色々なIF集   作:超人類DX

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この短編の原点に還ろう。
ってことで、一発ネタをやりました。


※短かったので加筆しました。


マジの一発ネタ
ホントの一発ネタ


 中学時代の渾名がド変態だったりする。

 それは思春期特有の異性に対するってのもある程度あるけど、それ以上に……なんての? 身体を鍛えるとか勉強とか……とにかく己の限界を常に超える為に色々なジャンルに手を出しては病気(シック)と呼ばれるレベルで没頭するのが人生の楽しみなのだ。

 

 それを中学入学の最初の自己紹介で張り切って言ったらドン引きされ、実際に自分を追い込む真似をして色々と鍛練している姿を見せたら変態扱いされ……。

 気が付けば俺は高校二年生になっていた。

 そして……風紀委員長になっていた。

 

 

「はーいそこのショートヘアーな女の子。

スカートの丈が規定より短いので、さっさとこっち来て測りなさい。風紀委員長権限なんで逆らうことは許しませんよー」

 

「嫌よ! 変態兵藤に触られたくないわ!」

 

「んだとゴラァッ!! そんな事言うやつには俺の脳内であられも無い姿になってる妄想してやんぞオラァッ!!」

 

 

 が、しかし。高校生になってもド変態の称号を引き継ぎっぱなしだったせいで、風紀委員なのに全く風紀を守って無い委員長失格野郎だなんて、去年共学になったばかりで女子達の比率が圧倒的に多い駒王学園内では呼ばれちゃってる。

 いやーほらー……華の高校生だし? 彼女の一人や二人や三人や……ていうかハーレムとか体験したくなっちゃったんだよね。

 だからこの高校を選んで通ったってーのに……。

 

 

「変態よ変態! 近寄るな!!」

 

「おわ!? 石を投げるだなんて淑女としてあるまじき行為!! おしおきしちゃうぞ……クヒヒヒヒ!」

 

「キャァァァッ!!!」

 

 

 アレだよね。こうまで拒絶されると悲しくなるよね。

 悲鳴あげてマジ逃げだもん。いや、ぶっちゃけあの子の足遅いし、すぐ取っ捕まえるのも訳無いけど、流石に本気で嫌がってる子にセクハラはしねぇ。

 セルフで紳士にセクハラ……これがボーダーラインだもんな。

 

 

「出た!テメーの居る環境に気付かず、文句ばっかり言ってる最低イッセーだ!」

 

「「「「「イッセー! イッセー!! 死ねイッセー!!!」」」」」

 

「うるせぇ! 萌え声のイッセーコールなら許せるが、テメー等みてーな野太い野郎声のコールなんざ吐き気がするわ!!」

 

 

 野郎共にも何故か敵視されてるし、あぁ……彼女はもう無理か……あははのは。

 

 

 兵藤一誠。

 駒王学園二年。

 所属……風紀委員会・委員長。

 

 

 これは生徒会長でもマイナスでも無いが、どちらかといえば生徒会長に近い無尽蔵な御馬鹿なトキメキメモリアルである。

 

 

 

「ファック、何故俺はモテないんだ!」

 

 

 キッチリ風紀委員の仕事をしてた筈なのに、校則違反をしていた女子じゃなくて俺が教師に怒られたっていう理不尽にも負けず、只今風紀委員御用達の教室の一番偉い席……つまり委員長のみが許された席に座りながら、この世の不条理を嘆いていた。

 

 

「確実にツラは悪いって訳では無いのに……ぐぬぬぬ!

