色々なIF集   作:超人類DX

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その1の続きってだけで、短いと思ったので茶番を追加したりちょっと修正しました。


環境違いのシトリーさん その2

 兵藤誠八の語る兵藤一誠という人間像は、あの時自分達種族の長である一人の魔王の傍らで、何に対しても『平等的』な目を崩さず何に対してもどうでも良いものを見るような目をするような少年では無かった……との事だが、聞かされた面々からすれば誠八そっくりの少年とまるで重なりを感じることが出来ない。

 

 妹である自分にですら隠されていた事に、少しのショックを受けたソーナ・シトリーも、一誠という少年の事を聞く他の者に混じりながら、暗い気持ちをで聞いている。

 

 

「12年前の一誠はあんな奴では無かった。

何処か影はありましたが、よく笑って……仲だって悪くなかった……」

 

 

 セラフォルー以外では唯一過去の一誠を知る誠八の、ショックを隠しきれない声と重々しい表情で語るのを、ただ黙って聞いていた面々は、心の中であの時見た一誠と誠八が語る過去の一誠の人物像に大きな差異を感じる他無かった。

 というのも、誠八の語り口調が妙に大袈裟な気があるからである。

 

 

「事故で死んだと思っていた。遺体だって見たし、納骨した――いや、この際どうでも良い……。

アイツが生きてたのも、今まで姿を現さなかった理由もわかった……!

レヴィアタン様が……セラフォルー・レヴィアタンがアイツを変えたんだ……!!」

 

 

 最初は重い雰囲気を纏いながら語っていた誠八が、次第に殺意に切り替え始める。

 誠実で真面目な姿しか見てなかったリアス・グレモリーと以下眷属は、そんな姿に驚きを感じながらも、仮にも自分達より位の高い存在に対してと、その妹を目の前にしている事とで言葉遣いを正そうと宥める。

 

 

「セーヤ、弟くんの事は分かったから口を慎みなさい……!」

 

「っ……すいません。

一誠については大体こんな感じです……12年前のですが」

 

 

 ブツブツと不穏な空気を纏っていた所を、リアスの一喝で戻った誠八が、ハッとしながら罰の悪そうになって無言のまま俯くソーナの様子を伺いながら同じく俯く。

 

 

「そう……弟君が大事だったのは分かったけど、向こうはセーヤに対して余り良い感情は無さそうだったと私は感じたわ」

 

「…………。姉さん」

 

「解らない……。

もしかして、俺はあの時点で嫌われていて、アイツが見せていたのが演技だったのかもしれません……。

ふ……はは……だとしたらショックですよ……」

 

 

 ソーナは姉であるセラフォルー

 誠八は弟である一誠。

 どうであれ大事だと思っている二人は、其々姉と弟が持っていた秘密を突如として突きつけられてショックな事には変わり無い。

 ましてや誠八に至っては、死んでいた弟が実は生きていており、喜ぶ暇もなく見限られたような態度をされたのだ。

 所謂ブラコンだった誠八からすれば拒絶に近い言葉すら吐かれた事もあって寝込みたい気分にすらなる。

 それは、彼の中に存在する力の象徴であるドライグも敏感に感じており、何時もとは正反対の暗い感情を纏う誠八に話し掛けている。

 

 

『お前らしくないな』

 

『……。フッ、死んでた一誠が生きてたと喜ぶ暇も無く、興味すら無い目と言葉を向けられてしまったからな……』

 

『血の繋がりからくる情という奴か?

俺にはよくわからん感情だ』

 

 

 血の繋がった存在が無いドライグには、現在進行形でナーバス気味となっている誠八が理解できずにいた。

 そしてソーナも同じく、彼女は自身の眷属達に慰められていた。

 

 

「か、会長……」

 

「……。大丈夫よ、ちょっと驚いただけだから……」

 

 

 明るくて、ちょっとは自重しろよとツッコミたくなる程にハイテンションなセラフォルーの姿を見せられてからのアレだ。

 セラフォルーとあまり関わりがあるようでそんなに無いと言えるソーナ眷属達からすればどちらが本当の彼女なのか解らないし、実の妹であるソーナからすれば大きなショックであるのは間違いない。

 だからこそ、眷属達の誰もが俯いたまま動かないソーナに掛ける言葉が見つからないで居た。

 

 

