心霊的な内容を題材とした映画を観てしまった後、夜中にトイレへ行くことが恐怖だった。
幼い頃に体験した様々な恐怖を知っていたつもりだ一誠だったが、ライザーの前に立った時に向けられた言葉に対する恐怖は今までのどれでもないカテゴリーの『恐怖』があった。
「な、なんだよ……なんなんだよアイツ!?」
仲間の木場と小猫がライザーの眷属二人に倒された。
だからこそ仇討ちは絶対であり、例え一人になってもライザーを倒すとその時は確かに誓った筈だった。
それなのに、たった一言か二言程度の言葉を向けられた瞬間、一誠はそんな固い筈の決意も何もかもを捨ててその場から逃げ出した。
『キミは普通の人間が持つ神器よりも、特別な神器を持つそうだね?』
『ひとつその力を俺に見せてくれると嬉しいのだが……』
戦う気力を削がれた。
それは恐怖したから―――いや、違う。
あの声色に、あの佇まいに、あの表情に………。
「お、俺は……アイツなんかに『安心』していたッ! あの声に! 言葉にッ!! リアス部長の為に倒すべき相手なのに俺は安堵してしまっていたッ!!!」
それが堪らなく怖かった。
あの一瞬、ライザーに敗けてしまっても良かったと思ってしまっていた自分が……なにより人の心の隙間を縫って入り込んでくる様なライザーの言葉が。
「一誠!」
どれくらい走り続けたのだろう。
気づけば自陣の本陣近くまで逃げていた一誠は、慌てた表情で自分の名前を呼ぶリアス、アーシア、朱乃と合流していた。
「無事!? 怪我は!?」
「私の神器で治療しますから、怪我をしていたら言ってくださいね……?」
「顔色が悪いです。
何があったのか教えて頂けるかしら一誠くん?」
「み、皆……」
三人が揃って自分を心配する。
顔色は真っ青で、全力で走り続けてと恐怖で脂汗が止まらない一誠は三人にすがる様にその場に踞った。
「あ、アイツ等は『ヤバイ』……! 逃げた方が良い!」
「な、何を言ってるの?」
「リアス、彼の様子が先ほどからおかしいです。
何かに怯えている様ですわ……」
「ま、まさか相手方に何かされたのでは……?」
あの『恐怖』を三人まで味わったら、間違いなく自分の様に……。
既にライザーに対して『トラウマ』を持ちつつある一誠だが、リアス達三人は大事な仲間である一誠、祐斗、小猫を傷つけられたという義憤に駈られており、止まる気配は無い。
「アーシアは一誠とここに居なさい。
朱乃……いくわよ」
「はい……!」
「よ、よしてください! あ、アイツ等は――」
「『何かある』……でしょう? 大丈夫よ一誠、必ず勝つわ。
だからアナタはアーシアと一緒に私と朱乃の無事を祈っていて。
それでもし戦える様になったら助けに来てね?」
それでも止めようと、子供の様にすがる一誠にリアスはその頬にキスをしながら笑みを溢し、女王の朱乃と共に本陣へと突入する。
勝つ為に、何より己の自由の為に……。
妙なカリスマ性に目覚めてる事に対する自覚がまるで無いライザーは、そんなつもりは欠片も無かったのに一誠を怯えさせてしまった事に少しだけ罪悪感を覚えつつも、イッセーの名前を捨てたギルや妹のレイヴェルに元気付けられる事で、一応立ち直りながら待つ事にした。
すると、待っていた甲斐もあってリアス・グレモリーが女王を共に直接本陣へと乗り込んで来た。
「下僕の人数の関係上、籠城するしか無いとは読んでいたわ。
けれど、私の眷属の子達がお世話になったから、お返しに来てあげたわよ!」
等といきり立ちながら女王と共に魔力を迸らせているリアス―――の事はライザーにしてみればどうでも良かった。
問題なのは逃げてしまった一誠の姿が見えない事だ。
「わざわざ来てくれてどうも。
所で彼は何処だ?」
「あの子なら今休んでいるわ」
「…………あ、そう」
素直にそこは答えるんだなこの小娘は……と、別にそこまで歳の差は無いが、リアスを内心木っ端小娘扱いしているライザーは、やはりメンタルに何かしてしまったのだと一誠に対してのみ申し訳ない気分になる。