おい、お茶を淹れんかぁっ!」

 

 

 鍛練に鍛練を重ね、その結果獲られるものに快感を感じるからちょっと鍛練好きってだけのお茶目な高校生なのに、どうしてもセクハラ野郎と罵られてまるでモテねぇ。

 とにかくその不条理さにイライラし、落ち着くために風紀委員の教室に同じく居た委員の一人で我が副委員長であり、今はソファに座って暢気してるこの……まあ、ぶっちゃけパシリにお茶を要求する。

 

 

「はいはい……今淹れるから待ってろ」

 

「水羊羹も忘れるなよ?」

 

 

 副委員長の分際でものっそい嫌そうに……でも渋々お茶汲もうとする所に、お茶うけを忘れずに追加する。

 

 

「ほら淹れたぞ」

 

「うむ、苦しゅうない」

 

 

 待つこと数分。言われた通りにお茶と小皿に小さく切って乗せた水羊羹を用意した副委員長が先代から受け継いだこの風紀委員長の机に持ってきたので、殿様気分で受け取り、早速飲んでみる。

 うむ…………。

 

 

「ま、普通だな」

 

 

 特に何も無い。普通に只のお茶だった。

 チッ、海原〇山みたいに『この茶を淹れたのは誰だぁぁっ!』と言ってやりたかったが、その文句が言えないレベルに普通の味なんで、思わずこんなつまらんコメントをしてしまった……。

 

 

「それは何より。

で、そんな事より一誠に委員長解任の抗議書類が大量に送られてきてるんだが……男子からも女子からも」

 

 

 そんな俺の気持ちを察しているのか無いのか……多分察するつもりも無いんだろう、サラッサラしてそうな長い黒髪を靡かせた副委員長は、さっきから見ていた書類を俺の前に差し出し、毎日毎日聞かされる話をする。

 

 

「あぁん? そんなもん知るか、解任請求(リコール)したけりゃあ生徒会に掛け合えとでも言っとけ」

 

 

 ふん、ド変態と罵るばかりか、先代の美人先輩から受け継いだこの椅子まで降りろだぁ? そりゃあ嫌だね。こんなアホやってるけど、委員の仕事だけはマジで真面目にやってるんだ。

 あの眼鏡の生徒会長からも認められてるしな。

 おっぱい大きくなかったけど、若気の至りでナンパしたら玉砕しちゃったあの生徒会長な……クソ!

 

 

「まあ、お前と俺だけしか委員が居ないし、本当に機能してるのかとか連中には思ってしまうんだろうよ」

 

 

 そう男口調で言う副委員長の言う通り、我が風紀委員は委員長である俺と副委員長であるコイツの二人体制である。

 何故かと言われたら9割方俺のせいって副委員長は常に言う訳で、俺もそこは自覚がある。

 てのも、女子がたくさんのこの学園でド変態扱いされてる俺が所属してる……ましてや委員長でもある風紀委員会に入ろうとする物好きは皆無なのだ。

 何度か勧誘とかもしたけど、どれもこれもが『変態の近くに居たら何をされるかわからないから嫌だ』と食い気味で否定されちゃって悲しき過去もある。

 だから仕方なく、副委員長としてコイツを使ってるし、正直二人だけでも結構やっていける。

 え、男は勧誘しなかったかだと?

 ハンッ、何でむさ苦しい野郎なんて入れなきゃならん。

 そんなもん、この副委員長目当てで入ろうとするのが大半なのに嫌なこった。

 

 

「機能だ? しとるだろ。毎朝服装チェックしてんじゃないか」

 

「……。そのチェックが女子ばっかりだからだろ……」

 

 

 あ、なんだその顔は? 女子の比率が多いんだから当たり前だろうが。

 大体この学校の女子共はスカートの丈が短いんだよ。

 そりゃあ念入りに取り締まりしねぇと駄目だろ? 俺は全く悪くない。だって委員長だもん。

 

 

「この前リアス・グレモリーと姫島朱乃が胸元にけしからん武器を仕込んでるっぽかったからチェックしようとしたら袋叩きにされるしよぉ」

 

 