『皆が要らないって言うから私が貰った。

殺すなんて酷いことをするより、こうして笑い合える方が良いでしょう? ねぇ、私は間違ってるのかな?』

 

 

 心配そうにソーナを見る眷属達に囲まれながら、ソーナ・シトリーはあの時の姉と少年のやり取りを思い返す。

 

 

『俺を出して関係者と言うのはマズかったんじゃないのか? 完全にアンタのイメージがぶち壊しになってるぜ』

 

『だから? 別に良いよそれならそれで。

言ったじゃない……どんな失敗をしても、どんなに嫌われても、私だけは一誠を許すって』

 

『魔王様とは思えない物言いだね。

一介の欠陥人間ごときにそんな事言っちゃうなんて、アンタぐらいだぜ。

ま、良いや……それならそれで食い扶持には困らないし、アンタが飽きるまで玩具でもなんでもなってやるよ』

 

 

 全く知らない側面の姉と、異様な気配を持つ人間とのやりとり。

 端から見たって『異常』な会話だったのかもしれない。

 リアス達や自身の眷属はそんな反応だったし、おぞましいのかもしれない。

 ソーナも最初はショックを受けたのと同時にそう感じた。

 

 

『へー、セラフォルーちゃんの妹さんか。

頭良さそうなお顔だこと……』

 

 

 上手く説明が出来ないけど、何か引き込まれてしまう。

 只の人間の筈なのに、ブツブツと何かを呟いている赤龍帝の青年にそっくりな青年と目が合った時、ソーナはそう感じていた。

 けれど、それがどういう意味なのかは本人にも分からなず、ただただ不気味さすら感じる真っ直ぐな眼をした一誠という少年の事が頭から離れずに居たのだ。

 しかしあの青年は自分に――いや自分を含めた全てに興味が無さそうだった。

 それはまるで、そこら辺に落ちて忘れられた消ゴムの欠片でも見てるかの如く、全てを見放した目みたいに――

 

 

 

「おぉスゲェ……。

カロリーメイト(メープル味)なんて出てたとは」

 

 

 まるで長い刑期を終えて出所した気分だと後に語る赤龍帝の双子の弟である兵藤一誠は、学園に置かれていた自販機で売られていた()のバランス栄養食品のバリエーションが増えていることに若干感動していた。

 

 

「しかし味がチトクドいな。

それに甘すぎるし歯に詰まる……まあ、食えないことはないが」

 

人間界(コッチ)来て食べたいものがカロリーメイト(ソレ)って変わってるわねー」

 

「セラフォルーちゃんに拉致られる前に人間界(ココ)で最後に食ったのがカロリーメイト(コレ)のチョコ味でね。口の中がバサバサになるけど美味かったのをよーく覚えてるんだよ――むむっ!?」

 

 

 とある魔王の庇護下に置かれ、外界の情報を獲る事なく十数年を地下で生きてきた一誠にとっては、久しぶりの故郷でもある人間界の技術の進歩に少しだけはしゃいでいる。

 

 

「カロリーメイトのゼリータイプだと!? き、気になる……!」

 

 

 飼い主のセラフォルー曰く、お披露目という名目で陽の下に舞い戻った一誠はまさしく浦島太郎状態であり、数十年という歳月の間にあった出来事を知るだけでオーバーなリアクションの連続だった。

 

 

「携帯電話の歴史? 何々――って、すげぇ!! 電話で音楽が聞けるだと!? 俺の知ってる携帯電話は16和音がどうのって話だったのに! 機械工学の力ってスゲー!!」

 

「一誠くん持って無いもんね、要らないって言ってさ」

 

「おう、必要ないと思ってたしな。

だが、これを見てたらちょっと欲しいかも……何々、最先端は『すまーとふぉん』だと? フムフム……おぉっ!? 画面に触れるだけで操作可能なのか! パ、パネェ!!」

 

 

 コンビニで手に入れた情報雑誌の一項目ごとに子供みたいに騒ぐ一誠は、最近じゃほぼメジャー化しているスマートフォンが気に入ったようで、学園内の旧校舎付近に立つ大木に背を預けて座っており、チラチラと同じくその隣に腰を下ろしてるセラフォルーに物欲しそうな視線を送る。

 

 

「ね、ね、セラフォルーちゃんこれ買って!」

 

