だから色々と曲がりくねってるぜ!!
にゃんこが好き。
しょうもねぇくらいに好きだ。
というのも、昔からワンコとかその他の動物とかと比べたらにゃんこに懐かれやすい性質があるというか、例え警戒心MAXの野良猫と出くわしてもスリスリして来てくれるからというか……まあ、とにかく好きなんだよね……にゃんこ。
白でも黒でも三毛でもブチでも血統書でも雑種でも飼い猫だろうと野良だろうと俺は平等に好きだ。
そういやリアスの眷属に猫妖怪が居ると聞かされた事があるが、一度も話をしたことが無かったっけ……。
うーん……ちょっと惜しいことをしたかも――――って、いやいや違う違う。
今はそうじゃねぇ。
「すまん……殺せ」
猫っぽいって理由で取り乱し、あまつさえ女性の肌をベタベタと触ってしまったという
「さぁ、一思いに……!」
「アホか! ウチを殺人犯にしたいんかいおのれは!!」
だからこそ俺は命での清算しか無いと、散々ベタベタ触って迷惑を掛けてしまった鍋島三年に生殺与奪の権利を渡したのだが、悉く断られてしまった。
どうやら鍋島三年は、俺のやらかした行動について驚きはしたものの怒りはしないらしく、悪いと思うなら貸しにしとくから取り敢えず今は落ち着けと言ってくれた……。
「何やねん……黒神ちゃんに平然と付き従ってるからちょいちょい注目しとったけど、こんな変なコとだとは思わなかったわぁ」
「すまんな、一誠は昔からそういう奴なのだ」
「まぁええけど……ハァ、話が大分それてもーたな」
鍋島三年に変な奴扱いされても何の反論も出来ず、めだかちゃんと話の軌道修正をしてる姿を見ながら、横に居た善吉くんにちょっと怒られる。
「お前、人と猫の区別付かない位に触れてなかったのか?」
「……。最近は近所のにゃんことも会えなくてな……」
「だからって、いくらあの人が猫っぽいからっていきなりは無いぜ」
「あぁ……」
怒るというよりは呆れたって様子の善吉くんに、俺はただただ俯くしか出来ない。
そうだよな……此処に来たのだって柔道部の後継者を選ぶ手伝いの為なのに、それを忘れてはしゃぐだなんて精神の修行を怠った証拠だ。
俺のせいで空気がブチ壊れ、めだかちゃんの前へ馳せ参じようとした破壊臣こと阿久根二年が微妙に遣りづらそうに膝ま付いてなんか言ってるもん……ハァ。
「私達の一誠が迷惑を掛けた訳だが、取り敢えず本題に入ろうと思う。
というわけで、阿久根二年生は特別枠として善吉達と談笑しておいてくれ。積もる話もあるだろう」
「はい……!」
阿久根二年……いや阿久根高貴。
昔、よくなじみから聞かされた話でも時折出ていた後の生徒会書記にて元破壊臣。
彼もまた黒神めだかに『救われた』一人であり、善吉くんとは――――
「やぁ……ええっと、キミ何だっけ?」
「うーっす、阿久根センパイ。
人吉っす、人吉善吉っすよー」
とまあ、めだかちゃんに一番近しい善吉くんを阿久根二年が敵視し、それを程ほどに受け流すって感じの関係だ。
そして俺は…………。
「虫が! そこの虫2号と同じく、相変わらずめだかさんの足を引っ張り続けてる様だな!!」
めだかちゃんの周りを飛び交う虫その2らしいな俺は。
まあ、そりゃそうだろう。考えてみれば俺は善吉くんとめだかちゃんの近くに何故か常に居て、特に何もしてない謎の変質者と思われても仕方ない程に何も周りに示してないしな。
「すまぬ……」
それに、先程の鍋島三年に対する変態じみた奇行のせいでますます変質者の烙印が彼の中で出来上がってるみたいだし、捻り潰すぞ貴様と言わんばかりの形相――あ……?
「おおっと、阿久根センパイよぉ……! 俺をどうこう言おうが構いませんがね、何も知らねぇのに一誠を悪く言うのは頂けねぇな……ああっ!?」
あ、やばい……善吉くんの中にあるスイッチが切り替わったのか、スルー決め込む空気をガラリと変えてしまわれてる……。
でも善吉くんよ……阿久根二年の言い分はほぼ正しいと思うのに、わざわざ庇ってくれなくても良いぞ――――なんて言える空気は二人の言い争いのせいで無くなっていた。
「ほほぅ、やはり虫同士は相変わらず仲がよろしいな?
