれたまえ……じゃ、また後でとか」

 

「ちょっと待てって………おいコラ!?」

 

 

 に、逃げおった。

 訳わかん事だけ言うだけ言って逃げおったぞあの生徒主任兼保護者が。

 クソ、いくら年上の美人だからってやって良いことと悪いことが――――

 

 

「…………………」

 

「………………………」

 

 

 ある……けど、あぁ、残された俺はこの変な空気に耐えなければならんのかよ。

 つーか何ガン見してんだよ……ちきしょうが。

 

 

 

 

 助けられたのにも拘わらず、私が拒絶してしまった相手の男の人が幻想では無いと確信できる理由。

 それは、その男の人が私がこうして通う学校と同じであったからであったからだ。

 

 けれど学科も違うし、当然クラスも別。

 だから二学年となった今ままで一度も顔を合わせる事は無かったし合わせる勇気も無かった。

 

 だからこそ、妙に彼と親しい先生が彼を引っ張って来た時は比喩とかでは無く心臓が止まりそうになったわ。

 

 

「「…………」」

 

 

 先生は私が誘拐された事もとある縁があって知ってるし、その時誰が誘拐犯達を沈めたかのかも知っていた。

 それは多分、結局警察や両親や姉の誰しもが信じなかった私の話を信じ、『もしや……』と何処か思い当たる節があるといった表情を見れば直ぐに分かった。

 この私の目の前で気まずそうに辺りを見回してる彼こそが……あの時助けてくれた人。

 

 

「マジかよ……どうすんだよこの状況……?」

 

 

 世界というのは広いようで狭いとこれ程実感させられた事は無いわ。

 自分から話し掛ける勇気すら後ろめたさで無かったというのに、彼の方から理由はどうであれこうして私の目の前に居る。

 

 だから……さぁ、ちゃんとまずは話し掛けるのよ。

 気まずそうにしている彼へ友好的に……あの時の事を含めてちゃんと――

 

 

「キョロキョロと辺りを不審人物みたいに見ないでそこに座ったらどうかしら?」

 

「…………は?」

 

 

 言う…………つもりだったのに。

 

 

「別に珍しい物があるわけでも無いのよ? それとも何かアナタのお気に召す物でもあるのかしら?」

 

 

 私の心は、その勇気すら直前で霧散し、つい言ってしまった…………。

 

 

「いや無いけど……えぇ?」

 

 

 やってしまった。

 数秒前の自分を絞め殺したくなる暴言を口にしてしまった私を、恩人である彼は困惑した様な表情で私を見つめる。

 最低よ……何をやってるのよ私は――

 

 

「何かしら? そんなジロジロ見ないで貰いたいわね。身の危険を感じるわ」

 

 

 だ、だから違う! 何でもっと素直に言わないのよ私は!

 

 

「…………えー? マジかよ」

 

 

 うっ……!? あ完璧に只の無愛想で口の悪い女じゃないか……という顔だわ。

 自業自得も甚だしいわね……くっ。

 

 

「何で連れてこられてほぼ初対面の奴に罵倒されなきゃならねーんだよ……罰にしてはキツ過ぎるだろ」

 

「っ!?」

 

 

 更に言えば、彼は私をどうやら覚えていないらしく、私から目はおろか身体まで横に向けて椅子に座ってそのまま黙ってしまった。

 最悪だわ……というか最低だわ私。

 テンパって心にも無い台詞を吐き散らし、本来は頭を下げるべき相手の心を傷付けるなんて……殴られたって文句なんて言えやしない。

 

 

「あ、あ、あの……」

 

 

 どうすれば良い、折角先生からの貰った最初で最後と言っても過言では無いこのチャンスを既に崩壊寸前なこの状況をどうリカバリーするべきか……。

 考えなさい……考えるのよ私……!

