私の所有者はクウラ様。
誰よりも厳しく、誰よりも孤高、誰よりもお強い。
その方の所有物である事はどれ程に幸福なのか……凡人共には一生掛かったって理解できないだろうし、理解して貰いたくもない。
クウラ様と出会えたから今の私がある。
クウラ様の所有物であり続ける事を望むからこそ、自由をこの手に掴めた。
そして何よりも私は、クウラ様が大好きだから。
だから誰にも邪魔はさせないし、否定する輩は誰でも殺してやる。
私のこの身体も心も、私という存在そのものがクウラ様のものなのだから……。
五年という猶予を与え、宇宙船の製造をクウラが命じた。
それによって三大勢力達は皮肉な事に、過去のイザコザの全てを水に流し、共同開発で、オーバーテクノロジーとしか思えぬ技術の宇宙船開発をしなければならかった。
クウラにしてみれば、五年で出来なければただ絶滅させるだけなので、彼等の焦りに同情する気なぞ更々無く、五年の間に部下である白音や部下候補たる者達の戦闘力の向上――そして己自身の更なる進化に時間を費やすだけだ。
「クウラ様、冥界に住む悪魔の上層部達から、白龍皇とその仲間の男の身柄を渡されましたが、即座に始末しました」
「ご苦労」
二天龍もろとも、双方の宿主をこの世から抹殺したという報告を、通常の形態――つまり何時もの白音の姿でし、椅子に座るクウラは頷く。
相も変わらずな淡々としたやり取りで、庭の草むしりをしたと言わんばかりの調子で殺害したといった報告を終えると、白音は話を変える。
「黒歌姉様、八坂、九重、オーフィスの訓練なのですが、今現在はまだ上がる様子はございません」
「……。やはりお前との才能の差がある様だな」
「私自身にもそこまであるとは思いませんが……」
クウラの部下候補として、今現在訓練を施す者達の経過報告を受け、椅子に座るクウラは白音との才能の差が如実になってきていると言う。
「ビッグゲテスターと類似した特性を生身でありながら持っている時点でその差は歴然だろう。何か手を考える必要がるな」
「私がこれまで行ってきたトレーニングではダメだと?」
「そうだ。奴等を見ていて改めて思った」
白音に施してきた訓練では、彼女達の成長はたかが知れている。
事実、相当加減していたとはいえ、クウラの特訓を耐え抜いてきているその時点で、白音は姉の黒歌を遥かに凌駕する潜在能力を秘めていた証拠であるし、特性を自覚してコントロールできる様になってからはその成長速度をも凄まじいものへと到達していた。
その限界戦闘力も、兵藤一誠の力の全てを赤い龍もろとも喰らう事で到達した73万から更に上昇し、現在の白音の戦闘力は80万。
たった一週間、クウラとマンツーマンで訓練をしただけで8万もの戦闘力向上を果たしているという事実と、限界が未だ未知数である事を思えば、白音の才能はこの世界の生物の頂点ともいえるだろう。
「もっとも、元もからお前以外が戦闘力を伸ばす事に期待はしておらん。
指定した数値に到達しなければ捨て置くし、奴等に宇宙船を開発させるまでの暇潰しみたいなものだからな」
だからこそクウラは白音を駒と認め始めている。
自身に近い領域まで成長させる事ができれば、これ程便利な駒は居ないのだ。
そして、自分自身も更に先へ……。
「訓練の準備をしろ白音」
「はっ……!」
超サイヤ人共よりも更に先の先へ……。
クウラの野心の炎はより強く燃え上がるのだ。
そして――
「宇宙船が完成した模様ですクウラ様……」
「ああ」
帝王の兄が再び宇宙最強の領域に到達する時は来た。
5年という歳月を掛けてこの世界のあらゆる力のある生物達を白音と共に喰らい、訓練を重ねる事で弟のフリーザの様にはいかなかったが、クウラもまたかつての身体で出せた全力の戦闘力の壁を突破し、量産型メタルクウラをも超越。
