色々なIF集   作:超人類DX

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ヤミたそー ナナたそー……


出てないけどな


怯えるプリンセス

 一度スイッチが切り替われば、徹底的かつ残虐的にその者を叩きのめす。

 

 究極的な暴力の塊と化するというべきなのであろうか……。

 

 リアス・グレモリーを守る事に拘り過ぎた弊害なのかもしれない。

 

 勝って生き続ける。

 

 失うことを極端に恐れているから。

 

 

 それが結城リト――兵藤イッセーの強さの源だと私は思う。

 

 

 

 とにかく容姿の関係で目立ちまくるララにここ最近悔しさを募らせていたのが天条院沙姫という、リト達より一学年上の女子生徒。

 

 彼女はその見た目通り、今時珍しいくらいにステレオなお嬢様だ。

 

 そして彼女はその慌ただしい性格でちょっぴり埋もれがちだけど、器がとても大きく、面倒見のとても良いお嬢さんだった。

 

 今現在そんな彼女は転校した瞬間から全学年達からの注目を集めたララがとてもお気に召さなかった。

 無論、ただハンカチの端っこでも噛みながら悔しがる程大人しくなんて無いので、対抗策を色々と彼女を本気で慕う従者めいた二人の女子生徒と考える。

 

 考えた結果、どうやらララは同じクラスの結城リトの家にホームステイという形で住んでいるらしい。

 そしてどうやらララはその結城リトに対して好意を持っていることもリサーチできた。

 

 だからララに平行してここ最近沙姫は従者に結城リトの人となりを調査して貰った。

 

 

『クラスでは目立たず、常に無口で無表情。

あきらかに困っている者が目の前に居ても平然と無視する。

………聞いてるだけでは普通に最低ね』

 

『ララに対してもその態度を一貫している様です』

 

『この前も彼女が付いていっても殆ど無視してました』

 

 

 その調査の結果は、寧ろララはこれのどこに好意を抱く要素があるのかというレベルで良い印象が皆無であった。

 

 

『ですがあくまでこれは調査です。

この私が話しかけてあげれば瞬く間に大喜びすること間違い無しですわね。

そして、あのララの目の前で結城リトを心酔させれば……くふふふふ!』

 

『私は凄く反対ですが……』

 

『良い評判があまりにも無さすぎますし……』

 

『きっとシャイなだけですわ! 人を見た目だけで判断する事は愚か者のする事です!』

 

 

 ララに勝つには結城リトがキーマンだと考えた沙姫は、反対する従者二人にそう一喝すると、早速行動を開始する。

 

 それが前回のラストに繋がる訳だが―――

 

 

『うるせぇんだよボケ!! 軽く気分良い時に水差すってんなら粉々にすんぞクソが!!!』

 

『』

 

 

 本当に、ただホントにタイミングが悪すぎた。

 言われた事すらなかった完璧なる罵倒の言葉を浴びせられ、有象無象の虫けらでも見るような目までされてしまった。

 まさに本当に――間が悪すぎた。

 

 そのあんまり過ぎる返答から一夜明け、学園祭も翌日に控える最後の準備の日となる今も沙姫は、生まれてこの方言われた事の無い口汚い罵りが割りとショックで、割りと凹んでいた―――

 

 

「ふん! 確かに一筋縄ではいかない様ですが、ここで一々引き下がっては天条院の名折れですわ!」

 

 

 という訳ではなく、取り敢えずリトの事は後回しにして学園祭で目立ちまくる事に集中する事にした。

 

 

「ですが私は納得いきません、やはり一言文句を……」

 

「おやめなさい凛。

恐らく何か事情があってイライラしていたのでしょう。

誰でもイライラして一人になりたい時に干渉されるのは嫌なものです。

それに私は別に腹など立ってませんわ」

 

 

 別世界の一誠がその名前を聞いたら脊髄反射的にキレそうな凛という名の同い年の従者にそう堂々と言う沙姫。

 意外な程に彼女はやはり器が大きい。

 

 だが凛は懸念しているのだ。結城リトという男その者を。

 

 

(離れた場所からお嬢様のご命令で観察をしていた時、奴は完全に私が視ている事を察知し、そればかりか何かを投げつけて来たのだ。

……使ってた双眼鏡を破壊する程のなにかを)

 

 

 彼が明らかに普通の人間ではない異常めいたものを持った化け物だという意味で。

 それに多分だが、間違っても結城リトは沙姫に興味すら抱かないというのも、暫くの観察で凛は理解していた。

 

 

(あの他を見下している様な目をしている様な輩にお嬢様を近づかせるのはよくない)

