色々なIF集   作:超人類DX

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奴隷にされずに10年間すくすくと育ちながら前倒して色々な事を知らずに達成し、本編において樽脱出する日に奴隷を解放し、石化されないから更に前倒しで魔界突撃前まで来る。




解放祭りと前夜祭

 光の教団の教祖であるイブールとの一騎討ちに勝利したパパスは、粒子となって消えたイブールの居た場所に、グリーンの指輪が落ちているのを発見する。

 

 

「む、イブールが持っていた物なのだろうか?」

 

「私とフローラが持ってる炎のリングと水のリングに似てるわね」

 

「一応何かの手掛かりになるやもしれないし、取っておこう」

 

 

 いのちのリングというものを手に入れたパパスは、祭壇の裏にあった隠し扉を発見し、中へと進む。

 

 

「イブールの私室の様だ……」

 

 

 そこはイブールが使っていたと思われる部屋であり、色々な書物や値打ちのありそうな宝物が置いてあったので、取り敢えず魔界に関する情報はないものかと、部屋を三人娘と共に捜索する。

 

 本の中にはパパスの妻であるマーサの故郷であるエルヘブンの民についてのものだったりするものが多い。

 

 

「エルヘブンの民が魔界と人界を繋ぐ扉の管理が出来たらしいが、時を経る事でその力も消えていった……か。

現在のエルヘブンの族長四人もその力は失われていて、マーサが先祖返りしたかの如くエルヘブンの力を濃く発現していた……」

 

「だからお義母様は魔界へと連れ去られたのですか?」

 

「恐らくは――むっ!?」

 

 

 暫くイブールの部屋を捜索している内に、色々と内情を知っていくパパス達は、机の引き出しの中に隠されていた一冊の本を発見する。

 

 

「イブールの日記の様だが、これは……」

 

 

 勿論手掛かりになるやもしれないと中身を皆で確認してみたのだが、頁を捲れど中身はマーサに対するイブールの執着を書き記した――早い話が単なるストーカー日記みたいなものだった。

 

 

「お、お義母様に対して大分アレだったのねイブールって……」

 

「『風の悪戯でマーサの着ていた衣装の裾が捲れて中身が見えた。夜が捗った』って……」

 

「『今日はマーサにキッって睨まれた。魔界の王さえ居なかったらそのまま寝室に連れ込みたかった』……ね。

教祖を謳ってた分際で、随分と俗にまみれた奴だったみたいね」

 

「……………」

 

「おじ様、ひょっとして今一瞬だけ魔界の王が抑止力になってた事に感謝してたりする?」

 

「……一瞬だけ。

いや、私はてっきり、こう……奴なりの信念を持って闘ったのかと思ってたものだから」

 

 

 シリアスな決闘かと思ってただけに、パパスは結構複雑だったのと同時に、もう2.3発くらいはイブールを殴っても良かったかもしれないと思った。

 

 特に魔界にある町にてマーサが入浴していたので、こっそり延々と覗いてたと書いてあった時は、反射的に剣を抜きそうになった。

 

 割りとこういう面は息子のリュカに似ている辺り、まさぎれもない『親子』なのかもしれない。

 

 

「この日記は世に出る前に永久に封印しよう」

 

「その方が良いわ。

魔界へと繋がる扉の鍵に、さっき拾ったいのちのリングと、私とフローラの持ってる炎のリングと水のリングが必要だってわかった事だし」

 

「それに海の神殿の最奥がその扉であるのも分かりましたことですから……」

 

「ビアンカさん」

 

「うん、『メラ』」

 

 

 日記の中には物ののついでに魔界へと繋がる扉の場所とその鍵について記されていたが、マーサに対するストーカー染みた思いを書き記しまくってる事ばかりだったので、ビアンカに頼んで燃やして消去したパパスは、今頃まだ表で暴れてるだろうリュカと合流しようと、果てしなく締まらない気持ちになりながら、部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 パパス達が微妙な気持ちになっていた頃、リュカとボロンゴといえば、暴れに暴れて見張りの魔物達を全滅させ、教団の思想に浸かった人間の見張り達は適当に半殺しにしてからふん縛り、奴隷達を解放していた。

 

 

「救世主様! 我等の救世主様!」

 

「我等の光! 我等の王!!」

 

 

 結果、リュカは奴隷達から英雄視されていた。

 

 

「別に奴隷解放の為に戦ってた訳じゃないから、何か悪い事した気分だぜ……」

 

「ガウ」

 

「結果的に助けたんだから問題ない? まあ結果だけ言えばだけどさぁ……」

 

 