もっとも、その態度はおくびにも出しはしないが。
「それで、自分の眷属の仇討ちの為に王自らが乗り込んで来た訳だ。
ゲームの上とはいえ、あまり良いとは思えない判断だな」
「それはお互い様よ。
そもそも私達は駒の数すら足りてないわ」
「…………確かに」
お前と違って、この二人だけで全部足りてるだけだし、他人をわざわざ懐に入れる気も更々無いだけなんだが……と、怒りに燃えた目をするリアスを、かつての事もあるのか、少し冷めた目をしながら思うライザー。
「それにあの子は必ず立ち直って来る」
「………」
チラリと顔を包帯で覆っているギルを見てみると、微かに震えている。
それはこのリアスを、言葉巧みに操られて豹変し、自分を利用しつくしたリアスに重ねて憤怒の炎を滾らせているからなのか。
それとも『トラウマ』による僅かな恐怖からなのか……。
「女王・姫島朱乃です。
「……………………」
「ギル……」
恐らくは両方なのだろう。
同じようにゴミの様に扱ってきたのと同じ顔をした、この世界の女王である姫島朱乃に勝負を挑まれたギルの肩にレイヴェルが触れれば、この震えは止まっていた。
「どうやらそちらの
まあ、グダグダやってダラダラ時間を掛けるよりもこういったシンプルな一騎討ちの方が、これを見てる奴等も退屈はしないだろうな」
三人で一気にぶちのめしてやればそれで終わるが、生憎ライザーはそんな善人では無い。
彼にとって必要なのは『恐怖』を克服し、自信を取り戻す事。
この世界のリアス達に恨みは無いが、その踏み台になって貰うつもりだし、望むなら完膚なきまでに潰す。
「本当は彼か……僧侶でも居てくれたらレイヴェルに相手して貰うつもりだっが、居ないのならしょうがない。
ギル、お前はそちらの女王の相手をしてあげろ、俺は王をやる」
「………………」
指示に対してギルが無言で頷く。
この世界のギル――つまり一誠には悪いことをしたと思っているが、リアスだのその他に対してそんな感情は欠片も無い。
ライザーが主導権を取る形で、運動場へと移動すると、まずは女王と将軍の――所謂タイマンが始まる。
「改めて自己紹介を……。
リアス・グレモリーが
「…………………………」
勝算があるつもりなのか、笑みを浮かべながら自己紹介をする朱乃に対して、声を聞かせる訳もにもいかないギルは、そもそも名乗るつもりもないので無言で構えもせず立っている。
その態度が不躾にでも思ったのか、ライザーとの一騎討ちを待つリアスの表情が少しムッとなる。
「格好からして変だけど、彼は名乗らないのかしら?」
教育がなってないのじゃないかしら? といった視線をライザーに向けるリアスに、傍に居たレイヴェルが直ぐに口を開く。
「シャイですのでどうかお許しを」
「………」
どこか冷たい眼をしているレイヴェルにリアスは訝しげな顔をしつつもそれ以上は何も言わなかった。
それと同時にバチバチと雷撃が放たれる音が響き渡り、リアスの視線はそちらへと向けられる。
「申し訳ありませんが、こちらも全力で勝たなければなりませんので……ふふふ」
「…………」
雷の巫女と呼ばれるが故の雷撃を放出させ、それでも身構えもしないギルの周囲を囲う様に雷撃の網が展開され、朱乃の表情はサドめいたものになっていた。
「一気に勝負を着けさせていただきます!!」
一歩でも動けば展開させた雷撃の網の餌食になるという状況を作り上げた朱乃は、創造主が故に、己にはダメージにならないという特性を利用して一気に肉薄し、掌に集束させた全力の雷の魔力を……多分無意識にその包帯の下が気になったのだろう、顔面目掛けて抜き手の様に突き出した。
「やった……!」
傍から見れば、身動きが取れずに反応もおくれていると思ったリアスから思わずといった声が洩れた。
