色々なIF集   作:超人類DX

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強引にもしも話。

前回までとは関係ないよ


※悪に堕ちる。還る為に

 復讐に生きた人生故に英雄になる事を拒否した超越者二人の晩年はきっと幸せだっただろう。

 決して失うことの無い繋がりを、家族を獲られたのだからこそ過去の傷は癒せたのだから。

 

 だからこれからも変わらない。この身がいずれ朽ち果て様とも後悔は無い。

 英雄である事を放棄した青年二人は何時までもそう思っていた筈だった……。

 

 しかしそんな青年二人は『天上よりも更に上の何者』かが決して許しはしなかった。

 まるで幸福を掴む事を阻むかの如く、全能とも云えるだろう何者かは青年二人に安堵の時を与えることはしなかったのだ。

 

 忌々しき世界に再び落とすという形によって……。

 

 

 

 

 

 束縛から抜ける為には自分達を『観る』何者かを完全に殺さなければならない。

 トラウマ、或いは悪夢、或いは嫌悪しか感じない地獄の様な世界に落とされた青年二人は、全盛期の頃の力を失わされた現在(イマ)も必死に生きていた。

 

 

「常々思うけど、やっぱり俺達は相当嫌われてるみたいだな」

 

「あぁ、お礼にブチ殺したくなるぜ本当に」

 

 

 幸福を掴んだ日々からの逆戻り。

 あの日、漸く手に入れた平和な時を突如台無しにしてくれた天上の神々よりも更に上の――想像もつかぬ場所から現れたと自称する全能者によって全てをまたしても喪ってしまった青年二人。

 かつて其々が兵藤イッセーと匙元士郎という名を持っていた二人の青年は、戻りたくもなければ生きたいとも思わない出身世界にて生かされていた。

 

 

「ガキの姿に戻されたが、お前と早期に合流出来たお陰でなんとか時間は掛かったが全盛期近い所までは戻ったが……鎧はまだ使えない」

 

「まだ芽があるだけマシだろ。俺なんかドライグすら居ないんだぜ? 全盛期には一生戻れねぇや」

 

 

 皮肉にも、其々がこの世界を生きる匙元士郎と兵藤一誠の兄として生かされている。

 それは当然、己が散々恨んだ『邪魔者』と同じ存在に近い者であるという事であり、何度絶望しかけたものか。

 お互いという親友が居なければとっくに生きる気力を失っていたのは間違いない。

 

 

「……で、この世界の俺とお前がそろそろ悪魔の眷属になる時期な訳だが」

 

「……。そこに関しては本人の意思に任せれば良い。

そもそも俺達が口を挟む話では無いし、何より奴等の顔は出来れば見たくねぇ」

 

 

 寂れた公園のベンチで缶コーヒーを飲みながら駄弁る元・イッセーと元士郎は、この世界を普通に生きる自分達自身の『進路』についてを話し合っているらしい。

 特に口を出すことも、変な真似をするでなく其々が兄という役割を淡々と演じながらこっそりと全盛期の力を取り戻す鍛練を幼い頃から続けて来たらしく、弟としての二人の選んだ進路については特に思うことはないらしい。

 

 

「あくまでも俺達の目標は『帰る』――もしくは『帰してあげる』事だ。

この世界の俺達がどんな道を選ぼうが、薄情かもしれないが放っておくべきだ」

 

「あぁ、そうだな……。所詮俺達は外様だ」

 

 

 彼等の邪魔はしない。

 例え不審な存在が居たとしても、自分達の成すべき事はあの場所に帰る――もしくは『帰してあげる』事なのだ。

 その為には悪魔やその他の存在に自分達が血を吐く思いで取り戻し掛けた力を悟られる訳にはいかない。

 あくまでも転生悪魔となった兵藤一誠と匙元士郎の、何も気付いてない一般人の兄二人という体で居なければならないのだ。

 

 

 

「それに、もし奴等にアレを知られたらマズイだろうしな」

 

