普通に軽く気絶させてから拉致れば簡単とかは言ってはいけない
俺の目標は生きる事。
託されたダチ公の意思と共にこの先を生きる事。
もう自分の世界には帰れそうも無いけど、それでも俺は生きる。
俺が生きているという事が、アイツ等の生きた証なのだから。
「子供を騙すって、結構心にグサッとくるな……」
「おい、そんな理由で辞めるとか言うつもりではあるまいな?」
「いや、天秤にかければお前達への借りの方がデカいってのはわかってるつもりだ」
この先を生きる為に、今を生きる。
さて、準備も舞台も整った。
イッセーの首筋にわざと残る様に付けてやった噛み跡と、桜通の吸血鬼などという生徒共達の噂を上手くナギの倅達に埋め込んでやった。
坊やに私が吸血鬼だと理解させ、手始めに茶々丸を適当に戦わせて疑心を更に煽る。
………。正直、こんな遠回しな真似をしなくても良いというか、イッセーに坊やの身柄を抑えさせれば直ぐにでも終わる気はしないでもないけど、15年も奴から受けた退屈という猛毒に対する返しをそんなすぐに終わらせる訳にはいかない。
奴への仕返しをして初めて私は止まった時間を再び刻みながら前へと進めるのだ。
その後は……その後はその時考えよう。
どうせ私はそう簡単には死ねん身だ。無駄に時間だけはある。
「また猫かよ? 俺猫ってあんま好きじゃないんだけど……」
「しかしイッセー様が傍に居られると、近辺の猫達が寄ってきてくれます」
「俺はハムスター派なんだけどなぁ……はぁ」
時間は無駄にある……か。
そういうえばイッセーの奴も私と同じで元は人間でありながら自然に老いて死ねぬ存在へとなったのだったな。
コイツはどうするつもりなのだろうか……? 私の呪いが解けた後はどうするのだろうか。
今すぐ学園から去る――とは考えにくいが、何時までも居るとは思えん。
「さてと、談合しに行くか茶々丸」
「はい。ではマスター、行ってまいります」
「……………」
今は普通になんやかんやとここに居るが、この地を去るときは一人なのかそれとも……。
「あー、良い感じのギャルとにゃんにゃんしてー……」
「イッセー様が成功する確率は0.5%未満とデータには出ていますが」
「ほぼ無理じゃねーか! はぁ……運命の人ってどこに居るんだろ」
……。まあ、コイツはアホだから食い扶持さえ提供してやれば黙って消えるってこともないか。
よし、今回の事が成功した暁には小遣いを五千円程上げてやろう。
そうすればイッセーは泣いて喜んで私に感謝するに違いないな! わははは!
「マスターが何故か笑ってます……」
「ニヤニヤと気色悪いなオイ。
変なもんでも食ったんじゃねーの?」
………ちょっと生意気な事言ったから五千円じゃなくて三千円だな、うん。
絡繰さんがエヴァンジェリンさんの従者だった。
そしてエヴァンジェリンさんは間違いなく吸血鬼……。
そしてイッセー先生は間違いなくエヴァンジェリンさんに噛まれて吸血されている。
ここ何日かずっと血色も悪いし、首には噛まれた様な跡も見えた。
イッセー先生は噛まれた時の事をよく覚えてないみたいだけど……。
「何度も噛まれて吸血されてるってのがちょっと解せないわね……」
今僕達は絡繰さんを尾行している。
それは先日彼女と衝突をして、エヴァンジェリンさんの従者であったとわかったからだ。
このまま放っておいたらイッセー先生だけではなく、他の皆も襲われてしまうかもしれない―――って、この前再会したカモくんってオコジョっぽいけど喋る生き物と、協力してくれるアスナさんと一緒に尾行している訳だけど、アスナさんはどうやらイッセー先生が何度も噛まれている事が不思議らしい。
「アイツ、普段はあんなんだけど、凄まじく強いのよ? そりゃ確かに相手が吸血鬼だからとはいえ、エヴァちゃんにそう何回も悟られずに噛まれるってアイツらしくないというか……」
「いやいやいや、吸血鬼の身体能力は普通の人間に毛が生えた程度じゃ太刀打ちできませんぜ!」
「そうだとしてもよ。なーんか腑に落ちないわ」
魔法使いの事をある程度知っていて、身体能力も高いイッセー先生が何度も襲われるのはおかしいというアスナさんの疑問をまだ先生の事をあまり知らないカモ君は、僕の肩に乗りながら抵抗できる訳がないと返す。
僕も正直いくらイッセー先生でも吸血鬼に襲われたらひとたまりもないと思っている。
どっちにしろ疑いがある内はその動向を探らないといけない……そう思って疑問やら何やらを一旦横に置いて僕達は絡繰さん………と、何故か一緒に居て集まってくる大量の猫に身体中をよじ登られてうんざりした顔をしているイッセー先生を物陰から監視し続ける。
「物凄い数の野良猫達がイッセーに懐いてるわ……」
