色々なIF集   作:超人類DX

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そーいや、この二人を題材にしたクロスはそんなやってないことに気付いた。

なので突発的な発作でやってみよー……みたいな?


マイナス一誠とシトリーさんと……………?
マイナス一誠とシトリーさんと…………?


 理解された事なんて、本当の意味ではきっと一度も無かったと思う。

 

 だからニートみたいな生活に浸り続けた訳で、それを両親は俺を気味悪がり続けていたから注意だってしなかった。

 

 どうせ外に出て無意味に嫌悪感を向けられるのであるのなら、誰とも触れ合わない方がお互い傷付く事だって無いし、この先死ぬまでこの無意味で無価値で無関心な生をやり続けなければならないのだと俺は思っていた。

 

 そう……週刊誌の付録がどうしても欲しくて、偶々外に出歩いた瞬間大型トレーラーに轢き殺されて体がグチャグチャにされるその瞬間まで。

 

 

 運が無いのは何時もの事……。

 それが偶々今日になって最大の運の無さが発揮されただけに過ぎないし、どうせ自分が死んでも誰も悲しまない。

 だから俺は自分の切断された右足と右腕をボーッと見続けながら、無意味で無関心で無価値で無能で無駄な短い人生に幕を閉じる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ながらアナタ達は死んでしまいました」

 

 

 ―――――本当に存在していたらしい死後の世界で、見てくれだけなら可愛いと思えるだろう女の声に起こされるその時までは。

 

 

 

 

 

 

 佐藤カズマは所謂転生者である。

 無意味に無価値に死んで終わりと思っていた彼は、死後の世界で女神を名乗る女によって異世界転生を『頼んでも無ければ望んでもない』のに無理矢理『ノルマ』がどうだとかという理由でさせられ、元居た世界とは文明から成り立ちまでの何もかもが違いすぎる世界に飛ばされてしまったのだ。

 

 最初から運だけは無いと思っていたカズマにしてみれば、ありがた迷惑も甚だしく、転生させてくれた女神に一言文句を言おうにもその女神は居ない。

 

 別に何か特別な力を貰うでも無く、ただただ無理矢理転生させられた彼は当然元の世界での生活よりも酷く絶望しかけた。

 

 しかし彼は最後の最後に運を――いや、これは果たして幸運なのかどうかは定かではないが、彼と同じタイミングで死んで転生させられた二人組と同じ場所に落とされ、行動を共にできた事で今日まで生きることが出来た。

 

 

「慣れてくるとこの世界のご飯もおいしーねセンパイ?」

 

「そうね。少しゲテモノ寄りなものもあるけど、食べてみると案外美味しいわ」

 

 

 それがこの二人組。

 歳が自分と然程変わらぬ少年と少女。

 この二人もまた女神によって断りもなくノルマこなしを理由に転生させられた者であり、驚く事にカズマとは更にべつの世界に生きた者らしい。

 その証拠に、今異世界の料理屋にてご飯を食べている眼鏡を掛けた黒髪の少女はなんと人では無く悪魔という種族であり、当初信じてなかったカズマも少女の背に現れた悪魔の翼を見て信じる他なくなった。

 

 

「カズマくんも食べなよ?」

 

「お腹を空かせていると夜眠れなくなるわよ?」

 

「おう」

 

 

 それだけでもビックリなのだけど、カズマにとって何よりも驚いたのは、この二人があまりにも――感覚的な意味で自分に似てる気がしてならなかったのだ。

 まるで朝起きて洗面台の鏡の自分を見る様な―――そんな感覚が二人から感じるのだ。

 

 その証拠に、二人は自分を見ていきなり嫌悪感を示さない。

 ……まあ、この異世界が全体的に元の世界と比べると自分に嫌悪を示す割合は少ないが、それでも初めて普通に自分に接してくれる二人に対して『惚れやすい』性質を持つカズマはすっかり気を許して懐いていた。

 

 

「この世界の魔王を倒す為にとあの女神は言ってたんだけど、別に他の誰かがやれば良いと思うんだよ俺は?」

 

「そうね。

というか私ってカテゴリー的には敵側だと思うのよね」

 

「しかも元の世界の魔王の妹だしねセンパイって」

 

「へぇ? ソーナのお姉さんってどんな人なんだ?」

 

「エキセントリックだよ。

凄いコテコテの魔法少女コスプレする感じでね」

 

「……ちょっと見てみたいなそれ」

 

