色々なIF集   作:超人類DX

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タイトルにさっぱり意味はない。

某山○VSモ○マンを見たせいで浮かんだだけなのだ。


炎のファイナルドリーム続き

 力が無ければ抗う事もできない。

 

 力が無いから奪い取られる。

 

 

 だから、力が無い自分には、それ以外の価値なんてありはしない。

 

 力があるからこそ今の自分がいる。

 

 それは世の真理だ。

 

 

 力だけではなく、愛だ絆が大切なんだと尤もらしい台詞をほざく間抜けだって、力があるからこそそんな戯言を垂れ流せるのであって、力が無い奴がいくら喚き散らした所で、誰も見向きなんてしやしない。

 

 だから俺は力を求める。そんな綺麗事をほざく奴を否定してやる。

 

 二度と奪われ無いために。

 誰かの指図を捻り潰してやるために。

 誰かに見て貰いたいではなく……ただ、誰にも文句を言わせない為に。

 

 

 そうで無ければ、俺みたいな捩れた人間なんて、この世に適応する事なんて出来やしないんだ。

 

 ババァも、サーゼクスも――アイツ等も、力の無い俺に価値なんかあるとは思ってないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 彩南高校において、超が付くレベルの問題児が少なくとも古手川唯目線では三人程存在した。

 

 一人はララ。

 これは男子に大人気で持て囃されてる女子――は、唯にとって問題ではない。

 問題なのは何故か時おり校舎内で全裸になって騒ぎを起こすのだ。

 そしてそのララの傍には決まって結城リトが居り、彼もまた唯の中でのブラックリスト入りを果たしている。

 

 とどのつまり、この二人は破廉恥であるのだ。

 

 そういった手合いがかなり嫌いな唯にとっては許せるものではなく、二年へと進級し、同じクラスとなったからには絶対に取り締まるべき二人なのである。

 

 ………まあ、クラス委員の座もララの友人の一人である西連寺春菜に投票差で敗北して奪われ、リトとララ――と、それに関わる連中達の破廉恥行為についても上手く取り締まれず今日に至るのだが。

 

 

「……………………」

 

「もー! なんかこう、トークで女子を楽しませようって気は無いの日之影はー?」

 

「……………………………………………………………………」

 

「だーめだこりゃ……」

 

 

 そしてもう一人。

 ある意味リトやララ以上に危険という意味での問題児は、クラスメートと基本的にまったく喋らない男子こと日之影一誠なる者。

 

 留年を二回経験し、その理由が鑑別所に長いこと入れられていた――――という、唯にとってはド級の問題児。

 年齢的には三年生である筈の彼は、そんな訳で一年生としてこの彩南高校に転校してきた訳で、去年は聞いてる限り――というか、正義感の強さで実はひっそりと監視していた限りでは問題行動は見られなかった。

 

 しかしそれでも、問題行動……主に暴力事件を起こさないという保証は無いし、唯にしてみれば常に無口で、無表情で、何を考えてるのかわからない不気味さを持つ一誠はそれだけでも警戒すべき相手であったので、今年同じクラスとなったからには、リトやララ以上に徹底的な取り締まりを心に決め、一応宣言もした。

 

 ………完璧にスルーされたけど。

 

 

「やっぱり話すのは苦手なんですか?」

 

「頭の中が真っ白になって、気持ち悪くなって、何を言って良いのかわからなくなるだけさ……」

 

「それって完全に重症っすよ……。

うーん、美柑となら普通に話せるのに不思議っすね……」

 

「あの子は……あれ、そういやなんで俺はあの子と普通に話せんだ?」

 

「急に思い出したみたいな顔されても、俺にわかる訳ないでしょ……」

 

 

 

 その時はかなり腹も立てたし、やはり徹底的に取り締まってやると心に誓った。

 しかしながら唯は現在、確かに一誠に目を光らせてはいる。

 

 だがその意味が少し変化していた。

 

 

(さっき女子に絡まれてた時は顔色がかなり悪かったけど……結城君と話をしている今は顔色も戻っているみたいね……。

よかった―――じゃなくて! 問題行動が無くて良かったわ!)

