色々なIF集   作:超人類DX

526 / 1034
前回の嘘予告第2弾。

拗らせた娘さんは荒ぶる鷹のポーズをする編。


――THE・嘘予告集2――

 嘘予告2

 

 

 人である領域を逸脱し続ける異常も。

 

 世界の理を根本からねじ曲げてしまう過負荷も。

 

 相手を叩き壊す破壊の技術も。

 

 

 全ては不貞腐れた自分を支えてくれた家族――そして自分に優しくしてくれた少女の為にだけ築き上げてきたものだ。

 

 二度と目の前で命が失われていく様を見たくはないから。

 

 見返りを求める事なく、ただ守れたらそれでよかったから。

 ふざけた姉よりも、よっぽど姉として慕い続けた少女の好意は、きっと間違いだからと言い続けて。

 

 

 その行き着いた果ては、お互いのこれからの為へという別れだった。

 自分のようなチンピラなんぞより、きっと彼女にとって良い男は居るから……。

 

 少年から青年へと変わっても、失う事はなかったその気質と共に一誠は守り続けた少女と袂を別った。

 

 

 それからの一誠の足跡は誰にもわからない。

 ただ言える事は、一誠は世界そのものから消え去ったということ。

 

 誰も自分を知らない世界で隠居生活をするつもりだったこと。

 

 それが普通に失敗し、またしても色々な修羅場を経験して更なる進化を果たしてしまったこと。

 

 就職し、割りとそれなりの地位になっては、無茶苦茶をやって降格と減給をしたりしても、恋人や嫁さんとは一切無縁のままアラサー直前までの年齢になってしまったこと。

 

 

 そして……。

 

 

「兵藤一誠、3等陸左。

局員内でもっとも無意味な階級持ちであり、今現在もずっと恋人募集中! 本日よりこちらの機動六課勤務となります! よろしくお願いしまっす!」

 

 

 世界一管理局の制服が似合わない、20代前半から一切老けなくなってしまったアラサーは、そこそこ潜ってきた修羅場と共に知り合い、軽く暫くは疎遠となっていた者達と再び同じ釜の飯を食う事になった。

 

 

「えー、彼は全分隊の戦闘教官もして頂く。

主に『デバイス無しの直接的戦闘』のな」

 

 

 原始的な戦闘員として主に活動した功績により教官として、後輩だったのにいつの間にか階級を抜かれていた少女によって半ば作為的に召集された一誠は本日も異界の地にて生きるのだ。

 

 

 

 

「………。若いな皆。

ヴォルケンリッターは年齢不詳だからと考えても、若すぎてナンパできねぇ……」

 

 

 上司かつ弟分でもあったクロノ・ハラオウンに騙された形で機動六課に転属となった、元風紀委員長こと兵藤一誠は、転属した部署に所属する面々を見て微妙に残念な気持ちになった。

 そもそもこの部署に転属することを了承した理由も、別に真面目な理由なんかではなく、単に自分と年の近い女性とお近づきになりたいという、間違いなく不純な理由だった。

 

 それがどうだ? 見渡してみれば、殆ど10代後半から二十そこそこ、もしくは10代にも満たない少年・少女までもがこの機動六課に所属しており、結婚に焦るアラサー女子なんかどこにもいやしなかった。

 

 

「ちくしょー! 騙したなクロノの奴め!」

 

 

 綺麗な女性が多いとクロノに言われて、よくも考えずに転属に了承した自分が悪いとはいえ、蓋を開けてみれば知ってる――しかもその子達がまだ子供だった頃からの知り合いの者達ばかりであり、流石に一誠としてはいくら女性らしく成長を遂げたとはいえ、子供にしか思えない。

 

 

「嘘は言っとらんやん? 綺麗所な女の子ばっかやし、寧ろ喜ぼうや? ハーレム王も目指せるで?」

 

「嫌だよ。ちんちくりんに興味ねーし」

 

 

 六課のまとめ役となる八神はやての基本的には補佐役になっている一誠は、もう10年以来となる者の一人として、その言動に微妙な顔だ。

 

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんとちゃんと話したん?」

 

「? 挨拶くらいはしたけど特には。

あの子達がどうかしたの?」

 