 

 互いの元の世界についてを語り合った結果、カズマは寧ろこの二人の世界の方がちょっと危険な感じはするけど生きやすいのかもしれない……と思っていて、ソーナと呼ばれる少女の姉の話を聞いて是非とも拝見してみたいとも思っていた。

 

 

「二人が羨ましい――というか、俺も探したらもしかして居たのかもしれないな……」

 

「聞いてる感じだとどうかな。

素養のある者ってその者同士が自然と引かれ合う様に出会うし、俺のセンパイの場合もそんな感じに出会ったもんな?」

 

「そうね。

だからこうして私とイッセーはアナタと出会った――と思うわ」

 

「俺だけかぁ……絶望しかねーな」

 

 

 イッセーと呼ばれた青年とソーナと呼ばれた悪魔の少女の言葉にカズマはフッと諦めの入った笑みが溢れてしまう。

 遅かれ早かれ自分は元の世界では生きていけなかったと、少なからず自覚もしていたせいか、二人を見ていると余計笑えてしまうらしい。

 スープ飲むカズマは、自然と惹かれ合っているイッセーとソーナがちょっと羨ましいと思ってしまう。

 

 もし自分の世界に自分と同じモノを抱えた異性が居たら、あんなに腐りきっては無かったのかもしれない……と。

 何を言われようが、後ろ指を刺されようが、それこそナイフでめった刺しにされようがヘラヘラと笑えていたと思うと余計に……。

 

 

「この世界に居るのかな……()()みたいな奴」

 

「自分から探した試しは無いけど、もしかしから居るかもしれないぜ?」

 

「あまり悲観しないても大丈夫よカズマ君。

元の世界と違って、引きこもりをしてようが、何をしてようが私達はアナタを否定なんてしないわ」

 

 

 あぁ、そうやって優しい言葉をかけてくれるなんて無かった。

 自分が更に腐っていくこの感覚はとても気持ちが良い。

 カズマは二人の無意識に放つ強烈なマイナスのせいで他の客はおろか店員すら口を押さえながら吐き気を我慢している中ただ一人、心地良いものを感じながらパンを噛るのであった。

 

 

「魔王倒すよりトモダチ探ししてる方が良いぜ」

 

 

 佐藤和真

 

 元の世界でただ一人、特大の過負荷の素養を持っていたが故に碌な人生を送ること無く大型トレーラーに轢き殺された青年。

 

 素晴らしいかどうかもわからぬ異世界にて、更に別世界の自分と似ている男女ペアによって急速に過負荷化が進み、現在この世界で自分と同じ者を探す事を目的に生きている。

 

※過負荷なら誰でも構わないが、欲を言うなら女性。

理由・自分が何者かを教えてくれた男女ペアを見てると羨ましくてたまらないから。

 

 スキル・???

 

 

「そうそう、ギルドのお仕事も低賃金だろうとも危険の無いものにした方が良いに決まってるぜ」

 

「魔王とやらは他の誰かがやってくれるでしょうしね、その内」

 

 

 兵藤一誠

 

 理由ありき卑屈な人生を送っていたが、自分と同じ素養を持つ悪魔の少女との邂逅と繋がりと『体感』によって退化し続ける過負荷。

 他にどんな過負荷の女性から迫られても悪魔の少女一筋を通しきる青年。

 

 過負荷・幻実逃否(リアリティーエスケープ)

 

 今在る現実を否定し、打ち立てた幻実へとねじ曲げるスキル。

 

 

 ソーナ・シトリー

 

 悪魔の歴史の中で突然変異として生まれた悪魔でありながら過負荷でもある少女。

 イッセーと互いの好意に『嘘』が無いかを確かめる為に顔面の皮を剥がされ、そして剥がしても変わらぬ想いを自覚する事で急速に退化した少女。

 

 過負荷・悪循完(バッドエンド)

 

 あらゆる『真実』という結果に到達させず、過程を永遠に、強制的に、繰り返させ続けるスキル。

 

 

 

「それにしてもさ、よく悪魔のセンパイをあの女神って人は転生させる気になったよね」

 

「どうせ『ノルマ』ってのをこなす為に考えもせずにやったんだろ。

思い返してみたらかなりいい加減な顔してたしな」

 

「そのいい加減さのお陰でこの場所でイッセーと生きられる事を思えば、嫌味とかじゃなくお礼がしたいわね」

 

 

