色々なIF集   作:超人類DX

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いやほら……ごめん。


爆走の白音たん(閲覧要注意)

 クウラという、本来なら存在もしない筈の異界の宇宙人と出会う前の白音の過去は戒めであり、乗り越えなければならないものだった。

 

 蹂躙され、自由を束縛され、そして奪われてきた。

 

 その過去を乗り越え、昇華させなければ未来を夢見る事は出来ない。

 

 それは、本来ならばリアス・グレモリーに拾われ、戦車として悪魔へ転生し、イッセー等『仲間』と出会っていく事で徐々に克服していく筈だったのかもしれない。

 

 しかし彼女が出会ったのは、堕ちた宇宙の帝王の兄。

 

 慈愛なぞ見せなければ、敵となる者は慈悲も手心も加えずに皆殺しにする冷酷なる支配者。

 

 

 それは姉と一時的に別れる切っ掛けであり、白音の過去の大半を占める悪魔達にも似た性質を持った者だったのかもしれない。

 だが規模が――奪う規模が悪魔達とクウラとでは違い過ぎた。

 いっそ清々しいまでの冷酷さと妥協無き精神は悪魔には無いものを白音には感じていた。

 

 

 故にあの夜、まだあどけなさが残る少年の姿をしたクウラによって結果的に助けられた白音は、当初何の興味も関心も白音に抱かなかったクウラにすがった。

 

『奪われるだけの人生はもう沢山だ』

 

 奇しくも肉体もプライドも力も、全てを喪った冷酷なる帝王にすがりついた白音の人生はここで本来の道筋から外れた。

 

 死んだ方がマシだと思える地獄の様な訓練や価値観等、様々な事を叩き込まれ、必死になって付いてきた結果、今の白音となった。

 

 その日々から育んだクウラへの絶対なる忠義。

 

 クウラの真の姿と過去。

 

 そして彼への深い『愛情』。

 

 他の誰もが彼をこの世を破壊する危険生物と揶揄し、実際問題そうだとしても、彼女の生きる意味はクウラの所有物となり続ける事へとなった。

 

 その為には力を示してクウラの感心を買う。

 ただ傅くだけではなく、戦力の駒となる。

 

 ひとつの試練を越えたところで、クウラは決して褒めはせず、当たり前だと言うだけだとしても白音にとっては駒であり所有物であれる喜びになる。

 

 

 それはこれまでも、そしてこれからも決して変わらない、絶対不偏の白音の想い。

 

 プライドを砕かれ、挫折をしたクウラを永劫支えたいから。

 

 

 だから……。

 

 

 

「兵藤イッセー……お前は前々から、一々癪に触るヤローだァ!!!!」

 

 

 自分を憐れだとか勝手に思ってるのは見逃してやる。

 だが、クウラの所有物である事が幸せな自分を否定し、あまつさえ生き方までも間違えだとかほざき散らす虫ケラは誰であろうと許しはしない。

 

 

「ぐっ!?」

 

「クソ! 馬鹿共が!! だから俺は言ったんだ! それなのに……!!」

 

 

 この瞬間、白音は目の前の生物共を皆殺しにする為に、クウラの部下であれる為の戦闘力を解放するのだった。

 

 

 

 

 

「ズアッ!!」

 

 

 三大勢力会談の日、ヴァーリの腕を半笑いでもいだ白音の戦闘力の高さは理解していたつもりだった。

 しかしこれは……。

 

 

「うわぁぁぁっ!!!!?」

 

「い、イッセェェッ!!」

 

 

 白音の戦闘力はアザゼル達の想像の遥か上であり、怒りの形相の白音が咄嗟に構えたイッセーに肉薄し、ガードをしたイッセーの腕を振り翳した拳によって殴りちぎった事で絶望の現実を与える。

 

 

「ギィヤァァァッ!!!!」

 

 

 白音に殴られてもげた腕が震えていたリアス達の目の前に落ち、噴き出された鮮血が部屋の絨毯を真っ赤に染め上げる。

 

 

「兵藤ォォォッ!!!」

 

 

 叫ぶアザゼルが光の槍を咄嗟に白音へと投げ付けた。

 だがその光の槍は白音の肉体を貫通できず、砕け散る。

 

