色々なIF集   作:超人類DX

549 / 1034
コンセプト、タイミングの悪さ


超没もの

 目には目を歯には歯を。

 

 神には悪魔を。

 

 

 理不尽には理不尽を。

 

 

 力を求め続け、その全てに抗い続け、戦い続けた者がいる。

 

 その理由は至極単純でたったひとつ――『生きる為』。

 

 

 ただ普通に生きる事すらをも許されなかったからこそ……そして出会って共に生きてきたからこそ抱いた小さく、そして大それた夢。

 

 当たり前だけど、その当たり前すら許されぬ世界で誓い合った小さな望み……その為だけに彼等は数多の困難に抗い続け、力を増し続け、暗闇の荒野に進むべき道を切り開いて来た。

 

 それが世にとって喩え『悪』と断ぜられるものであろうとも、彼等は生きる為の『覚悟』をしながら、ひたすら前へと進み続け、その結果――確かに彼等は本物の自由を手に入れた。

 

 誰に陥れられる事もなく、誰に妬まれる事もなく、誰に命を狙われる事もなく静かに生きる事のできる自由が……。

 この世の理そのものを超越し、捩じ伏せる領域へと進む事で……。

 

 その後の彼等がどうなったのか、それはもう誰にもわからない。

 

 生きているのか、それとも死んでしまったのか。

 

 それすら誰もわからない。

 

 何故なら彼等は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間(トキ)はきっと、あまりにも寂しすぎたせいで自暴自棄になっていたのかもしれない。

 

 あまりにも友達が出来なさすぎて、物言わぬただの観賞用植物たるサボテンに名前までつけてエア会話をしたり、あまりにも友達が出来なさすぎてネガティブ思考がデフォルト化したり、あまりにも友達が出来なさすぎて遂に――

 

 

「これで間違いない……はずだよね?」

 

 

 偶々読んだ本に書いてあった悪魔召喚の儀式を利用し、呼び出した悪魔に友達になって貰おうと本当に実行してしまったり。

 

 つまるところ、この少女は友人という繋がりに餓え、非常に求めているが、それが無いまま今日までを迎えてしまったが故に、自棄っぱちになってしまったのだ。

 

 

(お願い……! お友だちになってくれそうな優しい悪魔さんであるように……!)

 

 

 悪魔に優しさを求めてる時点で既に色々と破綻してる計画なことにも気づいてないレベルで自棄になってしまっていた少女は、儀式によって今まさに召喚されるだろう悪魔が理想の友人になれることを願っていた。

 

 普通なら正気を疑うが、それほどに少女は友達を欲していたのである。

 

 そして儀式によって描いた魔方陣に現れたのは……。

 

 

「……。まだ理想のラーメンからは程遠いな」

 

「……………」

 

 

 ズルズルと器片手にラーメンを食してブツブツ言ってる銀髪の青年。

 見た目は人となんら変わらぬ姿をした男性でろう悪魔を前に、当初儀式の成功と見た目は話とかが通じそうな感じがすると内心喜ぶ少女だが、ラーメンばっか食べてて全く周囲の状況を気にしてない……こう、図太さというべき神経を前に声をどうかけるべきか――ネガティブで引っ込み思案でもある少女にとってはいきなりの最高難易度であった為にただ困った。

 

 

「麺も茹ですぎたせいか、コシが弱いし……。

やはりこの世界の材料で一から作るのは至難の技か」

 

「……………」

 

「しかし俺は諦めんぞ。

必ず元の世界で食べた時と同じ味のラーメンを完成させる……!」

 

「……………」

 

 

 と、スープまで飲み干しながら、一人で変な決意を固める銀髪の青年に声が掛けられず、暫く立ち尽くす少女。

 するとラーメンを食べ終えたせいか、漸く自分が居る場所の違いに気付いたと思われる青年が……はて? と首を傾げながら辺りを見渡し……。

 

 

「ん?」

 

「あ……」

 

 

 青年の蒼い眼と少女の紅い眼が交差する。

 

 

「なんだキミは?」

 

「あ、えっと……儀式で呼び出した者、です」

 

「儀式だと? ………………ああ―――あぁ? 俺を呼び出しただと? キミが?」

 

「は、はい……あのその……ごめんなさい……」

 

 

 ラーメン大好き小○さんならぬ……。

 

 

『お前が自分で作ったラーメンにブツクサ言ってる間ちは既にその小娘に呼び出されていた様だぞ』

 

「そうではなく、俺を呼び出せる訳が無いだろう。

ここの世界の悪魔と俺は別物なんだから」

 

『それは知らんし、現に呼び出されてるだろ。何の用があるのかは知らんが、呼び出した理由くらいは聞いてみたらどうだヴァーリ?』

 

「む……」

 

 