 

 

 新学期が始まった当初、具合が悪いと保健室へと一誠が行ってしまった。

 その時は不良にありがちな授業のサボりなのではと思った。

 しかし教室を出る直前、口を押さえて軽く咳き込んだ一誠の手を見てしまった唯は息を飲んだ。

 

 そう、掌に真っ赤な血で染まっており、それは一誠が吐血をしたという事だった。

 まさか本当に具合が? いや、もっと重度の病気なのではと、取り締まるとか以前に普通に根は優しい子である唯は確認の為に保健室を訪ねてみた。

 

 その時は何故か保険医に抱き寄せられていて、びっくりする程一誠がテンパり、見てしまった唯もテンパってしまって隠れるのを怠ってしまい、保健室から逃げる様に出てきた一誠と鉢合わせしてしまった。

 

 その時の一誠の顔は、普段の石像みたいな能面顔が嘘みたいに、自分を見て露骨に嫌そうな顔をしていたけど、唯はとにもかくにも吐血の事を訪ねた。

 

『…………………。さっきと今の俺についてを誰にも喋るな。

キミが言ってた様な『真面目』な学生生活とやらを俺に送らせたければなァ……!』

 

 

 けれど一誠は教えないどころか、吐血の事についてを誰にも言うなと、腹を空かせた獣のような形相で脅しつけてきた。

 それに怯えた訳ではなかったのだが、現在になるまで唯は確かに他の誰にも言ってはいない。

 

 病気の事を誰かに知られたくないという気持ちは解らなくもなかったのもある。

 

 

「……………」

 

 

 だがしかし、自分は知ってしまった。

 

 結城リトやララ……一誠と会話の成立がある程度可能な者達が知っているのか――様子から見ても恐らくは知らないのだろうけど、自分は知ってしまった。

 

 

「あの、イッセーさん……。

古手川が凄く見てますけど」

 

「俺は何にもしてない。

気のせいだろ……」

 

「いや、完全に見てますよアレ……」

 

「じゃあ放っておいてやれ。何しでかすかわからん不審者にでも目を光らせたいんだろう」

 

 

 ひょっとしたら、イッセーが鑑別所に入る程に道を外してしまったのは、自分の病気が理由で自棄になってしまったからなのではないのか。

 だとしたら、外れた道を正してやるべきなのではないのか……。

 生真面目な唯は最近そんな事を考えながら一誠をガン見するのだ。

 本人はかなり迷惑がってたりするのだが。

 

 

 

 

 

 

 古手川唯に目を完全に付けられてしまったまま時は過ぎていく。

 はっきり言って一誠にしてみたら全力に鬱陶しいだけでしか無いのだけど、やはりストレスで吐血した現場を見られてしまったのが痛すぎた。

 

 アレコレと口うるさく言ってくるに加えて一々心配までしてくるのだ。

 一誠にしたら赤の他人が他人の心配を何故するのかが理解できないし、一過性のものだからとっくに治ってるといくら説明しても信じてもくれない。

 

 説明するのに必死だったせいか、唯相手にテンパる事が無くなって軽い会話程度なら成立できてしまったのは、かなりの皮肉だ。

 

 

「…………………………」

 

「あの、すいません。こんな事に巻き込んじゃって……」

 

「ああ、まったくだな」

 

 

 とにかく古手川唯という生命体がワケわかんなくて苦手になったそんな一誠はといえば、そろそろ陽が暮れる時間帯にも関わらず、珍しくまだ学校に残っており、横で申し訳なさそうにペコペコと謝るリトに、痛烈な皮肉を返しながら不機嫌そうに鼻を鳴らしていた。

 

 

「幽霊さんいますかー?」

 

「き、聞いた所で出てこないよララさん。

で、出てきて貰っても困るけど……!」

 

 

 前を歩く女子達――つまり、ララやら西蓮寺春菜やらその友人二人やらの後ろをいかにも嫌々といった感じで歩く一誠と終始低姿勢なリト達は現在学校の旧校舎に居る。

 

 何故居るのかは、この旧校舎に幽霊が出没するとかしないとかの噂が理由で、それを確かめようと言い出したララによって結成されたからであり、この前宇宙最強のララの父と真正面からタイマンを張って見せた一誠を連れていけば、仮に幽霊が出てもなんとかなるかもしれない――――と、リトに拝み倒されて仕方なく嫌々付き合っていた。

 

 

「きゃー!」

 

「ど、どうした西蓮寺!?」

 

