色々なIF集   作:超人類DX

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新年になっていた。

今年の目標? 特に無い。


理解しないクウラ様

 彼は生まれて初めて心の底から震え上がった。

 

 決定的なまでの実力差と、圧倒的な残虐さと真の恐怖に。

 

 その相手が歳の変わらぬ小柄な少女に腕を引きちぎられ、ただの一撃で戦意を削ぎ落とされてしまったともなればそれはきっと仕方ない事なのかもしれない。

 

 何故なら、その少女を自らの所有物と云う青年は、少なくとも想像すら出来ぬ更なる絶望を持っているのだから……。

 

 

 

 

 

 ギリギリの寸前で転移魔法が発動して白音のトドメから逃れることが出来た。

 しかし、白龍皇のヴァーリの受けたダメージは尋常では無く、右腕の欠損と内臓を潰されて再起不能となって直ちに手当てが施されていた。

 

 

「このバカ野郎が!!!」

 

 

 クウラの唯一の部下の力すらも、手に負えない程の圧倒さを誇っていた事を改めて知ることになった彼等は今、寸前の所で展開が間に合ったグレイフィアの力により、駒王学園からリアスがライザーとのゲームの為に修行を行ったグレモリー家の別荘へと転移していた。

 

 

 火事場の馬鹿力だったのか、流石にグレイフィアもかなりの疲弊をしたらしく、転移が間に合ったとわかった途端、安心して糸が切れたのか気を失い。

 結果彼女によって救われたサーゼクスやアザゼルやミカエルといった者達は、感謝しつつも、こうなってしまった原因となったヴァーリに、彼の義父ともいえる関係だったアザゼルが激昂していた。

 

 

「相手との戦力差も見切れないで戦いを挑むのは勇気なんかじゃねぇ! ただの理性すら持たねぇ獣だ! 禍の団に寝返るだけならまだしも、クウラに戦いを挑んで周りを巻き込んでんじゃねぇ!!」

 

「………」

 

「落ち着きなさいアザゼル。

彼は今疲弊して――」

 

「止めるなミカエル! テメー都合で他を巻き込んで全滅しかけたんだ!」

 

「キミの言いたいことはわかるがとにかく落ち着くんだ……」

 

 

 決定的な挫折と恐怖を叩きつけられた後のせいか、ヴァーリは止血こそなんとか間に合ったものの、右腕を失った包帯だらけの姿で虚ろな表情だった。

 それを気の毒に思ったミカエルとサーゼクスがなんとかアザゼルを説得して、取りあえず場は一旦落ち着いたものの、重苦しい空気は変わらなかった。

 

 

「ど、どうするの? 向こうの解釈によっては私達皆クウラに敵と認識されたかもしれないよ……?」

 

 

 そう、トラウマが完璧に蘇り、既に戦意の欠片も無くなってるセラフォルーの言った通り、もしかしたらこれから先が本当の地獄となる未来やもしれないのだから。

 

 

「……。直接彼を訪ねて説得する他無いだろう」

 

「う、嘘でしょサーゼクスちゃん? 説得なんて通用しないよ……!」

 

「確かに危険な賭けになりますが、このまま逃げ回っていればそれこそ彼に敵と認識されて種族ごと根絶やしにされかねませんからね」

 

「悪い、俺がもっとヴァーリに言って聞かせてやるべきだった……」

 

 まさにお先真っ暗な状況。

 本音を言えば誰しもがヴァーリを責め立てたいが、その本人も余程の恐怖と絶望――そして挫折を味わったのだろう、まるで廃人の様な表情のままリアスやソーナ達に治療されているので逆に同情心が芽生えてしまう。

 

 

「…………」

 

 

 こんな感じで、各勢力のトップ達がこの先どうするかを慎重に議論している頃、宿敵となる筈だった白龍皇が、虫けらの様に叩きつけられた様を――しかも白音がやったのを目の当たりにしたショックからまだ抜け出せていない様子だった。

 

 

『白いのの宿主は精神が壊れて使い物にならなくなるかもしれん。

勝負は次代に持ち越されるやもしれんな……』

 

 

 最近声が聞こえる様になった赤い龍がぽつりと呟く中でもイッセーの頭の中は、ヴァーリの腕を嗤いながら引きちぎったり、何の躊躇いも無く、クウラに命令されるがままに自分達ごと巻き込んでトドメを刺そうとした白音の姿が焼き付いていて離れない。