 崇められるのは苦手なリュカは、矢継ぎ早にお礼を言ってくる奴隷さん達に苦笑いしながら適当応じつつも、この人達をどうやってこの山から安全に降ろすかと真面目に考えていると……。

 

 

「リュカ……だよな?」

 

「んぁ?」

 

 

 次々とお礼を言う奴隷さん達の中から、緑色の髪をしたボロボロの男性と、その男性を支える同い年くらいの女性と、別に襲って来なかったので取り敢えず放置していた教団の兵士さんが近付いてきて、緑色の青年から突然訊ねられた。

 

 

「……? はて、どちら様だったっけ?」

 

 

 ボロボロの格好をした青年に心当たりがこの時点で無いリュカは首を傾げると、緑色の髪をした青年は名乗った。

 

 

「俺だよ、ヘンリーだよ。

ラインハットの……」

 

 

 少し申し訳なさそうに名乗るヘンリーという青年。

 

 

「ヘンリー……? ラインハット? ……………………………………………」

 

 

 それでも直ぐには思い出せなかったリュカは、三十秒程の時間を使って過去を遡り……。

 

 

「あっ! あの時の小生意気なクソガキかっ!?」

 

「……………」

 

 

 子分にしてやろうか? とか宣ってたラインハットの王子の事を思い出した。

 

 

「え、何でキミがここに? てか奴隷してたの?」

 

「えっと、二年前にお前と親父さんに倣って一人旅をていたら捕まっちまって……」

 

「それで奴隷? うっわ、運無いなキミは?」

 

「あははは……」

 

 

 パパスに小生意気な事ばかり言って喚いていたあの当時のヘンリーを、城の最上階のテラスから逆さ吊りにしてやろうかと本気で考えていた事を思い返しながらも、ボロボロの奴隷にさせられていたと知って割りと同情するリュカにヘンリーは乾いた声で笑う。

 

 

「義母の策略であの時誘拐されそうになった俺をお前とパパスさんで助けてくれたってのに、やっぱり悪い事をしてきた報いってのはちゃんと受けるものだったみたいだ……」

 

「といっても悪戯程度だったじゃねぇか。

リターンがデカ過ぎるぜ」

 

「自分を見つめ直す良い機会だったよ……」

 

 

 何か普通の好青年になってるヘンリーにリュカも若干驚きつつ、そういえばその傍に居る女性と男性は誰なんだろうとリュカは思う。

 

 

「マリアとヨシュアさんだ。ここで奴隷をしている時に知り合った」

 

「マリアです……! 私たちを助けて頂いてありがとうございます! 貴方様が来なかったら、今頃私とヘンリーさんは……」

 

「マリアの兄のヨシュアだ……。

奴隷に落とされた妹も助けられず、教団のやり方に疑問を持っていても何もできなかった……ありがとう」

 

「うっす……」

 

 

 色々と複雑な事情があるのはわかったので、取り敢えず会釈程度に頭を下げておく。

 

 

「父さんと相談して、取り敢えずここの人達をグランバニアで保護するか……」

 

「そっか、グランバニアの王子だったんだよなリュカは? 俺ってガキの頃、それも知らずに王さまだったパパスさんにあんな事言ったんだよなぁ……」

 

「グランバニアの王子様!? そ、その様な御方だったとは……!」

 

「この教団内でも噂にはあったぞ……というか、教祖が明らかにグランバニア王を敵視してた様だったが、そういえば教祖は……」

 

「あぁ、間違いなく父さんがぶちのめしたと思うぜ? 何で敵視されてんのかは――身に覚えはあるかもな」

 

 

 主にゲマ辺りを半殺しにしまくってた繋がりかなんかだろうし……。

 

 

「教団の魔物達を苦もなく全滅させた所を見ると、歴代グランバニア王族最強の父子の話は本物だったわけだ」

 

「王子だの王様は柄じゃあ無いですけどね」

 

 

 パパスと違って頭の出来はそんなでもないし……。

 そんな事を考えながら、何故か微妙な顔をしながら合流してきたパパス達と相談し、ドライグの力を借りての特大ルーラで奴隷達をグランバニアに運んで保護する事になったリュカ。

 

 母の居る魔界への行き方も確かに手に入れた今、彼等が魔界へと乗り込むのも時間の問題だろう。

 

 

「お、身なりを整えさせたらマリアさん結構可愛いじゃん?」

 

「そ、そうだな」

 

「おや? なんだよヘンリーくーん? あの悪戯小僧が恋しちゃった系かぁ?」

 

「よ、よせよ! 俺は別にそんな……!」

 

「照れるな照れるな! ねぇヨシュアさん的にヘンリーくんはどうなのさ?」

 