 半分まで飲んだ湯飲みを置いて、水羊羹を口に入れながらこの前の事を思い出してちょっとイライラし始める。

 毎朝毎朝、連中が変なの引き連れて登校すると、連中のミーハー共が挙って大騒ぎする…………のは別に良いんだ。騒がれるだけの素敵な姿しとるし。今言ったリアス・グレモリーと姫島朱乃はけしからんおっぱいだし。

 しかしながらあのけしからんおっぱいの中に武器を隠してるかもしれないと、俺の正義な心を疑って誰も彼もが俺を袋叩きにしてくれたのが腹が立つのだ。

 

 

「そりゃ解任請求(リコール)されるわ。俺だってするわ」

 

 

 決して下心は無かった……そう言ってるのに、それを一番信用しなけりゃならんこの副委員長までもが俺をゴミみたいな目で見てくるんだぞ……。

 正義が悪に破れた瞬間だぜ……。

 

 

「あぁ? そういやお前も一緒になって俺をしばいてくれたっけか? まあ、良いけどよ」

 

「当たり前だ。鼻の下伸ばして何が『風紀委員の名の下、先輩二人のボディチェックをさせていただきます。あ、そこの白髪ちゃんと茶髪女と金髪君は別に良いからさっさと帰れ』だ。そりゃ殴られても文句なんて言えるわけが無いだろう?」

 

「あぁ? そりゃあオメー……チビだの得たいの知れん自称姉だの金髪野郎のボディチェックなんてして何が楽しいんだーー」

 

「…………………………」

 

「……。わかったよ、そんな目で見るなよ。心が抉れるからヤメレ」

 

 

 何か道に落ちた吸い殻を見るような目になってる副委員長に、ちょっとアンハッピーな気持ちになる。

 昔あったちょっとした縁でコイツとツルむ事になってかなり経つが、どうにもこの目をされると真面目に凹む。

 特にさっき言ったリアス・グレモリーと姫島朱乃胸元武器隠し持ち事件の時なんて一週間は口を聞いてくれんかったからな。

 そうなると、流石に強気に出れんというか……真面目な話、友達と言える存在がコイツと後一人くらいしか居ねぇんだよね。

 

 

「あぁ。おっぱい大きいおんにゃのこに囲まれて、心行くまで揉みてぇ」

 

 

 しらーっとした目で……愛嬌の『あ』の字も感じられない蔑んだ目をする副委員長を半ば無視して、俺は最近の悩みを口にする。

 いや、悩みと言うより男の夢か? 知り合いにおっぱい大きい娘さんが居ないやるせなさを諸君は分からんかね?

 ほら、見てみろ……俺の知り合い兼パシリを。

 

 

「……」

 

 

 こういう話すると途端に不機嫌になるんだよコイツは……。

 ビックリする位にスラッとし過ぎて、女の子っぽい肉付きもおっぱいも無いからって理由で。

 全く、胸の小さな女は心も狭いってか? 嫌だ嫌だ。

 

 

「どうせお前の事なんて、奴等悪魔にとってすれば眼中にすら無いから無駄だよ無駄無駄……」

 

「うっせーぞゴラァッ!! ナチュラルにナンパしてこっぴどく玉砕した過去をほじくり返すな!!」

 

 

 その上嫌味っぽいときた。

 何時かコイツも異性と付き合うとかあんだろうが、余程のマゾかコイツを黙らせられる程に強い奴じゃなければ無理だわ。

 

 

「クソが……おっぱい悪魔の目を引く神器を持ってるからってチョーシ乗りやがって……!」

 

 

 あの何処から途もなく現れて『姉』と自称する変な女と同じスゲー力がある……ってのが女としては残念すぎる胸の無さを誇る副委員長の個性。

 神器だっけ? それも上位の神滅具なんて御大層な力を持ってて、世界征服も夢じゃない力があるのに、コイツにその気が無いってのも残念だ。

 俺ならハーレムの為に全力で使うのに……あぁ、もったいない。

 

 

「くそぅ……あのおっぱい悪魔め。『それより私としては貴方と一緒にいる娘の方に興味があるからごめんなさい』とか言いやがって……!」

 

「……。(何でこんなアホな事ばっか言うやつに俺は勝て無いんだろ……)」

 

 

 神滅具を宿すコイツを下僕とやらにしたいせいで、俺は全く相手にされないという悲しき事実。

 くそぅ……あの薄気味悪い自称姉じゃなくて俺に神器が宿ってたら絶対ハーレムだったのに!

