色々なIF集   作:超人類DX

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二人に一言『お前リストラね?』と言われたら、それはもうどうにもならない。




破壊男とネオ白音たん

 本当に何もしなければ大人しくする。

 

 そんな程度には丸くなっている筈の名を変えたイッセーこと零。

 

 嫌いなのは変わらないし、ムカつく事をされれば八つ裂きにする程度の激情さは変わらないけど、今更殺し尽くした連中を殺し直す程彼も暇なつもりは無いのだ。

 

 とはいえだ……。

 

 

「えー、本日より人事異動がオーフィスより発令されました。

本日この場所で勝手に暴れた者全員――リストラです」

 

 

 殺す機会が訪れれば、それは間違いなくyesだった。

 

 

「世界の再構築? オーフィスがそんな頭の良さそうな野望を抱く訳が無いんですよ。

もっとも、今から『リストラ』されるアナタ方に本当の目的を教える気もありませんけどね」

 

 

 昔も今も変わらない。

 気に入らなければぶん殴るだけなのだから。

 

 

「あーらら、今日のセンパイはご機嫌ナナメみたいです。

つまり……どう足掻いてもリストラ確定です、私もしゃくしゃくしてやるのでね」

 

 

 大豪雨・王食晩餐――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地獄絵図。

 その言葉がまさにこの場に居た全ての者達の抱いた恐怖だった。

 

 

「オーフィス直轄の暗殺部隊だなんて聞いた事が無い! それに本当の目的だ等――」

 

 

 顔の半分が消し飛んだ死体。

 

 手足がネジ切られた死体。

 

 目玉がくり貫かれた死体。

 

 首が逆方向に回転している死体。

 

 内蔵が引きずり出された死体。

 

 容姿の判別すら不可能な程に顔が破壊された死体。

 

 

 常人なら胃の物全てを吐き出す程におぞましき死体と濃厚な血の香りが生産され続ける屍だらけと化した駒王学園の校庭のど真ん中。

 死臭のする屍の山の頂点に立つフードを被った謎の存在の作り出した地獄絵図を前に、本日三大勢力の会談に出席していた三大勢力トップと、リアス・グレモリー以下眷属達とソーナ・シトリー以下眷属達は、あまりの凄惨な光景に何時もの平和な学園じゃないのかとすら錯覚し、戦慄していた。

 

 

「ば、バカな……あのフードを被った何者か一人に私が率いた構成員達が……」

 

 

 その三大勢力の会談の現場に乗り込み、宣戦布告を予定していた禍の団のカテレア・レヴィアタンもただ殺すだけでは無い、徹底的な惨殺とも言える現場に絶句し、フードを被って顔の見えない何者かの背を見ながら声を震わせていた。

 

 

「言ったでしょう? 『人員整理のリストラ』だって。

アナタ達は漏れなくオーフィスから組織を『クビ』にされたんです。

まあ、組織の名を騙って勝手な事をしようとするからって事ですね」

 

 

 誰しもが言葉を失う中、校庭のど真ん中に作り出された屍の山の頂点に立つ何者かと共に現れた、こちらもフードを被って容姿が見えない小柄の――少女の様な声を出す者がこの空気感ににつかわしなくない声色で、戦慄するカテレアの前に立つ。

 

 

「後はアナタだけです」

 

「っ! ふざけるなっ!!」

 

 

 処刑宣告をするフードの人物にカテレアは激昂し、ここに来る前に埋め込んだオーフィスの力を解放しようとする。

 

 

 シャクッ!!