「絡繰さんが嬉々として餌をあげてます……」
けれど絡繰さんはとても悪い事をしているとは思えず、イッセー先生に何かをしようとする気配もない。
「ねぇ、本当に悪い人なの? 私にはイッセーに懐いてる猫を見て……表情は何時も通りだけどほっこりしてる様にしか見えないのだけど」
「ぼ、僕もそう思いますけど……」
考えてみたら襲われてるのがイッセー先生だけで、そのイッセー先生も朝方はかなり調子が悪そうだけど、授業が始まれば何時も通りになるし、お昼ご飯の時間なんて何時も引くほど大量に食べてる。
ひょっとしてエヴァンジェリンさんもイッセー先生の謎の頑丈さを知っているから先生しか狙ってないだけなのかもしれない………なんて思い始めていたらカモ君が言う。
「待ってくださいよ。
ネギの兄貴は命を狙われたんでしょ? 今は被害が主にあの男だけかもしれないが、それでほっといたら味を締めて兄貴の生徒さんやカタギ連中に被害が及ぶかもしれませんぜ?」
「…………」
確かにそれも無いとは言い切れない。
どちらにせよ僕は一度確かに襲われた。
ならば……もう一度確かめなければならない。
この前エヴァンジェリンさんは『悪の魔法使いも存在する』と言っていた。
だったら……!
「行きます……!」
やるしかない。
僕は猫にまみれてモフモフしてそうなイッセー先生――の傍に居る絡繰さんの前へと出た。
猫にひっつかれてうんざりなイッセーと、実はテンションが地味に上がり気味の茶々丸は、やっと出てきたネギとお供となってるアスナ―――と、見知らぬ小動物を確認するや否や、アイコンタクトを短く済ませる。
(談合を開始する)
(かしこまりました、イッセー様はあくまで『何も知らない』を突き通してください)
(任せろ)
エヴァンジェリンとまではいかないが、簡単な意志疎通をアイコンタクトで済ませたイッセーは、顔面に張り付いた黒猫と白猫をひっぺがしながら、すっとぼけた顔をする。
「ん? ネギ先生に神楽坂? こんな所でなにしてんの? てかネギ先生の肩に居る小動物は? 飼ってんの?」
あくまで自分は存じませんな態度で、シリアスな顔をしてるネギとアスナに声をかけるイッセー。
「アンタじゃなくて、絡繰さんに用があるの」
ひっぺがした黒と白の姉妹みたいな二匹の猫が再びイッセーの膝を占拠し、他の猫達に威嚇しているせいでなんとも締まりのない空気のまま、アスナは返すと、同じ様にわらわらと集まる猫に囲まれていた茶々丸が口を開く。
「こんにちはネギ先生、神楽坂さん。まさか尾行されていたとは油断しておりました。しかし先日の続きをお望みならばお相手はいたします」
「は?」
あくまで尾行されていた事には気づかなかったスタンスで話す茶々丸と、なんの事だかサッパリだって表情をし続けるイッセーに、ネギがやりにくそうな顔で言う。
「絡繰さん、もう僕を狙うのはやめてもらえませんか?」
「狙う? ネギ先生を絡繰が? なんで?」
「それはできません。
私にとって、マスターの命令は絶対ですので」
「ちょっとちょっと? なんの話? もしもーし?」
「ならば僕を狙う理由を教えてください」
「それはお答えできません。マスターからの許可がありませんので」
「なんだよ無視かよ……? 拗ねるぞコノヤロー」
「はいはいはい! 私が話し相手にもなんでもなるから今は黙ってなさい!」
良い感じにうざいガヤ要因になっているイッセーは本当に何も知らないとアスナは思ったのか、二人のやり取りに一々水を差そうとするイッセーの襟首を掴んで連行する。
「では……僕が勝ったら約束してください、二度と狙わないと! そしてイッセー先生に対しても止めると!」
そうこうしている内にネギが戦闘体勢に入り、茶々丸も構える中、アスナに連れていかれたイッセーは……。
「俺に対して何を止めるっての? 俺別に絡繰に何もされてねーけど。ここで寄ってくる猫と嫌々戯れてただけで――」
「説明は後でしてあげるから、頼むから大人しくしてなさい」
「いやだってどう見ても喧嘩じゃねーか、止めなきゃ―――うっ!?」
あくまで喧嘩しそうな二人を取り敢えず止めようとする的な行動をしようとした事情を知らぬガヤを演じ続け……今度は突然噛まれた跡のある首筋を押さえながら苦しみだす。
「ど、どうしたのよイッセー!?」
「せ、先生つけろや……! あぐ……! 首が熱い……!!」
「い、イッセー先生!? か、カモ君! これって……!?」
「わ、わからん! だけど吸血鬼に噛まれた傷跡に何かあるのは間違いない!」
踞りながら首筋を押さえて苦しむイッセーに、アスナは勿論の事、臨戦態勢になっていたネギも驚いて駆け寄る。
(う、別の意味で罪悪感で苦しいんだけど……!)