 ラーメン大好きヴァーリというハーフ悪魔と少女の出会いは多分ここから始まったのである。

 

 そしてこの日より、少女の道は結構横道へと逸れながら半年の時が流れていく……。

 

 

 

 

 

 半年後。

 友達欲しさが高じて悪魔召喚の儀式をやらかしてしまった少女はといえば、故郷の村を出て大きめの街へと移っていた。

 

 召喚した青年が人々に隠れて住んでいる場所という事なので、律儀にも半年の間少女をそれからも訪ねてくれたので、少女的にはすっかりその青年ことヴァーリに懐いてしまったのもあって当然のごとく付いてきた。

 

 どうやら街の隅っこにある、大きくもないが決して小さくもない民家に住んでいて、そこにはヴァーリにとっての親友が二人ほど住んでいるらしい。

 

 紹介すると言われて付いていった当初はかなり緊張したが、ヴァーリの親友二人はそんな少女を普通に手厚く迎えてくれた。

 

 

「最近ヴァーリがふらふら~って一人でどっか行く事が多くなったと思ったらそういう事だったのね」

 

「ラーメンの具材探しに没頭しすぎてたのかと思ってただけにちょっとビックリ」

 

 

 綺麗な赤い髪を持つ、美女と深い茶髪の青年。

 歳はヴァーリと変わらぬだろう二人の男女はヴァーリが人を連れてくる事自体に驚いていた様子を最初は見せながらも優しげに少女を迎え入れてくれた。

 

 特に赤髪の美女こと――リアスとは同性というのもあって(純・悪魔だが)、少女とも早い段階で仲良くなり、そのリアスと凄まじく仲良しである茶髪の青年ことイッセーもまた同じく少女に優しかった。

 

 

(悪魔とか、もうそんなのどうでも良いや……)

 

 

 下手したらそこら辺の人間よりも普通に優しくしてくれるものだから、少女は最早この者達が悪魔であろうが関係なくなっている。

 聞けば悪魔だけど、この世界に蔓延る魔王の軍勢とは全くの無関係で、ただ静かにその日を生きてるだけで悪さはしていないらしい。

 

 ならその時点でそんな隔たりに拘る理由なんて無いのではなかろうか―――と、少女は思ってしまっていた。

 

 

「冒険者? 俺ははともかくとして、ヴァーリとリアスちゃんはは登録の時点で弾かれるんじゃないのか?」

 

「そうかもしれないが、ゆんゆんがああいう感じで同じ仕事をして、終わった後に皆で飯を食べてみたいと言ってるんだ」

 

「あの……ご迷惑になるのはわかってますので、そんな本気に考えなくても大丈夫です。

今の時点で充分私は幸せですし……」

 

「ふむ……」

 

 

 自己主張をあまりしない少女――ゆんゆんという変わった名の少女の遠慮しがちな声を聞いたイッセーとリアスは……。

 

 

「…………。俺はストレートに登録できたのは良いとしても、まさかヴァーリもリアスちゃんも登録できちゃうとはなぁ」

 

「変な小細工もしないままだったのにな」

 

「やっぱりどこか緩いわこの世界」

 

「や、やった……! 皆さんとクエストがこれでできる……!」

 

 

 物は試しにと一度も近寄った事すら無かったギルドの門を叩いて登録作業をしてみた所、悪魔である筈のヴァーリとリアスですら普通に登録が出来てしまった。

 

 そのあまりの簡単さに思わず肩透かしを食らいながらも、出来た事はそれはそれで良かった事なので、そのまま四人でパーティを組む事にする。

 

 その登録の最中、金があるとか無いとかで喧嘩をしている男女が居たが、四人ともスルーした。

 

 

「え、この獣二匹を捕まえるだけでこんなに金が貰えるのか? イッセー、リアス、ゆんゆん、これをやってみないか?」

 

「セオリー無視かお前は。

いきなりこんな高めのクエストしたら目立つだろが」

 

「まずは簡単なものからやって、徐々に難易度を上げていく方が良いわ。

ゆんゆんもその方が良いでしょう?」

 

「はい。

ヴァーリさんもその方が楽しい筈ですし」

 

 

 始まる冒険者生活。

 全く手出ししなかった事をゆんゆんと知り合うことで可能にした三人は、ある意味で新鮮な毎日を送ることが出来て、割りと楽しめたし、ゆんゆんも夢見ていた生活を手に入れられて毎日が楽しかった。

 

 その過程で、イッセーとリアスがそんな関係なんだと察したり、他のパーティの年上の女性にしょっちゅうヴァーリが誘われてムッとなったりという事もあったりしながら過ごしていく内に、ゆんゆんにとっては壁となっていた、同郷の者と偶然再会する。

 

 

「あれ、ゆんゆん……?」

 

「! め、めぐみん……」

 

 

