色々なIF集   作:超人類DX

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その2っす。

これ、オーフィスたん編とは時系列が違います……今更ですがね。


人妻キラー一誠くん 人妻さんのガチ編

 兵藤一誠は人間だ。

 例え後々、鉛筆一本で神滅具を持つ英雄の名前を継ぐ青年の胴体を真っ二つにしようが、同じく二天龍の神滅具を持つハーフ悪魔をサッカーボール宜しくに蹴り飛ばそうが人間だ。

 

 それでも突っ込みどころは満載だが、彼の肉体は人間な事に代わり無いし、何も最初からこんなハチャメチャで理不尽な戦闘力を持っていた訳じゃない。

 寧ろ最初はそこら辺に居る普通の人間が如く脆い存在であり、年相応の少年だったのだが、それまでの環境ががらりと変わってしまい、その日を生きるのも危うい環境にブチ落とされてしまってから変わってしまったのだ。

 

 泥水を啜り、ゴミを漁り、盗みを働き……今までごく当たり前の家庭環境から、肉親も何もいない環境に陥れられた一誠の幼年期は、戦争孤児の様な生き方をせざるをえなかった。

 主人公と名乗る訳の分からない――自分と同じ顔をした少年がそれまで一誠幼年期の居た居場所を奪い取り、肉親やその周りの記憶から一誠の存在を末梢したせいで、そうせざる無かったのだ。

 

 だからこそ一誠は貪欲なまでに生きる事に対する汚さを得た。

 そして何よりも生きる為の知識を得て、誰よりもしぶとく生き残る決意を固めさせた。

 ゴキブリが如くしぶとく、鬼の様に強く。

 

 その意思をより強固にすればするほど、一誠の中に宿りし二つの無限と夢幻はより深くなる。

 強く、逞しく……そして途方もなき力を。

 

 その考えが歪に無限の進化を促し、その精神が歪に夢幻の中へとより一誠を導く。

 

 その経験があったからこそ、自由に生きる邪魔をする輩には容赦せず排除する。

 その相手が例え極上の女だろうが、悪魔だろうが、堕天使だろうが、天使だろうが、妖怪だろうが、神だろうが、何だろうが等しく平等に排除する。

 

 

 それが兵藤一誠という青年の――

 

 

「起きてください一誠様。朝でございます……」

 

「んー……」

 

 

 筈だった。

 少なくとも、数時間前までは。

 

 

「うぇ!? だ、だれ!?」

 

「……。寝惚けてるのですか? 私はアナタ様のグレイフィアですよ」

 

 

 金髪ロリっ娘堕天使と、金髪不死鳥悪魔ちゃんを蹴落とし、颯爽と現れた銀髪の人妻メイド悪魔が来るまでは……。

 

 

 

 そんなこんなで俺の生活は劇的な変化を遂げるかもしれない。

 

 何せ基本的に一人でやって来た俺にメイドさんが来たのだ……しかも夫と離婚寸前の人妻悪魔っていう属性つきで。

 適当に生きて、適当に楽した生活して、適当に楽しく過ごすというのを人生の動機として決めていた俺にとってすれば激辛ハバネロをコンソメスープにぶちこむが如く慌ただしくなるのが当然の結論として考えられる事なんだが、結局バタバタしちゃってたせいでハイと言ってしまった。

 確実に面倒事がデカくなる人を傍に置くことにしてしまったのだ……。

 

 

「朝食の準備が出来てます」

 

「あい……」

 

 

 この悪平等メイド悪魔さんをな……あぁ。

 

 

「朝食の準備の前に軽く掃除をしましたが、一誠様は毎回の食事をインスタント食品で済ませてるのでしょうか? 空のカップ麺の容器がゴミ箱を占拠しておりましたけど」

 

「え、ま、まぁ……自炊が怠くなると大体……」

 

 

 劇的すぎる展開から数時間後の……つまり朝。

 ところがどっこい夢じゃありません……という現実を見せつけられるが如く銀髪の美人な女性に起こされ、飯まで食わせて貰って色々と萎縮する気持ちで、久々すぎるまともでめちゃ美味い朝飯にありついてる最中、俺は何か怒られた。

 

 主に堕落しまくってた生活パターンについてに。

 

 

「駄目じゃありませんか、食うなとは言いませんがちゃんとした物を食べないと」

 

「は、はい……」

 

 

 ……。俺、何で朝から怒られんだろうかと思いつつも、言われてることはド正論な為に言い返せず小さくなりながら用意された飯を食べる。

 流石にあのマゾ魔王の妻やってる+グレモリー家でメイドさんやってただけあって作る飯が美味いんだが……。

 