当然これも単なるブラフであり、別に苦しくも熱くも無いイッセーは踞って顔を隠しながらネギ達への罪悪感に襲われて色んな意味で苦しかった。
とはいえ、エヴァンジェリンの呪いを最低限平和的に解く為だと自分を言い聞かせると――
「きゃっ!?」
「うっ!?」
駆け寄る二人を突き飛ばし、イッセーは徐に立ち上がる。
「……………………」
「い、イッセー先生?」
「目の色が変わった……?」
進化を重ねた結果、ある時期から力を解放すると無意味に変色する赤く輝く両目と共に……。
「………………」
「ね、ねぇ? どうしたのよ突然? なに黙ってるのよ?」
「イッセー先生? 何で返事をしてくれないのですか?」
「ひょっとして……。
あ、兄貴に姐さん! もしかしたらこの男、吸血鬼の下僕にされちまったかもしれませんぜ!」
「「ええっ!?」」
何時もの態度が態度のお陰が、明らかに様子が変だと一発で思ってくれたネギとアスナにカモが肩から話す。
(いや、別に眷属じゃないんだけど……。
なんか勝手に誤解してくれてるし良いか)
簡単に言えばエヴァンジェリンの操り人形にされてしまったと説明してるカモに、内心イッセーは突っ込むが、ここからは一言も喋らない段取りなので黙ってる事にした。
「…………」
「漸く適応しましたか。
早速マスターに彼を連れ帰って報告を……」
「っ!? させません!!」
茶々丸もそれに乗って無言無表情を貫いてるイッセーの手を引いてその場から去ろうとする行動をすると、急に魔力が爆発的に高まったネギが魔法の詠唱をする。
「魔法の射手――連弾・光の11矢!!」
光が矢へと変わり、茶々丸目掛けて放たれる。
だがしかし……。
「…………………」
「なっ!?」
「あ、兄貴の魔法が……!?」
「か、片手で弾き飛ばされた……」
別に洗脳されてないイッセーが蚊でも追い払うかの様に手を振り、全て弾き飛ばした。
「……………………」
「そ、そんな……! イッセー先生が……」
「今の彼は先生ではありません。我がマスターの忠実なる僕です。
数日もすれば完全にマスターの与えた血が適応します。
そうなればいかなる手を尽くそうとも彼は元には戻らないでしょう」
「じゃ、じゃあエヴァンジェリンさんを……!?」
「倒すか気絶させれば、或いは解けるでしょう。
無理だと思いますが……」
妙にわかりやすい情報をどさくさ紛れに与える茶々丸は、下手な事が言えずに無言のイッセーの手を握ったまんまその場を立ち去ろうとする。
だがしかし……。
「これは一体……どういう事アルカ?」
「なにやらただ事ではない空気を感じて思わず出てきてしまったが……」
別の箇所で実は、イッセーが茶々丸に手を引かれてる……という、なんとも面倒な誤解をされそうな場面から見ていた楓と古菲が現れたのだ。
(げっ!? 古菲と長瀬だと!? し、しまった! 演技かますのに気を削ぎすぎて気づかなかった!)