「む? ……まあ、少々頼りない気はするが悪くはないと思うぞ」

 

「だ、そうだ。脈アリだぜ? 行けよ? アタックしろ?」

 

「あ、アタックって、まだ心の準備が……! ていうかリュカこそどうなんだよ!? あんな美人な女の人と三人も……!」

 

「あぁ、あの三人は友達ではあるけど、そんなんじゃないぜ? 第一! 俺の好きな人は別の人だからな!」

 

「は!? う、嘘だろ? だって……ねぇ、ヨシュアさん?」

 

「…………。背後から何時か刺されないことを祈ろう」

 

 

 奴隷解放・完了。

 

 

 

 

 

 

 

 偶々解放した奴隷の中に年の近い女性が居て、折角だからとグランバニアで保護した際におめかしのお手伝いをしてみた所、マリアという女性は三人娘に勝るとも劣らぬ可憐な女性であった。

 

 

「フローラさんは教会で修行を?」

 

「所謂花嫁修行というやつですね。

父に言われて……」

 

「私は期待されてなかったからパパにはなんにも言われなかったけどね」

 

「私は宿屋の娘だから普通に育ったわ」

 

 

 そしてなんとなく気も合ったので、仲良くなっていく内に、娘さん達の話題は気になる異性についてに変わっていった。

 

 

「まあ! 三人はリュカ様の事が……」

 

「違う逆よ。アイツが私に惚れてるのよ」

 

「ど、どうしてもと言われたら断れないし……」

 

「幼馴染みだからねっ!」

 

「へ? でもリュカ様は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそグランバニアへ。

歓迎するのと同時に俺の部屋でお茶しましょうポワンさん……!」

 

「あ、あのリュカ? お気持ちは嬉石のですが、私は村でのお仕事が……」

 

「大丈夫っす! マダオドラゴンの伝で妖精の国の女王に許可貰ってるんでポワンさんの心配事はなにもないっす!」

 

 

 

 

 

 

「ポワンという御方に物凄く……アレな気がしますけど」

 

「「「…………」」」

 

 

 年頃の娘さんというのもあるし、恋バナみたいなものは寧ろ興味がある。

 自分達の恩人達の恋模様を聞くのは楽しいし、何より奴隷から解放されて少し心に余裕を持つことが出来てきたマリアとて、気になって来ている相手は居る。

 

 それが誰なのかは……まあ、皆まで言うなな訳であるのだが、ビアンカ、フローラ、デボラから聞かされる恋バナは中々に拗れてて、聞いたり見てたりする分には、中々のスリルを感じる。

 

 どうにも三人の共通することは、あくまでもリュカが自分達三人を一辺に頂きたいと宣うので、仕方なく応じてあげてるという体にしたいみたいだが、実際見てみると、最初に言ってた通り、リュカは三人を友人としては見てるものの、異性として認識してるとは言動と対応を見てると首を傾げたくなるし、何より彼がデレデレした顔を見せるのは、時折城に連れてきては手を繋いで城下町を共に散策している、ポワンなる女性なのだ。

 

 

「お待ちなさいリュカ。髪が跳ねてますよ?」

 

「へ? どこっすか?」

 

「ここです。ちょっと屈んでください、直してあげますから」

 

「うっす! ……へへへっ!」

 

 

 ポワンに対してデレデレとしながら私室に案内しているのが見えたし、その様子を拗らせた目でジーっと悔しげに三人は見てるし……。

 

 グランバニアの国民がちらほら心配する様に、リュカが何時か後ろから三人に刺されない事をマリアはちょっと心配するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 母であるマーサが囚われている魔界への道筋を漸く見つけ出した。

 フルパワーになって無理矢理次元を抉じ開ける方法を提示してパパスに止められて以降地道に探し続けた甲斐がやっと報われた気分になったリュカは、その事を幼き頃から変わらずに魅力的と思うポワンをグランバニア城の自室に招いて話をした。

 

 

「そうですか。では直ぐにでも魔界へ……」

 

「母を連れ戻すのが俺と父の悲願でしたから。

……魔界の王だとか言われてるミルドラースとも必然的に闘う事になるとは思いますが、まあ生きて戻ってみせます」

 

 

 そう言ってポワンにお茶を出すリュカは落ち着いて見えた。

 

 

(あの小さな子供が……)

 

 

 はるかぜのフルートを取り戻す為にベラが連れてきた少年は今や大人の男になった。

 当時からマセまくっていたし、あの時突然求愛された時の衝撃はまだ昨日の事の様だ。

 