 

 幽霊の類いがかなり苦手な春菜が、足元を駆け抜けたネズミに悲鳴をあげ、春菜に想いを寄せるリトが心配半分と良いとこ見せたい的な思惑半々で駆け寄るのを、実に冷めた目をしながら見ている一誠。

 

 

「ネズミが走っただけだってー」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

 リサだったかミオだったかの友人に支えられてなんとか立つ春菜の顔色は、コミュ障ストレス状態の一誠と同じくらいに青いが、別に一誠は春菜と話なんて碌にしたこともないし、正味どうでもいい人間の一人なので、心配なんてしてなかった。

 

 

(ヴェネラナのババァと医者女の晩飯はどうするか……)

 

 

 それどころか、ヴェネラナと涼子に出す夕飯のメニューの方を真剣に考えており、幽霊云々は最初から意識の外である。

 

 

「…………」

 

「ちょ、ちょっと待っていっちー! 春菜がまだ腰が抜けてて……」

 

 

 心底面白味の欠片も無い男となってる一誠は、さっさと見て何も無いと証明させて帰りたいので、一人スタスタと旧校舎の中へと進んでいこうとするのを、まるでセラフォルーみたいに変な愛称で呼んでくるミオが春菜が立てないからと呼び止める。

 

 すると一誠は一度立ち止まり、腰が抜けてフラフラな春菜とオロオロしているリトを一瞥しながら……。

 

 

「だったら結城君にでもおぶさって貰え」

 

「「えっ!?」」

 

 

 一応――というか、他人に興味も関心も恋愛事にも興味ゼロな一誠ですら、リトと春菜の微妙な関係を察していたらしく、別にそんなつもりでも無いけどフォローしてみた。

 その瞬間、わかりやすいくらいにリトと春菜が声を揃えて驚いてしまってる。

 

 

「結城に春菜を任せるのはちょっと頼りなさすぎるっしょ?」

 

「じゃあ知らん。

幽霊は居なかったとさっさとキミ等に納得して貰って、俺は早く帰りたいんだ。

夕飯の準備もあるんでね」

 

「ホントつまんない奴ねー……」

 

 

 結局春菜が自力でなんとか歩ける様になった事で、おんぶイベントはスルーされた。

 去年からやはりつまらなさい冷めた態度が変わらない一誠がリサに呆れられてしまったりしたがんなものは一誠も『それこそ知るか』と返そうとしたその時だった。

 

 

「…………」

 

「え、どしたのいっちー?」

 

 

 突然一誠の目付きが鋭くなり、真っ暗な旧校舎の廊下の奥を睨み付け、小さく呟く。

 

 

「なにかがこっちに来る」

 

「へ?」

 

「えーっと、私がつまんない奴って言ったからそんな事言ってるの?」

 

「……………」

 

 

 リサが微妙に気まずそうな顔をしてるのを無視し、廊下の奥をみつめながら恐怖でドキドキしてるリトや春菜の足元に転がっていた石ころを拾った一誠は、軽く廊下の奥に向かって投げつけてみる。

 

 本人はかなり軽く投げたつもりなのだが、リト達からしたらその石ころは弾丸のような速度と勢いに見え――

 

 

「これは、一体なんのつもりですか?」

 

 

 奥から真っ黒な衣装を纏った金髪の少女が姿を現した。

 一誠の投げた石ころを手の形に変化した髪でキャッチしながら。

 

 

「え、誰?」

 

「幽霊……じゃないよね?」

 

 

 リサとミオが現れた少女に首を傾げると、ララとリトが驚いた顔でその者の名(?)を呼ぶ。

 

 

「ヤミちゃん!」

 

「な、なんでここに……!?」

 

 

 どうやらララやリトの知り合いらしい。

 つまり幽霊ではないと、リサやミオ……それから春菜はホッとすると、ヤミちゃんとララに呼ばれた少女は髪でキャッチしていた石をそこら辺に放ると、真っ直ぐと一誠と、少し見上げる形で向かい合う。

 

 

「この前振りですね日之影一誠。

何故貴方がここに?」

 

「……………」

 

「え、いっちーも知り合い?」

 

「……? いっちー?」

 

 

 未央が口にした一誠に勝手に付けて呼んでる愛称にちょっと不思議そうな顔をするヤミなる少女。

 どうやら顔見知りという感じ――――

 

 

「え、なにさいっちー? へ? 耳を貸して欲しい? うんうん―――――――え゛!? そ、それホントなの!? というかそれをこの子に言うの!?」

 

「……………」

 

「わ、わかったよ。でもどうなっても知らないからね? …………ん、こほん、えっとそこの子、いっちーがさ……」

 

「? なんですか?」

 

「お、怒らないで欲しいし、これはあくまでいっちーが言ってくれって言ってただけだからね?