(………………。今の私とイッセー様の状況を見て誤解をしている確率――75%)
ネギが魔法を放った事もそうだが、イッセーと茶々丸の今なってる状況を揃ってガン見している。
「古菲さんに長瀬さん、こ、これはですね……!」
「ちょ、ちょっとした遊びというか……」
アスナとネギも二人の登場は予想外だったようで、魔法関連の事もあってかあたふたしている。
しかし楓と古菲の視線は必死に無言と無表情を貫いているイッセーと茶々丸の繋がれてる手を凝視していた。
「何でイッセー君と絡繰さんが手を繋いでいるアル?」
「ずっと一緒に居る理由含めて是非聞きたいでござるなー?」
「………………………」
(え、そっち!? ネギ先生の魔法についてのツッコミ無し!?)
ネギの魔法行使についての質問ではなく、イッセーと茶々丸が今も流れで手を繋いだまんまである事が特に古菲はお気に召さないらしい。
答える訳にもいかない状況なので取り敢えず黙っているイッセーはとにかく必死に無表情を作り続ける。
「? 何故答えてくれぬのだ?」
「むむ……」
(チッ、こんな時に一番厄介な子達に見られるとは……。
おい茶々丸、取り敢えずなんかして誤魔化せ)
困ったイッセーは何気なく茶々丸に合図を送る。
すると茶々丸にその合図が届いたのか、無言で頷くと、そのままイッセーを横抱きに抱え始めた。
「……!」
「な、何してるアル!?」
「見ての通りです皆様、今のイッセー先生はアナタ方の知るイッセー先生ではございません。
我がマスターの僕である赤き龍帝でございます」
「赤き龍……?」
「し、僕!? だ、誰の!? マスターで誰アルか!?」
(バッキャロー!! 誰がそこまで言えなんて言った!?)
誤魔化す為とはいえ、かなり余計な事まで口走る茶々丸に、成人男性の身でお姫様抱っこされたまま動けないイッセーは茶々丸に心の中で怒鳴る。
「わ、わかったアル! エヴァンジェリンの事だな!? や、やっぱりそんな怪しい関係だったのカ!?」
「い、所謂主従プレイという奴か……。思っていた以上の難敵でござる……」
「そういう感じじゃないんだけど……まあ良いか。
それに近い状態に今イッセーは陥っているわ。アイツの両目を見てみなさい、明らかに催眠術的なものに掛かってるせいで虚でしょう?」
「むっ! 確かにイッセー君の目の色が赤いアルナ……」
「何かされたのか? そういえば首筋にここ最近なにかに噛まれた跡があったが……」
「あ、あのー……」
もっとも、この世界に二天龍の片割れの伝説だの、その龍を宿す使い手のネームバリューも無いに等しいので、ネギ達にはあまり伝わってないのが幸いだった。
どんどんと自己解釈していく二人にアスナも適当に乗って話を盛っていき、ネギの魔法についてを上手く誤魔化そうとしている中、茶々丸は口を開く。
「数日後には皆様とのこれまでの関係も綺麗さっぱり消えてなくなり、彼は私と我がマスターを守る従者となります」
「そんなの勝手アル! イッセーくんを返せ!」
「主とはエヴァンジェリンの事だと思うが……意思を無視するのはよくないでござる。
聞いたからには、彼の身柄はこちらで預かろう……」
(は、話がどんどん変な方向に飛んでいく……)
いっそここでネギを拉致ってしまおうかと考えるイッセーが軽く現実逃避に入る。
するといい加減茶々丸が一々イッセーに近いのが嫌だった古菲がビックリする速度で飛び掛かると、そのまま茶々丸の腕からイッセーの身柄を奪い取った。
「あ……」
データに無い程の素早さにちょっと面を食らってしまう茶々丸からイッセーを奪い返した古菲は、そのまま下手に動けずに固まっているイッセーの身体や顔をペタペタとさわる。
「イッセーくんしっかりするアル! ほら、私の事ちゃんと覚えるカ?」
「…………」
「…………む?」
本気で心配してるというのがよーくわかってしまう顔で声を掛けてくる古菲がペタペタ触り、やがて然り気無くイッセーの胸元に顔を埋めてスリスリし始める中、楓が何かに引っ掛かる様な顔になる。
「何時ものイッセーくんに戻って欲しいアル……。何時ものイッセーくんとこうしたいし。あ、でもこれはこれで結構良いけど……」
「待て古菲よ、案外今ならショックを与えてやれば戻るかもしれぬぞ。
例えば、先生の大好物の女の乳房を与えてやるとか」
(!)