 

「ひぃ……! あぁっ……!!」

 

「おいおい、そう慌てるなよ堕天使さん? このやかましい虫ケラをぶち殺したらちゃんと遊んでやるからよォ?」

 

「うっ!? こ、コイツ口調が……!」

 

 

 直撃しても傷ひとつつかずにニヤニヤとした顔でアザゼルに言う白音。

 その口調は普段の白音からあきらかに逸脱しており、自身のもがれた腕から流れる血を押さえながら苦痛の表情を浮かべるイッセーが、応戦しようと赤龍帝の籠手に倍加を掛けてるのも敢えて待っていた。

 

 

『Boost! Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

 

 とにかく倍加を重ねまくって力を増そうとするイッセーの表情は苦痛と絶望が入り交じった凄まじいものだったが、白音はそれをニヤニヤしながら見ている。

 

 

「く、クソォ!!!」

 

 

 イッセーとしても白音と戦う気なんてなかった。

 けれど、今戦わなかったら自分はおろかリアス達まで殺されてしまう。

 それだけは理解できたらしく、とにかく倍加を重ねたパワーで白音に渾身の一撃を放つと、白音は敢えてそれを真正面から受けた。

 

 あの時のヴァーリの様に……。

 

 

「うっ!?」

 

「散々ご託並べた癖にそんなもんかよ?」

 

「き、効いてない……ですって?」

 

 

 そもそもイッセーの力は赤い龍の一部を含めて白音とクウラに奪われていた。

 それをどうやらイッセーは自覚していないらしい。

 

 真正面から額でイッセーの拳を受けた白音はニヤニヤとした笑みを崩さずに居る為、余計恐怖を助長させていく。

 

 

「バ、禁手化!!」

 

「双覇の聖魔剣!!」

 

「アーシアとギャスパーとリアスと朱乃はソイツ等と兵藤の両親を連れて逃げろ!!」

 

「で、でも!」

 

「早くしろ! 間に合わなくなっても知らんぞー!!」

 

 

 イッセーが禁手化すると同時に祐斗も自身の神器の禁手化させながら援護しようとし、アザゼルもまた引き返せないと悟ったのか、再び光槍を生成しながらリアス達に先に逃げろと叫ぶ。

 

 しかし……。

 

 

「逃げるだ? 今更貴様等を許すと思うか? 一匹残さず生かしては帰さんぞ……!!」

 

 

 白音はアザゼルにそう嗤って言うと、全身から最早近付くことさえ許さぬ強大な気を解放し、最上階となるこの部屋の天井を破壊すると、空へと飛ぶ。

 

 

「な、何をする気……だ……?」

 

「知るか! んな事よりとっととパワーを溜めろ!」

 

「くっ……イッセーくん、しっかり!」

 

 

 赤龍帝の鎧を全身に纏ったものの、右腕から流れ出る血は止まらず、失血により息も絶え絶えなイッセーに檄を飛ばすアザゼルと祐斗。

 状況は絶望。

 

 一言……たった一言の失言でそれまで慎重に行ってきた全てが水泡に帰したという意味ではアザゼルもイッセーを恨みたかったし、こんな事ならさっさと関係も切っておけばと後悔した。

 

 

「この屋敷ごと……全員まとめて消えてなくなれぇぇぇっ!!!!!」

 

 

 何故なら白音が片手を挙げ、最初は豆粒のような小さな光の球が20秒も経たない内に巨大化し、そのまま無慈悲に投げつけて来たのだから。

 

 

「うぅ……あぁぁぁっ!!!」

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

「ちくしょぉぉぉっ!!!」

 

「うわぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 抵抗するアザゼル、イッセー、祐斗。

 しかし地面に近付くにつれて膨張をしていく光球を跳ね返せる程のパワーは三人には無く、あっという間に飲み込まれ――――

 

 

 

 

 

 巨大な大爆発と共にかなりの額を使って建てた兵藤邸とその周辺は消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クウラの究極技であるスーパーノヴァ。

 まさにその名の通り、星をまるごと破壊する程の技であり、かつて本来のボディを持っていた頃、超サイヤ人化した孫悟空に星を破壊する事で無理矢理勝利しようと放ったそれである。