 

 

「っ!?」

 

 

 しかしその力は解放される前に消え去る。

 何かを齧る様な音と共に………カテレアの右腕ごと。

 

 

「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!!!!!!」

 

「っ!? カテレアの右腕が……!?」

 

「か、カテレアちゃん!?」

 

 

 肘先からごっそりと消えた右腕から噴水の様に吹き出る血と、激痛の声をあげるカテレア。

 その速度に三大勢力のトップ達は驚愕し、中でもカテレアとは旧知だったセラフォルーはカテレアに対して少し悲痛な声をだしている。

 

 

「まっず。

やっぱりセンパイの味を知ってるせいか、舌が肥えすぎてるみたい。

何を食べても不味いや」

 

「わ、私の腕がァッ!!」

 

「五月蝿いな、旧派の魔王を自称してるんだから、腕が喰われた程度で騒がないでよ」

 

 

 そんな地獄の様な光景にフードを被った人物は軽い調子で泣き叫ぶ様な声を出すカテレアに言い放つと……。

 

 

「この世でもっとも美味しい調理方法って知ってます? センパイの場合は素でも極上だけど、それ以外で美味しい食べ方があるんですよ………それは生物が死の間際に感じる『恐怖』です」

 

「ぐ、ぐぅおぁっ!」

 

「死の間際に恐怖した生物の脳は信じられない速度でドーパミンを生成する。

その時こそ旨味をひりだす……センパイの怒り以外はね」

 

「ひぃぃぃぃあぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 シャクッ!! という二度目の音と共にカテレアの上半身は丸ごと喰われた。

 

 

「んー……まぁまぁかな」

 

「う、嘘だろ。今アイツ、か、カテレアを喰いやがった……」

 

「まるで家畜を調理して食べるかの様に、簡単に躊躇も無く……」

 

「…………」

 

 

 あまりにも呆気ないカテレア・レヴィアタンの最期に、再び戦慄する三大勢力達。

 まだ未熟なリアス達に至っては、あまりにもおぞましい光景に口を抑えて吐き気を催しており、そんな中共に見ていた小猫は、あのフードの中身が誰なのかを悟ってしまった。

 

 

「さて、リストラさせたとはいえ、ウチの組織の者達がアナタ方にとんだ迷惑をお掛けしてしまいました」

 

『…………』

 

「別に許せとは言いませんが、好んでアナタ達と敵対する気は無い。

ウチの組織の長はそういう意思を持ってますので、ここはどうかひとつ……」

 

 

 そう言ってさっさと帰ろうとするフードの人物に対し、ハッと我に返ったサーゼクスと堕天使トップのアザゼルが呼び止めた。

 

 

「待て……カテレアを殺した事も含めてキミと向こうに居る何者かをこのまま還す訳にはいかない」

 

「こんな殺戮現場を見せておきながら、敵対する意思は無いなんて信じられる訳がねぇ。

そもそもお前と向こうの奴は誰だ……?」

 

「顔も見せない相手の言うことはとても信じられません」

 

「カテレアちゃんとは友達だったのに……」

 

 

 当然とも言える彼等の主張に、フードの人物は足を止めると、呻き声をあげてギリギリ生きてる組織の下っぱの頭を、まるで害虫駆除の様に踏み潰してトドメを刺して回っていたもうひとりの人物を呼び寄せようと声を出す。

 

 

「せんぱーい! 気は進まないと思いますけど、やっぱりタダでは帰してくれないみたいなので、取り敢えず来てくれませんかー?」

 

 

 頭蓋が砕かれる嫌な音が響き渡ると共に、ピタリと動きを一瞬止めたフードの人物がのろのろと薄気味悪さを感じさせる足取りで三大勢力達のもとへと近付き、小柄な方のフードの人物の横に立つ。

 

 

「それで? 私達に何をしろと? 言っておきますけど、ウチのセンパイはかなり短気なんで手短にして欲しいのですが……」

 

「まずは顔を見せろ。

どんな奴かもわからない相手の言うことを信じろだなんてムシが良すぎるだろう?」

 

 

 センパイと呼ばれる方の者が一言も言葉を発する事無く不気味に立つのを見ながらアザゼルが要求する。

 顔を見ないことには信じるも信じないも無い……それは確かに正論であり、ましてやこんな戦争じみた光景を無傷で作り出した化け物じみた二人組だ。

 天使のミカエルや悪魔のサーゼクスとセラフォルーだって嫌でも警戒心が強くなる。

 

