色々なIF集   作:超人類DX

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展開がめちゃめちゃになっちまった。


悪魔をも引かせるマイナス

 やや強引ながらもマイナスパーティに加入出来てしまったミツルギは、マイナス達が本当に魔王討伐も考えてなくて、毎日をダラダラ生きているだけの集まりだと言うことを知っていく。

 

 何があったのか、アクセルの街に魔王軍の幹部クラスが軍勢を率いて現れたという事で緊急召集を掛けられていても参加せずにトランプをしてる。

 

 

「魔王軍の幹部が何故か冒険者の平均レベルが低いアクセルの街を襲撃しようとしているらしいが……」

 

「へー? そーなんだ」

 

「皆殺しにでもされるのか?」

 

「結構住み心地の良い場所だったけど、引っ越しも考えなければならないわねそうなると」

 

「いっそ冒険者も辞めてどこかの山奥でひっそり暮らすのも悪くないかも……」

 

 

 本当に他人事みたいに無関心な四人に、当初ミツルギは色々と困惑した。

 しかしこの四人――いや、厳密に言うとイッセーとソーナはこういう無関心を装うのにも理由があるということを最近ミツルギは知ったので街を守る為に行こうとは持ちかけない。

 

 

「はーいジョーカーだぜミツルギ?」

 

「ぐぬぬっ!」

 

 

 何せミツルギも基本的に己を鍛えてる以外は四人に合わせているスタンスになっているのだから。

 今だってトランプのババ抜きをしてカズマにジョーカーを引かされて悔しそうに顔を歪ませている辺り、本人も結構楽しんでいるのだから。

 

 そう、このマイナスパーティ+αは基本的に世界の危機に関心がない。

 あるのはその日を楽しくダラダラと隣人と馴れ合いながら生きる事だけ。

 

 

「俺がセンパイより早く上げれたらチューして貰うんだぜ……!」

 

 

 滅んでしまおうが、皆して思うのだ。

 

 俺は――

 私は――

 

 

 

『悪くない。』

 

 

 と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクセルの街に魔王軍が襲撃したけど、なにかしらの理由があってその魔王軍は撤退したらしい。

 ………みたいな話を街の人々達の会話から聞き、取り敢えず引っ越しの必要は無さそうだと思ったマイナス達は、ミツルギの『万能タイプ』な才能によって、魔剣で戦ってた頃よりも既に戦闘力が向上しているのを見て、プラスとの差に苦笑いを浮かべていた頃だったか。

 

 

「留守の様だったから勝手に鍵を開けて勝手に寛がせて貰ったぞ」

 

 

 今日もギルドにて安全性重視のクエストで生活費稼ぎをして家に帰ってきたソーナ、イッセー、カズマ、ゆんゆん――と、流石に可哀想だからと空いてる部屋を貸してあげる事で同居する事になったミツルギは、帰ってくるなり勝手にお茶を飲みながらマイホームで寛いでいる者にただ一言……。

 

 

「「「「「だれ?」」」」」

 

 

 顔の上半分がマスクで覆われた長身の男に向かって、全員が口を揃えた。

 あまりにも堂々と普通に、まるで昔からの友人です的なノリで不法侵入をされてお茶まで勝手に飲まれてるともなると、怒るというよりはこの目の前の男が誰なんだって疑問が先行するらしい。

 

 足を組ながら優雅にカップを傾けているその男の挙動を暫く見ていた五人に対して、見てくれからして怪しい男は口許に笑みを浮かべながらカップをテーブルに置く。

 

 

「ここ一帯の調査していたベルディアが珍しく根城を壊されて憤慨して襲撃をしようとしたのを見物しに来た時はさしたるものをこの街の人間達には感じなかった。

が、吾輩は感じたぞ………貴様達から放たれる美味の予感を!!」

 

 

 ピシッと無駄にかっこつけたポーズをするタキシード仮面みたいな男に、五人は取り敢えず互いの顔を見合せ――

 

 

「やばいよ、頭イッちゃってんだろアレ?」

 

「間違いなくイッてるわね。

変な薬にでも手を出したのかしらね?」

 

「どこから見てもスピリチュアルの方がイッてるとしか思えないしな……」

 

「もしくは酔っぱらいさんとか……」

 

「しかしどこかで見た様な……。

どちらにしても帰って貰う他ないのは間違いないが」

 

「……………」

 

 