 

 

「大丈夫イッセー君?」

 

「無理もないわ。宿敵となる白龍皇が小猫さんに殺されかけたともなればね……」

 

「何の躊躇いも無いように私は見えましたけど……」

 

 

 仲間達はそんな彼の様子に気が付いて声を掛けている。

 イッセーが妙に白音を気に掛けていたのは知っていたので、今回の事で大きなショックを受けているのだろうと気遣っているのだ。

 

 

「! た、大変……!」

 

 

 そんな時だったか。

 少しだけ冷静さを取り戻したリアスが、周りを見渡してから何かに気付き、再び取り乱したのは。

 

 

「ギャ、ギャスパーが居ないわ! きっと学園に取り残されているんだわ!」

 

「「「!」」」

 

 

 普段は旧校舎の一室にて封印されている、最後のリアス眷属。

 名をギャスパー・ヴラディという半吸血鬼が転移に含まれて居ない。

 

 他の眷属達もそれに気付くも、慌てて戻ろうとするリアスを止める。

 

 

「離して! あの子が危ないのよ!」

 

「気持ちはわかりますが、今行ってもしあの二人が居たら殺されてしまいます!」

 

「だから行かなければならないの!」

 

 

 取り乱すリアスを必死で止める眷属達。

 騒ぎに気付いたサーゼクス達が何事だと近付いてきたので事情を説明する。

 

 

「そうか。

わかった、迎えに行くのは僕が行こう」

 

「お、お兄様が? ですが――」

 

「今学園に戻るのは危険すぎる。だからここで待っていなさい。絶対に彼を連れて戻ってくるから」

 

 

 そう説得したサーゼクスにアザゼルとミカエルが同行を申し込む。

 一人よりは三人の方がまだ戦闘になっても時間が稼げるだろうと。

 

 その席にセラフォルーも手を挙げたかったが、震える身体は収まらないし、三人もそれを察してこの場に居る若者達を守ることを頼み、三人は駒王学園へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トドメを刺す直前で逃げられた。

 本来ならそういうミスを必ず許さないクウラだが、それよりも気になったのは、ヴァーリとの戦闘後に白音の戦闘力が少しばかり上昇しているのを感じ取れた事だった。

 

 

「スカウターがあれば正確に測定できるのだが、恐らくお前の戦闘力は微量ながら上昇している。

……一体何をした?」

 

「??? よくわかりませんが……ハッ!? まさか私に例のサイヤ人的素質が――」

 

「それはありえんな。

思えばお前は時折戦闘を終えると戦闘力が何故か上昇していた。

それがサイヤ人なら納得も行くが、お前はサイヤ人ではない。何か理由がある筈だ」

 

「うーん……」

 

 

 白音モードにもならずにヴァーリの腕を引きちぎり、トドメこそ刺し損ねたので、クウラからしてみれば勝利したとは言い難いが、そんな事よりも白音の身に起こった現象が気になるクウラは、ペタペタと自分の胸元を触りながら自覚してない様子の彼女を見つめる。

 

 

「まるでメタルクウラとなった俺が惑星の生命力を喰って糧にした様だ」

 

「えぇ? でも私機械じゃないですよ? この前だって女の子の日で――」

 

「そんな事は百も承知だ。

お前も知らぬ素質が眠って、定期的に呼び起こされてるのか……。どちらにせよ、調べてみる価値はある」

 

「え、そ、それってベッドか何かに拘束して裸にひんむかれてしまうとか?

ま、まあクウラ様にされるのであるなら抵抗はしませんけど、できれば優しくして欲しかったり――」

 

「…………………」

 

「………。か、軽いジョークですよ、そんな目で見ないでくださいよぉ」

 

 

 途中から訳のわからない妄言を吐きながらもじもじする白音を絶対零度のような目で射抜くクウラに、白音は少し拗ねながら謝る。

 

 

(もしコイツが小規模とはいえ、ビッグケテスターの様な自己成長能力を持っているとなれば……」

 

 

 気紛れで駒に仕立て上げる手間の甲斐もひょっとしたらあったかもしれない。

 クウラは久し振りに白音に対する価値のランクを一段階内心上げる。

 

 

(地球人共の力をコイツに吸収させ続ければ、或いは俺に匹敵する領域にまで進めるやもしれん。

ククク、将来厄介な敵となりえる存在を始末せずに手元に置こうと考えるとは、俺も少しヤキが回ったか……?)