 

「顔を見せろですか……。

うーん、どうしますセンパイ?」

 

「……………」

 

「ですよね? 絶対この人達騒ぎますよね? まあでも見せないことにはタダで帰してくれそうもないですし、逆に見せて騒がれた所でこの人達がどうこうできる訳じゃないから良いんじゃありません?」

 

「…………………」

 

 

 何やら相談している二人を、三大勢力達は強く警戒しながら睨んでいると、話し終えたのか、二人組は深く被っていたフードを外した。

 

 

『!?』

 

 

 露になったフードの中身。

 それは年若い少年と少女だったのだが、サーゼクス達はその容姿に心底驚愕し、思わずリアス・グレモリーの傍に居た眷属の兵士と戦車とを交互に凝視してしまう。

 何故なら二人の容姿はあまりにも……。

 

 

「お、俺にそっくりだ……」

 

「……………」

 

 

 赤龍帝・兵藤一誠と塔城小猫にそっくりなのだから。

 

 

「それにあの女の子は小猫ちゃんに……」

 

 

 思わず小猫を見やる一誠はハッと息を飲んだ。

 何故なら、小猫がその小猫そっくりの少女に対して思いきり睨んでいたからだ。

 

 

「……………。僕の妹の兵士君と戦車さんにとても似てる気がするんだけど、キミ達は何者なんだい?」

 

「……………」

 

「? 私を知らないんですか? あ、そっか、黒歌姉さまと違って別に私ははぐれ悪魔でもなんでもありませんでしたからねぇ。

そこのリアス・グレモリーさんの驚いた顔を見る限りたど、その子も私の事は一切語ってなかったみたいですしね」

 

 

 一体誰なんだと、逆に謎が深まった面々達に対して飄々とした態度を崩さない、今は白雪という名の白音は、平然と自己紹介をする。

 

 

「初めまして三大勢力のどれかに所属する皆さん。

私は白雪……そこの今は塔城小猫という名前を使う彼女の双子の姉です」

 

「ふ、双子の姉……!?」

 

「小猫アナタ……姉は一人だけって言ってなかったかしら?」

 

「……………………」

 

 

 驚くリアスや一誠達が小猫に問い掛けると、小猫は心底嫌そうに頷いた。

 

 

「そうです、彼女は私の双子の姉で間違いありません」

 

 

 心底知られたくなかったという顔で肯定する小猫に暫しの沈黙の空気が流れた。

 

 

「相変わらず、最低なくらいに悪食ですね白雪姉さま……」

 

「最高の誉め言葉をありがとう白音。

アナタは相変わらず楽しそうで何よりだよ」

 

 

 小猫の白雪への態度を見るに、決して仲の良い姉妹ではないと感じとる他の者達。

 しかしこの衝撃もそうだが、もう一人……髪の色こそ違えど一誠にそっくりな青年の事がまだ残っていた。

 

 血の香りが風に乗って漂う駒王学園に現れた謎の人物……白雪ともう一人の男。

 彼等は一体何者なのかと、全員が思う中、黒髪の一誠そっくりな青年は………。

 

 

「チッ」

 

 

 白雪の様に自己紹介をするでも無く、そして何か言葉を発する訳もなくただ一回、忌々しそうな顔で舌打ちをするだけであった。

 

 

「……………名乗らないのかよ?」

 

「あーすいません、センパイは結構人見知りするタイプなんです。

なので私が代わりに紹介しましょう。彼は零、姓はありませんただの零です」

 

「……………零」

 

 

 明らかに機嫌が悪くなってると白雪がすぐに察知し、代わりにこの世界で使う名前を教える。

 

 

「彼は私と違って……えーっと、そこの人と血縁関係がある訳じゃないです。

偶々顔が似ただけの他人です」

 

『…………』

 

 