「…………ホンマ、後ろから刺されん事を祈るわ」

 

「クロノも同じ事いってたけど、なんなんだよその不安煽りは?」

 

 

 はやてよりも少しとはいえ、更に前から付き合いのある高町なのはとフェイト・T・ハラオウンに対して一誠はケロッとした顔をしているのを見て、はやては深くため息を吐いた。

 はやては知っているのだ、この子供たらしのせいであの二人がまだ19なのに軽く拗れてるのを。

 

 

「取り敢えず今日は軽く身体を動かして貰うで。

その後にアインス達と会って貰うけど……」

 

「平穏無事に生きてるみたいで良かったよ。

まさか俺の過負荷(マイナス)があの時復活した挙げ句、他人の役に立つとはね。

これで二度目だ……俺のマイナスが人の役に立てたのは」

 

「……。大丈夫なんか? あの不思議な力が上にバレてたりは……」

 

「問題ないさ。今日までうだつの上がらない減給生活をしてた姿を見りゃあ察する事もできるだろ?」

 

「バレて利用しよってんなら大暴れしまくってでも逃げてやるから問題ねーぜ」

 

 

 ひらひらと手を振ってはやての言葉を受け止めながら部屋を後にする一誠。

 

 神をも捩じ伏せる異質なマイナスまでもこの10年で甦らせた一誠はある意味ジョーカーの様な存在だ。

 ただ、そのマイナスを他人に行使する事は、本当に切羽詰まった時でないとあり得ないのだが……。

 

 

 

 

 さて、そんなこんなではやてに言われて、六課内に存在するトレーニングルームへとやって来た一誠。

 魔導師としてのランクは永年Cランクで、正直言ってポンコツ以外の何物でもないが、それでも彼は管理局内において純粋なる戦闘能力は最高峰と目され、そしてやっぱり問題児扱いもされていた。

 

 

「えーっと、八神隊長に言われて来たのですけどー」

 

 

 一応デバイスは持たされてるが、武器として使った試しは無い。

 というのも、彼の持つデバイスの効力は『力の抑え込み』というデバフ的な効力しかない、ポンコツデバイスなのだ。

 

 

「! 来たなイッセー! 待ちわび過ぎて一時間前からスタンバってたぞ!」

 

「あー……シグナムさんね、どうも」

 

 

 所謂拘束具的なデバイスを一応持ち込んでトレーニングルームに入ると、そこには赤に近いピンクの髪をした美女と――

 

 

「「………」」

 

 

 何故か太極拳みたいなポーズをして居たフェイトとなのは――そして、そんな上司の見たこと無い姿に困惑する各分隊の者達だった。

 

 

「ふっふっふっ、二人も待ちわびてるんだ」

 

「それは良いけど、なんで太極拳みたいなポーズのまんま固まって、合コンに失敗しちゃった女の人みたいな負のオーラ撒き散らしてんのさ? 部下の子達が困惑しまくってるんだけど……」

 

「うむ、それは―――」

 

 

 六課に転属して、タイミングがズレているせいでまだ二人とは再会の挨拶もまともに交わしてなく、無言で太極拳ポーズやら荒ぶる鷹のポーズやらをしてる――なんかもう既に残念な子にしか見えないフェイトとなのはについて、今にもデバイス起動しそうなシグナムに聞こうとする一誠。

 

 

「1から100までお前が原因なんだよ」

 

 

 そんなシグナムに割って入るのは、全体的に赤を基調とした――何となく一誠のパーソナルカラーと被る幼い少女。

 幼いといっても、彼女もヴォルケンリッターの一人なので、実年齢は一誠よりも上だったりするこの人物はヴィータといい、現在は六課の分隊副隊長をやっている。

 

 そして一誠とは――

 

 

「おおっ! ヴィータじゃん、全然変わってねーなオイ! 元気か!?」

 

 

 なんか一誠的には出会した当時から気が合うのか、ヴィータに対して色々と馴れ馴れしかった。

 

 

「ばっ!? な、なにすんだ! やめろ!!」

 

「すげー、全然変わってねー! あははは!」

 

「が、ガキ扱いすんなよ!」

 

 