 

「それに、何ですかこの本やDVDは?」

 

「ぶっ!!」

 

 

 ……。色々と目敏いというか……ベッドの下に放置してたお宝本やDVDをコッチに見せながら呆れ顔をする彼女が直視できない……。

 

 

「お年頃と言えばそれまでですが、一誠様ともあろうお方がこの様な物で誤魔化すのは如何なものかと……」

 

「ほ、ほっといてくださいよ……! それ含めて人生を此方は楽しんでるつもりんですから!」

 

「あっ……」

 

 

 女と縁が無いからこいうものに手を出すのであって、居たら最初から出さんわい! と半ばムキになりながらグレイフィアさんの手からひったくって飯を一気にかっこむ。

 クソ、妙に恥ずかしいのは何でだ……!

 

 

 

 

 多分、私の人生の中でもナンバーワンとハッキリ言える程、安心院さんから提案された話に全力で乗ったと思う。

 

 

『さて、この僕を何れは越えるだろう一誠も年頃の男の子となった。

あの野郎、最近はモテないと勝手に悲観してエロ本やエロDVDにニヤけ始めてるみたいなんだが、そんな奴に越えられても僕としては悔しい』

 

 

 悪平等(ノットイコール)

 それが私の本来の姿であり、安心院さんの分身でもあるのだが、安心院さんに呼び出されて集まった悪平等同士の会談の席……つまり夢の中で安心院さんが私や私以外の悪平等に向かって放った言葉は、久々に本気と書いてマジにさせる一言であった。

 

 

『だから一人……誰か一人悪平等(ぼく)で女の子の中の誰か、アイツの面倒を……うーんそうだなぁ、好きなだけ見てくれね? このままじゃアイツは童貞のまま童帝となっちまうからな』

 

『!?』

 

 

 人間が通う学舎の教室みたいな空間で、生徒の様に席に座る私達悪平等……それも女性限定である状況で教壇に立って語る安心院さんの言葉に私……そして小娘二匹は思わず椅子をひっくり返す勢いで立ち上がった。

 

 

『い、一誠様のお世話ですか?』

 

『しかも好きなだけっすか!?』

 

『うん、抱かれようが好きにすれば良いよ、というかそれが目的だしね。

ほら、関係ねー女とヤられても僕は嫌だからね……その分悪平等(ぼく)である君達の中でなら、まあ良いかなと』

 

『……』

 

 

 一人は家族ぐるみの悪平等の中でも末っ子のレイヴェル・フェニックス。

 一人は中級堕天使のミッテルト……。

 一誠様を交えた悪平等会合の際、露骨に接触しようとしていた小娘達が、あらぬ妄想で顔を染めながらキラキラした目で頷く安心院さんに大喜びし、身を乗り出す勢いで手を挙げて志願し始める。

 

 

『ハイハイ、ウチがやるっす!

ウチはまだ未経験だからちょうど良いっす! というかイッセーさんにメチャメチャにされたいっす!』

 

『いーや私が行きますわ! 私だって未経験ですし一誠様と歳も一番近いですし!』

 

『……………』

 

 

 当然私も手を挙げた。他の女性悪平等が騒ぐ二人に引いてる横で静かに挙手をする。

 数年前に初めて出会い、後継者足る圧倒的な覇気を持っていた少年・一誠様に遣える。

 あの変態マゾ男の妻を悪魔としてやらされてる事を考えれば当然の挙手だ。

 私は年下の男の子が好きなんだから仕方無いのだ。

 

 

『あぁっ!? 箱入り娘が無理すんなっす!

此処は何の柵もないウチがイッセーさんとイチャコラするっす!』

 

『あぁっ!? そんなチンケな姿で何をほざいてらっしゃるのかしら!』

 

 

 そうこうしてる内にミッテルトとレイヴェル喧嘩をし始めた。

 互いの身体的特徴やらをけなし合いながら睨み合っており、今にも掴み合いの喧嘩へと進みそうになっていたが、様子を暫く眺めていた安心院さんが手を叩きながら止めに入る事で一触即発の事態だけは避けられた。

 

 

『はいはいはい、熱く志願してくれたのは嬉しいけど喧嘩はしないでくれ。

取り敢えず志願したのはミッテルトちゃんとレイヴェルちゃん……それにグレイフィアちゃんの三人だね?』

 

『『は?』』

 

『………』

 

 