「あぁ俺達はともかく……アレはな」

 

 

 最悪、自分達の中身がバレ様が、押さえ付けて黙らせれば問題は無い。

 だがしかし、()()についてだけは何としてでもバレてはいけないのだ。

 自分達以上にイレギュラーであるアレの存在は……。

 

 

「様子を見に行くか……?」

 

「行く…………しかないだろ。

今俺達の事情を知った上で協力してくれるのはアレしかないんだからよ」

 

 

 飲み終えた缶コーヒーをゴミ箱にシュートした元イッセーからの提案に、元・元士郎も続いてシュートしながらうなずく。

 ストレスが強く感じてしまうこの世界において、真の自分で振る舞える相手は一人他に居る。

 

 自分達以上にイレギュラーであり、凄まじく当時から苦手意識を持っていた存在。

 その存在は今、かつての世界を生きていた頃からは考えられないレベルの転落した人生を歩まされているらしく、公園を出て直ぐの所にあったコンビニで買ったアイス片手に到着した寂れすぎたアパートの一室に居るらしい。

 

 

「今更ながら不憫というか、運が悪いというか……」

 

「まさかだったもんな……」

 

 

 所々が傷んだり皹の入った壁の二階建て式のアパートの、錆びだらけの階段を上る二人の青年は、仕方ないとはいえ、かつては栄華を誇った立ち位置でそれ相応の豪勢な生き方をしていたその者がこんな安いアパートに住まわされている現在に対してかなり同情していた。

 

 

「「あっそびましょー」」

 

 

 その事に関しては二人もかなりの負い目があるのか、かつての頃の様な邪見さはあまり見せなくなっていた。

 インターホンすらない部屋のドアを二人して友達の家に来ました的なノリで叩けば、中からドタドタしたような足音が聞こえ、扉が勢いよく開けられる。

 

 

「待ってたわ二人共、さぁ中へ!」

 

 

 中から飛び出す様に現れたのは、青みががった銀髪の、千人が千人――老若男女関係なく振り向くだろう美貌とスタイルを持ったエプロン姿の美女で、出るや否や微妙な顔をしていた二人の間に入り込む様に抱き寄せ、そのまま部屋の中へと招き入れた。

 

 

「「……」」

 

 

 人間離れした美貌を持つ女性。

 それはかつてフレイヤと呼ばれたとある世界の美の女神だった存在であり、何度もアプローチをかけてきた『妙な縁』を持った者だった。

 

 

「アナタ達が来ると思って、ご飯を作って待っていたわ」

 

「あ、うん……」

 

「ども……。これそこの店で買ったアイス」

 

「あら、では食後に皆で食べましょう?」

 

 

 正真正銘、別世界の神であり元がこの世界に酷似した世界の出身である二人とは違う存在であるフレイヤと呼ばれる女神が何故この世界にフリッフリのエプロンをして二人に夕飯まで振る舞っているのか? それは完全に二人の存在によって巻き込まれたという一点であり、オマケに女神としての力まで押さえ込まれてしまっているらしい。

 

 故に、当時は苦手意識のあった二人も、流石に巻き込んでしまった事を申し訳無く思っており、こっそりアルバイトをして稼いだ一部を彼女の生活費として提供しているのだ。

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

 今のフレイヤは元が頭につく美の女神。

 故に彼女の存在をこの世界の連中に決して悟らせてはいけないと、二人は全力で彼女を守っていた。

 そしてフレイヤはフレイヤで、かつて神らしくどこか掴み所の無かった性格が二人の前にのみ彼女が隠れていた『シル』という少女に近いものへと変わっていた。

 

 

「どうかしらお味は?」

 

「普通に食えると思う」

 

「最初の頃に比べたら食えるぞ」

 

 

 それは罪悪感をフレイヤに感じてる二人とは反対に、彼女自身は心の底から永らく求めた、英雄である事を拒絶した英雄二人とどんな形にせよ、優雅とはとても思えないがのんびりと夕食も一緒にできる生活を手に入れられたからだ。

