色々なIF集   作:超人類DX

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えーっと……なんだろ。

爆発すれば良いのかな


生まれ変わって募る想い

 俺には兄弟も親も居ない。

 何故ならまだ幼い頃に母が俺に剣を残して消えたから。

 父親は俺の記憶する限り一度も会ったことは無いし、会う気も無い。

 

 何故なら父親は鬼の血を引く母から去った後、他の人間の女性と再婚して家庭を築いていたからだ。

 

 恐らく父は鬼の一族である母とその血を引いた俺を受け止められ無かったのだろう。

 それを責める気は無いし、今更俺が目の前に出て引っ掻き回したくはないし、腹違いの弟や妹に自分の存在を知られる訳にもいかない。

 

 普通に生きて行けるに越したことはないからな。

 

 

 

 そんなこんなで俺は去っていった母の残した財産なんかで細々と、散り散りになった他の鬼の一族達に世話になりながら生きてきた訳だが、今は友達と呼べる者達とも出会えたので、自分で言うのもなんだが中々充実した人生だと思っている。

 鬼の一族ではないただの人間で、とある悪魔の兵士として悶々とした生活をしていたあの記憶の自分よりは間違いなくな。

 

 まあ、結局今も俺は悪魔の眷属になってる訳だけど、デキ婚だかなんだか叶いもしない訳のわからん夢を抱いて生きていた悪魔生活と比べたら、今の方が余程建設的だ。

 

 つーか、記憶を持つだけであって、俺自身ソーナ・シトリーとやらの事はどうとも思ってないからだが。

 今の俺の主であるリアス先輩の弟らしいアルス・グレモリーに見てるだけでわかるくらいお熱だし、それを見た所で本当に何とも思わない自分が居るし。

 

 

「幻魔と人の間に生まれた者か……」

 

「? 何か心当たりがあるのかアオにぃ?」

 

「いや……遠い昔、そんな様な者とちょっと戦った気がしないでもないみたいな……」

 

「それって蒼鬼としての記憶か!?」

 

「多分。

けどぼんやりとしててよくわからねぇや」

 

「そっか。でもまぁ無理に思い出す事なんてないぜ。

アオにぃはアオにぃかもしれないけど、元にぃでもあるんだからさ」

 

「おう……」

 

 

 なんだろ。他人を好きになる感覚が俺にはよくわからん。

 悪魔兵士の匙元士郎は確かにハッキリとソーナ・シトリーに対して恋心を持っていたみたいだが、その記憶を持つ俺はどこかその気持ちを他人事として処理してしまっている。

 これは蒼鬼としての感覚の方が強く残っているからなのか?

 

 

「昨日の事を考えるとさ、悪魔と幻魔って似てるのかもな」

 

「どうかな、似てる様で非なる存在だと思うが……」

 

「まー確かに悪魔のリアスねぇを見てると違う気がするけどさ」

 

 

 考えても答えは出てこない。

 だから俺は深く考えるのはやめている。

 どちらにせよ俺自身はソーナ・シトリーやその眷属達に対して仲間意識はないからな。

 

 

「あ、見ろよアオにぃ、ソーナ・シトリーだ」

 

「指を指すなよ茜……」

 

「わりーわりー、でも一人でキョロキョロしながら廊下でなにしてんだろ?」

 

「生徒会長やってんだから忙がしいんだろ、放っておいてやれ」

 

 

 今こうして学校の廊下で偶々すれ違ったとしても、やっぱりどうとも思わない。

 そもそも俺はほぼ関わりが無いからな、これが普通だろ?

 

 

 

 柳生茜。

 戦国の世に生まれ、柳生家の末裔としてかつて幻魔と戦った柳生十兵衛茜の生まれ変わりにて、当時の記憶を多く持つ彼女は、幻魔が散り散りに消えた今の世においても『もしも』の事があってはならないと剣の技術を磨き続けた孤児の少女だ。

 

 創造神・フォーティンブラスとの一騎討ちと果てに勝利し、全てを終わらせる為にその身を犠牲に旅立った男の背は忘れたくとも忘れられない。

 

 

 桜を見たら、俺の事を思い出してくれ……時々でいい……

 

 

 そう告げて黒き鬼武者は消えた。

 その後、世には確かに平和が戻ったが、彼女は残党と化した幻魔の討伐の為に、そして慕った兄貴分の最後の言葉を忘れない為に最後まで剣を下ろすことはなかった。

 

 何年経とうとも、風に乗って散る桜の花弁を見る度に彼や仲間達との絆を思い返し、自らの生涯を閉じるその時まで彼女は決して忘れやしなかった。

 

 だからなのだろうか、ひょっとして散っていった鬼達の魂がそうさせたのだろうか。

 

 柳生十兵衛茜は現代の時代へと転生した。

 老いた身体から活力みなぎる未来を夢見させる赤子に。

 奇しくも柳生茜という同じ名で再び生を受けた彼女は、幻魔が消えた今の世にホッとしつつも、事故で親兄弟を失った孤児になってしまった。

 

