色々なIF集   作:超人類DX

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タイトル通り。

前半は若干前回の続き。

後半は全く関係ない嘘予告


――THE・嘘予告集――

 一誠がこの世でもっとも『勝ちたい』と思う存在。

 

 それは魔王であり、超越者であり人外の半分でもある赤髪の青年だ。

 

 全てを喪った自分を人外の少女が拾い、術を叩き込まれた後に預けられたのが赤髪の青年であり、そしてその彼に導かれる形で少年は青年の妹である悪魔の少女や青年の母等と出会う事になる。

 

 当初、周りの全てが信じられず、青年への復讐戦に燃えていたのもあって、彼等に対しては壁を何重にも隔てた様な対応ばかりだったけど、その壁を呆気なく乗り越えてこられてしまい、特に青年の母や青年の妻……それから青年の戦友ともいうべきもう一人の魔王の女性といった年上達は、いくら悪態をついても平然と距離を詰めてきた。

 

 

 女魔王のヘンテコな服を戦闘の際にバラバラにしてケタケタ笑いまくっても。

 

 いくら青年の母をババァ呼ばわりしても。

 

 青年の妻に対して、小うるさい年増呼ばわりしても……。

 

 彼は皮肉な事に、悪魔の家族達からとても好かれ……そして少年もまた悪魔達に対して律儀にお返しを不器用ながらもしていく内に、悪魔の家族達にとって少年は喩え悪魔でなくても大切な家族の一人となっていった。

 

 まあ、少年はそんな好意がこそばゆくて常に嫌がる素振りばっかりなのだが……。

 

 

 つまり何が言いたいのか。

 

 そんな女性達に囲まれてきたせいか、基本的に少年は気の強い女性に弱いところが多々あるのだ。

 

 

「一誠、アナタは私を真名では呼ばないわね?」

 

「はい、呼びませんね」

 

「本当に心を許しても良いと思わなければ、真名で呼ばない。そしてそんな日は一生涯ありえないとも言ったわね?」

 

「……ええ、言いましたね」

 

「ならば、その上で問うわ。

春蘭の事は―――微妙にまだ納得したつもりなんて無いけど、今は置いておいて、何故桂花の事まで真名で呼び始めたのかしら?」

 

「………………」

 

 

 それもただ気が強いだけなら、一誠も封殺くらいは可能。

 現に華琳といった者に対しては平然と強気で返せる。

 

 しかし、今回一誠は気の強さナンバーワン猫耳軍師こと荀彧――つまり桂花と互いの真名で呼び合っていたのが華琳的に引っ掛かる模様であり、わざわざ他の面子が居る前で問われていた。

 

 

「そのわざとらしい畏まった口調を止めてから答えなさい。何故?」

 

「偶然が重なった結果だ……」

 

「その偶然ってなに?」

 

「何でも良いだろ。ごく個人的な事だ……」

 

 

 なるべく華琳の前では彼女の事は精々『字』で呼ぼうとしていた。

 しかし、桂花の方がドストレートに、それまで日之影と呼んでいたのを、彼にとっては真名に相当する一誠と呼んでしまったものだから、最初は聞いていた者全員を驚愕させ、挙げ句の果てに今だ姓と名でしか呼ばれない華琳に微妙な納得のいかなさを植え付けてしまった。

 

 

「一誠と休憩の時に何かあったのか桂花?」

 

「ちょっとだけ」

 

「そのちょっとの中身が華琳様は知りたいのだがな?」

 

「……。一誠が喋らない限りは私だって何も言う気は無いわよ」

 

「ふーむ、一誠は頑固者だからなぁ」

 

 

 しつこく問われて、そろそろ華琳に対して露骨に舌打ちし始めてくる一誠に、内心ちょっとだけハラハラしながら桂花は喋らないぞと言い切る。

 

 

「お前達の方が一誠とは長い付き合いだし、何かわかるのではないのか?」

 

「あー……多分わからなくもない」

 

「むっ、なら教えてくれ、何故華琳様やついでに私には素っ気ないのかを」

 

「一誠君の育ってきた環境が理由だと思う」

 

「環境? なによそれ?」

 

「アイツの家族って全員凄まじく気が強いんだ。

特に一誠の義母であるお方や義姉であるお方……とかがな」

 