対してそれを流石兄妹というべきか、揃って腕組みしながら見ていたライザーとレイヴェルは全くの不安もなかった。
何故なら……。
「うっ……!」
「…………………」
その程度の雷撃なぞ、電気マッサージにもならない貧弱さなのだから。
その証拠にギルは肉薄して抜き手を放ってきた朱乃の手首を掴み。
「あぐっ!?」
握力だけで握り折ったのだから。
何かが砕ける様な嫌な音が運動場に響き渡る。
「くっ!!」
「朱乃!」
腕を掴まれ、挙げ句折られた朱乃は今やっと初めて包帯の下から見えるギルの眼を知る。
その眼は鋭く、猛禽類の様に縦長に瞳孔が開かれた――暗い瞳だった。
腕を掴まれたまま離してくれないギルに朱乃は咄嗟に空いてる方の手を使ってゼロ距離の雷撃を放とうとするが……。
「あぶっ!?」
ガツンという痛そうな……というか絶対に痛いギルの頭突きが朱乃の顔面……主に鼻に突き刺さる。
「がぶ!? ぎばっ!? や、やめっ……ぐびっ!?」
「あ、朱乃!?」
女相手にするにはあまりにも非道なヘッドバッドが何度も朱乃の顔面を叩きまくる。
動けないなら――いや別に動けるが、だったらそのままその場から動かず、わざわざ向こうから近づいてくれた相手を止めてからぶちのめせば良い。
至ってシンプルな方法で朱乃に攻撃をし続けるギルは――かつての頃を思い出しながら高揚し始め、ヘッドバッドから今度は直接その拳で朱乃を殴り出す。
「がふっ!? ぎひぃっ!?」
「…………………………………」
猛禽類の様な冷たい瞳と共にただシンプルに殴り続けるギル。
わざわざ炎を使うまでも無い。勝手に自爆同然に近付いて来たのだから殴る。
かつてについての憎悪がフツフツと沸くこともあって、異様に容赦の無いギルは既に朱乃の返り血で巻いた包帯が鮮血に染まる。
「も、もうやめなさい!」
ギルを囲う雷撃の網は消え、既に意識が無い朱乃をそれでも声すら発する事なく、不気味に殴り続けるギル。
「ぁ……が………」
「…………」
「やめなさい! 勝負はもう着いたわ!」
膝を折ろうとする朱乃の髪を無造作に掴んで無理矢理立たせて殴る。
糸の切れた人形の様になっていても尚殴る。
あまりにも容赦が無さすぎるやり方にリアスが手に消滅の魔力を込めながら止めろと叫ぶが、それでもギルは既に顔が腫れ上がってる朱乃を殴り続ける。
「……………」
「こ、このっ! 朱乃を放しなさ――」
「「ギル!!」」
ゾッとしたものを感じたリアスは半ば叫ぶ様に中止を訴えようとしたが、それに割り込むかの如くライザーとレイヴェルの制止する声が放たれると、それまで殴り続けていたギルの手が止まる。
「ぅ……ぁ……」
「…………………」
返り血まみれのギルの動きが止まり、暫く固まった後に朱乃を解放する。
顔面が壊され、崩れ落ちる様に地面に横たわる朱乃を泣きそうな顔でリアスが駆け寄り、それをただ見下しているギルを憎悪の込められた形相で睨み付ける。
「とっくに勝負は決していた筈なのに、どうして……!?」
「…………………」
リアスにしてみれば、ここまで痛め付ける必要は無いという訴えに、ギルは答えない。
ただただどこまでも冷たく、どこか怒りを感じる眼で見下ろすだけ……。
「許さない、私が貴方を今此処で……!」
怒りに震えたリアスが消滅の魔力を放出させながらギルに戦いを挑もうとする。
彼だけは許さない。ある意味で今この瞬間をもってライザーよりも嫌悪すべき相手へと昇格したのだから。
だがそれは叶わない……何故ならそんなギルを庇う様にして前へと躍り出たのがライザーなのだから。
「ゲームとはいえこれは戦いだぞリアス・グレモリー。
ならば聞くが、もし今の戦いが逆の立場だったら止めていたのか?」
「っ! 勿論止めさせたわ!」
「ほぉ? 聞けばそこの雷の巫女とやらは相当なサドらしいが、きっとはぐれ悪魔かなにかを討伐する時も『楽しんでいた』のではないのか?」
「……!」