 

 クウラからかつての機甲戦隊のリーダーであったサウザーの得意としていたサウザーブレード。

 自身や弟のフリーザも使っていたデスボール等々の技を付け焼き刃程度ながら教わっていた白音は、規模や破壊力こそまだまだだが、見事に再現する事に成功した。

 

 もっとも、怒りの衝動のまま放ったとはいえ、星ごと破壊してはこの先困るという冷静さも少なからずあったので相当威力は落とした。

 

 それでも、屋敷を丸ごと破壊するパワーは間違いないし、更地となった屋敷跡を見下ろせば、焼き焦げて死にかけている三人が白音の目に映った。

 

 

「チッ、屋敷だけを破壊する程度じゃあ流石に死なないか……。

まあ、他はくたばったみたいだけど」

 

「「「…………」」」

 

 

 悠々と胸が邪魔で胸を下から押さえる様に腕を組ながら大地へと降りる白音。

 

 

「私ってホント駄目だ。ちょっと煽られただけで頭に来ちゃう挙げ句、じわじわとなぶり殺すつもりが一気に決めちゃった。

これじゃあクウラ様に怒られちゃうよ……」

 

「は……ぁ……ぁ……」

 

「こ、……ねこ……ちゃ……」

 

 

 まだ息はあるイッセーと祐斗だが、このままでは確実に先程のヴァーリ達と同じように死ぬだろう。

 無論、同じように全身が焼きただれているアザゼルもだが、二人よりはまだ喋れるらしい。

 

 

「ま、満足したかよ……? こ、これに免じて……許しちゃ…くれねーか……?」

 

「この期に及んでまさかの命乞いときましたか……。

あり得ないですよ、そんなものは」

 

「じゃ、じゃあよ……お、俺を殺して良いから……コイツ等を見逃してくれ……頼む……!」

 

「堕天使なのに悪魔を庇う気なんですか? 理由が何にせよ泣かせてくれますねぇ? ………………ある訳ないけど」

 

「はは……や、やっぱりお前、間違いなくクウラの部下だぜ……」

 

 

 自分だって死にかけてる癖に、祐斗とイッセーを見逃してくれと懇願するアザゼルを白音一蹴しつつ、ある事に気が付く。

 

 

「むっ、そういえば貴方方以外の者達の死体が無い。

死体が残る程度に加減をした筈なのに……」

 

 

 そう、生きてるか死んでるかはどっちでも良いにせよ、三人以外の姿が無い。

 暫く周りを探っても気配も感じない……。

 

 どういう事だと顔をしかめていると、アザゼルが何かを手に持っている事に気付く。

 

 

「その手に持ってるのはなに?」

 

「た、ただの防犯ブザーだよ……ぐっ!?」

 

「喋れる内に喋っておいた方が良いですよ? で、これはなに?」

 

 

 確かに一見すると子供がランドセルとかにぶら下げてる防犯ブザーにも似た小さな機械だったが、アザゼルがそんなものを持つ訳が無いと白音は頭を踏みつけながら尋問する。

 

 

「早く言いなさい。

…………まあ、他の連中の死体すら見当たらないあたり、簡易的な転移魔法の起動キーか何かなんでしょうがね」

 

「………………」

 

「当たりですか。

やってくれましたよ―――もっとも、後で連中を追い掛けて徹底的に壊滅させますが」

 

 

 そうクウラに似た冷酷で残酷な言葉を放つと共に、指先に気を集束させる。

 

 

「貴方の技術力は惜しかったですよ」

 

「………」

 

 

 放った白音の光線は、アザゼルの胸を呆気なく貫き、命を奪った。

 

 

「さて」

 

 

 そして見逃す訳も無く、今度は倒れている祐斗とイッセーの元へと近寄る。

 

 

「ぅ……」

 

「こ、こねこ……ちゃ……ん」

 

「その名な偽名ですよ。

それにしても、そんなザマになってるというのに、名前を呼ぶ相手がお仲間のリアス・グレモリーさん達じゃなんて、あの人達もつくづく救われないですね」

 

 