 混沌よりも這い寄る過負荷パーティ。

 

 

 

 

 

 

 

 本来なら女神を道連れにした波乱万丈な異世界生活を送る筈だったカズマだが、過負荷という素養を持つがゆえに女神とはそれっきり会うことも無く、代わりに別世界の過負荷の二人とトモダチ探しの為の異世界生活を送っている。

 

 故にだ……。

 

 

「!? アンタどこかで見た気が……あぁっ!? 思い出したわ! アンタを転生させたせいで上司からこっぴどく怒られた悪魔女!! …………と、オマケ2匹!」

 

「自分で転生させておきながら随分な物言いですね……」

 

「オマケ2匹だってよ俺たちは」

 

「所詮俺達なんてそんなもんだから気にするなよカズマくん。

寧ろ罵られてもヘラヘラ笑うんだよこんな時は」

 

 

 何故かその女神と、女神としての力を失った状態で再会し、ソーナに対して種族的な意味で対極した位置にいるせいか、かなり敵意を向けられても決してその後共に行動することなんて無い。

 

 

「アクア、一体誰を相手に―――っ!?」

 

「?」

 

「ん? 彼は誰なんだ? 俺達を見てギョッとしてるけど……カズマの知り合い?」

 

「あんな絵に書いたイケメンフェイスの男とトモダチになった記憶はないな俺には」

 

 

 何故なら本来そのカズマの立ち位置には見知らぬ青年が居て、ソーナ、イッセー、カズマの三人を見て死ぬほど驚いた顔をしているのだから、今更関われる隙も、また関わる気だってない。

 

 

「え、二人は恋人同士……なのか?」

 

「そうだけど、何でそんなに驚かれるのかな?」

 

「い、いやべつに……」

 

「どこかで会った事でもありましたか?」

 

「な、無いけど……」

 

 

 知識とはまるで違うカップリングにただ驚かれたりもしたけど、べつに関係なんてないのだ。

 

 

「おやまぁ、彼と女神さんのもとに癖のある女の人達が集まってらぁ」

 

「……。良いなぁ、俺もあんな風にトモダチができたら……」

 

「一応私達が居るけど、やっぱり不満?」

 

「そんな事は無いぜ。

けどソーナとイッセーみたいな関係になれる様なトモダチが欲しいんだよ」

 

「ふーん、それを見てるとあの人達の場合はカズマの求めてる感じとは違うんじゃないかしら?」

 

「確かに、慌ただしいだけに見えるもん」

 

 

 本来深く関わる事になる筈だった女性達との縁は無く、遠くから見ているだけ。

 だから彼等が騒動を起こす外側でちまちまとしたお仕事をしながらトモダチ探しを続行し続ける。

 

 トモダチが欲しい。

 イッセーとソーナの様な、決して裏切る事なんてありえない絶対的な繋がりが自分にも欲しい。

 

 皮肉にも二人の存在を知ったお陰で、元の世界よりも遥かにアグレッシブになっていたカズマは、自身の抱える素養をよりダメな方向に研ぎ澄ませていくカズマは、この世界において『ヤバイ』方向へと覚醒していき――密かに滞在している女神達にすら思われ始めてきた頃――

 

 

「そうか、キミが俺を呼んだんだな?」

 

「え……」

 

 

 カズマは遂に自分の足でたどり着く。

 この世界に住みながら素養を持つ者を。

 

 

「キミは引力ってものを信じるか? 今こうして偶然にも向かい合えた事への意味を?」

 

「引力……?」

 

「そう。俺はずっとトモダチが欲しいと思いながら今日まで探し続けた。

只のトモダチではなく、『同じモノ』を抱える者同士というトモダチがね」

 

「トモダチ……」

 

 

 ソーナとイッセーが言っていた通りだったとカズマは、自分と同じ目をした少女を真っ直ぐ見据えながら思った。

 過負荷同士はいずれ引かれ合う事を。

 そしてこの少女……

 

 

「年はいくつだ?」

 

「えっと14歳です……」

 

「そうか……………………………………え、14!?」

 

「(ビクッ!?)あ、あ、ご、ごめんなさい……!」

 

「い、いや驚いただけだよ。

ちょっと大人びてるように見えたものだからさ……」

 

 

 思ってたより少女の年齢だった少女に対してカズマはトモダチになりたいと思っていた。

 やっと見つけた同じ者として。

 

 

「率直に言うと俺はキミとトモダチになりたい」

 