 だがある程度成長していた彼女は、精神的には一応大人だったので、今の日ノ本を見て回るべきだと一人旅立った。

 戦国の世と比べ、色々と整備された今の世の中ではまだまだ子供でしかない身だと色々と大変だったが、それでも茜は幻魔が消えた日ノ本を――日本の姿をしっかりと――左の赤い眼と共に焼き付けながら知ることになる。

 

 この世には幻魔とは違う人ならざる存在が多く隠れ住んでいる事を。

 そしてその中には慣れ親しんだ鬼の一族が数を大分減らしながらも生きていることを。

 

 

 鬼ノ眼を持つ茜は直ぐにその一族が住むとある場所へと尋ねてみた。

 人の世に混ざり、普通に生きていた鬼の一族の者に自分の眼を見せた瞬間同族と理解して貰えたのは彼女にとって幸いだったのと同時に、柳生一族の末裔と白状したら、その一族夫婦がかつて共に戦った仲間の一人である天海の子孫だった事を教えて貰い、凄まじく驚いた。

 

 そしてその夫婦の息子にて、伝説の赤き鬼武者としての血をより濃く発現させた少年と、旅の途中で何度か襲いかかってきたので返り討ちにしてやった悪魔なる種族の同族である赤髪の少女。

 

 そして……。

 

 

『? なんだ、俺の顔に何か付いてるのか?』

 

 

 蒼鬼に比べたらどことなく頼りにならなそうな面構えをした――されど彼女が見た瞬間、間違いないと確信出来てしまった――生まれ変わりの少年と出会った。

 

 元士郎と呼ばれ、彼女と同じく親が居なくて一誠と呼ばれる少年の家に居候しているらしいその少年は、かつての若い頃の姿と一切変わらない姿である自分を見ても、何かを思い出す素振りはなかった。

 

 しかし茜はこの少年が、いや少年の魂が間違いなく自分が大好きだったんだと後に自覚した兄貴分なんだと頭では無く心で理解した。

 

 

『柳生十兵衛茜……? ………………………はぁっ!? お前がか!?』

 

 

 その証拠に名前を伝えれば、彼は心底驚いた顔をした。

 それは記憶にはないものの、彼の魂が記憶していたのだろう。

 

 後々聞けば、彼は自分が蒼鬼の転生体である自覚はしていて、時々幻魔と戦った時の夢を見る事があったとか。

 仲間達の事は覚えては無かったようだが、間違いなく彼の生まれ変わりだと確信した茜は、勝手に消えていった貸しを含めて二度と離れてやるかと元士郎にひっつくことに決めた。

 どうも蒼鬼と比べたらちょっとひねくれた部分はあるが、それはそれで可愛げがあるし、結局の所、蒼鬼であって蒼鬼でないのだとしても、根は似てるのだから関係なかった。

 

 何百年越しとなる再会は、例え相手が覚え居なくても果たされた。

 それが今の柳生茜としての人生であり、中々に充実したものなのだ。

 

 

 行ったこと無い学舎に共に通い。

 種族としては爪弾きになっている悪魔の少女や天海の子孫一家と心を通わせ。

 ちょっと下がスースーして落ち着かない女学生の制服をリアスに着せて貰い、元士郎に似合うか聞くだけでドキマギしたり。

 

 かつてとは違う絆を彼女は深めていったのだ。

 

 

 そして現在。

 リアスの眷属の一人として、元士郎や一誠と現代生活を満喫している茜は、男っぽい口調こそ直せなかったものの、その口調だからこそ一部の男子のツボを押さえてるとかなんとかで評価されながらの学生生活をしている。

 

 

「アオにぃ! 飯いこーぜ飯!!」

 

 

 再会した蒼鬼の生まれ変わりである元士郎に対する懐き度を日増しにアップさせ、かなり苦手な座学を我慢して受け、昼休憩になれば一つ学年の上の元士郎が居る教室へと飛ぶように訪れる。

 

 

「わかったから引っ張んなって。

オメーはホント元気だな」

 

「退屈な座学から解放されもすりゃあ元気にもなるぜ!」

 

 

 グイグイと引っ張る茜に元士郎は苦笑いしながら立つと、そのまま教室を出る。

 茜が入学した当初は元士郎のクラスメート達も下の学年である茜の襲来に驚いたりもしていたが、今では慣れたもので、オレっ娘萌えの男子達の嫉妬めいた視線以外は特に気にされる事も無くなった。

 

 今が楽しくて幸せで仕方ない。

 茜はただただ今を大事にこうして生きているのだが、勿論元士郎のもう一つの記憶――つまり別時代の元士郎自身の記憶の事も知っている。

 

 寧ろ蒼鬼の記憶よりもそっちの記憶の方がハッキリ覚えているという訳で、その記憶の元士郎がなにを好みにしていたのか、特に女性関係の事は聞いていた。

 