それなら一々めだかさんを巻き込まないでやったらどうなんだ?」
「カッ! 何もわかってねーのはセンパイだっつーの!
俺とめだかちゃんと一誠はアンタ等の思ってるようなヌルイ繋がりじゃねーんですよ!!」
「お、おい……次期部長選びの手伝いの場……」
やっぱりこの二人はいがみ合う運命でもあるのか、互いにメンチを切り合いながら言い争ってしまってる。
いくら宥めようとしても、さっきやらかしてしまった行動のせいで強く出れないし…………あぁ、めだかちゃんも部員の一人を巴投げしながら善吉くんに同意しないでよ。
お陰でまた阿久根二年の忌々しい視線やら鍋島三年の『ほー?』と好奇に満ちた視線がコッチに………あぁ……。
「それに一誠は照れ屋だから絶対に言わないし、俺達に言わせようとしませんがね、アンタ等が勝手に天才だ~とかバケモンだとか好き勝手言ってる今のめだかちゃんが在るのは、全て一誠の教えがあってこそなんすよ」
『……え?』
「は?」
その上、言う意味も無いし言って仕方ないというか、どう聞いても誇張しまくりな捏造エピソードまで話しちゃってるし……ほら、皆一斉にシーンとして……あぁ……。
「ちょっと善吉くん……それは言い過ぎっていうか大した事してないだろ俺――」
「いや、善吉の言う通りだ。
阿久根二年生よ……この際だから言っておくが、もしこの場で一誠と本気で手合わせすれば、私は確実に敗北する。
中学時代の一誠を知る貴様には信じられないかもしれないが、全て事実だ」
「なっ……!?」
「ほ、ほんまかいな……?」
何よりもめだかちゃんの言葉のせいで、ババッとその場に居た全員の視線を集める事になってしまった。
といっても阿久根二年や鍋島三年達の視線は『信じられません』っと言いたげだけど。
まあ、うん……善吉君もめだかちゃんもホントに話盛りすぎよ? だから皆してそんな『ま、まじですか!?』みたいな顔せんといてーな。
どうせ一から説明したら『なーんだ』ってなるからさ……ね?
静寂が支配する柔道場。
そんな場所では只今部員達が固唾を飲みながら正座をして真ん中に立つ二人の男女を見守っていた。
「ふっふっふっ……。こうして向かう合うのは、何だかんだで二ヶ月ぶりだな一誠よ?」
「依頼からドンドン遠ざかってるんだけど、そこの所を誰も突っ込まないのかね」
上だけ柔道着姿のめだかと、生徒会専用の制服姿の一誠が、それぞれ『遊園地に行く前日の子供』みたいなわくわくした表情と、『それに付き合わされる疲れた父親』みたいな表情で向かい合う。
元々柔道部の依頼が何でこうなるのか……一誠は微妙にいたたまれない気分になりながら、この場をセッティングした鍋島猫美と、本当なら自分がやるつもりだったのにと納得してなさそうにしている阿久根高貴を見て小さくため息を漏らす。
「人吉クンと黒神ちゃんが持ち上げる兵藤クンが本物かどうか、見せて貰うで?」
「……。うぃ」
見せて欲しいというのであれば、一誠としても別に断る理由は無い。
だけど、どうも違うというか、そもそも世界線的な意味合いで部外者である自分が好き勝手やって良いものなのか……等など、散々めだかと善吉に自分の持ちうる技術を仕込んでおきながら考える一誠は、早く遊んでくれとばかりに目を輝かせてるめだか……そしてその様子を見ている善吉や猫美や高貴を含めた柔道部員達に聞かせるように言った。
「過大評価して貰って光栄だが、俺としてはそこまで言われるほど立派な事を教えたつもりは無いと思ってるし、そんな期待されてもアレというか――――まあ、折角阿久根二年に認めていただけるチャンスを得られたのなら、それに応える為、全力を尽くさせて貰うとしよう」
「阿久根二年……?