 ヒソヒソじゃなくて普通に聞こえちゃう声量で、ヤバイ奴認定の話をしていた。

 そのあまりにもハッキリした言い方に、聞こえてしまってる男は若干ながら微妙な気分になる。

 

 

「吾輩を知らないのか? ご近所の主婦にも人気なバニルさんを?」

 

 

 いくら低レベル街とはいえ、魔王軍幹部たる己を知らないのかとわざわざ名乗り始めるバニルなる男は、仮面越しにソーナを真っ直ぐ見る。

 

 

「特に貴様は吾輩と同レベルの存在だろう? 貴様の名は知らないし、何故人間と共にしているのかも興味深いが、吾輩を本当に知らないのか?」

 

「同レベル? あぁ、貴方悪魔でしたのね?」

 

「そうだ。魔王より強いかもしれないバニルさんだが、貴様の名前は?」

 

「ソーナ・シトリーですが、私もバニルという悪魔は知りませんわね」

 

 

 同属である事を既に見抜いているバニルに名乗り返すソーナ。

 

 

「ソーナ・シトリー……? 吾輩も知らない名だし、シトリーの名は既に滅んでいる筈だが……」

 

 

 どうやらこの世界に存在したシトリーという悪魔は既に消滅したらしい。

 別に興味はないソーナは勝手に考え始めてるバニルを無視してると、バニルの名を聞いて何かを思い出したミツルギが警戒心を剥き出しにしながらバニルに向かって身構えた。

 

 

「思い出した! 魔王軍の幹部の一人……!」

 

「幹部? このスピリチュアルがイッてそうなのがかい?」

 

「変態そうな顔してそうなのがか?」

 

「あ、そういえば私も聞いたことが……。

でもこんな方だったんですね」

 

「……………温厚な吾輩でもキレるぞそろそろ」

 

 

 ナチュラルに、息をするかの如くディスってくる、美味そうなどす黒さを放つ三人の人間にくちもとをひくひくさせるバニル。

 美味そうな気配をたどってみれば、自分に近い気配を持つ少女と、人間とは思えないものを放つ三人の人間と――なんか知らないけどオマケ一人。

 

 

 

「それで、悪魔がわざわざなんの用でしょうか? 私は貴方とは別の世界から転生させられた悪魔ですので、系統は違いますよ?」

 

「む、名を聞いたことが無かったと思っていたら、そういう事だったのか貴様等。なるほどな」

 

 

 色々と知ってるバニルさんも自称するだけあってか、ソーナの言葉の意味を直ぐに理解し、ちょっとした怒りを抑えて座り直した瞬間――――

 

 

「っ……!?」

 

 

 ソーナとイッセーが薄ら笑いを浮かべながら、バニルですら戦慄を覚える極大の(マイナス)を放たれ、身体が硬直した。

 

 

「座り直すなよ悪魔さん? 俺達はアナタにさっさとお帰り願いたいんだぜ?」

 

「なんの目的かなんて聞くもないし、協力する気も無いし、興味も関心もありません。

ですのでこのまま黙って消えて貰えませんか?」

 

「…………」

 

 

 それは悪魔であるバニルですらおぞましさを覚える極悪な負の感情であり、ひょっとしたら夢にまでみた極上の馳走なのかもしれない。

 だがその馳走はあまりにも負が強すぎて、喰らったら毒の様に己自身が逆に食い荒らされるのではないかという『恐怖』を感じてしまう。

 

 

「素晴らしい……! 吾輩が思っていた以上だ!」

 

 

 しかしバニルは破滅願望があった。

 故にこの毒かもしれないが、馳走でもあるかもしれぬ未知なるものを前に歓喜の感情が沸き上がる。

 ましてや、悪魔であるソーナはまだわかるとして、そのとなりに立つ男までも同等のものを保持していて、更に言えばその後ろに居る紅魔族らしき少女と、もう一人の男もまた二人に次ぐ気配を感じるのだから。

 

 ………ミツルギは別にどうとも思わないが。

 

 

「こんな所でまさかこれほどの材料に出会えるとはな! はははは! 良いぞもっと吾輩に見せろ! 吾輩にその感情を喰わせろ!!」

 

 

 喰ってみたい。いや今すぐ必ず食べてやる。

 舞い上がったバニルは四人に向かって挑発をしてその感情を引き出そうとする。

 

 

「夢のひとつがもしかしたら叶うのかもしれない! 早く吾輩に怒りを見せろ! 羞恥を見せろ! 失望してみろ! その感情こそ吾輩の求める美味―――」

 

 

 食う為に引きずり出すには何をすれば良い。

 この家を壊してみたら感情がもっと剥き出しになるのか? そんな事を思いながら手始めとばかりに部屋のものを適当にぶっ壊してやろうと手を伸ばしたその瞬間だった。

 

 

「!」

 

 

 バニルの身体から力が突如として抜け、床に倒れ込んだ。

 

 

(な、なに!? う、動けん!)