「と、トモダチ……わ、私なんかと友達になってくれるのですか?」

 

「なんかだって? 他がどんな評価をキミにしているかなんて知らないが、俺はキミが実に魅力的に見えるぜ?」

 

「み、魅力的だなんて! そ、そんな……は、初めて言われました……」

 

「じゃあ節穴だなソイツ等は」

 

 

 女性なんかナンパしたことないカズマだが、やっと見つかった友達になってくれそうな少女を前にテンションが上がりまくってるのか、端から見たら完全にナンパしてるだけのチャラ男にしか見えない。

 しかしこの少女……年が年なせいなのか、拗らせてきたせいなのか、言葉尻はともかくかなり真剣に友達になってくれと言ってくるカズマに対して結構ときめいていた。

 

 

「ん? アンタは確かあの悪魔女のオマケその2じゃない? 一人で何してんのよ?」

 

 

 だがそこはマイナス。

 彼は笑えぬ程に運に恵まれていなかったのと、イッセーとソーナとは不運にも別行動を取っていて一人だったのもあってか、自分を転生させた女神とそのお仲間に目撃されたばかりか絡まれる事で意図せぬ妨害に逢う。

 

 

「う……し、暫く見ない間に余計目が腐ってるわねアンタ」

 

「頼むから放っておいてくれ、俺は今やっと――」

 

「んー? あー! ゆんゆんじゃないですか!」

 

「め、めぐみん……」

 

 

 その女神が居るパーティの中にチビッ子が存在するのだが、どうやら知り合いだったらしい。

 驚くめぐみんとは逆にコンプレックスを持っていたらしいゆんゆんは出来れば顔を合わせたくは無かったと俯く。

 

 

「じゃあ紅魔族なのねアナタ? で、コイツに何かされたの?」

 

「何かをしでかした前提で話すのはやめろよ。

俺はただ――」

 

「犯罪者みたいな目をしてるんだからそう思われてもしょうがないじゃない? ねぇライカ?」

 

「……………」

 

 

 初対面の時に何故か自分とイッセーとソーナを見てギョッとしていた青年に女神のアクアが話を振る。

 このライカと呼ばれた青年とはどうにも反りが合わず、何時だったか見た御剣響夜よりももっと反りが合わなかった。

 

 それは彼が女だらけのパーティでメンバー達から好意を寄せられてる事によるものでは無く、元の世界で自分を嫌悪してきた者達に似た目を向けてくるからだった。

 

 

「めぐみんの友達なら、今から飯にするのだけど、キミも良かったらどうだ?」

 

「え……ぁ……」

 

「………………」

 

 

 手を引かれたゆんゆんがカズマに不安そうな眼差しを向けるが、カズマは何も言わずに敢えて無言を貫いた。

 

 

「めぐみんの友達らしいから連れていくけど良いよな?」

 

「………………。さてね、俺に聞かずに本人に聞いたらどうだ?」

 

 

 相変わらず嫌な目を向けてくる。

 イッセーにも同じような目を向ける癖にソーナには何故か向けない男が妙に気にくわなかったカズマはつっけんどに返すと、そのまま踵を返して帰る事にした。

 

 折角友達になれそうだったのに……という残念な気持ちを隠しながら。

 そしてちまちまと働いて、三人で出しあって手に入れた小さめのマイホームに戻ったカズマは、先に戻っていた二人に泣きながら話した。

 

 

「やっと見つけた、友達になれそうな人だったのに……ぐすっ!」

 

「元気出しなよ。

まだ友達になれないと決まった訳じゃあないだろう?」

 

「そうよ、そんな不運にだってヘラヘラ笑ってみせなさいな?」

 

「ううっ……!」

 

 

 ポンポンとテーブルに突っ伏しながら泣くカズマの背中を優しく撫でるソーナとイッセー。

 その気持ちはとてもカズマにとってありがたい事だったけれど、やはり友達になれたかもしれないと思うと残念で仕方なかったというのは否めない。

 

 だがカズマは切り替える事にした。

 まだまだこの世界の事は知らないことの方が多い。

 だからきっとまだ友達になってくれる人は居るはずだからと……。

 

 だが彼の本来持つ高い幸運が、マイナスによって寧ろ退化しまくっていた運が初めてまともに働いた。

 

 

「あ、あの……!」

 

「……! キミは昨日の……」

 

「む、ねぇセンパイ、あの子がもしかして……」

 