なるほどー! 黒神ちゃんの人の呼び方も兵藤クンの教えかいな?」
「そうっすね」
「…………」
大袈裟なリアクションをしながら隣に正座してる善吉に聞けば、善吉はそれが当たり前だとばかりに即答し、更にそれを聞いていた高貴が『あ、そういえば喋り方が似てる……』とハッとなる。
「な、なぁ……一誠っ……! まだか? まだ駄目なのか?」
「ぬ……」
ドンドンと上がるハードルと、早くやろうよとせがんでくるめだか。
正しく板挟み状態に追い込まれてしまった一誠は、最早此処までだなと大きく肩を落としながら一瞬俯くと……。
「……。わかった、来い……」
それまでのボーッと気の抜けた目から一変……鷹を思わせる目付きと、名刀を思わせる鋭い殺気を放ちながら体勢を落としながら両手を軽く前に突きだした。
『っ……!?』
その殺気は真正面に居るめだかは勿論、周りに正座している部員や善吉達にも首筋に刃を突き立てられた錯覚を覚えさせる。
「ま……マジかよ」
「い、今俺……首を切り落とされた気がしたぜ……」
直接受けてない部員達の誰もが首を跳ねられた感覚がし、ある者は顔面蒼白となり、ある者は吐き気を覚え、ある者は泡を吹いて気絶していた。
「……。殺気だけでコレかいな……。アカン、さっきまでウチを傷物にしてくれた兵藤クンとは思われへんで……」
「あの鍋島先輩。その言い方はちょっとやめて貰えません? 確かにいきなりでしたけど、一誠も悪気は無いというか……」
「えー? 柔道の練習以外であないに触られたの初めてなんよー?」
「…………」
しかしながら、そんな一誠の放つ殺気に戦慄しつつも何故か和やかになっていく。
「ふふ、流石だ……。
その殺気だけで私の身体に震えが走る……」
そんなギャラリーの空気も気にせず、当人達は其々構えながらジリジリと互いの
「やっぱり一誠は最高だ……常に私の越えるべき壁として居てくれる。
だからこそその胸に全力で飛び込める……!」
「…………」
口数が一切消失し、ただただ獲物を狩らんとする猛禽類を彷彿とさせるその瞳が、めだかの心の中にあるナニかを擽られる。
全力でぶつかっても、それを上回る力で受け止め……そして跳ね返す。
出会った頃から今まで、全て例外無く在る事実。
「行くぞ……一誠!!」
「………」
……。まあ、こうして手合わせする時になるとちょっぴり冷たくなるのが寂しいけど……。
とか何とか内心思いつつ、固唾を飲んで見守る猫美や高貴……そして何時も通りに見ている善吉の前で、めだかは一誠に瞬きする間も許さない速さで接近し、制服の襟を掴む。
「は、速っ――!?」
その速さに、見ていた者の中の誰かが驚きの声をあげた気がする…………後にめだかはそう言っていた。
猫美も高貴も部員も、所詮は善吉とめだかの幼馴染みだから贔屓してたんだろうし、第一このバケモノ生徒会長が負けるなんて想像だに出来やしない。
だから自分達がこの生徒会長と手合わせをした時みたいに、このまま兵藤が投げ飛ばされて終わりだ。
そう少なくとも制服の襟をガッチリ掴んで足を引っ掛けたのを見たものは思ったそうな…………。
「あぁ……
ただただ冷静に見ていた善吉以外は。
そしてその言葉を言い終えるか終えないかの刹那――――
「っ……ッッ!?!?」
「……」
勝負は決した。
腕の関節を取られたまま床に伏せるめだかと、彼女の後頭部を膝で押さえ付け、肩関節を決めた状態で上にのし掛かる一誠という絵面で……。
「え……?」
「な、なんだ? 何があったんだよ?」
「わ、わかんねぇよ。気付いたらあの生徒会長が関節キメられた状態で組伏せられたとしか……」
黒神めだかが襟を掴み、そのまま投げ飛ばそうとした――という所までは全員が認識していた。
しかしその後……まるでDVDの場面飛ばしの様に気付いたら黒神めだかが顔面から床に組伏せられているという光景だけ。
あんまりにもあんまりな出来事に部員達は何があったのかとざわつくのだが……。
「ま、マジかいな……!? 虎王やんけあの技は……!」
「っ……!」
猫美と高貴は僅かだか見えていた。
めだかが腕を突きだし、襟を掴んで足を引っ掛け様としたその刹那、一誠が彼女の顎に膝蹴りを入れ、怯んだその隙に両足で頭を挟み込んでそのまま床に叩きつけたのを……。
「う、嘘だろ……あのめだかさんが……!」
「なんてこったい……。