あのね……いっちーが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――『いや、気安く名前呼んでるんだけど、そもそも誰だお前は?』………だ、だってさ」

 

「……………………………………は?」

 

 

 でも無かったらしく、一誠達の居る空間はその瞬間、幽霊なんて居ないのにとても凍った空気になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金色の闇と呼ばれる宇宙の殺し屋。

 それが少女の正体なのだが、ヤミと呼ばれる少女は軽く凹まされていた。

 

 

「し、知らないって……。忘れてるって……」

 

「い、いやほら、あの時はイッセーさんも通りかかっただけだったし……」

 

「今ので覚えて貰えたんだから元気だして? ね?」

 

「な、慰めなんていりません!! こ、この私がなんて屈辱を……!」

 

 

 元々彼女は結城リトの抹殺の為に地球に来た。

 結果は、リトが今も無事で居るという意味ではお察しの通り失敗しているのだけど、そもそもその失敗の理由がたまたまリトを抹殺しようとする現場を通りかかっただけの一誠にあった。

 

 それはもう……一瞬でものの見事にズタボロにのされた。

 びっくりするくらい手も足も能力も出せずに叩きのめされた。

 

 後にその男こそが宇宙の王であるギドと真正面からぶつかって生還した地球人であったと知り、リト抹殺の為には彼もなんとかしなければとターゲットに入れていたのに……。

 

 

「あんな可愛い子の事すら記憶にないなんて……アンタどんだけ枯れてんのよ?」

 

「すっごい睨んできてるんだけど……」

 

「知った事か。

一山いくらの小娘なんぞ覚えたところで、一体なんにたるんだよ」

 

 

 一誠はヤミをまったく覚えてなかったどころか、一山いくらの小娘呼ばわりだ。

 宇宙の殺し屋に向かって小娘扱いできる地球人なんてまず居ないし、リトはそんな一誠の強気過ぎる発言に若干の憧れされ感じる訳で……。

 

 

「えぇ? あの子レベルで一山いくら呼ばわりって事は、いっちーにとって私なんかただのそこら辺に落ちてる消しカスみたいな感じなの?」

 

「それはそれで逆に腹立つわね……」

 

 

 本人は全否定してるが、極度のマザコンであるが故なのか、それとも全部の女性をヴェネラナ基準で考えてしまってるからなのか。

 後者であるならまずヴェネラナ程の美女は居ないので、絶望にも程があるのだが……。

 

 

「………………………………」

 

「え、な、なに?」

 

 

 なんとなく聞いてみた未央に、何を思ったのか、突然足を止めた一誠がじーっと彼女を真っ直ぐ見つめ始めた。

 

 

「………………………………………………」

 

「え、えぇ……? きゅ、急にどうしたのよいっちー? らしくないというか……」

 

「…………………………………」

 

「だ、段々と顔が近い……といいますか……」

 

 

 流石にびっくりしてしまう未央だが、一誠はただただ暫くじーっと未央を見続ける。

 

 

「と、突拍子が無さすぎるでしょ日之影って……」

 

「わ、わわ……か、顔がお互いあんな近くに……!」

 

「ちょ、ちょっとイッセーさん……! や、やばいっす! なんかわかんないけどやばいっすから!」

 

「そういえばミオとは平気で話せるよねイッセーって?」

 

 

 確かにララの言う通り、いつの間にか未央とは何故か普通に会話ができてる一誠。

 それが何時からなのかは考えてみれば誰もわからないし、去年からであるのは間違いないのだが……。

 

 

「……………。セラフォルーとソーナを足して割ったみたいな感じだな。こうして見ると……」

 

「え? だ、だれ?」

 

「……。なんでもない。

ああ、そこの――あー……まあ良いか名前なんかどーでも。

そこの金髪の奴と比べて自分の事を卑下してたみたいだけど、俺の勝手な感想を言わせて貰うなら、キミの方が勝ってるぞ」

 