 あるのは神器じゃなくて異常(アブノーマル)だなんて、悲しすぎるぜ!

 

 

「俺から言わせて貰えば、その能力(スキル)って奴の方が絶対貴重だと思うぞ?

何せ持ってるのって『あの例外』除けばお前だけだし……」

 

「その貴重さのせいで胡散臭く思われちゃ世話ねぇよ……ハァ」

 

 

 神とやらがばら蒔いた神器とはまるで違う……いうなれば神の意志に完全に逆らってる力。

 それがド変態の称号を獲た代わりに持つ、人間としては異常で異質な力。

 それに詳しい知人曰く……無神臓(インフィニットヒーロー)って名前の能力。

 

 

「お前の持ってる槍の方がサタンカッケーんだよなぁ」

 

「……。これのせいで何度も死にかけたし、良いもんじゃないよ」

 

 

 急に暗くなる副委員長に、ちょっと無神経だったかと反省する。

 神器が宿ってるからって必ずしも幸せじゃ無いんだよな……コイツみたいに。

 

 

「まー……なんだ。自立出来るまでは付き合ってやるよ。ダチだし」

 

「……。お前が言っても格好良くないぞ」

 

「んだとぉ!?」

 

 

 それを知ってるから……コイツから教えられたから、俺はコイツが安心して生きていけるようになるまで守ることに決め、ド変態言われようが自分を追い込んで頑張ってるのさ。

 

 

「ふふ……ほら怒るなよ委員長?」

 

「……。チッ、可愛くねー副委員長だな」

 

 

 

 

兵藤一誠

駒王学園二年生。

所属:風紀委員会・委員長。

 

備考:無神臓(インフィニット・ヒーロー)(半覚醒)

 

 

 

胡蝶 蘭

駒王学園二年生。

所属:風紀委員会・副委員長。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考:黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)

   別名・曹操(♀)

 

 

「よっし、そろそろ校内の見回りに行くか」

 

「ああ……女子にちょっかいはやめろよな?」

 

「ちょっかい? 違うな……風紀委員の取り締まりよぅ!」

 

 

 まあ、そろそろ自立出来るまで歳だとは思うんだよね、互いに。

 

 

 

 駒王学園・風紀委員の仕事はつまる所校内の風紀を正す事であるのだが、正直そこのところの仕事は生徒会がやってしまっているので、此処数年の風紀委員は日陰の存在になりつつある。

 しかしながら、今年度から委員長を勤める兵藤一誠と副委員長を勤める胡蝶 蘭(別名・曹操)により、去年まで日陰だった風紀委員会は別の意味で目立っていた。

 

 

「はい、エロDVDの持ち込みは固く禁じられておりますので没収でございまーす」

 

「ふざけんなイッセー! どうせ没収とか言ってテメーが後で見るんだろうが!」

 

「当たり前だ。風紀委員として証拠確認は必須だからなぁ! ほーら、帰れ帰れ!」

 

 

 このように、学園に私物を持ち込む生徒を取り締まる――までは良いのだが。

 

 

「うひひひ……! 大量大量……。あの馬鹿共が懲りずに持ってくるから俺のコレクションが増える増える……」

 

 

 ド変態に継ぎ、学園エロコンビで有名な男子生徒二人から押収したアダルティなDVDをこの様に残念すぎるエロ猿顔で我が物にしようとする……しかもそれを生徒が行き交う正門のど真ん中で声に出してしまう。