 どうにもならない腕だった料理も二人の舌基準で合格ラインを貰えるまでに上げたし、一切やることはなかった家事すらも無難にこなせるレベルにまで達した。

 

 力はほぼ押さえ込まれてしまっていて不便な所もかなりあるし、かつてを懐かしむことも多い。

 けれどやはり神と人間の精神力の差か、それはそれ、これはこれでフレイヤ自身は結構割り切って今を楽しんでいた。

 

 

「そうそう、二人に見て貰いたいものがあるのよ」

 

「?」

 

「見てもらいたいもの?」

 

 

 さて、そんな三人の『完全再起』を目的とした生活は今のところまだ手探りの状態。

 ほぼ全盛期に近い力を取り戻したとはいえ、まだ何かが足りない二人も今伸び悩みの時期にぶち当たっており、フレイヤも力を取り戻せる感覚が未だにない。

 

 何かが足りない。しかしそれが解らない。

 そんな状況が続いても決して焦らないのは、彼等が経験してきた事だからなのだろう。

 

 

「少し待ってて貰えるかしら?」

 

「? おう」

 

「? 何だ一体?」

 

 

 夕食もたいらげ、食後のアイスも食べ終わる頃、フレイヤが席を外す。

 何やら見て欲しいものがあるらしいと彼女は言っていたが、一体なんだろうかと二人して首を傾げながら待つこと数分。

 

 

「どうかしら?」

 

「「…………」」

 

 

 襖を挟んだ隣の部屋から出てきたフレイヤに二人はカップアイスを食べる為に持ってたスプーンを思わず落としそうになった。

 何故か? それはフレイヤが学生服を着ていたからであり、しかもその学生服はこの世界の自分達が通うあの駒王学園の女子制服だったからだ。

 

 

「「………」」

 

「感想とかあれば聞かせてくれる?」

 

 

 ドヤァとした顔をしながら駒王学園の制服姿でターンをするフレイヤに青年二人は無意識に互いの顔を無言で見合せた。

 

 

 

(か、壊滅的に似合ってないんだけど……)

 

(無理してコスプレしてる感が半端ねぇ……)

 

 

 容姿からしてどう見ても大人の女であるフレイヤが学生服を着ても、怪しいコスプレビデオの女優にしか見えず、感想にひたすら困ってしまう。

 かつての頃なら大笑いしながら指まで差して『壊滅的に似合ってない』と言ってしまってたが、今の状況と彼女に対する決して少なくはない罪悪感のせいか、それが言えなくて困ってしまう。

 

 

「…………。やっぱり似合う訳ないわよね、おばさんが無理してコスプレしてるとしか思わないでしょうし……」

 

 

 それはフレイヤ自身も無言で困った顔をしてた二人を見て悟ったのか、かなりネガティブな事を言いながらどんよりしたオーラを放ち始める。

 それを見た二人は無言で頷くと……。

 

 

「別に似合ってないって事は無いんじゃないのかなと思わなくも無いかなと……」

 

「同じく。

てか、どこでそんなもん手に入れたんだよ?」

 

 

 取り敢えず出来るだけのフォローに走った。

 するとかつての頃には考えられないくらいに分かりやすくぱぁっとした表情になるフレイヤ。

 

 

「アナタ達が元は通っていた学校から。

ちょっと胸がキツいけど着れたから失敬したのよ」

 

「………おい、何危ない橋渡ってんだよ?」

 

「バレずにやったから大丈夫よ。

それに悪魔達の事も見てきたけど、私に比べたらそこら辺の小娘だったわね」

 

「…………」

 

 

 要するに盗んで来たらしい。

 女神が泥棒って……と二人は思うが、褒められたのがそんなに嬉しかったのか、目に見えてルンルンしてるフレイヤを見てるとあまり注意はできなかった。

 

 