 

 基本的に衣服から何から全てをセラフォルーから与えられてる一誠が何かを入手するには彼女にねだるしか無い。

 与えられたものに文句は言わず、自分から何かが欲しいと言うこともそんなに無い一誠は、良い表現をするなら、まるで子供がスーパーで母親に――いや姉にお菓子を買ってくれと駄々を捏ねるソレであり、悪い表現をするなら完全なヒモ男みたいであった。 

 

 

「えー? でも一誠くん活用する程のお友達とかいないじゃん」

 

「べ、別に友達が居なくたって操作を楽しむとかあるだろ、ゲームとかも出来るっぽいしこのすまほやらは……」

 

「んー……どうしよっかなー」

 

 

 あまり乗り気に見えなかったのか、用途は他にもあるからと、何処と無く飼い主に叱れてショボくれた犬を思わせる表情を浮かべつつも食い下がる一誠に、セラフォルーは押し倒して泣くまで犯したくなる衝動に駆られながらもわ勿体振った態度を崩さない。

 

 

「ダメか? ダメだよな……うん……」

 

「…………」

 

 

 スマートフォンだろうが、ゲーミングPCだろうが一誠が欲しいのであれば、色々と手広くやって個人資産が中々にウハウハなセラフォルーとしては買い与えるつもりはある。

 あるのだが……タダで買ってあげるのは何と無く損した気持ちにしかなれないのだ、セラフォルー的には。

 例えばそう――

 

 

「んーと、それじゃあおねだりのチューをくれたら考えても良いかな~?」

 

 

 一誠に何でも与えられるのは自分だけだともっと自覚させるという意味でのこの要求とか。

 

 

「マジ!? よっ、魔王少女☆レヴィアたん!! 可愛すぎてキスしたくなるぜ!!」

 

「やんっ♪」

 

 

 そして基本的に馬鹿なので一誠は何の疑いもなく、ただスマートフォン欲しさにセラフォルーを持ち上げまくる言葉をペラペラとデカい声で言いながら、言った通りの事を本当にする。

 物凄い調教されて腑抜けた大型犬よろしくにセラフォルーへ飛び付き、ちゅっちゅちゅっちゅとスマホの為に、安いプライドを捨てまくるという残念さ。

 先程誠八達に見せていた薄気味悪い態度は何処か遠くへと行ってしまったようだ。

 

 

「もー……そんな欲しいからって必死になっちゃって。

あーぁ、お腹のここら辺が虫刺されみたいに赤くなっちゃったじゃない。

会議に出た時に見られたら恥ずかしくなっちゃうよ☆」

 

「あ、ごめん」

 

 

 ある意味で異常なこのやり取りを、誰にも見られてないのは幸運だった。

 スマホ欲しさで必死になってたとはいえ、一誠がセラフォルーに対してやらかしてた事は普通にアレをアレしてましたとしか思えないソレだったし、現に彼女の脇腹付近には赤い虫刺されの様な痕が点々とデキていた。

 

 とはいえ、言ってる割にはセラフォルーの声は弾んでるし、ちょっとだけ正気に戻って謝る一誠の頭を撫でつつ許してるので、頭が残念なバカップルのバカなやり取りでしたというオチなのだ。

 

 

「カメラ付きで音楽が聞ける奴が良い」

 

「はいはい、お姉さんに任せなさい!」

 

 

 そんなこんなで無事におねだりを成功させた一誠は、情報雑誌のスマホページに目を輝かせていたが、突然何かを思い出したかの様にハッとする。

 

 

「あ、ねぇセラフォルーちゃんさっき会議がどうとかって言ってたけど、行かなくて良いの?」

 

 

 自分は只お供として来たので関係無くすっかり忘れていたが、何気にさっきからずっと居るセラフォルー一言言っていた会議の時間について訊ねる。

 

 こんな風貌だが、現代の魔王と呼ばれる存在の一人が人間界に来るだけの理由……それは悪魔・天使・堕天使のトップ達による会合に他ならなく、セラフォルーともう一人来ている魔王の妹達が通ってるこの学園にてそれを行う…………と、あんまり興味が無い一誠は聞いていたのだが、さっきからセラフォルーは自分から離れずにずーっと監視するかの如く引っ付いて会議とやらに行く気配がまるでしない。

 