 

 

 直接殺意をぶつけられたからこそ理解してしまった。

 あの腹を空かせた猛獣の様に血走った眼と荒れ狂う殺意は、将来猟奇的殺人者にでもなりそうな程ヤバイというものを従者でもあり、護衛でもある凛は察したのだ。

 

 

(なんとか誤魔化しながらお嬢様をあの男に近付かせるのだけは止めなければ……)

 

 

 従者の決意は固い。

 

 

 

 

 

 

 ララは踏み込む勇気を失った。

 下手に踏み込みすぎたら今度こそ見捨てられると思ったから。

 

 

「プリンセスが居ますけど……」

 

「何を企んでるのか知らないけど、見たいんだと」

 

「た、企んでなんてないよー……」

 

 

 なのにどうして、ヤミと呼ばれる――同じ宇宙から来た者にはあんなに普通なのか。

 どうして何時も二人で力比べして遊んでいるのか。

 

 ララはとても……たぶんきっと生まれて初めて他人に嫉妬した。

 

 

「明日はガクエンサイとやらがあるのですし、あまり遅くまでは止めておいた方が良いでしょう。

プリンセスも居ますし」

 

「俺がそこまで体力のないモヤシに見えるのか? 少なくともキミに気遣われる謂れはねぇな」

 

「……。まあ、それもそうですね」

 

 

 楽しそうだ。

 とっても楽しそうに力比べをしている。

 

 修行というものらしいけど、この時間のリトはとてもお喋りで、どこか楽しそうだし、ヤミもまた同じくらい楽しそうだ。

 

 それに加わる事がララにはできない。

 

 いや、父譲りの身体能力があれば加われなくもないが、戦闘技術的な面で二人に付いていけないのだ。

 

 

「あ、あの! 私もリトに力を見てもらいたいな……?」

 

「あ?」

 

「………。良いんじゃないですか? 銀河最強のデビルーク王の長女ですし、アナタが思ってるよりは力もあると思います」

 

 

 試しにリトを不快にさせないタイミングで自分もと頼んでみる。

 ヤミにフォローされたのはちょっと悔しいが、めんどくさそうな顔をしながらもリトは応じてくれた。

 

 

『ララ様! こんな野蛮人と力比べなど危険デス!』

 

「涙ぐましい忠誠持ってるガラクタがそう言ってる様だが?」

 

『だ、誰がガラクタですカ! この野蛮人!』

 

「………黙っててペケ」

 

 

 要するにリトに自分もその修行という相手になりえる事をアピールしたいララは、何時もの天真爛漫さを引っ込めた『本気(マジ)な顔』となる。

 

 そして最初から全力で地を蹴り、ジェットロケットの様な速度でリトへと肉薄して、渾身のパンチを繰り出す。

 

 デビルーク王であるギドのパワーを恐らく一番強く受け継いだララの身体能力は、宇宙でも上位レベルに強くて高い。

 この一撃にしても、並の者なら瞬く間にお星様になるレベルであり、ちゃちな技術を真正面から粉砕可能なパワーだ。

 

 だけど……

 

 

「…………」

 

「え………」

 

 

 相手は龍の帝王。

 神の補正とどうにもならぬ力を与えられた存在に反逆してみせた男のなれの果て。

 

 その一撃は目の前に飛ぶ蝿でも追い払うからの軽い仕種で簡単に弾かれてしまったのだ。

 

 

「くっ!!」

 

 

 二撃、三撃、四撃……と続けている内に速度とパワーを全開にするララだけど、その全てを悉く涼しい顔で―――片手で捌かれ続ける。

 

 

「あぅっ!?」

 

 

 そして何百と続いたララの攻撃も、額にたった一発貰ってしまったデコピンひとつに止められ、何バウンドもしながらララは地面を転がった。

 

 

「それだけやれるなら、別に自分で逃げられるんじゃないのか?」

 

「!」

 

 

 完全に完敗してしまったララはフラつく足で何とか立ち上がると、リトにただ普通に『自分の護衛なんて要らないだろ?』と言われてしまい、ララは固まった。

 

 

「あれだけ動けるなら大したもんだしよ。

地球に滞在し続けるよりは良いと思うがな」

 

「ま、待ってよリト? わ、私に地球を出ていけって言ってるの……?」

 

「星を転々とした方が気楽な逃亡生活が出来るっつーか、最初はそうしてたんだろキミは?」

 

 

 冷たい目と淡々とした口調で話すリトに、ララは背筋が凍る気持ちにさせられる。

 その瞬間、ララは泣きそうな顔でリトにすがりついた。

 