「うぇっ!?」

 

「言いたかったのはそれだけ。

つーか早く幽霊とやがどうなってんのか調べよーぜ」

 

 

 何気にヤミが軽くディスられつつ、未央に恥ずかしげも無くあっさり言い切った一誠は、呆然とする未央やリト達を置いてさっさと歩きだす。

 

 

「う、うわぁ……。

逆にあんな台詞も平気で言える訳だ……って未央?」

 

「! あ、う、うん……あはは! 変な不意打ちをいっちーに貰っちゃったかな?」

 

「確かにかなりの不意打ちだったわ」

 

「でも、セラフォルーとソーナって誰の事なんだろ……」

 

「? 今なにか言った?」

 

「あ、な、なにも? あははは、早く行かないといっちーに先越されちゃうよ皆?」

 

 

 それに続く様に慌てて未央が小走りになる。

 しかし、このやり取りのせいか、未央は一誠が自分を見て小さく口に出したセラフォルーとソーナなる名前の存在についてが気になって仕方なくなったのだという。

 

 ちなみに、幽霊の噂はリストラされた複数の宇宙人が旧校舎に住み着いたからというのが真相で、その宇宙人達はさも偶然来ただけてきな顔して現れた涼子によって無事再就職先を斡旋して貰ったのだとか。

 

 

「一人マジの幽霊が居たみたいだが」

 

「ああ、その幽霊の子はウチで警備員やって貰う事にしたわ」

 

「あ、そ……はぁ」

 

「まさか金色の闇の事を一切記憶してなかったとはね……」

 

「どうでも良いからな」

 

「あと、沢田さんに変な真似をした事について、ヴェネラナさんとちゃんとお話しましょうね?」

 

「してねーよ! 余計な事をババァに言うんじゃねぇ!!」

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 もしかしたら……。

 

 

 肉体がオリジナルであるが故に、既に十全のパワーを引き出せる執事にとって、宇宙の王は確かに血沸き肉踊る戦いが行える相手である。

 

 向こうもそれを感じているのか、最初のコンタクトからどうにも襲来してくる頻度が高くなっていた。

 

 

「このパワー認めてやる! 俺が戦ってきた者の中で、お前の右に出るものは一人として居ないと!

この俺様が、お前を『最強』と呼んでやる!!」

 

「……。悪いが、俺は更に『上』を知ってる。

最強になるのはそいつを越えてからだ!!」

 

 

 更に進化し続ける執事。

 

 

「わ、私のチャームが一切通用しない!?」

 

「………………………」

 

 

 王の嫁の魅力が通用しない枯れ執事。

 

 

「母がとんだご無礼を……」

 

「それはお互い様だろ。

まさかうちのババァと喧嘩になるとはな……」

 

「原因は私のお母様になりますから……。

それにしてもイッセーさんのお母様はお強いですね。

まさか地球人がこれほどに……」

 

「ババァは途中から進化し始めたタイプなもんでね。

ある意味で最強だよありゃあ……」

 

 

 どこかの世界線では完全に相容れない者だった末っ子と微妙ながらのやり取りができてしまったり。

 原因はお互いのママンにあったのがまた皮肉だ。

 

 

「これがヴェネラナさんの娘さんのリアス・グレモリーさんですか……。

むむ、そしてこちらがソーナ・シトリーさん、セラフォルー・シトリーさんもそうですが、皆さん目が覚める程の美女揃いですね……。

なるほど、これでは確かにイッセーさんが他の女性に興味を持たない訳ですよ」

 

「ヴェネラナさんから写真を見せられた時は勝てないって思っちゃったけど……大丈夫なの?」

 

「幸運なのは、イッセーさんは彼女達に対して一定の情はお持ちですが、誰とも恋愛関係に発展してはいないという点です。

それはつまり我等にも勝ちの芽があるという事ですからね!」

 

「大丈夫かなぁ……。

相当の戦力だよ? 向こうも」

 

「ま、待ちなさい! 私をこっちにカウントされても困るわ! 第一別に日之影くんにはそんな事  」

 

「はいはいはい、そういうのはもう良いですし、じゃあお聞きしますけど、このままイッセーさんが向こうの世界に帰ってしまって二度と会えなくなったどう思います?」

 