 偶々顔が似た他人にしては髪の色以外は全てが似てると全員が思ったが、一誠自身は一人っ子で兄弟は居なかったので今はそれを信じるしかなかった。

 

 

「小猫さんの血縁者が何故禍の団に?」

 

「他に行くところも無かったものですから。

組織に入れば寝床にも食べ物にも困りませんし」

 

「それはそこの彼も同じ理由と見て良いのかい?」

 

「ええ。勝手な真似をしたので、さっきリストラしてやった連中とは違って私達はオーフィス直轄の者で、目的としても『ごろ寝しながら蜜柑でも食べる日々』ですから」

 

『………』

 

 

 今世間を勝手に騒がせてるのは、組織に入って組織の力を利用して自分の野望に動いてるだけの連中だと説明混じりで教える白雪に、サーゼクス達の表情は怪訝なものだった。

 特にセラフォルーにしてみれば、旧知の存在で敵対したとはいえ、複雑な気持ちがあったカテレアを目の前でリアスの所の戦車にそっくりな少女に喰い殺されたのだ。

 

 信じられる要素があまりにも少なかった。

 

 

「信じてもらわなくても構いませんよ。

少なくとも直轄に入ってる面子の誰もがアナタ達に危害を加える気はありませんとだけは言って置きますがね。

ただ、我々の目的の『邪魔になる行動』……例えばこそこそとつまらない真似をして煩わしいと判断したり、このセンパイの気に障ったりとかしたら―――反撃くらいはさせて頂きます」

 

「反撃……」

 

 

 一切喋らせずに、一誠と比べてもかなり目付きの悪い零という青年を横目で伺いながら白雪は一応の忠告だけはしておく。

 

 

「ウチの組織も勝手に大きくなりすぎちゃいましてねぇ。

組織内でも変な派閥とかまでできちゃいまして。

さっきリストラしてやったのは……旧魔王派だったかな? 他にも自称英雄の魂を受け継いだ者達の集まりの英雄派だとか………あ、そういえば白龍皇が加入したらしいですね、ついさっきだったかに」

 

「……ヴァーリ」

 

「そういった面々の情報提供もお望みでしたらしますし、処理しろってのならしておきましょう。

我々としても勝手に敵を作るバカ共と同列に扱われるのは嫌だし」

 

「……悪食の白雪姉さまの言葉を信じろというのですか?」

 

「ん、別に信じなくても良いよ? けど、アナタ一人に何ができるのかな?」

 

「っ……!」

 

 

 わざと煽る様な一言に小猫の表情が歪む。

 

 

「見た感じ、主さんにも大事にされてるみたいだし? センパイそっくりな人とも楽しそうにしてるっぽいし? 黒歌姉さまの犠牲の上に成り立った幸せをそれなりに満喫してるなら良いんじゃないの?」

 

「!」

 

 

 その言葉に小猫の顔つきが憎悪に歪む。

 

 

「姉様に私のなにが……!!」

 

「わからないなァ? 折角アナタの為に汚名まで被った黒歌姉さまの力を恐れて逃げ出して生きてる者の心中なんて」

 

 

 クスクスとこの世界の平和ボケしてる自分に対して煽りまくり白雪。

 黒歌という名前を聞いて、よく事情を知らない一誠等は更にお姉さんが居るのか……と思うのだが、小猫の憎悪の表情を見てるとそれどころじゃない空気だった。

 

 

「アナタが私をどう思おうが勝手だし、否定もしないよ。

けどハッキリと言ってあげる、今私は心底幸せで……その幸せの為に私は生きている」

 

 

 そう言ってフード付きマントを脱いだ白雪の服装は何故か駒王学園の女子制服で、やはり小猫にそっくりだと見た者の印象は合致した。

 

 

「小猫ちゃんよりおっぱいがちょっと大きいかも……」

 

 

 ただひとり、白雪の胸元を見て即座に小猫より大きいと解析完了させた一誠以外はだが。

 

 

