果たして判決はいかに……
限界突破により疲労困憊で倒れてしまった紫をおんぶしながら、集合場所だったひまわり畑への近くの小屋向かった月音は、既に小屋に居た萌香達に事のあらましを、なんで紫が気絶してるのかを含めて説明した。
「なんだっけ? 魔草ってのに人間のおんにゃのこが襲われてたから、俺が助けようとそいつに100倍出力のドラゴン波をぶっぱなそうとしたら止められて、代わりに仙童さんがその草を全滅させました」
『………………………………』
要するに、人間の女に対して張り切り過ぎて失敗しそうになったのを紫に尻拭いして貰ったと、寝てる紫を膝に置きながら反省の色も無い様子で宣う月音に、萌香や胡夢や銀影が揃って非難めいた視線を送った。
「人間の女に鼻の下伸ばしてたってのは理解したわ。
紫ちゃんがアンタを大好きだって常々言ってたにも関わらず、他所の会ったばかりの女にかまけていた訳ね」
「擁護できないよ月音……」
「気持ちはわからんでもないけど、男としては最低やな」
「…………」
三人からの非難のお声に、『テメー等みたいなド畜生共なんぞ言われる筋合いはねぇ!』と昔なら即座にぶち殺してたんだろうなぁ……と全盛期殺意まみれの頃の自分を思い出しながら、月音は『すんません』と三人に頭をさげた。
「大体アンタの事がわかってきたわ。
確かにヤバイ力はあるけど、アンタ基本お馬鹿でしょ? なんかこれまで過剰にびびってたのが馬鹿みたいに思えてきたわ」
「ういっす……」
挙げ句の果てに、胡夢に対する恐怖という意味での尊厳まで消えてしまい、結構ズケズケと言ってくる様になってしまう。
別に胡夢に対して引き続き死ぬほど関心は無いにせよ、何か色々と失った気がしてならない月音は、ペコペコと頭を下げまくった。
「んで? その助けた人間のお嬢さんはどこや?」
「えーっと、俺をロリコンと勘違いして逃げました……」
「は? アンタ紫ちゃんに変な事までしたわけ!?」
「してないっての! 誤解されただけだよ! なんだよどいつもこいつもロリコンロリコンって! 俺の好みの女性は寧ろ人間で年上の人妻系だっつーの!」
「それはそれで引くわぁ……」
「ごめん、さっきからもう一人の私が凄い怒ってるし、私も味方にはなれないかな?」
萌香にまで言われてしまい、凄まじく居たたまれない気分になる月音は小屋を飛び出したい気分だったが、しっかりと紫が自分にしがみついて寝てるのでそれもできない。
「チッ、そんな事より宿に泊まるんじゃねーの!?」
なので強引に話をすり替える事にした。
いくら考え方が多少変わっても、これ以上人ならざる存在に小言を言われてたら本気で爆発しそうだったのもあるので。
「それなんやけど、本当なら泊まる予定の宿はこの場所から結構離れた街にあるみたいなんや。
んで、猫目先生がそろそろ迎えに来る筈なんやが、いつまで待ってても来ないし、ひょっとして忘れられてるかもしれんと、お前達が来る前まで萌香さん達と話していたんや」
「は? チッ、なんだあの雌猫は!」
「だからどうしようかって話をしてたのよ。
紫ちゃんはアンタのせいで眠っちゃってるし、歩いていくにも結構な距離らしいし」
「そんなもん、全員で飛んでいけば良いだろ。んな先公なんざ待ってたってしょうがねーし、宿の住所はわかるのか?」
「一応メモに控えてはあるけど、飛ぶってどうやるの?」
「は? 普通にだよ? 飛べんだろ全員?」
『え?』
「え?」
当たり前の様に飛んでいけば良いと言う月音に全員の声が重なり、月音の目が丸くなる?