「機能面は及第点といったところか」
「これで宇宙に上がるのですか?」
「ああ、まずはこの星以外の惑星に生物が存在するかの調査を始める。
もし居れば……制圧し、星の力そのものもをお前と共に喰らい続ける。不満はあるか?」
「いいえ、貴方様のお側に置いて頂けるのであれば、地獄の底であろうとも構いやしませんもの」
その力は最早誰にも止められない。
そして白音も……。
「しかしまさか、第四形態になったら何時もの姿に戻るなんて……。胸は相応ですけど」
「元々お前の素の姿に戻ったという意味では、俺たちの一族でいうところの真の姿という事なのだろう。
弟も真の姿はお前みたいにナリが小さかったからな」
「クウラ様はスマートで背も高くてカッコいいのに、私ってクウラ様の弟さんっぽいんですかね?」
「かもな」
妖艶な美貌を持った第三形態から更なる変身を可能にし、その戦闘力も指定した三年の期間内にまず400万となり、残り二年で遂に基本値が5000万という領域に侵入。
「第一形態との違いは胸と前髪の一部がクウラ様と同じ髪の色になれたくらいですね。
なんでしょう、もっとこう、アダルトな姿を期待してたので若干残念です」
それが第四形態――白音にとって原点回帰となった形態の基本戦闘力であり、そこからパワーを解放することで傍に遣え始めた時期のクウラと同じ戦闘力へとなる。
つまりフリーザでいうところの100%フルパワー状態になれば白音の戦闘力は――
「ですがフルパワー解放で2億8000万にまで到達できました」
「よもやこのボディとなってしまった弱体化した当時の俺の戦闘力をも凌ぐとはな」
「ふふ、これもクウラ様の教えの賜物です」
2億8000万。
数多の生物達を喰らい、クウラとの死と常に隣り合わせであった特訓の末に白音はクウラに次いだ力を手にしたのだ。
しかも恐ろしいのはクウラと同じく、白音もまたまだまだ発展途上でしかないという。
「限界がまったく感じません。
まだまだ強くなれる気がします」
「当然だ。
俺もそうだが、この程度で満足する気なぞ更々ない。
この星の力を持つ生物は俺とお前で殆ど喰らってやった今、俺達新たな餌が必要だ。
もっと強く、俺達の糧となる餌がな……」
そろそろ用済みとなる屋敷の庭にて、輝く星達を見上げながらクウラはこの星に見切りを付け始め、白音もまたそれに同意するように頷く。
神器使い、神、邪龍、妖怪等々……数多の生物達を手当たり次第喰らい尽くした二人は最早星そのものにとっての害のある生物となっていた。
人でも猫又でもなき――謂わば新種の生命体へとなってしまったから。
「それでクウラ様? 姉様達はどうされますか? 一応クウラ様のご指定したレベルの戦闘力へは到達しましたが……」
「お前の判断に任せる。
付いてくるも来ないも奴等が決めれば良い。俺に遣えるだけの最低限のレベルには到達しているからな」
「……………。それならば全員付いて来るでしょうね。
ふふ、これで新生・クウラ軍が発足されると思うとワクワクします」
一族としての肉体を越え、新たな存在へとなったクウラは、同じ才を持つ白い少女と共に復活する。
そして目指すは真の宇宙最強。
サイヤ人であろうが、破壊神であろうが、全てを治める王であろうが超越する。
クウラの黒く燃え上がる執念は命尽きるその時まで永遠に消えはしないのだ。
クウラ(5年後)
基礎戦闘力・3億7000万
パワー解放・4億8000万
形態変化(目の下にかつてのボディの通常形態の名残の様に赤いラインが入る)・10億2000万
最終形態・???
白音・(5年後)
基礎戦闘力・5000万
第四形態(肉体回帰)・2億8000万。
100%フルパワー・4億5000万
100%フルパワーブーストモード・9億
白銀猫進化・???