「…………………ふざけてるのですか先輩?」

 

「ち、ちげーよ! 似てるから違いを探そうと思っただけで……!」

 

「自分の胸が私より更に小さいからって八つ当たりするのは良くないよ白音?」

 

「っ! ご、誤差の範囲の差です!!! 白雪姉さまだって別に大きくなんか……!」

 

「それも否定はしないよ。

もっとも、白音と違って私はほぼ毎日センパイにちゅーちゅーして貰う事で女性ホルモンが分泌されてるから確実にその差は出てくると思うけど」

 

「は、はぁ? ちゅ、ちゅーちゅーって……」

 

「…………………………………」

 

 

 双子姉妹のドングリの背比べみたいなやり取りに少し毒気が抜ける中、白雪が突然本当に一言も喋らず嫌そうな顔して突っ立ってた零に甘える様にもたれながら、爆弾を投下してしまう。

 

 

「お、おい、俺にそっくりな奴。

お、お前小猫ちゃんのお姉ちゃんのちっぱいを……!?」

 

「…………………」

 

「ど、どっちなんだよ!? そんな羨まし――じゃなくてけしからん事をしてるのか!? だとしたら俺はお前を成敗しないといけないんだが!?」

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 

 不機嫌な顔つきから、だんだんと目が死に始めてくる零に恐怖も忘れて食って掛かる一誠。

 

 

「お子様な白音にはわからないよ。

どうせ発情期が来たって一人寂しく指でヤッてるだけでしょう?」

 

「っ~~!! う、うるさいっ!!」

 

 

 小バカにされた様な言い方をされて頭に来る小猫。

 だから小猫は白雪が嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

終わり。

 

 

 

 

 人外が周りに居て、まともな人間が全く居ない。

 昔から結局そんな環境に放り込まれ続けていた零は、更に増えた猫だの龍だのにうんざりしていた。

 

 

「ううっ……お、お師匠様、お腹の中が切ないんです……」

 

「ど、どうしてもって言うならアレさせてあげないこともないけど!?」

 

「……………汚ねぇホームレスの便所にでもなってろ」

 

 

 気づけば勝手に師呼ばわりしてくるこの世界の白音やら、明確に『お前キライ』と言ってるにも関わらずチョロチョロとついてくる黒い猫。

 

 

「センパイ、取り敢えず部屋に行きません?」

 

「ん」

 

「ちょ、おかしくありません? 何で白雪姉様だけ……」

 

「姉妹よ!? 差別よ!?」

 

「馬鹿なの二人は? 私とセンパイの付き合いの長さを考慮せずとも二人に興味なんてないの。

あ、だったらセンパイに似てる一誠さんにでも頼んだら? 大喜びで飛び付くよきっと」

 

「「………」」

 

 

 白雪だけ贔屓してるとうるさいし。

 

 

「いい加減にしろ、殺すぞ……!」

 

「ぶばっ!? ぐ、ぐぅ……い、痛いにゃぁ……わ、私だってアンタみたいな暴力男なんてキライだと思ってたわよ。

で、でもこうなっちゃったんだからしょうがないじゃない!」

 

「私だってよくわからないし、いっつも怖い顔してるのに安心しちゃうんですよ……!」

 

 

 何度半殺しにしても離れないし。

 

 

「センパイ、仕方ないので一回だけ四人で――あ、逃げた」

 

「追うよ白雪、白音!」

 

「仕方なくです、これは仕方ないんです」

 

「……やっぱり姉妹だね私達って。センパイを見る目が同じだもん」

 

 

 白雪までたまに向こうに付くから始末に負えないし。

 

 

「一誠くん! なにも聞かずに髪を黒染めしろ! そして俺に化けてあの猫共の相手をしてくれ! よかったな! 4Pできてハーレムだ!」

 

「4!? い、いやぁ、かなり魅力的な話だけど、きっと即バレるというかさ……。お、俺実はレイヴェルと……」

 