「それもただ気が強いだけでなくて、一誠君がどれだけ何を言っても、その上から封殺できるくらいの苛烈さというか……」

 

 

 祐斗と元士郎の説明に、秋蘭は確かにと姉である春蘭と、とにかく気の強い桂花を見て少し納得した。

 

 華琳も確かに気は相当強い方だが、それを御せる冷静さも持ち合わせているし、そもそも気の強さの種類が二人とは違う。

 なんというか、春蘭と桂花の気の強さは猪突猛進的な気の強さだ。

 

 

「よくヴェネラナ様に対してババァ呼ばわりしては色々されてたからね……」

 

「グレイフィア様に裸にひんむかれた後、ヴェネラナ様に渡され、そのまま浴室に連れてかれては悲鳴あげてたし」

 

「な、何をされたんだ?」

 

「さぁ? にゅるにゅるがどうとか言ってたけど、何をされたかまでは……」

 

 

 

 

 

「チッ、何時までもしつこいんだよ、誰をどう呼ぶかは俺が決める事であって、お前じゃねーだろ」

 

「そうね。

ただ、アナタの場合は微妙に納得できない理由ばっかりなのよ」

 

「知るか」

 

 

 吐き捨てる様な返しをする一誠は気の強い女性に弱い。

 というか、ヴェネラナやグレイフィアのみならず、一誠の周囲の女性は大概そんなタイプだったりするのだが……。

 

 まあ、ミリキャスという超例外パターンもあるけど、それは今語るべき事ではないのだ。

 

 

 

 

 

 

 ストレスがフルで最近吐血が凄まじくなった一誠は、元士郎に任されてしまった警備隊編成のお手伝いを祐斗と共にしたり、その警備隊に許緒が参加して微妙に気まずくなったりとしながらそれからの日々を送っていた。

 

 春蘭との模擬試合は、余計な柵を忘れる時間としてとても重宝していた。

 

 

「うむ! 日に日に身体が羽の様に軽くなっていき、強くなっていく実感が沸いてくるな! わっはっはっ!」

 

 

 当初かなり警戒してきた春蘭も、強さを磨くという点においては最も信頼できるという判断を下したのか、一誠達との秘密レッスンが理由とはいえ、異質なまでの成長速度を示していた。

 

 

「お前達には感謝しているぞ。

お陰で華琳様のお役にもっと立てそうだからな!」

 

 

 程よくアホの子だからなのか、春蘭を目の前にしても一誠はストレスを一切感じない貴重な人材と化してる。

 

 そして彼女の成長のお陰で、三人もまたその封じられた力をほんの少しずつ取り戻していくのだ。

 

 

「……………」

 

「ぬぉ!? い、一誠の手がぴかぴかしてるぞ!? なんだ、妖術か!?」

 

「ただの宴会芸だよ。

………チッ、消滅の魔力はまだこの程度しか扱えないか」

 

 

 

終わり。

 

 

 

 

 例えば現代モード。

 

 

 

 行方不明となった三人が冥界に帰還したと思ったら、見知らぬ女性を何人も連れてきた。

 

 …………という事で、彼等に縁のある者達は全員グレモリー家に集結し、軽く修羅場となっていた。

 

 

「未来という場所は思っていた以上に壮大ね。

そして便利な道具も多い」

 

「お気に召して光栄ですわ。

そして、ウチの一誠が大分お世話になった様で……」

 

「そうでもないわ、世話になったのはこっちの方だし。

ウチの一誠がアナタ達の事を話していたわ……ウチの一誠が」

 

「それはそれは――うーん、それにしてもなんというか……私より胸が残念というか……」

 

「は? アナタにだけは言われたくないのだけど? なにそれ? まな板?」

 

「は?」

 

「あ?」

 

「あらあら、低次元な争いなんてやめましょうよ?」

 

「「あ゛?」」

 

 

 どっちも金髪少女と赤髪少女と黒髪少女がウチの一誠と呼んで一切引こうとしやしない。

 

 

「質問良いですか? 何故アナタはさっきから一誠先輩と近いんですか?」

 

「は? 別に近くないわよ。これが普通よ?」

 