「そうね。なるほど、良いセンスをしてるわカズマ君は」

 

 

 気持ちを切り替えて友達探しをしよう。

 そう思って付き合ってくれたソーナとイッセーと共に別の街にでも行ってみようかという話をしながら郊外への道を歩いていたカズマを呼び止めた昨日の少女。

 

 びっくりするカズマの横でソーナとイッセーが、街中を探し回ったのか、少し息を切らせている少女を見ながら、泣くほど残念がってた理由を『納得』している中、暫くカズマとゆんゆんと呼ばれた少女は気まずそうに向かい合う。

 

 

「き、昨日はごめんなさい。

何も言えないままあんな事になってしまって……」

 

「いや……友達が居たんだろ? 楽しかったか?」

 

「……それが、正直ちっとも。

皆さんが楽しくお話しているのをただ見てただけなので……」

 

「? あのチビッ子とは知り合いだったんじゃあ……」

 

「同郷の者ってだけです。

寧ろその……苦手でした、昔から……」

 

 

 めぐみんと呼ばれた少女と同郷の者で、知り合いではあるが寧ろ苦手にしていたと吐露するゆんゆんにカズマは何て言ったら良いのかわからずに閉口してしまう。

 

 

「あの男の人は色々と話し掛けてくれたのですけど、その度にめぐみんが怒るし、居心地が悪くて……」

 

「あ、ふーん……」

 

「あの男の人って誰だっけ?」

 

「女神さんと一緒に居る彼のことじゃないの? あんまりにも興味ないから名前なんて知らないけど」

 

「あー……そういや御剣君だっけ? 彼がボコボコに伸されてたねその彼に。

あんまりにも見てて可哀想だったから傷を否定してあげたら凄い感謝されてムズ痒かったなぁ」

 

「誰かに感謝をされるってほぼ生まれて初めてだったものね?」

 

 

 二人が話してる間暇なので、地面を使って◯×の三目並べをして遊びながら敢えて黙ってカズマを見守るソーナとイッセーはどうやら女神のパーティに居る青年の事はほぼ覚えてないらしい。御剣響夜の事は結構覚えてるらしいが。

 

 

「それであの……貴方の事を探してて……」

 

「うん……」

 

 

 ソーナに詰みを掛けられて『アチャー負けちゃったよ』と三目並べにイッセーがまた敗北してるそんな最中、緊張した面持ちでなにかを言い淀んでいるゆんゆんにカズマは待った。

 

 実の所、このゆんゆんもカズマばりに拗らせている気質であり、先日のカズマからの言葉がずっと忘れられなかったのだ。

 何せあんな事を言われたのは生まれて初めてで、誰かから友達になりたいと言われたこともなかったし、故郷では変人扱いされて基本ボッチだったから。

 

 だからこそカズマからの申し出がとても嬉しく、そして忘れられなかったので、ゆんゆんは必死になって街中を走り回り、そして発見したのだ。

 

 やっぱり改めて見るとどこか他人の様には思えないカズマと、同じような印象を抱くイッセーとソーナを。

 

 だからゆんゆんは言ったのだ、改めて、今度は自分の口で……。

 

 

「私とお友だちになってください……!」

 

 

 自分を見つけて友達になりたいと言ってくれた人に……。

 

 

「………………」

 

「おいおいカズマ? なに呆然としてんだよ? そこはちゃんと返してやるのが礼儀だろう?」

 

「よかったわねカズマ君? やっと自分の足で探して見つけた子とお友達になってくださいって言ってくれて?」

 

「お、おう……!」

 

 

 このすばらしい世界でも祝福なんてされないだろう。

 しかしカズマはマイナスという運命をひとつ乗り越える事に成功した。

 

 永遠に『始まらない』という呪いの様なマイナスを持ったカズマが今初めて己の足で『始まりの一歩』を踏み締めたのだ。

 

 

「抗うのではない」

 

「受け入れることよ」

 

 

『不条理を』

『理不尽を』

『嘘泣きを』

『言い訳を』

『いかがわしさを』

『インチキを』

『堕落を』

『混雑を』

『偽善を』

『偽悪を』

『不幸せを』

『不都合を』

『冤罪を』

『流れ弾を』

『見苦しさを』

『みっともなさを』

『悪評を』

『密告を』

『嫉妬を』

『格差を』

『裏切りを』

『虐待を』

『巻き添えを』

『二次被害を』

『差別を』

『憎悪を』

『怒りを』

『殺意を』

 