「そ、それは……」

 

「嫌でしょ? リトさんはああいう方なんで簡単ですが、イッセーさんの場合はまず意識させる事から始めないとならない超難敵です。

下手な色仕掛けも通じません……というか、大分向こうの方々はそれで失敗されてる様ですからね」

 

 

 イッセーとヴェネラナの背景を知り、戻った場合は二度と会えなくなる。

 故にリトとは別に末っ子が同志達を集めて作戦を練る。

 

 

「意外と本心で語ると弱い所があります。

御門先生は一度揺らがせられましたしね」

 

「テンパってから逃げちゃったけどね」

 

「だからこそです。

私も下手な小細工無しで言ってみたら面食らった顔をしてから逃げましたから」

 

「え!? な、なんでモモさんが!? リトが好きじゃないの!?」

 

「それは勿論リトさんも大切なお方になりましたよ? なによりお優しいお方なので。

でも私ってやっぱりどこかひねくれてるせいか、リトさんの優しさが眩しいといいますか……。

イッセーさんの不器用さが良いなーといいますか……あ、あの人って怖がらずに接してみるとホント然り気無く優しいじゃないですか? この前もお互いの母についての反省会をしようとしたら、気分転換になるからって色々な所に連れていってくれましたし…………あはは」

 

 

 その内、末っ子の方がその然り気無さに嵌まってしまい……。

 

 

「お待ちなさい日之影さん! 何故私から逃げるのですか!」

 

「お前みたいなタイプが誇張無しで苦手なんだよ!! やめろ! こっち来んな!」

 

 

 お嬢様に追いかけ回される執事だったり。

 

 

「く、クソが、だから金髪を巻いてる女は嫌いなんだ……」

 

「確かイッセーさんの世界に居るレイヴェル・フェニックスとか、八坂とか九重という人外さん達が理由でしたね?」

 

「そこまで話したか俺は? ………まあ良いや、そうだよ。

あの金髪共に何度追い回されたか……お陰で拒否反応ばっかだぜ。いや、アレが悪いとは言わないが奴等を足して割った様な感じだから三人に追い回されてる気がして……」

 

 

 何気に溜めてるストレスを吐き出すという意味で涼子に続いてモモに打ち明けてる執事だったり。

 

 

「誰かと深い仲になれば、諦めると思いますが……」

 

「どうだかな。

どちらにせよそんな相手もいねぇ……」

 

「た……例えばですよ? 私がここで手を挙げて立候補したらどうします?」

 

「……。そこまで気を使わなくて良い、キミは世話になってる人の一人だからな」

 

「本音なのに……」

 

「やめとけ、俺にそんな事を思うだけ損をするだけだ」

 

「むー……」

 

 

 揺らぎはするけど、最後の砦だけがどうしても堅牢過ぎて上手くいかない末っ子だったり。

 

 

「良いですか? 私の大好きで自慢の息子が欲しいのなら、この私を納得させなさい! そうでなければ誰にもイッセーは渡しませんよ!」

 

「大声で何を言ってんだよこのババァは……」

 

 

 ラスボス化するママンだったり。

 

 

「あぁ、めんどくせ」

 

「大変ですねイッセーさんも……」

 

「ちょっと慣れてる自分が気持ち悪いよ」

 

「あはは、でも悪い事ではないですって。あ、それよりまた新しい料理を教えて欲しいなーって」

 

「ん、良いぞ。

ホントキミは良い子だな……」

 

 

 がっつかないからこそ強い妹さんだったり。

 

 

まあ、嘘だけと




補足

皆大好き古手川さん、更に勘違いしたせいでどんどん世話焼き川さんになっていくフラグ。

本人からしたらたまったもんではないけど(笑)

その2
何気に未央さんが、びっくりするくらいいつのまにあの執事一誠と会話成立を可能にしていた。

その代わり、ヤミたそーが『金髪』な理由でかなり他人認識であり、ついでとばかりに軽く自覚無しで未央さんにぶちまけてしまう。


その3
憑依型では完全に終わってたのですが、まさかの互いのママンの小競り合いを理由に何気に愚痴り合う感じにでていき……みたいな。

まあ、嘘だけど。

炎のファイナルドリームなので続きはないよ。


いらんべ?

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