 それはつまり――知的な女性が好みであり、乱暴な言葉遣いである自分とは正反対な女子が好みなことを。

 

 だからリアスに倣って無理矢理口調を変えようとした時期があったのだが、元士郎はそんな茜に『無理に変えても疲れるし、自分らしくしろよ?』と普通に言ってくれたので止めた。

 

 

「「……」」

 

「……」

 

 

 ソーナ・シトリーの事はなんとも思ってない。

 本人はそう言うし、実際この世界の彼女はリアスの弟であるアルス・グレモリーにお熱なのも、何度か他の――女としてなら勝てる気がしない女子達と共に取り合いしていたので脈もへったくれも無い。

 

 今もそのアルス・グレモリーとすれ違ったので、一応軽く会釈を一緒にしたのだが、彼は常に女子が傍に居る。

 

 

「あれぞ所謂ハーレムって奴だな」

 

 

 眷属でもある女子達に囲まれながら歩き、関係ない女子生徒達からも黄色い声を出されてるアルスの背中を見ながら元士郎は小さく呟いたので、思わず茜は訊ねてしまう。

 

 

「えーっとさ、アオにぃもああいうの好きか?」

 

「それ前も聞いたろ?

俺は思わねぇし、四六時中ああも囲まれたら疲れそうじゃん。

それにアレのどこに羨ましさを感じるのか、クラスの男子達は相当羨んでるけど、俺にはさっぱりだ」

 

 

 解っていてもちょっと不安なので聞いてしまう茜に、元士郎はアッサリと返す。

 あの中にソーナが例え混ざってても同じ事を言ってたとは理解できても、ちょっと不安なのだ。

 

 

「てか、前も思ったが、なんでそんな事を気にするんだよ?」

 

「え!? あ、いやそのぉ……」

 

「まさかお前――」

 

 

 ジッと自分の眼を見る元士郎に、ドキマギしてしまう茜。

 頼りにならそうな顔ではあるが、顔立ち自体は決して悪くないと、元士郎に対して茜は思ってるので自然と顔が熱くなる。

 まずいバレた。よくわからないけど、こっちの気持ちがバレるのは何か悔しいと思ってて色々と言い出せてなかった茜は目を泳がせたのだが……。

 

 

「まさかアレが好きなのか? ……だとしたらマジで止めた方が良いぜ? 兄貴分としてはめっさ反対だ」

 

「…………………」

 

 

 全く見当違いな事を言われたせいで、ドキマギは一瞬でぶっとんだ。

 

 

「ちげーよ! アオにぃのばーか!!!」

 

 

 わざとやってるのかとすら思える程に的が外れてる事ばかりな元士郎に、茜は手こそ出さなかったものの本気で激怒してしまった。

 長いサイドテールの髪が揺れ、その背に鬼武者の幻影が錯覚する程の激怒っぷりに元士郎は慌てて謝った。

 

 

「ち、違うの? わ、悪い悪い……そんな怒るとは思わなかったぜ」

 

「今度言ったらぶっ飛ばすかんな……!」

 

「お、おう……。気を付けると同時にちょっと安心した

ぜ」

 

「つーかそもそも碌に話もしたことない奴なんかにそんな事思う訳ねーだろ。

オレをなんだと思ってんだよ……!」

 

「いや、最近リアス先輩と女らしい服を買いに行くらしいから、とうとうそんな相手が出来たのかと……」

 

「少なくともアレじゃねー! 服だってオレはアオにぃが――褒めてくれたらなって……

 

「え、よく聞こえねぇんだけど? 俺がなんだって?」

 

「な、なんでもねーよ! ばーかばーか!」

 

「???」

 

 

 一誠とリアスを見習えとこの時ばかりはそう思うしか無かった茜は、?を大量生産している元士郎の手を乱暴に掴むと、顔を見られない様にしながら引っ張って歩き出す。

 

 

(く、クソ! う、上手く言えない……! リアスねぇ、やっぱオレには無理だよぉ……)

 

 

 前世越しの想いは今のところ空回りなのだった。

 

 

「か、仮にもしさっきオレがリアスねぇの弟が好きとか言ってたらどうしてたんだよ?」

 

「え……? うーん、多分わかんねーけど、奴をぶっとばしてた……か? 無償に腹が立つし」

 

「な、なんだそりゃ? でもちょっと嬉しいかも……」

 

 

 終わり




補足

正当な子孫ですが、記憶も一番鮮明にある。

つまりリアスや一誠とまんま同じ境遇ではあります。

ただ、生まれ変わりの匙君に対してアレというか、ああいう今生の別れをしたので余計二度と離してなるものかという悶々とした思いが……。


その2
口調とは裏腹に女の子らしいことを実はやってみたいけど、結局できない。

最近はリーアたんに色々とレクチャーして貰い、フリッフリの洋服を着てみたけど、死ぬほど恥ずかしくなってリアスの背中にずっと隠れてしまってたとか。

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