色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

朱乃おねーさんに振られた原因がちょろっと出てくるみたいな?


赤雷の人外への……

 闇の中へと消えようとした私の手を掴んでくれた時に観た彼のこれまでの人生。

 

 とても奇妙で、とても頑固で、それでいて変わらなくて。

 

 奇妙な存在からの別離を経て出会った家族によって心を持ち直し、その母娘が殺された事で私を闇の中から無理矢理引きずり出した時の精神を覚醒させ、二度と失ってはならないと、死ぬ思いで覚醒した進化の精神。

 

 全ては母娘が殺されたのは己が堕天使であるからと、己を責めて疎遠になる他無かった――バラキエルと呼ばれし堕天使の男と、娘である姫島朱乃が再び父と娘に戻れる為に自分がその間守る為に。

 

 人であることを辞める覚悟で。

 あらゆる存在から姫島朱乃とその母である朱璃をバラキエルの代わりとなって守る為に。

 

 この世の全てから拒絶される事になろうとも、彼は永遠に『完成』する事の無い道を進み続けた。

 

 

 

 

 

 力があるから好かれているのではないかという苦悩を隠しながら。

 愛することはできても、愛されることに懐疑的になっていこうとも――

 

 守るべき存在である姫島朱乃からの好意をも――『自分に力が無ければ、彼女に見向きなんてされる筈もない』と苦悩しながらも。

 

 一見すればいい加減なのかもしれない。

 女の人へのだらしなさは確かなのかもしれない。

 

 けれど、誰にも悟らせない本当の気持ちは、姫島朱乃から好意を持たれれば持たれる程――――いや、兵藤凛という存在を拒絶して別離し、人外の存在と出会った時から『怯えて』居る。

 

 だから彼はこの世界に漂流した当初は力を封じていた。

 永久に進化する人外としてではなく、ただの兵藤一誠として誰にも知られる事無くひっそりと死のうとした。

 

 でも結局彼はその封じた力を再び解放してしまった。

 

 フェイトやなのは――そして私と主はやて達が真っ直ぐに未来(まえ)へと進める様にと……。

 

 きっとそれが風紀委員長と呼ばれたイッセーなんだと思う。

 だから私はそんなイッセーのこれからを傍で見てみたいと思った。

 

 例え再びイッセーが生きた世界へと何時か帰る日が来たとしても、私は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 せっかくマイカーまで持ち込み、無駄に気合いを入れたイッセーだが、結局はその予定をフェイトとなのはに潰された。

 しかしそれならそれで仕方ないと、さっさと切り替えると、二人と私服姿のアインスを乗せてミッドチルダの街中をドライブしていた。

 

 

「正味一番ショックだったのが、クロノの坊主が俺に先んじて結婚しやがった事だな。

三ヶ月は引きずったぜありゃあ」

 

「じゃあクロノの結婚式に来なかったのって……」

 

「絶賛現実逃避の真っ最中だったな」

 

 

 アインスに車を褒められたテンションで、そのまま彼女を助手席に乗せた事で車内の空気はギスギスしている―――という訳ではないらしく、割りと和気藹々としていた。

 

 

「犬っ娘のアルフは元気してるか?」

 

「うん。エイミィ義姉さんと海鳴の家に居るけど、イッセーに会ったらひっぱたきたいって言ってた。何年も音信不通で私達をほったらかしにしたからって」

 

「相変わらず元気な犬っ娘みたいで……」

 

「でもクロノ君も酷いよね、イッセー君が何をしてるのかとか一番知ってた筈なのに、誰にも教えてくれなかったもん」

 

「あー……アイツ――いや今は完全に上司なんだけど、アイツを責めるのは勘弁してやってくれ。

一応、その時期は俺も結構な極秘仕事やってたから、外部に洩らす訳にもいかなかったんだ」

 

「極秘? ……それって聞いちゃ駄目?」

 

「今は時効だから別に話しても良いけど、大したもんじゃねーぞ? 単に大規模な次元犯罪者組織を壊滅させてただけ」

 

 

 実に未来的な街並みの道路をレトロ外観で逆に浮いてしまう車で走りながら、数年間の音信不通の理由を今更ながらに語るイッセー。

 デバイスに頼らない戦闘能力を持ち、更には夜天の書の管理人格を『独立化』させる不可思議な力を持っていることを上層部に知られてしまった事から、音信不通にならざるを得なかったというのが真相らしい。