「いえ、絶対に近いです。今も近いです、近すぎです」

 

「なんなのよ……? …………ははぁん? ひょっとしてアンタ、一誠にここまで近寄れた事がなかったわけ? そのしつこさからいって、一誠が具合を悪くする原因の一人と見たわ。

なるほどねー、一誠も大変だわ」

 

「!!?」

 

「………やめろ、妙に優しげな顔して俺の頭を撫でるな」

 

 

 色々な出来事を経て、猫耳フード軍師は一誠にのみ限定で異質な包容力を覚醒させ、白猫少女にドヤァっとする。

 

 

「気分はどう? 無理しちゃダメよ? アンタに倒れられたら困るんだから」

 

「だから別に大丈夫――」

 

「あ、ここの所の毛が跳ねてるじゃない。

まったく、身なりはちゃんとしないとダメよ?」

 

「…………」

 

「こ、このチビ……! 表出ろコラァ!!」

 

 

 それを拒まない一誠を見た白猫がジェラシー大爆発だったり。

 まあ、本当に大変だった。

 

 

「なるほど、貴様等に足りないのは覚悟だな! 中途半端だから一誠も特に相手にしないのだ!」

 

「え、偉そうに語りますが、貴女はどうだと言うのですか?」

 

「私か? 私は一誠達とは親友だぞ! なぁ一誠?」

 

「……………まあ、はい」

 

「「……!?」」

 

 

 相変わらずアホの子さんは、アホの子なので強かったり。

 

 

終了。

 

 

 

 

 

 

 

その2

 

もしも魔法的な世界だったら。

 

 

 少年は、守ると決めた少女と一定の距離感を保ち続けたお陰で、愛想を尽かされた。

 しかしそれでよかったのだと少年は、少女を守れた事に満足した。

 

 最早自分は不必要。

 

 少年はこの日より少女の前から姿を消した。

 

 その腕に付けた風紀の腕章と共に……。

 

 

 少年が目覚めた世界は少年の生きた世界とは別物だった。

 困ったけど、これもひとつの罰なのだろうと、風紀の腕章を持った少年はひっそりと誰も自分の事なんて知らないこの世界で生きる事になった。

 

 幸い彼は、少女を守るという覚悟と共に進化を続けた異質な力があるために、そう簡単には死ねない身体だった。

 なので適当にコソコソと、偶々見つけた質屋に物を売り飛ばして日銭を稼いでその日暮らしをするという方式をしていた。

 

 そしてこの日、偶々発見した売れそうな石を拾った事で、自堕落な生活をしていた少年の中の時間は再び動き出す。

 

 

「この石が欲しいの?」

 

「渡してください」

 

「………。売れそうなんだけど、まぁ良いよ。ほれ」

 

「え!? い、良いの……?」

 

「だって欲しいんだろ? 小さな女の子にしてみたら綺麗な石だし、売って金に変える汚れた大人が持つより余程健全だぜ」

 

 

 拾った石を欲しがるのが金髪の子供だったので、普通に譲ったり。

 

 

「ぬぉわ!? へ、変な生物がこの世界にも居たのか……!?」

 

 

 公園でボーッとしてたら変な生物に襲われたり。

 

 

「に、逃げてください! 危ないですから!」

 

 

 助けに来たのが少年に少し近い髪の色をした、これまた子供だったり。

 

 

「お、おお……なんだろ、久々にビーム合戦を見た気がする。

が、あんな小さな子供が危ない目に逢ってる以上、元風紀委員長としては見逃せねぇ! さぁ、久々の喧嘩だぜぇ!!!」

 

 

 その子供をお助けする為に、不思議生物を物理でぶん殴って黙らせたり。

 

 

「む、この石……この前見たことが。

なんか変な感覚がすると思ったら、あんな不思議生物を作り出すアイテムだったのか……」

 

「あ、あの……その石は危ないからこっちに」

 

「え? あ、わかってるけど、キミこそ大丈夫か?」

 

「これで封印できるから大丈夫なの……」

 

「それなら良いが、ほれ」

 

 

 高そうな石が実はまだ何個もあると知って、若干心配になってきたり。

 

 

「それよりお兄さんはさっき、似たような石を見たことがあるって……」

 