「それでわかった事がひとつあるわ。

私達三人が力を完全に取り戻すには『経験値』が圧倒的に足りないって。

元士郎、アナタは相手の力を喰らう事で鎧と共に強くなる。

イッセー、アナタは強い者と戦い、その力に適応することで進化をする。

要するに今のまま鍛えてるだけでは限界なのよ」

 

 

 駒王学園の制服姿のまま座り直したフレイヤが、少し真剣な表情で伸び悩む二人に対して自分の考えを示す。

 言われてみれば確かにそうかもしれないと二人は思うが、この世界には今のところかつての頃の様な理不尽な力をもった存在な居ないし、この世界の連中に何をする気にもなれない。というか関わりたくはない。

 

 と、この世界の弟としての自分自身達に対する引け目もあって理解はするけど具体的な案が思い浮かばない二人に対して、フレイヤは唐突に言った。

 

 

「私という存在を連中に示すわ」

 

「はっ!?」

 

「馬鹿な!」

 

 

 自分――つまり美の女神としてこの世界の連中に発信してやると。

 その言葉に二人の青年は当然の如く反対した。

 

 

「今の不安定な状態でそんな真似したら、アンタを狙う輩に何をされるか分かんないんだぞ!?」

 

「百も承知よ。

寧ろそういう輩を釣り上げる為の餌として動くつもり」

 

「囮になるってのか? やめろ、アンタは確かに俺達に協力してくれてる事には感謝してるが、わざわざそこまでする必要は――」

 

「でもアナタ達なら私を守ってくれるでしょう?」

 

「「っ……!」」

 

 

 信頼を示す言葉に二人は言葉を詰まらせた。

 フレイヤは心底自分達を信じてる。

 全盛期に近いとはいえ、力がまだ不安定な自分達を知ってるにも拘わらず彼女は全幅の信頼を寄せている。

 

 

「イッセー、アナタは経験を積み直して再び進化をしてみせなさい。

元士郎、アナタは相手の力を喰らって暗黒騎士の力を取り戻しなさい。

その為なら私自身が餌になる事に何の躊躇いは無いわ」

 

 

 その信頼があるからこそ、自分自身を餌にするのだって躊躇は無い。

 彼等が取り戻せるのであるなら、その姿を近くで見ていられるのであるなら、己を犠牲にする事に何の躊躇いがあるか……。

 

 

「この世界の弟としてのアナタ達自身の邪魔にならない為にわざわざ学校まで違う場所に行ったのは本心じゃないでしょう? アナタ達はあの悪魔達に心の底で僅かに怯えている――違う?」

 

「「…………」」

 

「克服するのよ、その恐怖を。

人に近くなったこの身でアナタ達とこの数十年生きてわかったわ。

アナタ達はかつて転生者に一度敗れ、欲するものを失った。

そして挫折と敗北に傷つき、次なる戦いでは『恐怖』を抱きながら戦い、そして辛くも勝利した」

 

 

 彼等が彼等として復活する。

 それが人の身に近い所まで落とされたフレイヤの願い。

 

 

「だけど残ったその恐怖は拭えていなかった……。

私は、恐怖を克服する事こそが『生きる』事だと、人間に近づいた今なら解る。

アナタ達に導かれて進化し、英雄の器を開花させたベル・クラネルを見た今、アナタ達に英雄は求めない――けれどっ! 今私達が全てを取り戻す為には、ほんの小さな『恐怖』をも持たない事よ!」

 

「「……」」

 

 

 その為なら喜んでこの身を捧げよう。

 英雄の器を拒絶し、英雄であることを否定し続けた、二人の女神の家族だった青年二人に惹かれし美の女神の言葉は青年二人の目を覚まさせたのかもしれない。

 

 

「苦手だった相手に言われちゃうとはな……」

 

「へっ、アンタは俺達に巻き込まれて恨んで然るべきなのによ」

 

 

 力を引き出す原点。

 己の精神に根付く価値観が生み出したスキルが……。

 

 

「ヘスティアとロキ――そして私のかつての眷属達には悪いと思ってるけど、私は今が幸せよ? だって、私が危なくなったら守ってくれるでしょう?」

 