「なるほど! それなら私のおっぱいをイッセーくんに……!」
「よし、ついでに拙者のも……」
「ば、バカじゃないのアンタ等!? やめなさい!」
しかし基本的アホの子なので、古いテレビみたいに叩けば直る的な理論で、イッセーの大好物を与えれば元に戻ると言い出したせいで、普通に外なのに胸元を露出しようとする古菲と楓に、アスナが止めに入り、ネギはあたふたし、カモは……イッセーにシンパシーをここで感じた。
「じゃあ服の上からでまずは試すアル! えいっ!」
「………………」
「ならば拙者は後ろから……」
「アホかおのれらは!?」
「くっ、ネギの兄貴……あの男が地味にムカつくけど、何故か同類の気がしますぜ……」
「いやあの……なんでこうなったんだろう」
元の世界で散々夢見ては相棒に『アホか』と飽きられたおっぱいサンドが何故かこの状況で今叶ってしまったイッセー。
しかし相手が中学生だったせいか、イッセーのテンションは寧ろ落ち気味だったし、暫く見ていた茶々丸がそんな二人を突き飛ばしながらイッセーを奪い返したのだ。
「言った筈です、今の先生は先生ではありませんと……。
もっとも、お二人の事は元々そういう対象とは見ていませんでしたが……」
「むっ! バカにするなアル! 少なくとも何時もの私が好きだって言ってくれたアル! この前の身体検査で胸も大きくなったからな!」
「ふっ、ちなみに拙者は三年後にはナンパの対象に入ると言われたが?」
(……………………………………。変な言い争いしてないでさっさと俺を拉致った感じでここから逃げろよ茶々丸…)
さっきから妙に言い返そうとする茶々丸にイッセーは心の中で突っ込む。
結局この後茶々丸に抱えられる形でネギ達の前から姿を消すのだが、想定外の人材が二名ネギ側についたせいで微妙に面倒な事になるのは言うまでもなかった。
「ぜ、絶対にイッセーくんを取り戻すアル……!」
「事情は敢えては聞かぬが協力しよう」
終わり
託された意思を抱えて生きる。
託された意思は力となって、イッセーを守る。
そしてイッセーに託した力の意思がイッセーの傍に居るに値すると判断した時……その者に宿るのかもしれない。
『気に入った、キミのその一誠への気持ちは確かに本物。
そして覚悟がある……だから俺が一誠に託した意思をキミに分け与えよう』
並び……共に歩む本当の覚悟をした者への、イッセーの親友達からの贈り物。
『受け取れ、そして引き継げ……。
先代所有者の名の下に新たな所有者よ。原初の神滅具を……!』
その一人目は……。
「イッセーくん。これ……」
「なっ!? 黄昏の聖槍……だと!? な、なんでお前が!?」
「信じて貰えないかもしれないけど、昨日曹操って名乗った幽霊みたいな男の人に貰ったアル」
「曹操……!? そいつは神牙とも名乗ってたのか!?」
「うん……。親友を頼むって……」
「アイツ……」
チャイナ娘に宿りしは原初の神滅具。
「それでなんだけど、ネギ坊主みたいに従者の契約をした方が良いと言ってたアル」
「俺は魔法使いじゃねーんだが」
「でも契約自体は可能だって言ってたアル。
そ、それで契約するにはえと……」
「…………。絶対嫌だ」
「な、なんでアルか!?」
「契約するのにオメーとアレするって……そんな真似したら俺は懲戒免職どころか捕まるわ!」
「ご、合意の上なら問題ないアル! だから……!」
「あぶねっ!? や、やめろ! つーか服を脱ぐ意味はねーだろ!」
「どうせするならもっと肌と肌をくっつけたいアル!」
先を歩く青年に追い付こうと頑張る少女の想い。
嘘
補足
無駄に猫に好かれる体質は変わらない。
変わらないがトラウマのせいで猫嫌いなのがまた皮肉。
その2
くーちゃんとニンニンさん割り込む。
そして何故か挟まれてしまうイッセー。
夢がある意味叶ったけど何故かもの悲しくなったとかなんとか……。
その3
いや嘘だからね。
もしクーちゃんに黄昏の聖槍なんか宿ったら――ともなれば残りの意思達もまた其々『信用できる』と思った者へ託すとかになるし、神器持ちチームになっちゃうヨ……