「いや飛べんだろ? ほら黒乃さんだって飛んでたじゃん前にちょっとだけ」
「かなり距離があるのにそんな長時間飛んでらんないわよ。
それに他の皆はどうするのよ?」
「だから全員飛べるんだろ?」
「いやいや、ウェアウルフやぞ俺は?」
ここに来て妖怪は飛べるもんだと勝手に勘違いしてた――というか、一誠時代に戦った妖怪の類は皆飛んでたのでそう思い込んでいた月音は絶句してしまった。
「飛べねーのかよ……」
「逆に何で飛べると思ったのよ?」
「勝手なイメージで……」
紫はなんとなくわかるが、他も飛べなかったという基本的な事を今更知り、微妙にやるせない気分になってしまう月音。
「しょうがない。
俺が二人ずつ抱えて飛んでいくしかねーか……」
「は? アンタ飛べんの!?」
「飛ぶっつーか、大気を足場にして走るだけだから飛ぶとは違うけど、この住所の街なら片道三十秒あれば抱えながらも安全に行けると思う」
「…………シレッと言うてるけど、割りととんでもないことやでそれ?」
「ふふん、私はもう体験しましたもんねー」
「あ、紫ちゃんが起きた」
平然と可能だと宣う月音に、別の意味で引く胡夢や銀影。
どうやら意識を取り戻した紫が体験したと言ってる辺りは本当の事だろうが、ますますこの男が何者なのかわからなくなる。
「んじゃあ、まずは黒乃さんと先輩さんを……」
「ほ、本当にこんな抱え方で大丈夫なんでしょうね?」
「途中で落とされたら嫌やで……」
だが結局米担ぎ感覚で軽々と持ち上げられた挙げ句、本当にジェット機よりもやばい速度なのにGを感じない乗り心地で街へと飛んで送迎されたらしく……。
「わぁ! 綺麗な景色……!」
「…………はぁ」
「ど、どうしよう。さっきのでちょっと人間は怖くなくなったけど、街に行くのは……」
ものの数分で街へと到着したのだった。
人がごった返してる場所に着地するのはまずかったので、適当に空きビルの屋上に着地した月音は先に送っていた胡夢と銀影のなんともいえない視線を受けつつ、人だらけの街で怖がりだした紫にひっつかれながら階段を降り、四ヶ月振りの人間の街へと帰ってきた。
「良いね、この欲望渦巻く空気がたまんねぇや」
「こ、ここが人間のまち……」
ヒッヒッヒッと再びテンションが上がり始めた月音ちぴったりくっつきながら多くの人間から発する何かを受信してしまってる紫は気分が凄まじく悪くなってきた。
そんな紫を別のビルの上から見下ろすひとつの影……。
「は、速いし普通に飛んでた……」
その影は先程のひまわり畑の外から紫を見ていた者であり、彼女を同胞として迎え入れようと監視していた者だった。
どうやら尾行する為に先回りしたらしいが、月音が往復で四人の抱えながら文字通りジェット機みたいな速度で飛んで来た事に驚いている様子だ。
鴉の姿に化けていたその者は一人の少女へと姿を戻し、月音に警戒しながらもその彼にひっつきながら周囲に怯えてる紫を見て一人呟いた。
「追いついたのはいいいけど、こんなに街に来るなんて、世間知らずな魔女もいたものね」
その目はどこか哀れみを帯びている。
「魔女とは風の声を聞き精霊と語り、自然の力を自らの能力とする種族。
故に魔女にとって自然が壊されて気が乱れている街では慣れないと目まいがするほど気持ち悪いものよ。
あのコは大丈夫かしら? というかなんで連れてきたのよあの男は……」
そして街へと飛んでつれてきた月音に対して憎しみの混じった視線を向けたその瞬間――
「っ!?」
見下ろしていた自分に対し、突然月音は何かを察知した様に此方へ振り向いたのだ。
ギョッとなった少女は間一髪の所で姿を隠して難を逃れたものの、心臓はバクバクだった。
「お、驚いた……! ぐ、偶然かしら、今ハッキリと此方を見た様な……」
お館様なる者からも警戒はしろと言われたので油断していたつもりは無かったが、突然振り向かれれば驚くのも無理は無い。
しかしどうやら月音は偶然振り返ったらしく、既に萌香や胡夢が人間達に囲まれ、もう一人の男と追っ払う事に苦労しているので、少女は偶然で片付ける事にした紫を引き続き気に掛ける様子で見つめ続ける。
そこには萌香や胡夢を見て群がる人間達によって気分を悪くしてる所に、明らかに社会府適合者としか思えない人種が紫に対して息荒く迫ってくるという醜い光景。
「ほらね、やっぱり人間なんて最低なのよ……」
身勝手で乱暴。
あの幼い魔女だってそれはわかってる筈。
故にあの混乱に乗じて紫を連れ出そうと考えたその時だった。
「赤夜さん、黒乃さん、森丘先輩、ここは任せましたんで」