「じゃあその雌鳥も含めて夢の5Pをしろ! 俺はもううんざりなんだよ!! 白雪はともかくとして、あの二人に関しては寧ろ嫌われようと殴る蹴るをしてきたんだぞ!? なのに何でだ!? オーフィスもそうだがどうしてなんだ!!」

 

「そ、それはわかんねーけど……」

 

「ちょっとアナタ、小猫に暴力を振るってる話は聞き捨て――」

 

「うるせぇこの不細工がっ!! テメーがあのガキの教育すらまともに出来なかったせいだ! ドブに頭から突っ込んで死ね!!」

 

「ぶ、ブサイク……。

う、生まれて初めて今ブサイクって言われた……」

 

「ああっ!? り、リアス部長のメンタルがまた大変な事に……!」

 

 

 溜め込んでいた何かが爆発し。

 

 

「一誠はレイヴェル・フェニックスに寝取られるし、彼にはブサイク呼ばわりされるし……。

ふふ、私ってなんなのかしら……」

 

 

 部長さんはほっといても死にそうになるし。

 

 

「私だって一誠くんを寝取られたショックは大きいですわ。

出番すらまともになさそうですもの……」

 

「私も……」

 

「僕も」

 

「僕なんて名前すら出なさそうですぅ……」

 

 

 他の者達もメンタルが大変だったし。

 

 

「寝取られ……? ……おい、まさかキミ」

 

「ぐ、偶然な? た、偶々二人で遊びに行った時に休憩がてら入った所が大人の夢のお城で……」

 

「あ、あぁ……」

 

「浴室がマジックミラーになってて、ついシャワーを浴びてたレイヴェル見てたら抑えられなくなって……」

 

「も、もう良いわ。

結局普通の人間とは無理な運命なんだな……」

 

「へ?」

 

 

 可能性の自分ですら普通の人間の女の子ではなくてよりにもよって悪魔相手に卒業式をやったことに絶望して変な笑い声が出てしまったしで、彼は段々とギャグっぽくなっていくのだった。

 

 

「一誠さま~♪」

 

「………………おい、呼んでるぜ雌鳥さんが」

 

「め、雌鳥ってやめてくれないか? レイヴェルって名前が……」

 

「うるせぇばーか。

また夢の大人のお城に行って孕ませて、相手の親にでもぶん殴られてしまえば良いんだ……」

 

「い、いやそんな……。

それよりさ、向こうから猫三姉妹とオーフィスがスゲースピードで走ってきてるぞ?」

 

「っ!? クソが! 追い足だけは白雪並みになりやがって! 捕まってたまるかぁぁぁっ!!!」

 

 

 地獄の鬼ごっこが再開されるのを一誠が見送ったり。

 

 

「あら、また追いかけられてますの? あの野蛮人さんは?」

 

「みたい。

まあ、死にはしないから大丈夫だろうし、今日はどこに行きたい?」

 

「一誠さまの行く所なら何処へでもですわ……ふふふ♪」

 

「………ちくしょう、可愛いなぁレイヴェルは」

 

「嫌ですわ一誠さまったら♪ でも嬉しい……」

 

 見送った後まったりとイチャイチャしてたり。

 

 かつて世界を破壊した青年と白猫はそれなりに平和にやれるのかもしれない。

 

 

………まあ、こうなるとは限らないが。




補足

人外絶対殺すマンなので、殺る時は本当にわざと残酷にしてるんじゃないかって思うくらい徹底的です。


その2
小猫たんは双子の姉ちゃんが基本マジでキライです。

何を考えてるかわからないし、すぐ貧相だと鼻で笑うし……。


その3
と、猫達とごちゃごちゃさせられてる間にこの世界の一誠くんは鳥ちゃんとかなり接近してしまってましたとさ。

……と、なるかはわからんけど。もしなったら彼はハーレム王を目指さなくなってしまうという緊急事態に。

そしてリアス達は絶望してしまうぞよ……。

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