 

 

「流石にテンション上がって大っぴらに過負荷(マイナス)の側を解放しちまったのが不味かったわな。

下手すりゃ監禁されてからの実験動物コースになりかけたのをクロノとかリンディ姉さんのお陰で、次元犯罪組織を壊滅させる尖兵になる条件で好き勝手やれる様になれたし」

 

「そんな事があったの……?」

 

「知らなかった……」

 

 

 ヘラヘラ笑いながらハンドルを回して左折するイッセーだが、初めて音信不通であった理由を聞いたなのはとフェイトは、力を持ちすぎるが故に上層部から完全に目を付けられてしまっていたという事実に複雑な眼差しだった。

 

 

「でも……その気になったらイッセーは逃げれた筈なのに」

 

「どうしてそこまでして管理局に……?」

 

「んー? 給料は良いし、働いてる女性は基本美人ばっかだからだぜ? ナンパし放題やん? 素敵やん? みてーな?」

 

 

 イッセーがその気になった時の凄まじさを知っていたフェイトとなのはの疑問に、イッセーはイッセーらしい答えをケタケタと笑いながら返す。

 するとそれまで助手席で聞いていたアインスがじーっと横で運転するイッセーを見つめながら口を開く。

 

 

「管理局の目を完全に眩ませながら逃げ続けるか、その気になれば管理局相手に一戦交えるくらいは出来るのに、それをしなかったのは私達が理由なんじゃないの……?」

 

「「え……?」」

 

「…………………」

 

 

 イッセーらしい理由を語るが、それが嘘である事を見抜く様に問うアインスに、ヘラヘラ笑ってたイッセーの表情が一瞬だけ固まった。

 

 

「もしイッセーがそのまま管理局から抜ければ、上層部が私達に何をするか分からない。

だから自分の手を汚す事になってでも、管理局に残った―――――――――違う?」

 

「そう……なの?」

 

「イッセーくん、お願いだから正直に言って欲しいの……」

 

「……………」

 

 

 闇の書事件後、まだ当時幼かったはやて。

 そしてヴォルケンリッター達がどうなったかは今を見ればわかる。

 だが、普通に考えて夜天の書の主やヴォルケンリッター達が今までのままの生活を送れる訳は事件の規模を考えたらまずあり得ない。

 

 では管理局下に籍を置いているとはいえ、ある程度の自由が彼女達にはあるのか? それはつまり、イッセーが上層部相手に交渉を行ったからに他ならないと考えるのが妥当な訳で……。

 

 暫く沈黙していたイッセーは、軽くため息を吐きながら渋々口を開いた。

 

 

「アインスにはホントにすぐバレるな。

まあ確かにそうだよ。あんな騒動があったとなりゃあ、はやてちゃん達がどうなるかなんてバカな俺でも想像できたからな。

完全な自由とまではいかなかったが、ある程度を保証させる代わりに、お偉いさん方の気にくわない連中をぶちのめす事にしたって訳。

そりゃあ、無理矢理脅しでもくれれば良いとも考えたが、フェイトちゃまとなのはちゃまにも危害が及ぶだろ? だったらお偉方の専属殺し屋に俺一人がなってお前等が普通に生きられるんだったらそれで良いかなって……」

 

「「「…………」」」

 

 

 『あー、墓場まで持ってこうと思ったのに何を喋ってしまってるんだか。俺ってやっぱダセーな……』と、恥ずかしそうに空いてる手で頬をかくイッセーに、三人は――特にフェイトとなのはは、ただ無意味に音信不通にされたと憤慨していた自分を恥じた。

 

 音信不通にしていたのではなくて、音信不通にならざるを得なかった。

 それも、上層部達から自分達を守る為に……。

 

 

「ご、ごめん……そうとは知らないで、連絡もしてくれなくなったって怒って……」

 

「あー……良いよ良いよ。寧ろ俺なんて忘れられてるとか思ってたし」

 

「忘れられる訳なんて無いよ……。

ごめんなさい……そしてありがとう」

 

「はは、俺の勝手な自己満足だから気にするな」

 

 

 『つーか別部署の女性を片っ端からナンパしたけど、全部断られたのもマジだし』と、誤魔化す様に言いながら笑う姿を、なのはとフェイトはやっぱり変わってないと……離れていてもずっと守ってくれた。