 いきなりひょいと抱っこされてしまったヴィータは、部下達の手前もあって恥ずかしく、笑いながらわしゃわしゃと頭を撫でてくる一誠から逃れようともがく。

 

 

「わりーわりー、軽く懐かしくて。

でも良いじゃん、俺とお前の仲だろ?」

 

「そんな仲になったつもりなんてねーよ! というか、そんな軽い事ばっかりすっからフェイトとなのはがああなったんだろうが!」

 

 

 なんとか降ろして貰ったヴィータは、気恥ずかしさもあって顔を真っ赤にしながら、一誠の何時までも軽いその性格を、なのはとフェイトを指しながら指摘する。

 

 三年近く疎遠になった結果、二人がああなったのを知ってるからこそ、一誠のこの軽さは許せないのだ。

 

 さっさと行けと尻を蹴っ飛ばしてくるヴィータに押される形で、荒ぶる鷹のポーズのまま固まって、先程一誠がヴィータにやらかしてた光景をガン見してたフェイトとなのはの前に立つ。

 

 

「オス。…………えーっと、直で会うのって久し振りだけど、大きくなったな。

おじさんがお小遣いを上げよう」

 

「「……………」」

 

 

 そして、どう成長しても子供扱いするのが変わらない一誠に、荒ぶる鷹のポーズをしていた二人は――

 

 

「ぶへ!?」

 

 

 局全体を響かせる盛大なダブルビンタを噛ますのであった。

 

 

 

 

 

 両頬に立派な紅葉がくっきり浮かんでるせいで、大分締まらない実技訓練教官。

 当初、あまりの情けなさと軽さのせいで、彼を名前でしか知らない分隊員達はその実力を疑問視していたのだが。

 

 

「す、凄い……隊長達全員を相手にしてるのに」

 

「しかもデバイスも無しに生身で……」

 

 

 なのは、フェイト、シグナム、ヴィータ――とにかく名だたる者達を一斉に相手取り、生身で圧倒していくその姿に、先程までのアラサーにしては軽すぎる変な男という認識は吹き飛ばされた。

 

 

「はーいおしまい」

 

「ううっ……」

 

「くっ、ま、またヒットさせられなかった」

 

「独身アラサーを見くびっては困るね。これでも最前線でやってきてたんだから」

 

 

 全員のデバイスを取り上げての無傷勝利を確定させた一誠。

 プレシア・テスタロッサの事件に巻き込まれた際、完全に封じようとしていた己の異常性を甦らせて以降、彼の力は今現在も進化をし続けている。

 

 上層部達にその異質さを危険視されないのは――彼が程良くアホだったりするのだが、今は置いておこう。

 

 殆ど完封に近い形で生身での勝利をもぎ取った一誠は、ここから分隊員達から尊敬の念を持たれる――――

 

 

「ちくしょー! またデートを断られたぁ! うぅ、これで全滅だぜ……」

 

 

 訳も無く、早速別の部署の女性へのナンパを失敗して食堂の机に項垂れる姿を見て、『あ、この人馬鹿なんだ』と……10代の子供達に思われるのだった。

 

 

「まーたナンパかいな? ええ加減諦めたらどうや? 無理や無理。なぁ、フェイトちゃんになのはちゃん?」

 

「うん、女の子を三年もほったらかしにする薄情さんには無理だと思う」

 

「女の子の目の前でだらしない顔して知らない女の人をナンパする人なんてダメだと思うの」

 

「うぐぐ、チビッ子達が言うようなったじゃねーか……」

 

 

 隊長方とは昔馴染みであるのはやり取りとを見ていてわかる。

 

 

「逆にアナタは変わらなすぎだ」

 

「10年前から老けてないしよ」

 

「人ってのは挑戦を諦めたその時から年老いていく――ってのは建前だ。

知ってるだろ、俺はもう普通に老いて死ぬにはあまりにも進化を重ねすぎた」

 

『………』

 

「何全員して辛気臭い顔してんだ。

別に後悔なんてしてないし、嫁さん探しさえ上手くいけば俺は満足だ。

と、いう訳で誰かアラサー女性とか知り合いにいない?」

 

 