 

 等と自業自得で既に帰りたそうに椅子に座って斜め下を見ている彼を気付かれないように見ながら考えた結果……。

 

 

「あの……ごめんなさい。

い、今のはちょっとした冗談……というやつで」

 

 

 冗談で誤魔化すという結論に達し、殆ど恐る恐るな気持ちで吃りながら私は斜め下を向いて表情が見えない彼に罪悪感で押し潰されそうになりながら声を掛けた。

 

 

「え、あ、そうですか……」

 

「うっ……」

 

 

 するとどうだ、うつ向いていた彼が此方に見せた表情は何処までも『無』であり、さっきまで先生に迫っていたのが嘘の様だった。

 

 そうまるで……世界全てがどうでも良い――といった様な。

 

 

「ハァ……。

あのー、別に気にしてないんでわざわざ謝んなくても良いですぜ? あの先生に無理矢理連れてこられただけですし、貴女も気分悪かったでしょ?」

 

「い、いや……あの台詞は全部冗談で……ご、ごめんなさい……!」

 

 

 やはり面と向かってしまうと完全に何時ものペースで居られなくなる。

 口調からして私の事なんて忘れている様だけど、それでもあの時拒絶してしまった罪悪感と、折角こうして話す機会を獲たのに不意にするような台詞を言ってしまった事への罪悪感で死にそうになる。

 でもこうしてあの時振りに会話がどうであれ成立したこのチャンスだけは何としてでも逃す訳にはいかない。

 

 だから私は四の五の無しに――

 

 

「私の事……その、覚えてとかはないかしら?」

 

 

 あの時の事を忘れてる彼に思い出させようと一気に切り込んだ。

 すると彼は――

 

 

「……………………。覚えて? 今が初対面―――――いや、待てよ? その目は……あぁ、思い出したぞ。

あの時拉致られた女の子か?」

 

「!? そ、そうよ!」

 

 

 結構アッサリと私を見て思い出してくれた。

 どうやら記憶力は悪くないというか、私も思い出したけど彼って学年5位圏内の常連程度の実力だったわね。勉学は。

 そして運動に関しては――周りから化け物呼ばわりされる程の訳の分からなさを誇っているのも今思い出した。

 

 

「そっか……ふーん、特にトラウマになってるって様子も無さそうで良かった、か?」

 

 

 いえ、そんな事はどうでも良いわ。

 今必要なのは自分から思い出してくれた彼に、あの時の謝り、そしてお礼を言わなければならない。

 

 

「え、ええ……その前にも2度程あったし、何とか過ごせてるわ」

 

「そうかい。……ったく、あのお節介め。十中八九知ってて此所に連れてきたな? 外で盗み聞きしてるしよ」

 

「え、そんな事が解るのかしら?」

 

「餓鬼の頃から他人の気配には敏感な体質なもんでね……表情までは解らないけど、腕組んでニヤついてんのが想像できるぜ」

 

 

 なんて事は無いとばかりに平然とこの部室の外から先生が盗み聞きしていると看破する彼に私は驚くのと同時に、あの時の事を考えれば納得をしてしまう。

 

 数十人の誘拐犯を……凸ピンだけで薙ぎ倒したあの姿を思い出せば容易に……ね。

 

 

「で、あの……俺は俺でさっき聞いてたと思うんですけど、先生から与えられた罰で此所に連れてこられたんですよ。

なんで此所が何なのか、つーか何の部活なのかも知らないというか――奉仕って何ぞ? みたいな――あ、畏まらずに普通に話してどうぞ」

 

 

 あの時と変わらない『全てが無意味だと悟った目』を向けながら彼は私に質問をするので、私は言われるがまま……何時もの私としてその質問に答える。

 

 

「誰からの相談を受け付け、困ってる人に手を差し伸べる。それがこの部……奉仕部の活動内容だわ」

 

「っ……!? 誰からの相談と困り事に手を差し伸べる……ね」

 

 

 その際、この部の活動内容を教えた辺りで大きく目を見開くのが見えたのは果たして何故なのか? そして一瞬だけ浮かべた自嘲するような笑みは何なのか。

 この時の私には解らない。

 

 けれど……。

 

 