 最近見た様子からして、リアス達ははっきりとイッセーに好意を寄せていたと感じていた白音は、今まさに死に行こうとしている状況でも自分の偽名を呼んでいる事に、心を揺らす事も無ければ、逆にリアス達に同情していた。

 

「そんなに私が好きなんですか?」

 

「あ……あ……ぁ……」

 

「い、いっせー……くん……! き、キミって……やつ……は……!」

 

「あーらら、騎士の人が怒っちゃいましたよ。

私も正直どうかと思いますよそれは?」

 

 

 訊ねた白音に頷いた黒焦げとなっているイッセーに、祐斗が最後の力を振り絞って怒りを見せ、白音も祐斗の怒りに同意したかのように呆れた。

 

 

「じゃあ例えば、ここで裸になって一発ヤらせてあげるって言ったらどうです?」

 

「………!」

 

 

 しかし白音は直後に腕を失って黒焦げとなっているイッセーの目の前に屈むと、突然甘ったるい声色で訊ねた。

 その瞬間、イッセーの身体がびくんと痙攣する。

 

 

「私の条件を飲んでくれたら、回復させてあげてから私を好きにして良いと言ったら、アナタはどうします?」

 

「な、に……を……! イッセー……くん……も! そんな……言葉に耳を貸しては駄目……だ!!」

 

「………っ! あ……!」

 

 

 白音の手が淡く輝き、気が放出され、イッセーの身体に流し込まれる。

 その瞬間、ほんの少しながらイッセーの身体が回復し、喋れる様になった。

 

 

「こ、こねこちゃん……!」

 

「いや、そこまで思われてると少しは……と思いましてね。ふふ……」

 

 

 第3形態状態の美貌とスタイルを持った白音が頬を染めながら妖艶に微笑む。

 

 

「お、おれは……な、なにをすれば……!」

 

「よ、よせ……! イッセー…くん! 自分で………なにを言ってるのかわかってるのかァ!!!!」

 

 

 目と鼻の先に白音が。

 放たれる色香に正気を失ってると這う這うの身体で見えた祐斗が叫ぶが、イッセーの意識は目の前で妖艶に微笑む白音に釘付けだった。

 

 死にかけてた自分がそれでも白音の名を呼び続けた事で揺らいだのか、それはわからないが……イッセーは自身の持つ欲がわかりやすい程に浮き彫りに出ており、一部機能を復活させた下半身にそれが証拠として顕れていた。

 

 それは命の危機に対する生物的な本能なのか……それも最早どうでも良かった。

 

 

「な、なんでも……する……! キミが望む事をなんでも……! だから俺と……!」

 

「うんうん、わかりましたよ先輩? ふふふ……」

 

「あぁ……こ、小猫ちゃんの……手が……」

 

「と、塔城小猫ォ! ヤメロォ!!!」

 

 

 白音の手がイッセーの焼き焦げた頬に触れられ、ゆっくりと彼女の顔が近づいていく。

 叫ぶ祐斗の声は最早イッセーの耳に入らない。

 

 綺麗で初めて見た時から欲しいと思っていた白音の身体が……全てが――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもね、私の全てはクウラ様のものなんですよ。

―――――――――――――――――誰がお前みたいな虫ケラにくれてやるか、バーカ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 シャクッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「―――――え」

 

 

「クウラ様と同じく、食べる『コツ』は覚えた。

アナタの宿す赤い龍の全てを頂きます。そして、アナタはそのまま死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かがへし折られる鈍い音が木霊する。

 耳元で囁いたその言葉を聞いた瞬間、目を見開きながら首があらぬ方向にねじまがるイッセー。

 

 

「………………」

 

「知ってた筈だろ? 全てはクウラ様に使われる事ことが私の生きる意味だって。

仲間を売ろうとまでした時は笑いをこらえるのに必死だったよ……ホント」

 

「………」

 

「騎士さん。

アナタも大変でしたね……楽にしてあげますよ」

 

 

 赤い龍の全てを食い殺した白音は自身の唇に触れながら微笑むと、イッセーが仲間よりも白音に落ちようとした姿に心が折れてしまった祐斗に手を翳すと、完全なるトドメを刺すのだった。

 

 

 




補足

主人公補正でギリギリ生かすべきだったのですがね……。
どうしても展開上無理があったもんで。

すんません

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