 それこそ自分の手を汚してでも……。

 

 その事実が――大人になろうとしている今でも大きなその背中に二人は更に惹かれていくのだ。

 

 

「おっと、言っておくがなお嬢ちゃん達? こういう、普通に考えたらベラベラと喋る必要の無い事を聞かされたからって、俺に何か思ったってんなら、それは勘違いだからな?」

 

「「…………」」

 

「って、おっさん相手にんな事思う訳もねーか? カッカッカッ!」

 

 

 もう子供では居られない。

 でも子供の頃から抱いたこの気持ちは変えられない。

 

 頼りになるお兄さんから、 どこか『逃げよう』とする男性として見始めた時から、フェイトとなのははその背中に追い付きたいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり変わらない。

 私がイッセーの記憶を観てしまった時から、イッセーは変わっていない。

 時には守ると決めた相手から誤解をされてしまっても決して変えない覚悟の強さが。

 

 

「ちょっと休憩しようぜ」

 

 

 姫島朱乃を守っていた時と同じ……。

 イッセー自身、この話は本当にしたくなかったのだと思う。

 何故なら話をしてしまったら、姫島朱乃の様な感情を持たれてしまうから。

 

 だからさっき車の中でわざわざフェイトとなのはに、『その感情は単なる気の迷いだ』なんて言ったのだと思う。

 

 他人からの好意を根の部分で疑っているから……。

 

 

「しっかし、ナンパのつもりがただのドライブになっちまったなぁ。

ま、別に良いけど、これはこれでのほほんとした気分になれるし」

 

「そ、そうだね……」

 

「う、うん……」

 

 

 でもねイッセー、そういう解釈もあるかもしれないけどそうじゃない。

 なのはもフェイトも――それこそ姫島朱乃だって、力があるからどうだって事じゃないんだよ。

 確かに力があったから知り合えたのかもしれたい。

 

 私もアナタの力があったから今を生きていられる様になったけど、力に惹かれた訳じゃない。

 

 それだけはわかって欲しい……。

 

 

「む、この公園――チィ、カップルだらけじゃねーか……来る場所間違えたか? ええぃ、あそこのペアなんか手なんぞ繋ぎおってからに! 羨ましいぞこんにゃろー!」

 

「や、やめなよイッセー」

 

「そ、そうだよ。

そ、それにほら! み、見ようによっては私達だってデートっぽいしね?」

 

 

 いや、わかって貰う。

 それが今を生きる私の夢……。

 

 

「イッセー」

 

「!! あ、あのカップルの女性、なんというメロンをお持ちなんだ! く、クソー! 羨ましいぞあの男――――――んぉ? ど、どうしたアインス? 俺は今、あそこの羨ましい男に是非『爆発しろ』って念を送ってる最中で……」

 

 

 解ってくれと無理矢理押し付けるのではダメ。

 ……………いや、ずっと疑われてても良い。

 私の夢が叶わなくても良い。

 

 

「主・はやてが言ってた。

こうやって腕を組みながら歩いたらデートみたいだって」

 

「「!?」」

 

「え……あ、あぁまあそうだけど……」

 

「……どうしたの?」

 

「いやその……やっぱり結構メロンだね、アインスって」

 

「…………………えっち」

 

 

 愛する意味がわからなかった私が初めて抱いたこの気持ちを例え受け止めて貰えなくても良い。

 姫島朱乃をずっと忘れられなくても良い……。

 

 

「は、反対側……!」

 

「あ! ず、ずるいよアインスもなのはも! わ、私はどうしたら良いの!?」

 

「とか言いつつ年頃の娘さんなのに背中にしがみつくなっての! 俺は保父さんか何かか!」

 

 

 届かなくても、この想いはずっと……。

 

 

 

終わり

 

 

 

オマケ

 

 

一方その頃的な……。

 

 

 オリジナルが美女三人にひっつかれて困惑し、周辺の者達から軽く舌打ちをされているそんな頃、更なる進化の為と吹き込まれた形で街に出ていた複製のゼーロは、クアットロと呼ばれる少女とデートの真っ最中だった。

 

 

「ドクターの部屋みたいに薄暗いな……」

 

「………………………………」

 

 

 完全に無知に付け込んで、街の様々な場所を手を繋ぎながら歩き回ったし、途中管理局の機動六課に所属する子供カップルを発見し、ゼーロの姿を見られたら大変だと慌てて逃げた事以外はクアットロ的にはとても満足だった。