「あの時の借りを含めてこの場で改めさせて貰うわ。

私は雪ノ下雪乃……この奉仕部の部長でありアナタの入部を歓迎するわ。あの時はありがとう、そして――差し伸べた手を拒絶してごめんなさい……」

 

「っ……」

 

 

 私は漸く言いたかった事を、緊張しながらもちゃんと伝えられた。

 その際、またもや彼は目を見開きながら私を見つめていたが、やがてほんの少しだけ私には『泣いている』様に見える表情を浮かべてから、ヘラヘラした笑みを見せると……。

 

 

「兵藤一誠……只の馬鹿で負け犬だ」

 

 

 今にも壊れてしまいそうな声で、自身の名前を彼の口から教えてくれた。

 

 

 

 兵藤一誠。

 年齢約17歳。

 所属・総武高校二学年。

 

 

 備考……這い上がるも再び叩き潰され、信じた師や友や大切な人達をも奪い取られて世界から追い出された元・駒王学園生徒会長。

 

 

 これは全てを諦め、永遠に生き続けなければならない人外の青年の物語。

 

 

 

 

 

END

 

 

オマケ。

故に……人外。

 

 

 

 転生者に負け、奪われ、追い出された少年が行き着いた先はまるで知らない平行世界。

 

 それは悪魔も堕天使も天使も妖怪も居ない……残っているのは大切な人達と同じように転生者によって奪われた元・師から教えられ、覚醒させた二つの能力(スキル)と転生者から奪い返した元々つべき神器と呼ばれた力の一部すらこの世界の人間は誰一人として持たない平和な世界。

 

 死にかけた一誠がこの世界へと行着いたのはもう5年も前であり、傷付いて死にかけて倒れていた一誠を拾って介抱したのは、唯一一誠の記憶を見たことのある保護者にて学校教師である平塚静なのだが……まあ、その当時の出来事は二人だけの記憶の中だけのお話だ。

 

 そして正真正銘全てを失い、それでも死ぬことが許されない人外のままだった一誠は自暴自棄と気紛れで、雪ノ下雪乃を結果的に救っており、その救ったという結果と彼女自身の記憶と信念によりかつて一誠が師から教えられたとある生徒会長の真似をして作り上げた目安箱システムにも似たシステムを部活として運営している。

 

 それを知った一誠はかつてを思いだし、ついつい泣きそうになってしまったが、この世界では駒王学園も生徒会長だった証も、師も大切な人達も居ないため、泣いた所で意味の無い話だった。

 

 

「奉仕活動か……。俺程似合わない奴はいねーな」

 

「どうしてかしら? アナタは私を昔……」

 

「へ、アレは色々あってほぼ気紛れでやっただけだ。

あの時以降、俺はただその日を適当に生きてきただけだよ……イメージぶっ壊す様で悪いがな」

 

 

 奉仕部の部室。

 全てを一誠のスキルによって過去の記憶を知った平塚静という保護者によって導かれたこの場所にて、最初のテンパりもほぼナリを潜め、氷の女王と呼ばれる態度で半笑いな一誠と話をしていた。

 

 

「……。何があったかは聞かないで置くわ兵藤くん。

けれど平塚先生からのご命令はちゃんと果たしてちょうだい」

 

「……。チッ、やっぱり人生は儘ならないな。

皮肉通り越して精神抉られてる気分というか……ハァ」

 

「そのため息も極力控えなさい。辛気くさくなるから」

 

「最初の時からそうだけど、キミって言い方キツいね……」

 

「あら、それならアナタのお話を親身になって聞いて同情してあげれば良いのかしら? 同情が欲しい訳では無いのに?」

 

「……。はは」

 

 

 ズバズバと平塚静とはある意味ベクトルの違う遠慮の無さに、思わず苦笑いしてしまう一誠。

 

 過去の自分がやった事を再びやる。

 あまりにも皮肉としか思えない運命にいっそ現実逃避すらしてやりたい程だ。

 

 

「分かったよ。静ちゃんのお節介は北半球を駆け抜けちまうレベルで時折ウザいけど、やれと言われたらからにはやるさ。

作文を適当に書いた罰としてな」

 