 それからもう10年が過ぎている今でも、青年となったリュカは変わらずに自分に求愛をする。

 しかも自分との出会いを切っ掛けに、それまで旅先の年上の女性に対してとてもマセた事をしていたのも一切辞めてまで、リュカはポワンに対する想いを変えない。

 

 戸惑いはあるが、ポワンとしても……エルフの族長として、見た目の容姿とは裏腹に永く生きているとはいえ、彼のぶれぬ想いは悪い気はしない。

 

 

「なぁに、サクッとお助けしてから華麗に父さんとミルドラースをぶちのめして来ますよ。

ポワン様と結婚したいし!」

 

「ど、どうしてそこまで私を……?」

 

「初めて会った時から好きだからですよ。他に理由は一切無い」

 

 

 真っ直ぐな目。

 何時までも変わらない……大人になりきれない目。

 死んでもポワンを諦めないという意思を感じる瞳は、エルフの族長として生きる事を決めていた彼女の心を揺さぶる。

 

 

「……。アナタには敵いませんねリュカ」

 

「ふっふっふ、俺のしつこさは筋金入りですからね、何時までも言い続けるぜポワン様?」

 

 

 永く生きた自分にここまで言うものは他に居ない。

 マスタードラゴンでさえ顎でこき使い、妖精の女王にしつこい程、人とエルフはアリだよな? と聞いて頷かせたり……。

 そこまでしてまで自分を求めてくれる者など居なかったからこそ、ポワンは敵わないとリュカに微笑みながら吐露する。

 

 

「私は魔界の障気の関係で同行できません。役に立つことすらできません」

 

 

 サポートすら叶わぬ役立たずだ。

 そう告げるポワンは席を立ち、リュカへと近付く。

 

 

「アナタ達が無事に帰ってくる事を祈る事しか私には出来ません。

そしてアナタに私が出来ることは――」

 

 

 自分より背も高くなったリュカの前へと立ち、彼の頬を両手で触れ、少し爪先を立てて背伸びをしたポワンがそっと優しく口付けをする。

 

 五秒か……それとも十秒か。

 短いながらも確かに二人だけの世界となった時間。

 

 

「無事に帰ってきてくださいリュカ……。

私も、もうアナタから逃げませんから……」

 

 

 エルフの族長としてではなく、ただ一人の女として彼を包み込んだ。

 

 

「……………………………………………」

 

「え、リュカ―――ひゃん!? ちょ、ちょっと待ってください! 流石にまだそういう事をするのは……って、あ、アレ?」

 

 

 まさかの展開にリュカが全体重を掛けてポワンにもたれ掛かり、そのまま押し倒されたポワンも心臓を早鐘させながら、まだそれはダメだと言うが、リュカはポワンの胸に顔を埋めてピクリとも動かない。

 

 よくよく見てみると、なんとリュカは目を回しながら真っ赤な顔で気絶していたのだ。

 

 

「りゅ、リュカ?」

 

『意外と普通に正攻法に弱いんだよコイツは』

 

「え、えぇっ? そうだったのですか? 私はてっきり――」

 

『いや、お前からというのが一番大きいだろう。

何せガキの時初めて出会って以降、お前一筋を貫き続けている』

 

「それは嬉しいと思いますが……あ、あのー……リュカは何時目覚めるので?」

 

『知らんな。暫くそのままで居てやれ。目覚めた時、泣いて喜ぶぞ?』

 

「は、はぁ……。しかしこんな場面を誰かに見られたら誤解を――」

 

 

 案外普段の言動とは裏腹に初だったりしたリュカに押し倒されてる形でドライグと話をしていたポワンは、今の体勢は周囲から色々と誤解をされてしまうのではと心配したのだが……。

 

 

「「「………」」」

 

「あ……」

 

 

 その心配は、悪い意味で的中してしまった。

 よりにもよって、リュカを訪ねに来たビアンカ、フローラ、デボラの三人が見てしまったという意味で。

 

 

「……………。なにしてんのそこの小魚は?」

 

 

 まず口を開いたのは、デボラだった。

 体制的にポワンが押し倒されたのだろうと判断してるのか、風当たりこそポワンにはないが、リュカに対して酷く冷たい声だ。

 

 

「いけませんわリュカさんは」

 

「はーいリュカ~? そういうことはいけないから起きようね~?」

 

 

 フローラとビアンカがポワンから引き剥がす様にリュカを持っていくと、ペチペチと目を回してるリュカの頬を叩いて起こす。

 

 

「リュカがアンタを部屋に連れ込むのを見て、アンタが襲われると思って見張ってた訳だけど……」

 

「えっ!? み、見てたのですか……?」

 

「バッチリね。キスしたのもぜーんぶ」

 