 だからド変態と呼ばれてしまうのだが……本人は今押収したDVDにばっかり目を取られてるのでそれに気付いてない。

 同じ風紀委員の副委員長が白い目で見てても気付かない。

 

 

「ほほぅ、本日は巨乳教師ものかぁ……!」

 

「…………」

 

 

 他人の持ち物をジャイアン宜しくに自分の物にしている気でいる一誠。

 しかも本日の押収したブツの中身が自分の性癖のど真ん中とキテる。

 すっかりご機嫌で今夜は捗るぜぇと、嫌悪感丸出しな女子の目も気にせず、気色悪い声で笑っていた一誠だが……。

 

 

「風紀委員が犯罪してどうするんだ……これは俺が預かって先生に渡しておく」

 

 

 ド変態兵藤に何故か付き従うという、学園七不思議人物の一人に抜擢されている胡蝶 蘭こと曹操が、油断していた一誠の手からDVDを掠め取ることで、一誠の今夜の癒しは夢想で終わる事になる。

 

 

「ああっ!? なんすんだ、返せ!!」

 

「お前の物じゃないのに返せは無いだろう。とにかく駄目だ」

 

 

 当然一誠は憤慨して曹操に詰め寄ろうとするが、曹操は相手にせず、押収したDVDを専用の鞄に入れて鍵まで掛ける。

 

 

「じゃ、じゃあこっちと交換しろ! なっ?」

 

「………」

 

 

 性癖ど真ん中のDVDを何としても視聴したい一誠は、同様に押収したもう一つのDVDを曹操に見せながら交換を要求する。

 どうやら今一誠が手に持ってDVDは好みでは無いらしく、見せ付けてくるせいで自然とそのDVDの表紙を見てみる。

 

 

「な? 良いだろう?」

 

「……………」

 

 

 長い黒髪とスラリとした体形……胸は小さい。

 奇しくも曹操とちょっと似てる姿の女優の水着姿が写ったパッケージを見せ付けながら交換を要求する一誠に、曹操はとてつもなく気に食わない気分になった。

 だから、ちょっと怖いと良く言われる目付きで一誠をちょっとだけ睨みながら曹操はハッキリ言った。

 

 

「嫌だ……そっちで我慢しとけ」

 

「嫌だよ! 揺れないまな板見たって楽しくない!!」

 

「知るか……兎に角これは先生に渡してくる」

 

「え、ちょ――待って曹――じゃなくて蘭ちゃん? 落ち着こう? まだ先生渡すのは早いんじゃね? ねっ? …………おい!!」

 

 

 無視アンド無視。

 必死こいて説得する一誠を意にも返さず職員室に向かう曹操は、ちょっとだけ自分の身体を呪ったのだという。

 

 

「クソ……あの頑固者め」

 

 

 結局曹操からDVDを取り返す事も出来ず、巨乳教師物の視聴が絶望的となった一誠は、教師の説教を受けた後のナーバスな気持ちで完全下校時刻が迫る廊下を歩いていた。

 本当ならもっと前に帰れたのだが、教師の説教が意外にも長く、余計な事を言った曹操はさっさと先に帰ってしまってる為、只今孤独街道まっしぐらだった。

 

 

「あら、兵藤君?」

 

「あ? あんだよ?」

 

 

 そんな独りぼっちの下校を迎える直前の一誠に、背後から己を苗字を呼ぶ声が聞こえるので、ちょっとイラついていた一誠が無愛想に振り向くと、彼にとっては取り敢えず顔見知りという程度の人物が、愛想の良い笑みを浮かべながら立っていた。

 

 

 

「って……何だアンタか」

 

 

 言葉とは裏腹に、不機嫌な表情が少し和らぐ一誠の言い方に怒る事は無く呼び止めた人物は、何時も彼の隣にいる人物が居ない事に気付く。

 

 

「胡蝶さんは何処へ?」

 