 しかしそんなクアットロはただ今絶賛ド緊張をしていた。

 

 何故なら今居る場所が、先程ゼーロが疑問を持った西洋のお城テイストの建物―――通称大人の休憩所の一室なのだから。

 

 

「大人の休憩所というからどんなのかと思ってたら、普通のホテルの部屋じゃないか。

何が違うんだろ?」

 

「……………………」

 

 

 照明器具を弄ったり、無駄にでかいベッドをしげしげと眺めたりと忙しそうなゼーロとは真逆に、クアットロとはといえば、発火しそうな程に紅潮する顔を見られないようにと俯きながらソファーの上で何故か正座していた。

 

 

(ど、どどっ、どうしよう……。

勢いで連れて来てしまったけど……)

 

 

 デートをしていく内に緊張が和らぎ、つい勢いで『はっき疑問に思ってた大人の休憩所について教えてあげるわぁ』と言って連れて来てしまったクアットロだが、イザ入れてしまった瞬間、完全にテンパってしまっていた。

 

 

「? このスイッチを押したらベッドが回ったけど、何の意味が……?」

 

「さ、さぁ?」

 

 

 一々子供みたいに質問してくるゼーロに、短く返すのが精一杯なクアットロ。

 

 

「………? なにこれ?」

 

「…………」

 

 

 けれど、変な形の振動する機械を手に持って首を傾げるゼーロに段々と堪らなくなる気持ちも強くなっていくクアットロは深呼吸を一回挟んだ後に腹を括る。

 

 

「それは元の場所に戻して、こっちに来なさい」

 

「? うん」

 

 

 それまで会話はすれど苦手意識をクアットロに持っていたゼーロだが、半日程ガッツリと一緒に居て、特に何もしないんだと解ったからなのか、クアットロに対するしゃべり方がかなり素直なものになっているゼーロが、これまた何の疑いも無く言われた通りソファーに座ったまま手招きするクアットロに近寄る。

 

 

「折角こうして休憩所に入ったのだしぃ、ちゃんと休憩しないといけないわ~?」

 

「? うん……」

 

「ん、だからここに頭を乗せて枕代わりにして少し寝なさい?」

 

「? ? ?」

 

 

 自分の膝を軽く叩きながら言うクアットロに言われるがままに膝に頭を乗せて横になるゼーロ。

 

 

「「……………」」

 

 

 仰向けの体勢で横になるゼーロと膝を貸しているクアットロの目が合う。

 

 

「ええっと……あんまり良くなかった?」

 

「良くなかったって……?」

 

「その……私の膝……」

 

「…………。よくわからないけど、嫌では無い気分……?」

 

「そ、そう……良かったわぁ」

 

 

 あまりにじーっとクアットロをゼーロが見るので、微妙にまた気まずくなってきて感想なんかを聞いてみると、嫌では無いらしいとホッとする。

 

 

(で、出来る訳ないじゃない……! だってまだ早いし、こ、これで良かったのよ……うん)

 

 

 だが、同時に意外と自分はヘタレだったのだと、うとうとし始めるゼーロを見ながら思うクアットロは、やがて小さな寝息と共に眠る彼の頬を撫でる。

 

 

「こんな余計な事を考える様になっちゃったのはアナタのせいだというのに……」

 

 

 他の姉妹達とは距離を置き、何時も独りで訓練をしていた姿をなんとなく見ている内に持ってしまった気の迷いのような気持ち。

 

 捨て去ろうと思えば直ぐにでも出来た筈なのに、結局は捨てられなかったバグのようなこの気持ち。

 

 

「どうしてくれるのよぉ……? フフッ♪」

 

 

 悪くない、寧ろ心地良い。

 今回の件でますますそんな心境を抱いたクアットロは、警戒心が凄まじかったのに自分の膝で寝てくれた複製の少年を撫でながら、更に新たな気持ちを抱くのだった。

 

 

終わり




補足

根っこでどこか疑う。

気の迷いだからと言ってしまう。

それが主な理由。


その2
何年か殺し屋さんみたいな部署で上層部さん達との契約の為にやってたらしい。

お陰で上手いこと彼女達への矛先をずらせて、そんな話は墓場まで持っていこうとしたけど、アインスさんに速攻見抜かれたというね……。


その4
クアットロさーん

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