「言われんでもアンタは守るさ……オッタル君には悪いけど。だろ、元士郎?」

 

「あぁ、絶対にな。オッタル坊やには悪いけど」

 

「フフっ、だから私も安心できる」

 

 

兵藤 誠牙

 

 元・兵藤一誠

 

基礎

 

 力・F~B 不安定

 

耐久・C~A 不安定

 

器用・H およそ20 

 

敏捷・E~C 不安定

 

魔力・0

 

 

発展

 

【全封印】 

 

スキル

 

 

 

赤龍帝(レッドドラゴン・エンペラー)】 

 

 赤き龍を宿し称号

 

※永遠に復活不可

 

 

無神臓(インフィニットヒーロー)

 

 

 全ての環境に適応し、永久に進化する(10%程度)

 

 

? ? ?

赤き龍帝の称号を失った代わりに宿った何か(自覚無し・現状不明)

 

 

匙 駈音 

 

元・匙元士郎

 

 

基礎

 

 力・F~B 不安定

 

耐久・G~C 不安定 

 

器用・G およそ50 

 

敏捷・C~A 不安定

 

魔力・0

 

 

 

発展

 

【全封印状態】

 

 

スキル

 

 

 

暗黒騎士・呀(ダークナイトキバ)

 

 

第八の神滅具の始祖への称号(鎧召喚現状不可)

 

 

復讐神(リベンジェンス・ヒーロー)

 

 

報復心により進化を促す(10%)

 

 

黄金騎士(ゴールドナイト)

 

 

守るべき者への想いへの進化

 

 

 

「てか、どうやってあんな学校に潜り込むつもりだよ? 言っとくがこの世界の俺と元士郎の邪魔になっちゃダメだと思って高校進学なんてしなかったんだぜ?」

 

「俺の場合はこの世界の俺を抜かして更に弟と妹が居て、金を稼ぐ為に進学を諦めた体でいってるしな」

 

「大丈夫よ、来年度から――つまりこの世界のアナタ達が二学年に上がる時期にあの学園に夜間部が新設されるらしいのよ。

だからそれに乗じて夜間部の生徒として入学すれば不自然さは無いわ、学費もタダ同然に安いし」

 

「定時制か……まあ、それなら顔を無意味に合わせる事も無いか」

 

 

 新生フレイヤ・ファミリア――始動。 

 

 

 

 

 

 夜間部が駒王学園に新たに創設されたというのを上手く使って入学を果たした三人。

 あまり思い出したくない校舎を見て微妙な気分になるものの、これも全てを取り戻す為だと二人はわざとらしく悪魔達を挑発するフレイヤの傍に常に居た。

 

 

「あ、アニキ……」

 

「…………」

 

 

 そんな挑発を続けている内に、とうとうこの世界の自分自身――弟と相対することになってしまったが、弟二人の態度はとても複雑そうなものであり、この世界の元士郎に至っては駈音の名として生きる兄に対して嫌悪にも似たものを持っていた。

 

 

「何の相談も無く進学せずフラフラしてたと思ってたら、今度は夜間部に勝手に入るとは、どこまでもアンタは勝手だな!」

 

「………」

 

 

 進学をしなかったのは彼を含めた弟や妹達の学費や生活費を稼ぐ為に時には年齢すら偽って夜勤の仕事に励んでいたからなのだが、元士郎にはそれが上手く伝わらなかったらしい。

 嫌悪にも似た態度を前に駈音は無言だった。

 

 

「兄貴も何で突然夜間部の学校なんかに……。

親父とお袋が怒ってたぜ?」

 

「色々あってな。心配しなくても今更学費の無心はしない」

 

 

 反対に一誠と誠牙はそれなりの仲だが、両親とは壊滅的らしい。

 

 

「それにあの美人過ぎるお姉様は一体……おっぱいもリアス部長以上だしよ!」

 

「……」

 

 

 