 

 

 徹底的に障害となりえるものは消してきたクウラの、現在の考え方の変化に少し嗤っていると、白音は半壊させた校舎の瓦礫の山の中に何かを発見したらしい。

 

 

「クウラ様、人が居ます」

 

「む」

 

 

 どうやら逃げ遅れた人間が一匹居たらしく、瓦礫をホイホイと簡単に退かしていた白音の足下には、死人の様な顔色で涙を流しながらガタガタと震えている……雌に見える雄が居た。

 

 

「どうやら女性――ではありませんね、格好は女性ですが」

 

「ひぃぃぃっ!!! こ、殺さないでくださいぃ! ぼ、僕なんか殺しても何の得になりませんからぁ!」

 

「やかましい餓鬼だな」

 

 

 白音とクウラに見つかり、半狂乱となって金切り声をあげる少女っぽい少年に、クウラは鬱陶しそうに顔をしかめる。

 

 

「どうしますか、消しますか?」

 

「…………」

 

「あううぅ……!」

 

 

 奇しくも瞳の色が似かようクウラと少年だが、感情の色は真逆。

 まさに狩る者と狩られる者といった立場の中、白音は掌にエネルギーを溜め、へたり込んで怯える――ギャスパーに向けてクウラに確認する。

 

 

「…………。ちょうど良い。そのガキで試してみたいことがある」

 

「試したいこととは……って、この子――お漏らししちゃってますが」

 

「あうあう……!」

 

 

 白音がちょっとギャスパーから距離を取りながら言った通り、ギャスパーはあまりの恐怖で失禁してしまっていた。

 が、クウラにとっては虫けら一匹という認識なので、どうとも思わないし、白音に指示を飛ばす。

 

 

「俺の考察通りになるかの実験だ、白音、そのガキを喰らえ」

 

「は?」

 

「ひぃっ!? あ……ぁ……ぁ……」

 

 

 まさに地獄の閻魔の判決のようなクウラの言葉に、ギャスパーは泡を吹きながら今度は失神してしまう。

 そして白音はといえば、流石にそんな趣味は無いのか、本気で嫌そうな顔だった。

 

 

「流石にクウラ様のご命令でもそれは……。

第一そんな趣味なんてありませんし……」

 

 

 カニバリズム趣味は無いと宣言する白音にクウラは無言のまま歩き出すと、先程白音が引きちぎったヴァーリの腕の残骸を拾う。

 まだ血が流れきってないのか、ちぎられた箇所からポタポタと赤い血が垂れている。

 

 

「ではこの血を一滴取り込んでみろ」

 

「ええっ!? それも嫌ですよっ!」

 

「チッ、だったら俺が無理矢理にでも口に捩じ込んでやる」

 

「!? じゃ、じゃあクウラ様ので! クウラ様の血だったら喜んでペロペロしちゃいますから! そんなどうでも良すぎる他人の一部なんて嫌ですから!」

 

 

 クウラが自分のもしかしたらの素質が本当にあるかを試そうとしてるのだけは分かったが、それならより強い生命体であるクウラの一部の方が絶対に良い筈だと、若干自分の欲望混じりに必死になって説得すると、クウラはヴァーリの腕を適当に放り捨てた。

 

 

「確かに理にはかなっている。

良いだろう、光栄に思うがいい白音」

 

「は、ははぁ!」

 

 

 良かった……。とホッとする白音。

 失神して失禁してる者なんてシラフだとしても喰いたくなんて無いし、引きちぎった腕なんてクチャクチャとガムの様に食べてたどこぞの王子みたいに勿論食べたくなんぞないのだ。

 

(お、おおっ……! クウラ様が血を流すなんて――――あれ?)