 安心院さんの声で漸く気づいたのか、黙って手だけを挙げていた私をミッテルトとレイヴェルが興奮した様子で見てくるが……それは無視して安心院さんに自分も志願する意思を見せ為に口を開く。

 

 

『一応、悪魔としてはグレモリー家でメイドをやっておりますし、お世話には自信があります。

それに未経験なのはそこのお二人と一緒ですので』

 

『ふむふむ……グレイフィアちゃんもね』

 

『は? グレイフィアって確か変態魔王の奥さんっすよね? おいおい、不倫とかありえねーっす』

 

『そうですわねぇ、仮にも魔王様の妻であらせられるグレイフィア様が不倫なんてしたから、何も知らない冥界連中によって三面記事確定ですわ』

 

 

 がっつかず、冷静に自分も候補としての条件は揃ってるとアピールする横で小娘二人が喧しいが無視する。

 あのマゾ男の妻なんてやらされてる理由と事情は悪平等内では知られてるのだ……今更そんな指摘なぞなんの意味もないし……。

 

 

『私が理由を話して離婚を切り出せば、あの男は大喜びの二つ返事で了承するでしょうね……。

ほら何の問題もない』

 

『『ぐっ……』』

 

 

 ちょっとだけ勝ち誇って言ってやれば小娘二人は悔しそうに言葉を詰まらせる。

 

 

『まあ……キミの場合は色々と貧乏くじだらけだからな。

僕としてもそろそろそんな扱いをされる悪平等(ぼく)は嫌だし、キミなら一誠を任せても良いかも――

 

『『安心院さん!?』』

 

『……と、言いたいけど、この通りミッテルトちゃんとレイヴェルちゃんも大層お熱だからね。

ここは平等にキミ達の持つ力量で競い、勝った一人が一誠の傍らの券を差し上げようじゃないか。

ホントは僕自身が行きたいんだけどね』

 

 

 そう肘を立てながら言った彼女の言葉に私は……そして小娘二人も無言で頷き、バチバチと火花を飛ばしてくる小娘二人を蹴落とす為だけに本気となることにした――

 

 

『よーし、ウチ全力だしちゃうもんね! バツイチ候補の年増にゃ負けねーっす!』

 

『全員潰す……! 一誠様のお側はこんなちんちくりんでも、こんなおば――いえ、女性じゃなくて私が……!』

 

『…………………大概にして頂きましょうか――――小娘共が』

 

 

 いえ、ぶちのめす事にした。

 久々に大人気ないと候補に立候補しなかった女性悪平等に引かれてしまっても関係無しに乳臭い小娘をぶちのめし、私は――

 

 

『……。私の勝ち。

ふっ、残念でしたね小娘共?』

 

『『ぐぬぬ……』』

 

『さぁてと、早いところ一誠様の下へ行こうかしら……小娘と遊ぶ暇なんてもう無いし』

 

『『むきーっ!!』』

 

『はいおめでとう。じゃあ一誠のこと頼むぜ?』

 

『はい、安心院さん……この身を全部捧げてまいります』

 

 

 一目惚れした彼の傍を勝ち取ったのだ。

 

 

 

 

「――と、まあこれが事の顛末でございます」

 

「……。ミッテルトとレイヴェルと、ねぇ……」

 

「ええ、それはそれは悔しそうに私を睨んでたしたわ……ふふふふ♪」

 

 

 朝食を片付け、歯を磨き、登校の時間までまだあるのでまったりしながらグレイフィアさんが此処に来た理由を聞いてみた俺だが、ちょっと微妙に後悔したかもしれん。

 というか俺の了承無しに勝手な事をしないで貰いたいんだがね、師匠め。

 

 

「ミッテルトとレイヴェル……か。確かに会う度に妙に距離感が近い気がしてたが……」

 

「む……やはり若い小娘が良かったのでしょうか?」

 

「いや……良いとか悪いとかじゃなくですね……」

 

 

 ミッテルトとレイヴェルの名を呟きながら思い返す俺にグレイフィアさんが若干ムッとなって見てくるので即座に首を横に振る。

 

 そうじゃなくて、ミッテルトもレイヴェルも友達だと思ってたからなじみのアホな提案にそこまで乗り気だったのがこのグレイフィアさん含めて信じられんのよ。

 

 

「あの俺のパクリな顔した奴じゃあるまいし、そう簡単に惚れられるとは思ってなかったというか……」

 

「いえ、私もミッテルトもレイヴェルも悪平等だからこそですわ。

例えば一誠様。只の女性に好意を向けられた事は?」

 

「……。ない、残念すぎることに」

 