化け物生徒会長の従者も例外無しで化け物とは……」
「…………」
古柔術の秘奥義を実践したのもだが、何よりあの黒神めだかを組伏せたという事実は、高貴と猫美其々にショックを与えるのに充分だった。
が、そんな中を高貴達と混ざって見ていた善吉はといえば、ポリポリと頭を掻きながら動かない一誠とめだかに向かってこう言った。
「おーい一誠~ 柔道なのに虎王は禁手だよ禁手。だからお前の反則負けだ」
「……………。あ!?」
一誠を過小評価していた連中を見返して満足したのか、実にほのぼのした声でまだ関節キメたまま組伏せている一誠に教えると、柔道ルールでやってる事をうっかり忘れて古柔術の殺人技をしてしまった一誠が『しまった!』という表情と共にめだかを解放し、自分でやっておきながら血相変えた顔でめだかの身体を起こす。
「す、すまん! 予想以上にやるようになってたからつい返し技として使ってしまった……! だ、大丈夫か? 顎とか肩とか痛かったろ?」
「む……確かに痛かったが、勝負の話だし気にしておらん」
『…………』
それまでの鋭くて切れそうな雰囲気が霧散し、過保護なまでにめだかの赤くなってる顎とか肩とかに触れながら謝り倒す一誠を見て、猫美や高貴達はついていけないとばかりにぽかーんとしてしまう。
「えっと……?」
説明してやと隣に居た善吉を見る猫美。
「アレが一誠っすよ。
アホみたいに自分を苛めぬいて鍛えて常に俺とめだかちゃんの壁になってくれるスゲー奴。
つまり、一誠がめだかちゃんに引っ付いてんじゃあ無くて、俺とめだかちゃんが一誠に引っ付いているんです」
「「……」」
誇らしそうに一誠を語る善吉に、猫美と高貴は何も言えずただ聞いていた。
アイツが居なかったら今の俺達は無かったとか、アイツに色々と教えて貰ったとかとかとかとかとか……気付けば如何に自分が一誠に可愛がられているのかの自慢になってきて、若干引いてしまったが……。
「黒神ちゃんの影に最強のバックかいな……あーぁ、凡人さんは人吉クンだけかぁ」
「……。めだかさんのルーツ……か」
天才が嫌いな猫美にとってしてみれば、彼もまためだかと同類なのかと失望にも似た気分になりながら、まだ過保護をやってる一誠を目を細めて見つめる。
どうやら高貴は少しだけその事を認めてる様だが……なんて思いながら見ていると、同じ目線になっていた善吉が『言っておきますが……』と口を開く。
「確かにあの二人が凄い奴だってのは俺が一番自覚してますけどね、あの二人がその天才とやらに傲ったことは無いっすよ。
常に全力で、本気で突っ走るだけの馬鹿ですからね」
「はぁ?」
「恐らく鍋島先輩は自分を凡人と評して、天才に勝つために色々とやったから『反則王』だなんて呼ばれたんだと思いますが……」
「……っ」
「凡人が天才に勝つための努力と、あの二人が目標に向かってひたすら突っ走るという『努力』って言葉に差なんて無いんじゃないすか? 少なくとも俺はそう思いますけど」
「うっ……」
善吉の言葉に猫美は言葉に詰まる。
凡人が天才に勝つためにやってきた努力と、善吉曰くあの二人が常日頃から持つ目標の為に怠らない努力。
その差に違いは確かに無い……そう思ってしまったからだ。
よくよく考えれば、あの化け物だと思ってた黒神めだかが反則技を使われたとはいえ、敗北する姿を見たのだ。
常に勝利することが当たり前な人種だと思ってたからこそ、その敗北した姿は猫美が持つめだかに対する価値観を変えるのに充分だった。
「それにっすね、一誠も一誠で色々と弱点あるんすよ?」
「え、弱点?」
「ええ、例えば――」
「む……何か善吉くんに余計な事を言われてる気がする」
「なぁなぁ一誠。さっきの手合わせで自分の修行不足を自覚できたから、今晩の鍛練はかなり厳しめにして欲しいんだが」
「え? あぁ……。(
まさか
何気に猫美と仲良くなった善吉に弱点晒されてる事に気付かず、一誠は一誠で子供のように教えろとせがんでくるめだかに困っていた。
補足。
アホみたいに教え込んだ結果……
黒神めだか 乱神モード・改神モード・黒神ファントム(パワー重視)
人吉善吉 改神モード・5人分身・黒神ファントム(サバット重視)
までこの時点で習得済み。
で、このままいっちゃうと……。
黒神ファントム(ちゃんとした版)
黒神ファントム(テーマソングver
を教えちゃうかもしれない。