 

「ち、違う……違うよリト! わ、私は強くなんてない! ただちょっと他の人より力が強いだけで、全然弱いの! 一人で逃げられる程強くなんてない! 宇宙にはもっと強い人達がたくさんいるんだよ?」

 

「……………」

 

 

 急に必死で泣きそうな顔でリトの膝にすがりつくララの言葉に、リトは無言でヤミを見る。

 

 

「……………………。確かにプリンセスをこのまま宇宙に出すのは危険かと。

この星は文明レベルこそ最低ですが、プリンセスの存在を知らぬ住人しかいませんから、狙われる頻度も少ないですし、何より宇宙には力ではなく搦め手を使ってくる者も多い」

 

「そ、そう! 私はリトみたいにそういう手も壊せる程強くなんてないから! ご、ごめんね? リトにちょっとでも認めて欲しいと思ったけど、調子に乗り過ぎたんだよね? もう余計な真似も、変な事も聞かないから、家に置いて? 捨てないで……リトに捨てられたら私もう……生きていられない!!」

 

「何言ってるんだコイツは……?」

 

「プリンセスの本音でしょうね……」

 

 

 涙目なのに痛々しく笑いながら謝り倒すララに、リトも少し気味悪いものを見るような顔をし、ヤミは然り気無くフォローする。

 

 必死だった。

 とにかく必死だった。

 

 リトに見捨てられる事が何よりも嫌だったララはとにかく、デビルーク星のお姫様であることも全部忘れてただリトにすがりついた。

 

 

「わかったから離れてくれよ」

 

「っ!? う、うん……! ごめんね? えへへ、もう邪魔しないから……」

 

「……………………」

 

「何その目は?」

 

 

 パッと離れてにこにこするララの考えがさっぱり解らないけど、理解する気も無いリトの態度に、寧ろ最近はリトより他人の気持ちに理解の兆候が見え始めていたヤミがジト目になる。

 

 

「リアス・グレモリーとかつての仲間達以外にはとことん最低ですねアナタは」

 

「あ? どういう意味―――」

 

「ヤミ!!!」

 

 

 他人という認識をしたままの相手に対する対応が酷いと感じて思わず抗議するヤミ。

 すると突然ララが叫ぶように……そして恐怖に怯えた様に叫ぶ。

 

 

「そ、その名前をリトの前で言ったらダメ! リトが……リトがっ……!!」

 

 

 以前、リアスの名を訊いた瞬間向けられた感情がトラウマになっていたララが半狂乱になったヤミに迫る。

 ヤミにしてみれば、別にリアスの名前をリトに向けて出しても何も無かったので、ララの異常な反応に寧ろ驚く訳で……。

 

 

「おい」

 

「ひっ!? ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 言わない、聞かない、探らないから! 捨てないで……私を捨てないでよぉ……う、うわーん!!」

 

「………。プリンセスに何を言ったのですかアナタは?」

 

「勝手に俺の寝言を聞いて、それについて聞いて来たからイラッとして二度とその名前を俺の前で口にするな―――と言ったんだが……」

 

「私が口にしても何も言わないではありませんか?」

 

「キミは少し事情が異なるからだ。

ドライグが教えちまったしな……」

 

 

 とうとう泣いてしまったララを前にリトは微妙に怠そうな顔をする。

 まあ確かにララには二度とリアスの名を口にするなとは言ったが、まさかこうまで気にしていたとは思ってなかった。

 

 

「うぅ……ぅ?」

 

「落ち着けよ。

俺は別にこの子があの名前を出してもなんとも思わないし、キミは関係ない」

 

「ど、どうしてぇ……?」

 

 

 取り敢えず泣いてるララの肩に手を置いて落ち着かせようとするリト。

 

 

「この子はベラベラと他人に喋るタイプじゃないからな。

キミもあれ以降聞いてこないって約束を守ってるし、俺は気にしてない。だから落ち着け」

 

「そ、そうじゃなくてぇ……!」

 

「は?」

 

「どうしてヤミは言っても良いのに私はダメなのぉ……!?」

 

「…………………………。さぁ?」

 

「うわーん!!!」

 

「………バカ」

 

 

 しかし完全に逆効果だったらしく、更にララは大泣きしてしまい、見ていたヤミはあまりのフォローの下手さに小さくリトにバカと言うのであった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ……少しの未来。

 

 

ナナ・アスタ・デビルークが最初に結城リトを見た時は、腹を空かせた猛獣の様な狂暴性を持った超危険生物と認識していた。

 