「へ? ああ、売れそうだなぁと思って拾ったんだけど、ちょうどキミくらいの年の金髪の女の子が欲しがってたから譲ったぞ?」

 

「!? そ、その子ってもしかして黒いバリアジャケットでした!?」

 

「ば、ばりあ? え? よくわからないけど、金髪で赤い眼をしたお嬢ちゃんだった……」

 

「ふぇ、フェイトちゃんだ、間違いないの!」

 

「お、おー……お友だちか?」

 

「まだお友だちにはなれてないけど、できたらなりたいなって……」

 

 

 流れでこんなお仕事をする事になってるらしい少女の実に少女らしいお悩み相談を何故か流れでしてあげてる少年だったり。

 

 

「ねーねー、キミとお友だちになりたいって子が――」

 

「白いバリアジャケットの子でしょう? ……私はその子より先にジュエルシードを集めないといけないから、友達にはなれない」

 

「……うーむ、キミも何か事情があるのかぁ」

 

 

 何か知らないけど、両方を行ったり来たりして仲を取り持とうと意味不明に奮闘したり。

 

 

「ま、魔導師!? あ、あれ魔導師って言うんだ! なーんだ納得したわ! そっかそっか、キミもその魔導師ってやつ?」

 

「あ、あぁそうだけど……その、怒らないのか?」

 

「? なにが?」

 

「あ、あの二人が戦っていた所を止めに入った僕を、『空気読め』なんて……」

 

「はぁ? なんだそりゃ? 止めなかったらあの一帯がやばかったのは見ててわかる。

寧ろ止めるべきだったのと、そんなにまだ若いのに頑張ってるぜと思うぜ? 空気読んだからこそ止めるべきだ」

 

「……………ぐすっ」

 

「え!? ど、どうした少年!? 怪我でもしたのか!?」

 

「そ、そうじゃない。

自分でもよくわからないけど、よくあの現場を止めたのに似た夢を見て、その場合よくわからない男に死ぬほど罵倒されたりしたから……」

 

「お、おう……。

俺もよーわからんけど、大変だったんだな」

 

 

 よくわらない電波をキャッチした少年が泣いたので、よくわからないけど、背中を優しく叩いてあげる元風紀委員長。

 

 

「く、クローン? あの子が……この子の」

 

 

 そして巻き込まれていく内に、金髪少女がクローン体である事を知ってしまい、遺伝学的には母となる者に拉致られて人質にされたり。

 

 

「あの子はそれを知らずに、アンタを母だと本当に慕って、危険な石集めまでしたのに……」

 

「ふん、私にとって本当の娘はあんな失敗作ではないわ!」

 

「……………」

 

 

 その言葉を聞き、かつての世界で堕天使から我が子を守って命まで一度は奪われた少女の母を思い出す。

 

 

「そうか……わかったよ。

本当はただ黙ってるつもりだったし、よくわからんこの騒動ものらりくらりで誤魔化してやろうと思った。

だが気が変わった……」

 

 

 その瞬間、少年は封じてきた異質な才を解放する。

 

 永久に成長し、永久に壁を乗り越え、永久に進化し続けるその異常を。

 

 

「風紀委員・兵藤一誠……久々の出撃だぜ!!」

 

 

 その腕にある風紀の二文字の為に、少年は立ち上がった。

 

 

 そして―――

 

 

 

 

 

「なぬぅ!? お、俺に仕事をくれるのか!?」

 

「生身であの大魔導師と呼ばれる彼女と戦えたのと、検査の結果、なのはちゃんやフェイトちゃんと比べたら大分落ちるけど、アナタにも魔導師の資質があったのよ。

身寄りもないみたいだし、どうかしら?」

 

「あ、あの……僕はアナタと働きたいです」

 

 

 事件以降、妙に母子に気に入られてしまった少年は就職決定が内定し……。

 

 

「あの、ごめんな? キミのお母さんとお姉さんは――」

 

「大丈夫です、きっとお母さんは最期イッセーさんの言葉を受け入れてくれたと思ってますから」

 

「なにかアレば連絡しろよ? すっとんでお助けするからよ!」

 

「………はい!」

 

 

 

 金髪少女とメル友になり。

 

 