 

 

 身体の自由が効かない。

 動こうと身体に指令を送っても指ひとつすら動かせない。

 初めての経験に驚くバニルは床に這いつくばる形で顔だけを上げると……。

 

 

「始めさせる訳がないだろ?」

 

 

 濁った目をしたカズマが手を翳しながらバニルの前に立っていた。

 

 

「お前の意思や行動を始めさせない」

 

「始めさせない……?」

 

 

 何を言われているのかバニルにはわからなかった。

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 

 何故なら、その次の瞬間バニルの全身には巨大な釘と杭が刺し込まれていたのだから。

 

 

「夢だかなんだか知らないけど、初対面の人にそんな事を言われてもドン引きするだけだぜ悪魔さん?」

 

「こ、これ……はっ……!」

 

 

 痛みが無い。

 それが却って不可解で不気味だったが、その瞬間バニルの視界が暗黒に染まる。

 

 

「前、アンタみたいにうるさいくらい絡んできたメンヘラ構ってちゃんが二人ほど居たんだけどさ……。

その時俺は言ったよ――『人の生活圏に土足で入り込んで来る奴は馬に蹴られて地獄行き』だってね。

俺達の家に土足で上がり込んだばかりか、勝手にセンパイのお気に入りのカップをベロベロ舐めながら茶なんざ飲んでるのを見せられたら、いくら俺でも笑えないな?」

 

 

 目を塞がれたのか? いや違う、自分の目が機能していないんだと、イッセーの声を耳元で聞かされながら、見通すものが『消えている』事に気づくバニルはゾッとする。

 

 

「だから今、アンタの持つもの全部を否定した。

この世界の魔王より強いんだって? じゃあその全部を否定した今、アンタは魔王より強いのかな?」

 

 

 

 ――――………そこら辺のキャベツにすら殺されかけるくらい俺と同等になってても?

 

 その言葉にバニルは何をされたのかを断片的ながらも理解するのと同時に冒険者の持つスキルとは全く違う何かによって何かをされた事に気付いた。

 

 そして……。

 

 

「でもアナタがさっきハイテンションでぶちまけていた夢を奪うのはしのびないから、私からひとつプレゼントを差し上げます」

 

 

 最後は、同族ならぬ同属だと思っていたけど別物だったと今になって理解したソーナからの贈り物だった。

 

 

「一生夢を追い掛ける人生は素晴らしいわ。だってそれだけでも生きる意味になるでしょう? 大丈夫、イッセーとカズマのスキルは明日になれば解除されるから引き続き夢を追い続けられるわ」

 

 

 悪魔をも魅了する悪魔の囁きに心が初めて揺れ……。

 

 

「…………だから、この先死んでもアナタは夢を叶えるという『真実』に決して到達しないけど、夢は追い掛けてこそ夢なんだから別に構わないわよね? だってその方が生きる目的にもなるし、私たちは『悪くない。』」

 

 

 同時に夢を叶えるという『真実』に到達できないという絶望の宣告を……。

 

 

「ゆんゆん……よく見てなさい。これが私達という事よ」

 

「は、はい!」

 

「で、ミツルギ君的にどうよ? ドン引きしたか?」

 

「いや、寧ろここまでやらかせると思うと清々しさを感じてしまうな。キミ達は本当に……凄いよ」

 

「人に褒められたのって生まれて初めてだぜ」

 

 

 それが混沌よりも這い寄りまくるマイナス達。




補足

夢を叶えるという真実に決して到達しない。

……一番えぐいかもしれない使い方だよねこれ。

特に叶えたい夢を強くもってる者にしたら地獄でしかない。

しかもオマケにちゃっかりと『死』という真実に到達させない仕込みもしたので死にたくても死ねない。

その内彼は考えるのをやめた………なんて。


その2
着々と退化しまくるカズマきゅん。

そんな背中を見てほわぁってなるゆんゆんちゃま。

友達同士って素敵よね?


その3
ミツルギ君、メンタルは変わらずに順応だけしてるという変な強さ。

特別レベルままマイナスのやり方に順応してるって逆に凄いというね。

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