 

 黒髪のショートカット。

 眼鏡の奥には紫色の瞳が輝く、何か一見地味に見えなくも無い少女の質問に、一誠はまた不機嫌になりながら質問に答えようと口を開いた。

 

 

「チッ、またか……。

アイツなら教師に余計な事をチクってさっさ帰りましたよ」

 

「それで独りだと?」

 

「あぁ……そうっすよ生徒会長サマ」

 

 

 どう見ても敬意を感じない態度に少女は怒る事無く、薄く微笑みながら会話を楽しむ。

 その正体は駒王学園・生徒会長の支取蒼那その人であり、一誠が率いる風紀委員会とはそれなりの繋がりがあったりする。

 

 

「そうですか……ふふ、今日は何をしたんですか?」

 

「別に……。押収したDVDの証拠チェックの為に持って帰ろうとしただけだ」

 

「DVD?」

 

「くそ……せっかく巨乳教師物が手に入ったと思ったのに……!」

 

 

 昇降口を目指して歩く一誠の横よ然り気無く歩きながら、忌々しげに話す内容で何と無く察した蒼那。

 神滅具を持つ胡蝶 蘭という人間……の、横に常に居る変な人間。

 それが支取蒼那――いやソーナ・シトリーや同じ神滅具を所持する一誠の姉の主であるリアス・グレモリーの彼に対する一年前までのイメージだった。

 

 

「なんすか? ド変態のイッセー君のお顔に何か付いてんですかぁ~?」

 

「いえいえ……ふふ。あ、そうだ。折角なんで偶には一緒に帰りませんか? 今日私一人なんですよ」

 

「えぇ? 嫌っすわ……アンタの所の部下の野郎にキレられるし……どうせな――あぁ!? 姫島すわぁんとグレモリーすわぁぁん!!!」

 

 

 ド変態で胸が取り敢えず大好きな男の子で。

 

 

「あら、兵藤くんじゃない? どうしたのかしら?」

 

「うへへ、これから帰ろうとしてたんすけど、そんな時にお二人と……ええっとオマケのお姿を見まして。

いやぁ、相変わらず素晴らしい!」

 

「うふふ、お上手ですわねぇ兵藤くんは」

 

「事実ですからね! 俺はふつくしい女性には誠実なんです!」

 

「「……」」

 

「一誠……お姉ちゃんはまた無視なの?」

 

「あ? 興味ねぇっつーか、今忙しいから黙っとけや……。

で、先輩方……肩揉みしましょうか? 鞄持ちましょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 好みの女性とそうじゃないのとでは露骨な贔屓をする……。

 

 

「胡蝶さんが居ないくてラッキーだと思ってたのに……」

 

 

 異常で異質な力を持つ……ちょっと食べたくなる人間。

 ソーナ・シトリーが兵藤一誠に対する見方はそんな所だった。

 

 

 

「兵藤くん……帰りますよ」

 

「あらソーナじゃない? 兵藤くんと一緒だなんて珍しいわね~?」

 

「うるさいです。ほっといてください……ほら早く」

 

「何が早くだよ。帰りてぇならアンタ一人で帰ってろ。

俺は今からお姉様二人とドキドキワクワク下校――おえっ!?!?!?」

 

 

 朱乃とリアスと自分贔屓の差が露骨なのにムカムカしながら、ソーナは取り合おうとしない一誠の襟首を掴んで引き摺ると、ポカンとしている二人を――いや二人の胸元を親の仇の如く睨むと…。

 

 

「では……」

 

「あ、うん……さようなら」

 

「し、しまっ……ぐるしぃ……!!」

 

 

 呼吸困難になって暴れる一誠と共に、ワクワクドキドキ下校へと洒落込むのであった。

 




補足。

これまでのネタシリーズの中では、一番おっぱいドラゴンのイッセーに近いです。


その2
胸の無い女性には結構冷たいです。

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