 

 

 ただ、言われてみれば確かに――――なんだろうか、クウラが自分の掌を指で切って流れたその血はとても美味しそうに見えた。

 

 

「やれ」

 

「は、はい……」

 

 

 掌にから流れ出るクウラの血。

 別に蛍光色だったとかでは無く、只の赤い血なのだが、白音はその流れ出るクウラの血を見ている内に心の奥底がざわついていく感覚を覚える。

 

 そして無造作に向けるその掌に広がる鮮血がとても魅力的に――いや、美味そうだとボーッとしていく思考と共に思い、そのまま怪しげな儀式でも行うかの様にクウラの手を自らの両手で掬う様に触れながら――

 

 

「んっ……んく……ちゅ……っ……!」

 

 

 何かの本能に従うかの如く舌でクウラの掌自体を舐めながら血をすすう。

 

 

「………………」

 

「はむ……! んんっ……!」

 

 

 その際、微妙にクウラが嫌そうな表情を浮かべていたりするのだが、白音は思いの外『美味しい』と感じて止まないクウラの血を舐めるのに必死で気づいていない。

 

 

「……。何か変化は?」

 

「はぅ……! あああ………! あぁん♪」

 

「……」

 

 

 

 嬌声まであげて、自身の胸元に触れ始め、明らかに正気ではない白音にクウラは取り敢えず頭をひっぱたいた。

 

 

「あいたっ!? あ、あれ? 私は一体……?」

 

「間抜け面から戻ったな。

それで? 何か変化を感じるか?」

 

 

 

 クウラにひっぱたかれ、頭を押さえながらハッとした表情になる白音にクウラは、嫌そうに舐められた手を掌をそこら辺のコンクリートの瓦礫で拭きながら訊ねる。

 

 

「う、うーん? クウラ様の血が物凄く美味しかったという以外は特に……?」

 

「……………」

 

 

 美味かったを強調する白音自身に、変化の感覚はないらしいので、取り敢えずアバウトながら相手の強さを測れるクウラは今現在の白音の内包するパワーを探ってみる。

 

 

「…………………!」

 

「え、どうかしました?」

 

 

 探って直ぐにクウラは珍しく本気で驚愕したかの如く目を見開いたので、白音はちょっとビクッとしつつ訊ねた。

 

 

「俺も正確には測れぬのでアテにはならんが……25万にまで上がっている」

 

「………………は?」

 

 

 目を丸くする白音。

 それもそうだ。今さっきまでフルパワーを出して15万がやっとだった己の戦闘力が、クウラの実験で一気に10万も跳ね上がったのだから。

 自覚が無いだけに、いくらクウラの言葉だとしても、本人だって信じられる訳がない。

 

 だから試しに瓦礫の山に向かって、デコピンの様に人差し指を弾いてみたら、所謂空気砲の様な要領で瓦礫が消し飛んだ。

 

 

「わぉ」

 

「…………」

 

 

 しかも白音的には冗談半分の軽いジャブのつもりが、瓦礫どころか、その後ろで半壊していた旧校舎をも消し飛ばしてしまった。

 さっきまでなら拳でも握らなければこれ程の芸当は出来なかったのが、息をするような感覚で行えてしまった。

 これこそパワーアップの証拠であったし、やった本人の白音ですら他人事みたいに人差し指を立てた状態のまま、驚いて固まってしまっていた。

 

 

「く、クウラ様? これは一体どういう事なんでしょうか?」

 

「推測通りだ。

思えばお前は、俺が直接手解きをしたとはいえ、この世界の地球人にしては明らかに常軌を逸した戦闘力を身につけた。

同じ事を他の地球人に施したとしてもそこまでは高くなる訳がないにも関わらずだ」

 

「それはつまり……?」

 

「俺の所有物としての価値が上がった……という事だ」

 

 

 実質完全に部下として認めてる的な発言をするクウラに、白音の気分は一気にハッピーとなった。

 何の力があるのかはさておき、自分はクウラの駒になれるのだと。

 

 この理不尽帝王の部下として安心感を獲られるのだと。

 

 

「まさかお前がビッグゲテスターと同じ自己成長能力を秘めていたとは、な」

 

「誰かの力を食べれば食べるほど強くなる……ということでしょうか?」

 

「この星の連中の力を喰った所で上がる物などたかが知れている。

今のは俺の力を血液を介して取り込んだから一気に上がったのだ。

くくく、血どころか俺の血肉ごと取り込めばもっと上がるかもしれんなァ?」

 

「おおっ……!」

 

 

 珍しく愉快そうに嗤うクウラに、白音は別の意味でテンションが上がる。

 何故なら、クウラの一部を――白音的にはとにかく美味しいと感じたり、とてもイケナイ気持ちにさせてくれるアレが口に出来ると思うと、下腹部に熱すら帯びるのだ。

 

 

「が、それはお前がまずは自力で俺の指定した300万の戦闘力を持つ事が」

 

「えー……?」

 