「はぁ!? ちょ、ちょっと……!」
「任せたって言われても月音はどこに……」
「ちょっと仙童さんがヤバめなんで避難させるだけだよ。
宿の場所は把握してっから、それじゃあ! ……行くぞ仙童さん」
「は、はい……!」
気分を悪くして倒れそうになっていた紫にすぐ気付いた月音が、連れの三人に押し付けると紫を抱えてその場から走り去ったのだ。
その行動に上から見ていた少女は驚きつつも後を追う。
「気づいていた? いえそんなまさか……」
紫を案じている様な行動に少し困惑する少女が追い掛けた先は、街の中心部から少し離れた人も疎らな古めかしいシャッター商店街の路地裏だった。
「こんな所に連れ込んで何をしようとしてるのかしら……」
月音の意図はわからないまま、鴉に再び化けた少女は観察を続ける。
「チッ、いきなり最高難易度の人種に目を付けられるとは運が悪いな。
大丈夫か? 顔色がマジで悪かったから、なるべく人の居なさそうな場所まで連れてきたが……」
「は、はい……大丈夫ですけど、思念が強すぎて気分が……」
「思念? そういうものを受信する体質なのか? 悪い、それは知らなかったぜ。
だとしたら吐きそうなレベルだったろさっきのは? 物理的な意味でも」
顔色の悪い紫の背中を擦りながら、流れとはいえ無理に連れてきてしまった事を驚くことに素直に謝る月音。
ひまわり畑の一件で若干彼女を放置していたのに罪悪感がある様だ。
「やっぱり人間って怖いです……。とてもじゃいけど人間がたくさん居る宿に行くなんて……」
「その様子からすればマジだよな。
まあ、しゃあねぇわな……」
「ごめんなさい……」
「最初から聞いてた事だからな。もうちょい配慮すべきだったよこっちがな。
まぁ、あの群がる連中は森丘先輩辺りが追い払ってくれてる筈だし、俺達は――なぁ、外で寝れるタイプか?」
「え?」
妖怪とは違い、微妙な位置たる魔女だからなのと先程の事もあって、多分月音として生まれ変わって初めて本来の性格が出ている月音の質問に紫は目をぱちくりとさせる。
「独りじゃ無理ですけど……」
とりあえず質問に答えると、月音は『よし』と言いながら携帯を取り出すと、裏萌香に無理矢理メモリーさせられた萌香の携帯にコールする。
「赤夜さん? あぁ、こっちは問題ないし、どうせ森丘先輩がなんとかしたんだろ? 俺は悪くない。
じゃなくてよ、俺と仙童さんは宿に行かないで別の場所で寝泊まりするから。
なんで? 仙童さんが人間の思念が強すぎて気分悪くなるからだよ。だから人が居ないどこかで寝るから……え? 裏の君が怒ってる? 知らんとでも返しといて。じゃあそゆことで」
電話相手の萌香に一方的にそう言うと返事を待たずしてそのまま切り、ご丁寧に電源まで切ると『これで良し』と一人やりきった顔をする。
「連絡はしたから問題ないぜ。
よっしゃ、んじゃあ久しぶりに宿を探すかぁ!」
要するにプチホームレスすると宣う月音だが、紫にはその意図はわからず、とりあえず月音がかなり自分を気遣って自分を人の少ない場所で寝泊まれる場所を探して一緒にいてくれるという事だけはわかったらしく、とても表情が明るくなる。
「月音さん……!」
「夏だしなんとでもなる筈だからな。じゃあ行くぜ」
「はい!」
本来の月音――否、一誠とはそういう男だ。
ドスケベでどうしようもない所もあるけど、他人の持つ痛み事受け止められるそんな男だ。
だからこそ紫はそんな月音にますます懐くし、これから始まるちょっとした冒険に心を踊らせるのだ。
『一誠……』
「わかってるよ、ちょうど誘き寄せられるかもしないな」
「? なんの事ですか?」
「何でもない。取り合えず喉乾いたから何か飲むか?」
そんな様子を信じられない様な形相で見ている者が居る事だって既に見抜いているのだ。
「ありえない……何が目的なのあの男は!?」
明らかに魔女である紫を気遣ってる行動をしてる月音に混乱してしまう少女は、何かを企んでいる筈だと自分に言い聞かせながら更に月音と紫を追う。
「晩飯どうすっかな……。別に俺は腹減ったらそこら辺の虫でも焼いて食えるが、仙童さんには食わせられないしなぁ」
「一晩くらいなら食べなくても……」
「あーダメダメ! 成長期の子供が食わないなんて良くねぇよ。
取り敢えず寝床に使えそうな場所を確保したら適当に何か買ってくるとしよう。
あぁ、ところであの橋の下なんかで寝れるか?」
兄妹の様に手を繋ぎながら野宿する場所を探しつつ然り気無く街の外へと出ていく月音を尾行しながら少女は、きっと何か悪どい事を考えてるに違いないと、先程ひまわり畑で人間の女に向かってやってた下劣な行為を思い返し――