 そんな男に姉がとても拘っていると聞いた時は姉を守るという意味で、寧ろ当初は敵意すら持っていた。

 

 

 それがどうして彼を理解したのか。

 

 それは父のギドが広めた『ララとの婚約の条件は、地球人である結城リトに勝つ事』という条件によって、数多の宇宙人達が押し寄せ始めた頃だろう。

 

 要するにリトに敗けを認めさせれば良い――という解釈をしたアホによって何度か……それこそただの本末転倒だというのに自分や妹――リト自身の妹すらも人質にされた事があった。

 

 その時リトは……確かに助けてはくれた。

 

 その当時は美柑を助けるついでに自分達を助けたに過ぎなかったのだろうが、ナナはその時初めてリトの抱える狂暴性の本質を見た気がした。

 

 

 徹底的な、やり過ぎな報復をするその根底は『失う』事を極端に恐れているという『防衛本能』が正体であること。

 

 そして彼の中に宿る龍が本当の彼の中身を知っているということ。

 何故だか知らないが、その赤い龍にリトの中身を教えられた事が、ナナの中にあるリトへの印象をほんの少しずつ変えたのだ。

 

 周りを威嚇して生き残ろうと必死な子犬の様な男。

 

 その誰にも理解されない気質によって先へと進み続けなければならない運命に縛られている。

 

 それが結城リトであるのだと。

 

 

 負ければ、弱いと周りに思われてしまえば存在価値が無くなるという自分への強迫観念こそがリトの根底のトラウマなのだと。

 

 それは力を完全に取り戻した父のギドとの決闘に敗けた時に見えた。

 負けてしまえば自分に価値がなくなると怯えていた。

 

 だからナナはそんなリトの抱える強迫観念から解放すべきだとリトの傍についた。

 

 リトとしても、イッセーとしても――どちらにもなれなくなった迷子の少年を、どちらであろうとも受け入れる。

 

 それがナナ・アスタ・デビルークの抱いた気持ちであり、覚悟だった。

 

 価値を押し付けず、自分の気持ちを押し付けず、的はずれな事を押し付けない。

 

 腹を割って――どちらにもなれる支えが一人くらいに居ても良い。

 

 そんな考えに到達したからこそ、ナナは彼にとても……懐かれたのだ。

 

 

「そんな所で寝たら風邪ひくし、首痛めるぞ? 膝、貸してやるよ?」

 

「ん」

 

「父上には勝てそうか?」

 

「……まだ」

 

「そっか。あんまり焦っちゃダメだからな? 何かあったらすぐ言っても良いんだぞ?」

 

「…………うん」

 

「ふふ……♪」

 

 

 そしてナナもまた、認めた者への無上の優しさを見せるリトに少しずつ惹かれていくのだ。

 

 

 

「ナナ……」

 

「んー?」

 

「最近リトさんのお部屋に入れるのはもうわかったわ。

リトさんと普通に添い寝してても怒られないのも最早理解したわ。

でもねナナ、アナタはいったいどうやってそこまでリトさんに許されてるわけ?」

 

「普通にしてただけ―――」

 

「んー……」

 

「だけど……っとと、寒いのかリト? アタシじゃカイロ代わりにはならないと思うけど、よしよし……」

 

「ふ、普通にしてるだけでリトさんがそうなるなんてありえないわ!!」

 

「静かにしろよ、リトが起きたら大変だろ?」

 

「う……! なんか妙に大人になってるしナナも……!」

 

「そうかな? アタシは変わってないと思うけど……」

 

「んぁ……?」

 

「あ、起きたか?」

 

「……………おぅ。

あれ、また俺……?」

 

「まあな、でも慣れたから平気だよ。

よしよし……ふふっ、全く手が掛かるんだから……」

 

 

「」

 

 

 

 

 それはもう、母より母っぽくなって。

 

 

 

「は? ナナの母ちゃんが地球に来るだって?」

 

「うん、この前リトが母上に対してドストレートに言っちゃっただろ? それが割りとツボだったみたいで……」

 

「………………………うぜぇ」

 

 

 そして、ナナにはこんなんな癖に、着実に全盛期を取り戻してきているリトは基本的……というか特にモモと母のセフィ・ミカエラ・デビルーク

が公言する程嫌いだった。

 それは初邂逅時にセフィが……。

 

 

『はぁ、娘達にこの特性が継がれなくて良かった……。

美しさって罪……』

 

 

 と、あくまで悪気なく言ったこの言葉に対してリトは心底冷めきった顔で……。

 

 

『じゃあここでその顔面グチャグチャにぶっ壊してやろうか? そうすりゃ誰も気にしなくなるぜ?』

 