「俺がそう簡単に施しをくれてやるとでも思ったのか? 謂わばこれはお前に対する報酬だ。

俺の所有物としての有能さを示せば、俺の一部を取り込める――悪くはない筈だが?」

 

「そ、それはそうですけど……」

 

「……不満なのか?」

 

「い、いえいえ! 頑張ります……にゃん♪」

 

 

 不満顔をした瞬間クウラが殺気を放ったので、慌ててニコニコしながら可愛い子ぶる白音は内心がっくりする。

 

 

(あぁ、もっと欲しかったのに……)

 

 

 さっきまでカニバリズム的な趣味なんて無いと言っていた白音はどうやらすっかりトリコ――ならぬ虜になってしまった様だ。

 

 もっとも、欲しがるのはクウラの血肉であって、その他諸々に対しては興味は無いみたいだが……。

 

 

「最早ここには用は無い、帰るぞ白音」

 

「はい――――――あ……」

 

 

 ともかく、何かを忘れている気がしたが、クウラと帰還する事にした白音はピタリと動きを止めた。

 

 

「今度はなんだ?」

 

 

 力の差を知ってる癖に、今まで使ってきたどの部下達よりも変に気安くしてくる白音の事は半ば許してる感のあるクウラが、めんどくさそうに振り返った。

 

 すると彼の目に映ったのは最近気に入って着てるメイド服姿の、いつも通りな白音……で間違いは無いのだけど、何故か頬を紅潮させながら軽く下を向いてもじもじとしている。

 

 

「………。また例の発作か何かか?」

 

 

 その挙動にクウラは、最近周期的に訪れるんだと聞かされた発情期か何かだと察知し、これまた本気でめんどくさそうに聞いてみる。

 

 

「い……いえ、それに近いですけど別に大丈夫ですもう……」

 

「……?」

 

 

 しかし白音は恥ずかしそうに身体を揺らしながら首を横に振って、そうではないと返す。

 ならば何なのだ? と、人に転生してもそこら辺の事が一切理解してないクウラは訝しげな顔をしていると……。

 

 

「も、もう……その、さっきクウラ様の血を頂いた時に臨界点を突破しちゃいましたといいますか……え、ええっと……」

 

「ハッキリしない奴だ。つまり何だ?」

 

 

 

 理解なんてする気も無いので、ガッツリ聞くクウラに、白音はもじもじと、何かを恥じている様子で一向に答えやしない。

 

 

「び、びしょびしょに……」

 

「あ?」

 

「クウラ様のせいです! うー……!」

 

「俺のせいだと? 何を言っている……? 俺がお前の隠れた素質を発見してやったというのに、文句が―――」

 

「も、もう良いです! クウラ様の血を頂いたら下着が大変な事になりましたっ!! 分からず屋! 鈍感!!」

 

「なっ……」

 

 

 と、思っていたら突然逆ギレみたいに噴火した。

 あまりに突然なのとその勢いで、珍しく軽く圧されたクウラは、プンスカと怒る白音――というより地球人の思考回路がまるで読めずに軽く困惑。

 

 

「さ、先に帰ってお風呂を頂きますからねっ!」

 

「……勝手にしろ。たまによく分からぬ餓鬼だ」

 

 

 機甲戦隊を越えた戦闘力となったは良いが、やはり時折よくわからない事を言ったりする白音に、クウラはただただ理解出来ない顔をしながら、前を目一杯彼女なりに飛ばして飛行するのに平然と付いていくのだった。

 

 

(ううっ、わかってるけど辛い……。

最近までは、クウラ様にぼろ雑巾みたいにメチャメチャにされる妄想で指でして切り抜けてきたのに、アレのお陰で妄想じゃ足りなくなってきちゃったよぉ……。黒歌姉様のことなんて言えない……)

 

 

 女の子のお悩みだったなんて、クウラが知った所で理解なんてする気も無いのだから。

 

 

 ちなみにギャスパーの事は忘れられていたので、運良く彼は助かったとさ。

 

 

おしまい




補足

まるでEカードに敗れて焼き土下座後に廃人コースとなった利根川先生の様に彼は――


その2
白音たんのそんな側面にショックを受けたものの、何かを抱いたイッセーくん。
 なんだろね?


その3
で、散々やらかしたけど、結果このシリーズでお馴染みのそれが発覚。

もっとも、上司がそれ以上に理不尽なので部下気質はそのまんまだし、とても可愛らしい女の子のままなのだ(棒)

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