ボコボコにされた顔面のまま気を失っている朱乃を抱きながらリアスは唇を噛んで思わず下を向いた。
言われてみれば確かにそうだったからだ。
だが相手は力に溺れたはぐれ悪魔……倒すべき存在なのだ。
今の様なゲームとは訳が違うとリアスは言う。
「まあ確かにこれはゲームであってはぐれ悪魔の討伐ではない。
キミの言いたいことはよくわかるし、うちの将軍もちとやり過ぎたのかもしれない……が、俺達は謝らないぜ? 何故ならこれは互いの主張を賭けた決闘の縮図なのだからな」
「…………」
レイヴェルに連れられて後ろに下がるギルとライザーを睨み付けるしかできないリアスは嫌悪を越えた殺意を抱いていた。
だが、そんな殺気を前に平然と佇むライザーは静かに口を開く。
「常々思う事がある。
感情がある全ての生物は、誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる。
名声を手に入れたり、他者を支配したり、金儲をするのも安心するためだ。
結婚したり、友人をつくったりするのも安心するためだ。
誰かのために役立つだとか、愛だの平和のためにだとか尤もらしい台詞吐くことも、すべては自分を安心させるためだ。
安心を求める事こそ感情を持つ生物の全ての目的だとな」
「………それがなんなのよ?」
言われてみれば確かに真理かもしれないが、リアスにしてみれば詭弁だった。
「俺達を倒すことでリアス・グレモリー……君は『安心』したい。
つまり『安心』を得る為に今こうして互いに争っている」
「さっきから何が言いたいの……ライザー?」
けれど何故か耳を傾けている自分が居ると、ライザーの語り口に無意識に怒りが収まり始めているばかりか、実に不思議な事にライザーの言葉が心に染み込んでいく。
「わからないかリアス・グレモリー? 俺達はその『安心』をこの瞬間、完全に獲られた。
キミ達という存在のお陰でな。だからもうこのゲームに意味などないし、この場で一騎討ちをしたところで時間の『無駄』だ」
だから――
そう一呼吸置いたライザーから放たれた次の言葉にリアスは目を見開いた。
「
「…………………は?」
今この男はなんて言った? リザイン? 降参する?
何故? この状況で? この有利な状況で?
「な……にを、言ってるのよ?」
その言葉があまりにも信じられないリアスは、沸き上がる訳のわかない感情を必死に押さえ込みながら問う。
「言葉通りの意味だ。
俺達は今を以て『取り戻せた』のでね。そうなれば最早こんなゲームにも用は無いし、キミは俺と結婚するのが嫌なのだろう? だからその礼として降参すると言ったんだ。
よかったな? 俺と結婚しなくて済むぜ?」
クスクスと笑うライザーの言葉がまだ飲み込めないリアスは目を見開いたまま固まった。
そんな彼女を前に最早用無しとなったライザーは空に向かって宣言する。
「聞こえた筈だ! 俺達はリザインする!」
『――!! ―――!!!』
このゲームを取り仕切る者が慌ててるのか、なにやらごちゃごちゃとした声が聞こえたが、これもどうでも良い。
降参した時点で茶番でしかなかった婚約話も破壊され、関わりも薄くなる。
自信を取り戻せた時点で既にリアス・グレモリーそのものに興味は無くなっていたし、ギルがトラウマ相手をぶちのめした時点で目的も果たせたも同義。
なにやら信じられない様な顔をしながら唖然としてるリアスが居るが、最早見る価値もない。
「さぁ帰るぞ我が家族よ。
今日は豪華なディナーだ」
「その前にギルをお風呂に入れないと。
他所の女の血まみれなんて不健康ですわ」
「じゃあ風呂屋にでも行くか!」
観戦者や魔王達や情も感じない両親や上の兄達の混乱してるだろうが、そんなものすらもどうでも良い。
理解してくれる妹のレイヴェルと、確定事項で義弟となったギルが解っていればそれで良いのだから。
「震えは止まっただろ、ギル?」
「そもそも当人じゃないからな……」