「……。姉様達から宇宙船の受け取りが完了しましたとの事です」
「こちらに運ばせろ。
その後は………奴等に対しても『礼』をするぞ」
「はっ……」
5年後の世界
…………一般人以外、最低限の堕天使・天使・悪魔を除き、全てクウラと白音の餌となり絶滅。
終わり
宇宙船を手に入れたクウラ軍。
その『礼』を終えた後、宇宙へと旅立ったのだが……。
「やはり連中は宇宙船に仕掛けを施していましたね。
次元が歪み、そこに吸い込まれた様です」
倒す事はできない。
だから他の世界へと飛ばしてしまえという仕掛けによってまたしても全く異なる世界へと飛ばされてしまった。
だが別にクウラ達はそれならそれでとさっさと割り切り、生命反応のある星へと降りる。
「クウラ様、どうやらこの星はそれなりに力を持つ生命体が多く生息している様ですね」
「その様だ。
暫く餌には困らんな」
更なる力を求め、降りたこの星の生命体を喰らう事を決める最中、第一住民を発見する。
「えっと……あ、あの……」
「クウラ様、この惑星の住人の様です。人間と思われる者達と一緒に物陰から覗いていた様ですが……」
地球人に酷似した男女三人と、うさ耳を持った生命体を捕まえてクウラの前へと差し出す白音。
「この惑星について訊いてみたところ、文明レベルは私達の星よりも更に低いようです」
「それとこの星の者達はそれぞれのコミュニティとやらの中で生きてるらしいの」
「それとやっぱりかなりの数の力を持つ生命体が居るみたい」
「……現に我の力に反応したドラゴンが数匹寄ってきた」
調査をさせた黒歌、八坂、九重、オーフィスからの報告も受け取ったクウラはどうするかと考えていると、うさ耳を生やした女性型の生物から恐る恐る話し掛けられた。
「あ、あのー……アナタ方をこの世界に呼んだのはこの私なのです」
「…………。どいう事だ?」
赤い眼光に見据えられて軽く悲鳴をあげるウサ耳女性から更に詳しく話を聞くと、ある事に関しての助けがほしくて様々な異界からこちらの世界へと招待したとの事で、今このウサ耳女性と共に居る――どうやらそれぞれ辿った歴史が微妙に違う地球からこの世界へとやって来たらしい三人の少年と少女もこのウサ耳女性『招待』したばかりらしい。
「へぇ? どうやら『面白い』って話は本当らしい。
良いね良いね、コイツ等も連れていくんだろ?」
その中に居た少年がクウラ達の持つ莫大なパワーを察知して挑発的な笑みを溢しはじめた。
全力を出しきれなかった退屈な元の世界から来たと言う少年の推察はほぼ当たっている。
「だから仲間になる前に俺と――」
だけど……。
シャクッ!!!
「――!!!?」
その世界で
「こんな程度の味の分際でクウラ様に向かって嘗めた事を抜かさないでいただけますか?」
クウラを心底敬愛する白い猫に喰い尽くされた。
「そこの猫耳ロリ……! 俺に何を―――」
「退屈なのはアナタのレベルがそれなりに高いからでしょう? ですからこれからは退屈になりえないようにちょっとだけお手伝いしただけです。
だから今、アナタの持つ潜在能力の全てを食べさせて頂きました。
良かったですね? アナタは今後そこら辺の一般人と同等の力が全力となって生活できますよ? ほら、常に殺されるかもしれないスリルを毎日も味わえますね?」
「なん……だと……」
補正そのものすらも喰うクウラの腹心にて最狂の白猫にあるべき未来もろとも喰い壊された少年。
「素晴らしい。
この世界の餌共は中々に上質な者だからけだ。
くくく、白音よ……星ごと全て俺達の糧にするぞ」
「はっ……!」
「何も考えずに招待とやらをすべきではなかったな」
「同情は悪いけどしないよ?」
そして始まってしまった地獄。
「光栄に思うが良い……。
俺の全力を見せた時、それが貴様等の最期だァァァッ!!」
到達した領域を更に上げ……。
「私たちに今更命乞いをした所で無駄なんですよ。
恨むなら考えなしに私たちを呼んだそこの人を恨むのしね。
そして大サービスです、私も全力をお見せしましょう……!!」
異界の神々をもねじ伏せる帝王の領域を解放し……。
「くくく……!」
「ふふふ……!」
全ての生命体を餌とする新種の一族となった二人は――
「「さぁ……」」
「「始めようかァ………!!」」
もっと、更に………誰にも触れられぬ世界へと上り詰めていく。
※嘘です
補足
まあ、ひとつの終わりルートと思って頂きたいみたいな。
その2
新種生命体と化した白音たん。
上手くいけば系譜を受け継ぐ一族が誕生だ!!
その3
まあ嘘だからね。