「それが証拠ですわ」

 

「………」

 

 

 ふふん、とちょっと微笑むグレイフィアさんに俺は実に複雑な気分だった。

 だって言外にこの人から『お前はそう簡単に事情を知らない只の女性からは好かれんよ』と宣言されてるのと同義だし、現にその通りだから説得力的な意味でもあるのが悔しい。

 

 

「ハァ……まあ、グレイフィアさんの諸々事情……主に悪魔としての事情は順番に片付ける事にして、取り敢えず学校行ってきます」

 

「はい……お手数だらけで申し訳ございません」

 

「良いよもう……。

そこまで言われると捨て猫に情が移るみたいな気分だし」

 

 

 事情は分かったし、追い出すのも話を聞きすぎてかなり躊躇いがあるので腹を括る事にした俺はグレイフィアさんに家から出ないように命じて学校に行こうと靴を履く。

 

 グレモリー……チッ、学校の三年にグレモリーとその下僕に俺のパクリみたいな顔した奴が居るからなぁ。

 グレイフィアさんが俺と居るなんてバレたら絶対タルい事になるけど……それ以前にグレイフィアさんは悪平等(コッチ)側だ。

 つまり師匠の身内である彼女は責任もって守らんとならんのよ――――何よりドキドキする年上の女性だしね。

 

 

「それじゃあ……早めに帰りますから」

 

「はい……お待ちしてますわ一誠様」

 

 

 ダラダラした人生にちょっとだけハバネロをぶちこんだ人生となる。

 その第一歩が今からスタートすることになる……とちょっとだけ重い気分になりながら俺はドアを開けて外へと出るので――

 

 

「あ、ちょっと待ってください一誠様」

 

「え?」

 

 

 あった。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

色々と突っ切る人妻メイドさん。

 

 

「あ、ちょっと待ってください一誠様」

 

「え?」

 

 

 一誠は少しだけグレイフィアに対する認識が甘かった。

 

 

「申し訳ございません、2分……いや5分程お時間をください」

 

「は? まあ、余裕あるんで別に――」

 

 

 グレイフィアという悪平等(ノットイコール)だが、悪魔としては面倒極まりない柵を持つ者を抱える事でこれから起こるだろう様々な厄介事に多少の覚悟を入れたばかりの一誠を呼び止め、何だと振り返った一誠はギョッと――

 

 

「っむ!?」

 

「んっ……」

 

 

 する暇も無く、反応速度を軽く上回る素早さでグレイフィアが身を寄せてくると、そのまま接吻が幕を開けた。

 

 

「ん、んんっー!? は……か……な、なにを……むぶ!?」

 

 

 当然さっぱり意味と意図が掴めてない一誠がグレイフィアから一瞬だけ離れ、顔真っ赤で喚こうとする。

 

 

「あ、駄目です……あと15分だけ……」

 

「は、はぁ!? 2分ってさっき――ふみゅ!?」

 

 

 しかしグレイフィアは止めない。

 その気になれば突き飛ばせる筈なのに思考がショートして動けなくなる一誠と、押さえ込むのですら全力になってる銀髪の滅殺女王だの最強の女性悪魔…………とか言われちゃってるグレイフィアにヤられるが如く、再び腕を取られて引き寄せられると、またもや唇を塞がれる。

 

 

「ちゅ……はむ……れろ……んっ……!」

 

「ちょ、な……にゅ!?」

 

 

 しかも今度は思いっきり舌まで入れられていた。

 何かもう、一誠の頭はパンクしてしまい……最初は無駄な抵抗を続けていたが、やがてそれは無くなり……遂には――

 

 

「ん……ぷは」

 

「あ、あは? あはははははは?」

 

 

 ゆでダコの様に真っ赤になった顔で目を回して気絶していおり、唇を離したグレイフィアはその身を抱き寄せ、頬を染めて妖艶な笑みを浮かべてからハッキリこう言った。

 

 

「……。申し訳ありません一誠様、2分だけだと色々と駄目そうです。ですので後30分だけ……良いですよね?」

 

「ふへ、ふひゃ……!」

 

 

 ……。勿論、本日の一誠は余裕の遅刻で怒られることになるのは当然の話だった。

 

 

今度こそ終わり




補足

まあ、安心院さん主催のバトルロイヤルでミッテルトたんとレイヴェルたんをぶちのめして勝ち取りました……とまあ、そういう訳です。


んで、漸く願いが叶ったせいで色々と人妻さんは自重しなくなってきてる……とまあ、そんな所ですね。

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