「私はあの忌々しい猫を潰せた時点でスッキリしてましたわ」
「だろうな。レイヴェルは猫が大嫌いだもんな?」
「ええ……この世でもっとも憎い生物です」
憎悪という覚悟の炎を持つ三人の道はこれより始まるのだ。
終わり
自信を取り戻せた事により、ライザーの放つ波動は更なる高みへと昇格していく。
「眷属を増やせ? 申し訳ありませんが、私は己の信じた者しか眷属にする気はありませんので……」
だがその開化した器とは裏腹に、彼は変わり者のようにみられていく。
「何故グレモリー家との婚約を自ら捨てたですって? そもそもそんな興味が彼女に無かっただけですが?」
寧ろリアスとの婚約破棄を惜しまれてしまったり。
「若手悪魔の会合に出席しろですって? 私はそもそもそんなに若手じゃあないのでね……。それに色眼鏡で見られるのは不愉快ですので」
あれこれと彼の才能に目を付けた上層部による囲いすらも蹴散らし。
「……。なるほど、キミは『引力』というものを信じるか? 俺達の『気の緩み』によって以前、俺達の本質を見抜き、そして今この場に向かい合っているということを?」
「はい、信じます。
やはり貴方は……」
「なるほど、しかし俺達はキミを信じる事はできない。
何故ならキミを俺達は知らないからだ」
「わかっています。
だからこそ何時かこうなる時の為に眷属は作りませんでした……。
貴方の下僕となる為に……!」
「…………どう思うレイヴェル?」
「……。多分素でお兄様のファンじゃないかしら?」
「マジか。
兄貴はあの時から完全に女を断ったのに、皮肉にもこれかよ……」
以前から彼等の裏を知ってしまったどこかの貴族っ娘さんが、覚醒したライザーの放つ安らぎと安心感に対して完全に忠誠心を抱いてしまったり。
「……………。なぁ、あの子なんとかしてくれないか? マジでどこにでも付いてくるんだけど……」
「そんな事俺に言われても……」
「お兄様に絶対的な忠誠心を捧げてますし、見張ってもお兄様に仇を為す様子もありませんでしたし……」
「けど風呂場やトイレの扉の前ですら膝づいて待ってるのはおかしくないか? 流石にちょっと怖いというか――」
「貴様ァ……! ライザー様の事を私の前で愚弄した……なァ……!?
蹴り殺してやる、このド畜生がァァァァァッ!!!!!」
「や、やべぇ! またプッツンしやがった! 貴族ボーイが蹴り殺されるぞ!」
「バカかよあの貴族小僧は? 言ったらどうなるかも見抜けないか……」
「取り敢えず止めましょう」
忠誠心が高過ぎて、首をはねてみろと言えばマジでやりかねないし、うっかり少しでもライザーの悪口を言ってしまえば、信じられないくらいに激昂して蹴り殺しに来たり。
忠誠心を通り越して暗黒空間みたいな精神力へとなってしまったとか。
「ライザー様、今ひとり始末しました……」
「お、おうご苦労様……。
あの、キミも一応女性なのだし、お金を渡すから好きなものでも買いに行ったらどうだ?」
「それはご命令でしょうか?」
「いや命令というか……」
「それとも顔が気に入りませぬか? わかりました、ライザー様にとって見る耐えないこんな顔なぞ私には要りません。今すぐにでもこの顔の皮を剥がして――」
「ストップストップ! 別にそんな事など言ってないから!」
「「………」」
ちょっと困ったちゃんだけど、多分きっと根は良い子――な筈だった。
嘘だよ
補足
これが所謂プロローグですかね。
ここから彼等の旅は始まります。
その2
まあ、ギルの気質はD×Sシリーズに似てます。
つまり真面目にやり過ぎるタイプ。
その3
本人の意思とは無関係に、ライザーさんの評価は上がりまくるらしい。
ただし、本人も真っ向から『お前らの為に働く気はねぇ』と突っ返しますがね。
その3
さて、どこかの亜空の瘴気さんみたいなヤバさに覚醒しかける方は誰なのだろうか……。
まあ、大体お分かり頂けちゃうと思うけど。