 ただ、やっぱり言動がアホっぽいと……子供達は思うのだった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 拗らせた娘さん二人からそそくさ逃げようとするのもそうだけど、彼によって今を生きる事が出来る者だって確かに存在した。

 

 

「アインスだっけ? あのツヴァイって子との差別化の為の名前らしいな? 当初君が縮んだと思ったけど、どうやら元気そうじゃん」

 

「アナタは本当に相変わらずというか……」

 

「それが俺みたいなもんだしな。

はやて達とは上手くやってるか?」

 

「うん、主だけではなく、皆とも……」

 

「うんうん、それはなにより。

復活しちゃったマイナスを総動員させた甲斐もあるってもんだよ」

 

 

 本来なら消滅する筈の、まだ闇の書と呼ばれた夜天の書の管理人格。

 はやてによりリインフォースと名付けられし白髪に近い銀髪赤目の女性は、まだ幼かったなのはやフェイトを援護する為に管理局から派遣された一誠の――最早二度と使えないと思っていた『現実を幻想にねじ曲げる力』によって、消滅という現実をねじ曲げられ、今をこうして生きる事ができた。

 

 

「朱乃ねーちゃんと朱璃さんの時以来だな、マイナスが他人に役立ったのは」

 

「その二人は確か……」

 

「キミにはあの時の接触で記憶の全部を見られちゃったから正直に話すけど、俺が当時この世でもっとも守りたいと思ってた人達だよ。

……ふふ、こんな性格だから朱乃ねーちゃんにはこっぴどく振られちまって以降、鳴かず飛ばずだけど」

 

「…………。主達やあの二人にもまだ教えてないの?」

 

「教える意味なんて無いしな。

そもそもキミに記憶を覗かれたのだって誤算だったんだぜ? 頼むから内緒にしてくれよ? ほじくり返されると泣きたくなるから」

 

「わかってる。

アナタに返しきれない借りがある以上、私はそれに従うつもり」

 

 

 アインスは一誠に対し、多大な借りがあると思っており、彼に対してはやての次位はしたがっても良いと思っている。

 そして皮肉にも、彼女だけが一誠という存在の全てを知っている。

 その過去も……過去に何があったのかも。

 

 

「借りと思ってるんだったらさー? ムチムチした人妻タイプのヴォルケンリッター騎士は――」

 

「居ない。居ても教えないし、紹介しない」

 

「……。借りがあるから従うって言ったじゃんか」

 

「それとこれとは話が別だよ。

それに、そこまで言うなら私が――」

 

「あ、それは結構っす。

はやてとヴォルケンリッター達にぶち殺されそうだし」

 

「…………」

 

 

 自己無限進化により、永久に死ぬことを許されなくなった人の皮を被った化け物。

 それは自分達にも近いものをアインスは感じており、そしてその過去を知るからこそ、彼に対してどこか複雑なものを持っている。

 

 

「アインスさんとなにしてるのかな?」

 

「変な事とかしてないよね?」

 

「ぬぉ!? い、いつの間に俺の背後を……! 別に何もしてないよ! なぁアインス?」

 

「……………ちょっとナンパされただけ」

 

「そうそう、ナンパを―――うぉい!? 嘘言うなよ! 普通に真面目なお話をしてた――」

 

「「………………」」

 

「怖っ!? 婚活パーティに失敗しちゃったアラサー女子より怖ぇぞ二人とも――いでででで!? 脛を蹴るなし!」

 

 

 ただ、自分よりツヴァイの方が上手いこと一誠に速攻懐いて、近づきまくれてるのを見ると納得いかない気持ちになるらしいが……。

 

 

終わり




補足

地味に生身での戦闘を鍛えてたので、デバイスが消えてもある程度やれる戦闘集団化しちまいそう……。


その2
まあ、現実を捻じ変えてしまうあのマイナスがあればアインスさんは消えんでしょうという。

しかも接触した際に一誠の過去の記憶を見てしまったので、皮肉な事に現状一誠の中身の全部をこの人が把握してるという。

………あれ、これやばくね? 色んな意味で。


その3
アインスさん、軽く変な対抗心によりナンパされたと言ったせいで、娘さん二人がどんどん拗れていく。




続かないよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。