 

 と、そのキャラにまずイラッとしたのか言ってしまい……。

 

 

『効かない? そんな虫けらみてーなもんが効くわけねーだろ、アンタの頭の先から足の爪先まで糞の興味もねーよ。

自惚れんなクソボケ』

 

 

 トドメにこ唖然とするセフィに吐き捨てたのだ。

 魅了関係の力が自覚ある無しに関わらず、最も嫌悪する物であるリトにとって、制御を諦めてるセフィは地中深くに埋めて二度と出すべきじゃない存在だと思っているのだ。

 

 

「嫌味すら通じないのか、お前の母ちゃんは?」

 

「多少効いたとは思うんだけど……」

 

 

 天然キャラなせいか、寧ろツボだったと言って地球に来ると言い出してしまったセフィにはナナも微妙な顔をするしかない。

 しかもモモ並にリトから嫌われてるにも拘わらず……。

 

 

「この間振りですね結城――」

 

「気安く名前で呼ぶなボケ」

 

「……あら?」

 

「あ、あのリトさん? できれば今日だけは穏便に――」

 

「穏便? 俺は穏便だぜ? 穏便じゃなければ今すぐテメー等親子揃ってとっくに肉片にしてやってるぜ……ぺっ!!」

 

 

 案の定、来た瞬間先制ジャブを噛まし、飛び火がモモにまで飛ぶ。

 それはセフィの特性のせいで周囲が変質してしまう――というのを本人が知ってる癖にやって来たのがむかつくのだ。

 

 

「うむむ、相当怒ってるわね。

でもどうしてナナにだけは優しいのかしら?」

 

「それは私達にもわからない謎ですよお母様……」

 

「もうひとり、ヤミって子にも優しいんだよママ?」

 

 

 そしてナナには普通に優しくしているのを長女と三女と共に影からこそこそ見る母。

 初対面で自分を見て心を奪われるではなく、罵倒されるなんて未経験だったが為、逆に気に入ってしまったのだが、やはりモモと一番近いせいかめっちゃリトには毛嫌いされた。

 

 

「はっ!? まさか私があまりにも彼の好みだから照れてしまっているとか!? 本当は【ピーッ】とか【ぱーっ!】とかしたいとか!?」

 

「「………」」

 

 

 でも母はアホな方向にポジティブだった。

 これにはおざなりにされてる娘二人もなにもいえない。

 

 

「くくっ……はははははっ!! はーっははははは!!!」

 

「り、リト! 母上! リトになんてことを言うんだ! リトは決して照れ隠しなんかじゃなくて――」

 

「あぁ、良いよ良いよナナ。

えーっと照れ隠しでしたっけ? はははは、まさかそう思われてるとは思わなかったよ。

そっかそっか………じゃあ言うわ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――自惚れんなって言ったろーが、笑わせんなよ、一山いくらにもならねぇババァが」

 

「」

 

 

 セフィ・ミカエラ・デビルークはこの日より引きこもりになった。

 

 

「あのさ母上、リトはその……好き嫌いが激しいんだ。

それといくら見た目が良くても嫌いな奴は結局嫌いなんだよ……」

 

「ババァって……ババァって言われたわ」

 

 

 流石にババァと言われたのは堪えたのと、言われた事もなければこの先言われもしないだろう言葉ランキングナンバーワンだったのもあって、セフィは引きこもってしまった。

 

 

「ババァは流石に酷いですリトさん……」

 

「思った事を言って何が悪い? アレに比べたらキミの方がまだマシだしな」

 

「!! 確かにババァで間違いありませんね! リトさんの言うとおりです!」

 

「コイツ、王妃と比べて自分の方がマシと言われた途端掌が回転したぞ」

 

「不憫だねホント……」

「魅了的な力は結城リトがもっとも毛嫌いする力ですからね。それを考えば継がなかった彼女の方がマシというのも納得です」

 

 

 そして一番似てるモモが流石に抗議するも、本人にキミの方がマシと言われた途端、掌をクルクルさせられるのであった。




補足

タイミングが悪い。
ただそれだけなのだ。


その2
……………まあ、ナナたそとかヤミたそ以外は基本ブレないでしょうね。

 ママンのキャラ的に、たぶん一番毛嫌いするかもだし。


その3
ママンと比べたらモモ様がまだマシと言われた瞬間、今までが今までだったせいか、それはそれは明るい笑顔でさっさと掌くるっくるなモモ様よ。

ある意味ママンにめっさ感謝してますぜ。

……ママンが引きこもりになったけど。

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