 

 故に一誠は過去の自分を見ている気分にさせられる少女と共に過去の自分を再びなぞり出す決心をする。

 どうせもう……親身にもならないし、身体を張ってまで救おうとはしない上部だけの行動にしかならないのだから……と心の奥底で誓いながら。

 

 すると、一誠の静ちゃん呼びにピクリと頬を動かした雪ノ下雪乃は目を細めながら口を開く。

 

 

「あら、先生に向かって随分と失礼ね……というよりアナタみたいなヤサグレ男に下の名前で呼ばれて平塚先生も不愉快でしょうに」

 

「ヤサグレ男て……言い得て妙だけど、仕方ないだろ? 基本的に年上好きなんだから俺は」

 

 

 平塚静の家に厄介になっているし、色々とスキルで誤魔化して法的保護者になって貰っている……という事実は一誠と彼女のみの間にしかない事実であり、当然その事を知らない雪ノ下雪乃からすれば教師に向かって随分と気安いと眉を潜める訳で、よくよく思い出せば彼は平塚静としかまともに会話してない様にしか見えず、微妙にモヤモヤした気分だったとか。

 

 

「なるほど、会話をすればするほどアナタが変態でだらしなくて腑抜けなのがわかったわ」

 

「幻滅したか? してくれて結構だがな」

 

「いえ、寧ろ平塚先生の依頼を完了させ甲斐があるわね。その人生を一人で悟った様な目とヤサグレた態度をね」

 

「……。うーん、ズバズバ言うねぇ」

 

 

 元・友達とはまるで違うタイプの人間に若干戸惑いつつもついついヘラヘラ笑ってしまう。

 その態度もまたのらりくらりて逃げられてる気がしてならないと感じた雪ノ下雪乃をムッとさせる材料として十分であり、またある決心をより強固にさせる。

 

 つまりだ――

 

 

 

「今の腑抜けたアナタにはこれくらいでも優しい方よ。

だから言うわ――」

 

 

 雪ノ下雪乃は、決して表情には出さずに言うのだ。

 

 

「アナタ、私と友達になりなさいな」

 

 

 常人なら一撃で堕ちるだろう笑顔を浮かべながら、かつて自分が拒絶してしまった手を今度は自分からその傷ひとつ無い綺麗な白い手を差し伸べながら…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、それは嫌だ」

 

「……………………………」

 

 

 まあ、その差し伸べた手は急に真顔となる一誠によって掴まれる事は無かったが……。

 

 

終わり

 

 




補足

スペは生徒会長イッセー(鳥猫ver)であり、本編通り這い上がっても尚負けた結果のイッセーです。

目の前で鳥さんや猫は寝取られ、絶望状態でスキルの発動すら許されず世界から消され、師すらも自分を忘れ、それでも尚残ってしまったのは人外スキル。

 故に人生が終われない。
 平和そのものの世界では何の意味もない無用の長物と共に星が滅びようが彼は永遠に生き続けなければならない……孤独に。


その2

保護者について。

とある土砂降りの夕方。自宅近辺にて全身ズタボロの状態で倒れていた一誠くんを発見した保護者さん。
 急いで駆け寄り、安否を確かめようとした途端目にしたのは『ズタボロで血まみれで死にかけていた彼の肉体の傷が次々と消えていき、やがて完治する』という魔法みたいな現象。

 だからこそ、何かを感じ取った保護者さんは彼を取り敢えず自宅まで背負って連れていき……てな流れ。


その3

ヤサグレの気紛れ。

そんな訳で這い上がった時に見せたハングリー精神は完全に消え、保護者さんの強引な手腕で取り敢えず生きなくちゃならない事に一誠は、偶々ラチられてる美少女を見てしまい……たまたま蹴った小石が壁に当たって砕けた為、ヤサグレてイライラしてた気分を誤魔化すつもりで追い掛け、見事に彼女の目の前で誘拐犯全員をぶちのめしました。



 凸ピンのみで。

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