「貴女は何なのかしら? ウチの兵士とソーナの兵士のお兄さんと共に行動しているみたいだけど……」

 

「さぁ? 私はしがない夜間部通いの貧乏人のつもりだけど、悪魔である貴女には私はどんな風に見えるのかしらね?」

 

「………………。ハッキリした嫌悪よ、貴女からは我々悪魔の天敵の力を感じる」

 

 

 不穏な空気。

 

 

『闇よ……闇よ……! 我に力を!』

 

「こ、この力は……!?」

 

「な、何だよアイツ……何でアイツがあんな力を……!」

 

 

 弟がピンチだったから、助けるつもりで一時的に力を取り戻したは良かったが、元士郎の劣等感を刺激してより恨まれ……。

 

 

「やはり気に食わないわあの女……! 男二人を侍らしてるだけの嫌な女……!」

 

「顔がそれぞれ兵藤君と匙に似てるから余計に気に食わないわ……!」

 

 

 異様な嫌悪感を感じるフレイヤの状況に嫉妬する悪魔二人。

 

 

「憎ければ滅ぼしに来なさい。

私を敵と見なして殺してみなさい。

そうなれば私達は全てを取り戻せる」

 

「彼女には触れさせやしねぇ」

 

「憎いなら俺達を殺してみろ」

 

 

 そして徐々に力を取り戻し始めたフレイヤが、二人を完全復活させる為に宣戦布告。

 

 

「心配するな、世界征服する気も、誰かを陥れるつもりもねぇ。

俺達は俺達の世界に還るだけだぜ……!!」

 

「なんだよ俺達の世界って!? ここが俺達の世界だろう!?」

 

「残念ながら違う。

俺達はこの世界の者じゃねぇ!! 還る為には敵が必要なんだよ!!」

 

 

 消え去る繋がり。

 

 

「さぁ来なさいこの世界の英雄。

私達を殺せば全てが解決するわよ?」

 

「お、俺には貴女が悪い人には見えない……!」

 

「じゃあ、あの二人と永遠に生きる為にはアナタの大切な仲間が邪魔だから殺すと言えばその気になれるのかしら?」

 

「そ、そんな……」

 

 

 悪として世界の癌となる。

 

 

「ぶ、部長に……リアスに声が似てる貴女を殺したくなんてない!」

 

「だったら死ぬしかねぇな……弟よ?」

 

「そら、世界のピンチだぜ? 守れよ?」

 

 

 美の女神と暗黒騎士と元龍帝が世界に喧嘩を売った時、全てが三人の敵となる。

 

 

「兵藤一誠と匙元士郎に愛されてる分際で、私にとっての全てと言える二人を寄越したら和解してあげるですって?

……………………図に乗るなよ、たかが小娘悪魔ごときが」

 

 

 そして皮肉にも悪魔の少女が二人に惹かれてしまった時、美の女神は餌を止めて牙を剥く。

 

 

「おいおい、無茶しすぎだぜフレイヤ」

 

「ったく、まだ不安定なのに無理するからだぜ」

 

「ふふ、こっぴどくやられてしまったけど……なんとか間に合ったみたいね?」

 

 

 そして全ては――

 

 

「さてと、散々付き合ってくれたお礼だ悪魔共。

くく、ウチの主を可愛がってくれたみたいだし、最初っからテメーみたいな芋くせぇガキなんぞに興味は無いって意味を込めて、半殺し程度にしてやるぜ」

 

「欲張りなんだよバカが。

一誠と元士郎で満足すりゃあ良かったものを……。

まぁ、オメーみたいな貧弱眼鏡には興味ねーけどな」

 

 

 報復の為に這い戻る。

 

※嘘です。

 

 




補足

還る為には力が足りない。

進化するには敵との戦いが必要。

故に三人は癌となることを決める。

その2
駒王学園の女子制服姿のフレイヤ様

…………………ご想像にお任せします。


その3
二人に対しては凄まじくデレが強めですけど、その他に関しては大体いつも通りのフレイヤ様です。


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