 

 

 

「「全てを愛しい恋人のように受け入れろ」」

 

 

 その一歩はとても大きく、そしてとてもおぞましく……。

 

 

「そして如何なる不幸にも常に笑って見せろ」

 

「それが私達過負荷(マイナス)よ」

 

「「………」」

 

 

 そしてとてもカズマとゆんゆんには心地良いものであった。

 

 

 佐藤和真

 己の足で見つけた友達を得ることで始まりの一歩を踏み込み、スキルを完全コントロール可能になる。

 

創死者(ノット・スターティングオーバー)

 

 相手の意思や行動をロックしている間は『永久に始めさせない』スキル。

 

 

「………え!? ゆんゆんさん14才なの!?」

 

「は、はい……見えませんでしょうか?」

 

「いや、老けて見えるとかそんなんじゃなくてさ……なぁカズマ?」

 

「………………あ、うん、そうだな」

 

「……………何で私とゆんゆんの胸を見比べたのかしらカズマ君?」

 

「た、他意は無いぞ!?」

 

「別に怒る気にはならないから、そんなに慌てなくても大丈夫よ。

ただ確かに私より大きいわねゆんゆん……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「だから大丈夫よ。

確かに姉とかと比べて私はこのまんまだったから若干の羨望はあったけれども……」

 

「俺は全然普通だと思うよセンパイ? 俺どんなセンパイでも大好きだぜ?」

 

 

 過負荷パーティ・始動。

 

 

「イッセーだけよ、そんな事を言ってくれるのは……ふふ、嬉しいからぎゅってしてあげる」

 

「わーいやったね!」

 

「な、仲が良いんですねあのお二人は……」

 

「まあ、事実婚みたいな関係だからなあの二人。

暇さえあったらずっとイチャイチャやってるし……見てて羨ましいったらありゃしない」

 

 

続かない

 

 

「き、キミ達は! ほ、ほら覚えてるかな!? 前にキミ達が傷を治してくれた……!」

 

「あぁ、ミツルギくんだっけ? 偶然だね」

 

「あの時は本当に助かったよ。

それにしてもキミ達はパーティを組んでいるのかい? もし良かったら俺もこのパーティに加えてくれると嬉しいのだが……」

 

「? よりにもよって俺達にそんな話をするのかよ? てか俺達を前にして何とも思わないのか? てかお供の女の子達は?」

 

「? あぁ、ちょっと変な気分になる事もないではないが、俺を助けてくれた恩人に変わりは無いだろう? 二人は故郷に返したよ」

 

「………見事に主人公気質ね彼は」

 

「ちょ、ちょっと苦手かもしれません……」

 

 

 続かないったら続かない。

 

 

「てか女神さんについてはどうしたんだよ? 結構拘ってたじゃないか」

 

「え? あーうん、ご本人が楽しくやってるみたいだしもう良いかなって。

それに女神様のパーティに居るあの男にボコボコにされるのももう勘弁というか……」

 

「見事にボコられてたもんなお前……」

 

「女神様から頂いた魔剣まで折られてしまったしな。

だから一から出直そうと思ってな」

 

 

 本当に……。




補足

もしカズマきゅんが自覚なき気質を不幸にも元の世界で唯一持ってたら的な話。

だから目的が魔王討伐なんぞよりも出会って行動を共にしてるマイナス一誠とシトリーちゃまみたいな関係性になれる友達探し。

そして見つけたのが……彼女だったと。

ちなみに原作カズマポジ…なのかは知らんけど、そんな位置には適当なオリキャラをぶちこんでおきました。

つまり邪道ルート一直線。


その2
創死者

カズマが自らの足で探し当て、友達を得るという『一歩』を踏み込んだ事で精神の形となって現れたスキル。

効果は『あらゆる意思や行動を始めさせない』

つまり、なにもさせないスキル。

あらゆる事を諦めて始める事をしなかった彼の精神性そのままのスキル。


その3
カズマくんがゆんゆんの発育とソーたんの発育を見比べられた事で若干ソーたんは傷ついたとか。

もっとも、イッセーくんがソーたんラビュ過ぎるので即座に立ち直ってイチャイチャしたらしいけどね。


その4
続かないし、考えてもないけど、もしこのままマイナスパーティ化が進めばゆんゆんもまたスキルを……

そして何気にミツルギ君が味方になるフラグが……。

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