「あ、あう……!」

 

 

 デボラの鋭い声にポワンは恥ずかしそうに俯くと、ペチペチやってるフローラとビアンカが、解ってはいるけど納得できてなさそうな顔で口を開く。

 

 

「再会した時からリュカはアナタしか見てないのは知ってたから、リュカも嬉しかったと思う。

で、その……か、感想はどうでした?」

 

「か、感想?」

 

「で、ですからリュカさんとのキスはどんな感じだったのかと! あ、あくまで参考程度にお聞かせ願いたいのです!」

 

「ど、どうもも何も……普通というか、その時だけは何もかも忘れられたといいますか……」

 

 

 なんでこんな恥ずかしい事を喋らされてるのだろうかとポワンは思うも、律儀に答えていると、リュカが復活する。

 

 

「………………。俺、今すぐにミルドラースをぶちのめせる」

 

 

 どうやら相当モチベーション的なものが高まったらしく、両目を赤く輝かせながら軽く興奮していた。

 

 

「やっぱポワン様は最高だった。くっくっくっ!」

 

「それはわかったけど、アンタもアンタでキスひとつで目を回してどうすんのよ?」

 

「天にも昇る気分だったんだから仕方ないだろ。つか、何で俺の部屋に三人が入ってんだよ?」

 

「い、良いじゃない別に。

私だってリュカと決戦前に悔いの残らない思い出を作りたいんだし……!」

 

「そ、そうですわ。

例えばその――平等に皆にキスなんか……」

 

「え、嫌だ。何でキミ達とそんなことせにゃならんのだ?」

 

「「「…………」」」

 

「りゅ、リュカ、そんなはっきり言っては……」

 

 

 しかし、相変わらずこの三人娘に対する態度は一貫しており、わざわざ勇気を出した言葉もアッサリ断ってしまう。

 

 

「てかさ、あの時俺が滅茶苦茶拒否したから、意地になってるだけだろ? ビアンカもフローラもデボラも他の男かなんか見つけて普通に暮らした方が良いぜ?」

 

「それが出来たら苦労しないし、アンタの理不尽さを間近で見せられた今となっては他の男じゃ満足できないわ」

 

「そ、そうそう! そもそもリュカが昔『ナイスバディ』になったら考えてやるみたいな事を言ってた癖に、全然ほったらかしにするのが悪いし!」

 

「そ、それに何だかんだ言ってても優しくしてくれますし、本当は私達の事も好きなんでしょう!?」

 

 

 しかし三人も引き下がらないし、どうしてもリュカが三人にもぞっこんな欲張り男という体にしておきたいらしい。

 特にフローラは事あるごとにリュカに手助けされてきたせいか、絶対自分の事も好きだけど素直になれないと思いたくて、軽くテンパってた。

 

 

「好きなんでしょうって……。

じゃあ今すぐここでポワン様とイチャコラすれば、それが全部違うって納得すんの? こんな風に」

 

「きゃっ……! そ、そんな……恥ずかしいですリュカ……」

 

 

 ぎゅーっとポワンを抱き寄せるリュカと、軽く吹っ切れたのか満更でもなさそうなポワンに、三人娘が軽くプッツンする。

 

 

「それをやれってんのよ私達にも!」

 

「嫌だ。俺は浮気しねぇし、そもそもそんな対象ちゃうし」

 

「い、いい加減素直になってよ! 最近また胸だって大きくなったのよ!? ポワンさんより絶対大きいし!」

 

「大きさとかそんなん関係ないし。

ポワン様の魅力はそういう事じゃないし」

 

「で、ではエッチな事でも構いませんわ! というか本当は……」

 

「その台詞を、えーっと誰だったかな? アンディってキミの幼馴染みに言えば即座に押し倒してくれんじゃね?」

 

「アンディは関係ないし、そもそもそんな仲ではありません! 逃げないでくださいリュカさん!」

 

 

 ギャーギャーと大騒ぎになるリュカ達。

 決戦前だが、どこか平和な時間なのかもしれない。

 




補足

イブールェ……。

小説版だと彼は元エルヘブン族でマーサさんの幼馴染みだった――みたいな設定を一部継承しつつのただの変態ストーカーだったというキャラに……。


その2
ヨシュアさんも無事でした。
そしてマリアさんは、歳の近い三人娘の拗らせっぷりを見て、リュカが若干心配になるとかなんとか。


と、言いつつ二人に鍛えて貰ってるヘンリーさんが気になって仕方ないとか。


その3
ポワン様、そろそろ受け入れる覚悟をする。

こうなってきたら三人娘が勝てないぞ! 早くしないとな!

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