 学校で何度も煮え湯を飲まされてきた者。

 常に己の一歩先に居た者。

 

 三人との生活によって、抱いていたコンプレックスを忘れていたゆんゆんも、思わぬ再会に言葉が出なかったり。

 

 

「「「「……………」」」」

 

「めっちゃ見てる。めっちゃこっちの頼んだ飯をガン見してる」

 

「聞けば、高い報酬のクエストを成功させたらしいけど、用意した高額アイテムのせいで赤字だったらしいわ」

 

「借金までしてるらしいぞ」

 

 

 互いのパーティの資金力が天地の差で軽く妬まれたり。

 

 

「先日、この街の近くに越して来た者なのだが、小娘、貴様は人様の家を壊してはならないと親に教育されなかったのか?」

 

 

 爆裂魔法信仰者のめぐみんが、やらかしたせいで現れたのが魔王軍の幹部ではなくて……。

 

 

「俺はガキのやった事だからと、笑って見逃してやるほど気が長く無いぞ……?」

 

「う……」

 

「こ、コイツ、顔も悪人だが確実にやべぇぞ……!」

 

「魔王軍……ではなく堕天使ですって!?」

 

 

 悪人顔の堕天使の男だったり。

 流石に今までに無いシリアスな威圧を前にめぐみんも怯えるし、魔王軍の幹部よりもヤバイオーラを前に始まりの街の冒険者達もビビるが……。

 

 

「説得するだけと言った癖に、怯えさせてどうするんですかアナタは……」

 

 

 その直後降臨した金髪の美女により、冒険者達(男)は一瞬でミーハーの如く騒ぎ散らしたり……。

 

 

「帰りますよコカビエル――あ、それともこの街を見て回りましょう。デートをしましょう!」

 

「余計にひっついて歩きにくいから嫌なんだが……。う……わ、わかったからそんな顔するなガブリエル」

 

「♪ では行きましょう、うふふ♪」

 

『………』

 

 

 でも直後にその美女が悪人顔の男に甘えた様子でひっついて共に街に入っていくせいで、一瞬で絶望になったり。

 

 

「なぁなぁ、昨日街の外で悪人顔の男と金髪の美女が居たって話を聞いたんだけど……」

 

「まさか……」

 

「コカビエルとガブリエル――では無いだろ流石に」

 

「そういえばめぐみんが今朝がた半べそかきながら仲間の人達に話をしてるのを通りがけに聞きましたよ? なんでもその怖い顔した男の人の圧力が凄まじかったとか……。

でもその後来た金髪の女の人が止めたとか……」

 

「「「………」」」

 

 

 二人が現れた日に限って別の街に出向いててタイミングの悪い三人だったりと……。

 

 抗いし者達は果たして再び集まるのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪人顔の男とか間違いなくコカビエルだろ。で、側に居たのがガブリエルだな。

アイツ等とヴァーリ、リアス、イッセーが居るのは運が良かった。

後はサーゼクスとミリキャスだけか」

 

「もし全員集まれたらどうするの……?」

 

「んー? そりゃどこかに隠れ住むか元の世界に戻るかだな」

 

「……………」

 

「? なんだよその顔? うだつの上がらないアイテム屋の商品を一般受けするように改造して売り上げを上げてやったんだぞ? まだ不満があんのかよ?」

 

「そういう不満じゃなくて……」

 

「ああ、お前を人間に戻す方法を探すって話のことか? 一応忘れてはいねーから安心しろ。

呪いの類ってのはわかったから、それを解除する方法を探すだけだからな」

 

「…………。それも最近別にいいと思ってるというか……」

 

「手っ取り早いのは安心院なじみに土下座して頼むだが、あの女は多分サーゼクスの近くに居るからなぁ」

 

「…………」

 

 

 手先が器用なチャラそうに見えてその実、繋がりを最も大切にする堕天使男が、寂れたアイテム屋の主人に食わせて貰いつつ、アイテム魔改造で売り上げに貢献していたりとか。

 

 彼等と彼等を取り巻く明日はどこへ―――

 

 

 

終わり。




補足

見事にタイミングがずれて中々再会ができない。

イッセー・リアス・ヴァーリ

 密かに生きてたが、友達欲しさに拗らせた少女がマジで悪魔召喚をしてしまい、呼び出されたヴァーリによって徐々に外へと動く。


ガブリー&コカビー

無所属。
ガブリーが見知らぬ世界で余計にコカビーにひっついてそれなりに楽しそう。


アザゼル
寂れたアイテム屋の売り上げに貢献中であり、コカビー達とイッセー達の存在にも気付いてる。

とはいえ、アイテム屋の主人さんのヒモ生活中。


サーゼクス&ミリキャス。

どこかできっと生きている。

グレイフィアについて未だに引き摺ってるとかいないとか。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。