 

「お、友達になれたの? 良かったなー!」

 

「イッセーさんが私達の間に入ってくれたから……」

 

「俺はなーんもしちゃいないさ。

キミの人徳って奴さ!」

 

 

 茶髪少女に豪快に笑って見せたり。

 

 

 青年はこうして少しずつ大人になっていくのだ。

 

 

 そして……。

 

 

 

「俺そろそろ焦ってるんだよね」

 

「何が?」

 

「俺、もうそろそろ29じゃん? ………未だ恋人すら居ないんだけどやばくね?」

 

「あー……イッセー兄さんの場合はほら……」

 

「な、なんだよクロノ? その含みを感じる言い方は?」

 

「……………後ろから頼むから刺されないでくれよ?」

 

 

 良い年になっても青年はそのまんまだった。

 

 仕事は順調、最近昇給した。独身貴族するには十二分以上の収入で満足はしてる。

 

 だが恋人が居ない。

 

 できたためしがない。

 

 職場の女性をナンパしても何故か断られる。

 

 

 The・物理アタッカー時々魔導師というワケわからん渾名で職場内では浸透している、現場タイプの青年は、恋人が出来ずに10年近く経過してしまった。

 

 その間に、様々な事件を少年から立派な青年へと成長したクロノと解決してきた。

 

 魔導ランクはCのまんまだが、純粋戦闘力は職場の中では最上位と評されてきたのに、恋人が何故かできなかった。

 

 その理由を、すっかり相棒となったクロノは生暖かい目をして見てくるので知ってる様だが……。

 

 

「え? 部署が変わる?」

 

「ああ、今度設立される新たな部署に配属される者達の戦闘教官をして貰いたいんだが」

 

「………。女性はいるのその部署?」

 

「居る。イッセー、アナタが好みそうな女性ばかりだ」

 

「乗った! その部署に所属するリストは!?」

 

「いや、それは当日までのお楽しみにすれば良いんじゃないか?」

 

「確かに! よーし、俺やる気でたぞー!」

 

 

 

 綺麗所な女性ばかりの部署と聞いてやる気MAXになるイッセーを、クロノは心底申し訳なさそうに眺めながら一言――

 

 

「…………………………すまぬ、すまぬ」

 

 

 両手を合わせて謝罪をしていた。

 

 その理由は後日すぐに理解した。

 

 

「本日付けで配属される事となりました、兵藤一誠3等陸左であります!」

 

「そら来た! やっと来たで皆!」

 

「「………」」

 

「……―――体調が急激に悪くなったので早退するであります!」

 

「逃すか! 者共あのフラフラ男を引っ捕らえぃ!!」

 

 

 一誠が配属させられた機動六課なる部署は、そう……彼にとって馴染みがありすぎる者達だらけで、ここ数年、婚活に忙しすぎて軽く疎遠化していた者達だった。

 

 早退しようとした一誠を全員が一斉に飛び掛かかり、縛り上げられてしまった一誠。

 

 

「クロノの奴、知ってて俺を移しやがったな!」

 

「そら当たり前やろ。ウチがこの部署に居るモンの名は出さんといてとお願いしたんやもん。

もし知ったら転属を拒否したやろ?」

 

「しやしないけど! ……んだよもう、俺と年の近い女性あんまいねーし!」

 

「そらそやろ、多分イッセーが最年長やもん」

 

「はぁ!? ……マジかよ、俺そろそろ三十なんだぞ? 結構マジで焦ってんのに……」

 

 

 それなりの地位に本来は着けるのを、それを拒否して超前線型として現場に赴く魔導師としてそれなりに名が知れ渡っていたイッセーは、気づいたら階級を追い抜かれた年下の上司とギャーギャー騒ぎながら…………。

 

 

「それよか、はよフェイトちゃんとなのはちゃんに謝らんと、大変やで?」

 

「あー……はい」

 

「「………」」

 

 

 約二年程は疎遠となっていた子供から大人になった女性二人と再会する。

 

 

「えーっと、久し振りだね。

随分とお綺麗になったみたいだし、恋人もできたかな?」

 

「もし居ると本気で思ってるなら、イッセー君は鬼畜だと思う」

 