 別にそれで怒られたりするのは彼女の勝手だし自分に被害が来るわけでも無いので良いのだが、こう……一つくらいは魔王様らしい事をやってる姿を見てみたい訳で……。

 

 

「あー大丈夫大丈夫。会議って実は夜からで、早く来たのってソーナちゃんの様子を網膜に焼き付けたかったってだけだし」

 

「ソーナ? ……。あ、セラフォルーちゃんの妹ちゃんね……お? 溢れGカップバストの秘密だと……? ほほぅ……」

 

 

 名前はセラフォルーがシスこんなので嫌という程聞かされてたものの、会ったのは誠八に対して嫌味をぶちまけに行った時だ。

 しかし先程会ったばかりだと言うのに一瞬だけ完全に忘れていた一誠は、すぐに眼鏡を掛けた大人しそうな少女の事を思い出したものの、隣に座るセラフォルーと全然キャラが似てないと即座に興味が消え失せ、代わりにグラビア雑誌の袋とじに鼻息荒く右手をわきわきと動かして袋とじ開けという名の手術(オペ)に取りかかっていた。

 

 

「なんか、こう……物静そうな子だったよね。

なんでセラフォルーちゃんが姉なんだか不思議でしょうがないや……っと、ぬふふ……半分まで切れ――」

 

「えたーなるふぉーすぶりざ~ど~☆」

 

「だぁっ!?

神憑り的な俺の手術(オペ)がカチンコチンで台無しにぃぃぃっ!?」

 

 

 ある時から、セラフォルー以外の何もかもが全て『同じ』にしか見えなくなった一誠にとって、セラフォルー・シトリーの妹であるソーナ・シトリーはあの時の一度見たっきりで何の興味も沸かなくなっていた。

 

 その原因こそ、見た目とは裏腹な完璧な鈍器としか思えない魔法のステッキをキラめかせ、アホ顔晒しながら袋とじを開腹させる手術の最中だった一誠の持つ雑誌を手ごと凍らせてるセラフォルーが原因なのだが、彼自身が余りにも飼われ過ぎたお陰でそれに気付いてない。

 

 

「何てことしてくれたんだ!?

せっかくGカップもある裸の女が見れると思ったのに、俺の手首ごとカチンコチンにしやがって!!」

 

「いやん、一誠くんってばカチンコチンだなんてエッチ~☆」

 

 

 たった一人の例外を除き、すべてを等しく平等に見限る。

 喚く一誠にケタケタと笑いながら煽る魔王による『歪んだ独占欲』のせいであるのだが、一誠はそれに気付いたとしても気に止めもしないだろう。

 

 

「なんだと痴女みたいな格好しやがって!

頭に来たぜこんにゃろ……! こうなったらその胸揉みまくってひーひー言わせてやるぜ!!」

 

「その状態で?

カッコ付けるは良いけどそれは無理なんじゃないかな~? それに最初はそうやって強気だけど、後々『か、勘弁してセラフォルーちゃん……』と泣くのは何処の一誠くんかな~? あは♪」

 

「ファック!!」

 

 

 それが当たり前だという環境で、彼女に飼われて来たのだから。




この後の行動。

その1.セラフォルーさんが会議やってるので、暇で暇で仕方なかった一誠くんは終わるまでフラフラしてました。
 すると、なんという事でしょう、偶然にも一誠くんは眼鏡を掛けた知的美女(旧派のレヴィアタン)を発見してしまい、見た目に釣られてフラフラと付いていってては


「そこの麗しきお姉様ぁぁん!! 俺とデートしてくだっさぁぁぁい!!」


 最近色に目覚め過ぎてスケベになっていた一誠くんは、物凄いド下手なナンパをしながら、無視して行こうとする見た目知的美女にホイホイ着いていきます……。
 すると……なんという事でしょう――


「カレテアちゃん……の、後ろの一誠くん? アナタはそこで何してるの?」

「え? あぁ、聞いてよセラフォルーちゃん。
それが初めてのナンパをしようとしたんだけど――あれ、この麗しきお姉様と知り合いだったの?」

『…………』

「……………………ねぇ、一誠くん。私に内緒でそんな事をしちゃうなんて、500年くらい氷像になりたいの?」


 って事があって何やかんやでセラフォルーさんにまた怒られるなんて事があったとか無かったとか。

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