「私達をほったらかしにした挙げ句、婚活って本当に酷いよ……」

 

「お、おう……」

 

 

 まだ19の筈なのに、なんだこの負のオーラは? と素で思わず謝るイッセーは、とにもかくにも新たな部署で働く。

 

 

「おっ! チビッ子のヴィータじゃん! 久し振りぃ! 相変わらずチビッ子だな!」

 

「ばっ! や、やめろ! み、皆見てる前で子供扱いすんな!! 抱っこもやめろ! 頭も撫でんなーー!!」

 

「子供扱いしてないけど、ちょうど良いサイズだからさぁ」

 

「あ、後で覚えてろよな……!」

 

「「……………」」

 

 

 合法ロリに気安いアラサーだったり。

 

 

「ちなみにやけど、何でイッセー君に恋人ができんのって、二人が理由なんよ?」

 

「は?」

 

「時空管理局内でもそれぞれ三人は有名やん? しかも辿っていけば三人は長い付き合いやし、職員のほぼ全てがそういう関係だと思ってるんよ」

 

「………なにそれ? じゃあなにかい、俺が今まで職場の女性をお誘いしても断られてたのって……」

 

「ま、そういう事や。あと、二人が其々イッセーくんとは深いご関係ではありますと、少しずつ然り気無く触れて回ったのもあるで?」

 

「わっつ!?」

 

「「……」」

 

「いや目ぇ逸らすな! な、なんてことしてんの!? 俺絶対ロリコンって思われてるじゃん! だ、だからか! 妙に女性達が俺を蔑む目で見ていたのは!」

 

「だ、だって……!」

 

「もしイッセーに恋人が出来ちゃったら、構ってくれないと思って……」

 

「19になる娘さんが、何時までもおっさん一人にそんな事思うなっつーの!」

 

 

 恋人できなかった理由が割りと深刻だったり。

 

 

 

「ぱ、パパって……。

こ、恋人も結婚もしてないのに俺パパだってさ……」

 

 

 とある任務でお助けした少女にパパと呼ばれて懐かれて余計凹んだり。

 

 

「じゃあママ役は……」

 

「はいはーい! はーい!!」

 

「私やる! 絶対やる!!」

 

「お、おぉ……二人ともそんな目を血走らせんでも……」

 

「ぱ、パパ……。あの人達怖いよぉ……」

 

「大丈夫だ、俺も二人のあの謎の気迫が怖い」

 

 

 でも子供には優しいので、あっという間に慣れて親子やってたり、母役を立候補する19の娘さん二人の気迫を前に二人でびびったり。

 

 

「ね、ねぇねぇ、上司のなのはちゃん――じゃなくて、高町さんって普段どんなのなの?」

 

「あー……いや、普段は凄い格好いい方なんですよ?」

 

「多分信じられないと思いますけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、朱乃ねーちゃんに声が似てる」

 

「へ? 誰の事ですか?」

 

「パパ?」

 

「!? す、すんません! えーっと、こ、子供用の安全デバイスみたいなものは開発できたりしませんか!? あ、あと良かったらご飯奢るので一緒に……」

 

「え、ええっ!? わ、私とですか? な、なんで私………あ、う、後ろ……!」

 

「?」

 

「「………………」」

 

 

 そんな多分、ドタバタ劇。

 

 

始まらない




補足
華琳様、自分だけ単に鬱陶しがられてる事がご不満であり、まさか猫耳軍師さんが一気にそうなったとは流石に予想外。


その2
執事系統ですからね、悪魔家族と顔合わせしたらそらもう修羅場のゴングがカーン!!だぜ。


その3

風紀委員バッドエンド後的なお話。

魔法少女達に懐かれ、少年に懐かれ、就職成功して物理アタッカーでブイブイ言わせ、なにげにそれなりの地位まで出世したら、婚活に焦って………みたいな。

そして朱乃ねーちゃんに声そっくりな眼鏡少女にギョッとなったり、まだ19なのに色々と捨ててる感満載の少女だった子達に追い回されたり、合法ロリさんと仲良くしたり、いつの間にか上司になっちゃった子と楽しく遊んだり――――まあ、ただそんな話。


風紀委員長から、シングルファザー一誠にジョブチェンジや!

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