「ハッ!? ま、まさか!!」
そして理解する。
月音が何をしようとしているのかを。
「きっとあの男は人気の居ない所であの子を連れ込んでイケナイ事をする気なんだわ! そういえばロリコンって呼ばれてたし!」
本人が聞いたらめっちゃ激怒しそうな誤解を盛大にしてしまった。
「は、早くあんな汚らわしい男からあの子を助けないと!」
思い込みというのは厄介なものだ。
一度至った疑念はそう簡単に変わらない。
既に少女にとって月音とは紫にイタズラする暴漢と言う認識であり、同じ魔女の友達が実は欲しがってたのもあって、変なヒロイズムに酔ってしまっていた。
「待っててね、今私が助けるから!」
もう一度言うが、全部誤解なのに……。
「ラッキーだぜ、まさか街の外に小さな廃工場があったなんてな」
「ここは何の建物なんでしょうか……」
「機材からして元は小さな印刷会社だったんだろうな。
まあ、そんな事よりここなら気分も楽だろ? 人間も来ないだろうし」
「確かにここならちょっと暗くて怖いですけど気分は悪くなりません」
「よっしゃ、それなら決まりだな」
そんな少女の誤解とは反対に、月音と紫は寝床を確保する事に成功していた。
妙な冒険心を刺激されたせいか、ちょっと二人してテンションが高く、とても少女が思ってる展開になることはありえない。
「取り敢えず飯と必要なものを買ってきたいんだけど……一人で待てるか?」
「大丈夫ですけど、どれくらいで戻ってこれますか?」
「買うものに目星はつけてるから5分で必ず戻れるが……」
「が?」
月音の妙な気遣いにすっかりやられてしまって、別の意味で月音の側なら人間も怖くない気がしてきた紫は首を傾げる。
「着替えとかの荷物も全部先に宿に送ったんだっけ? キミの分だけでも取りに行こうと思うんだが……」
「え、別にそこまでして頂かなくても…。
元は私のせいですし……」
別に着替えなくても一晩くらいなら問題ないと思ってる紫に月音はダメだと言う。
「風呂に入れない代わりにせめてタオルで身体は拭くべきだし、着替えだってあった方が良いぜ」
「…………私、今そんなに臭いますか?」
妙に着替えと風呂に拘る月音に、ひょっとして自分が臭うのかとちょっと傷ついた表情になる紫。
まあ確かにひまわり畑で暴れたし、汗はかいてるが、大好きな月音にそう思われるのは恥ずかしいのだ。
しかしどうやらそうでは無いらしく、一瞬キョトンとした月音は………
「んー?」
「ひゃっ!?」
どうしてそういう行動をしようと思うのか、突然紫をひょいと抱えるとスンスンと首筋辺りに顔を埋めて犬みたいに嗅ぎだしたのだ。
「な、なにを……!?」
これには驚き、そして月音に嗅がれてるということで恥ずかしさで全身が熱くなる紫は上ずった声を出すが、スンスンやってる月音は聞いちゃいないし、漸く離れたと思ったらシレッと一言……。
「別に大丈夫だぞ? 俺が言いたいのは一応君も女の子なんだから必要だろと思っただけだし」
「あ、あぁそうですか……は、恥ずかしいですぅ……」
何だこの不意打ちの連打は? と子供心に思う紫は恥ずかしいけどちょっと嬉しかった。
「寧ろ俺がやばくね?」
「? 月音さんも優しい匂いのままですよ?」
「え、マジ? 大丈夫か?」
「すんすん……はい、幸せな気持ちになれる大好きな匂いですぅ……」
「お、おう……。
そんな危ない薬でもやっちゃったみたいなとろんとした顔で言われると逆に心配だぜ」
互いに犬の挨拶みたいなやり取りをし、若干照れる。
変な沈黙が一瞬だけ流れたその
「駄目ぇぇぇっ!!!!」
「「!」」
埃っぽい工場の窓ガラスを叫び声と共にぶち破りながらダイナマイト入場する何者かによってそんな空気は違う意味で変化した。
「な、なんですかぁ!?」
「あ、やべ。普通に忘れてた……」
飛び散るガラスの破片から紫を然り気無く守りながら、そういえば尾行されてる事を忘れていた月音は何やら殺気立ちながらこっちを睨んでるかつて一誠時代に散々殺り合ったもののひとつである堕天使の様な漆黒の翼を背に少女を見る。
「だ、誰ですか……」
「わ、私は留妃! あ、アナタと同じ魔女で友達になりたくて追ってきて……え、えっと助けにきたの!」
そんな少女は何故か鬼気迫る様な表情で紫に対してイマイチ聞き取りづらい自己紹介をした。
「助けにって……」
同族なのはなんとなくわかったし、後を追われてる事にも驚きはしたけど助けに来たとはどういう事なのかと、そのまま横に居た月音と顔を見合わせながら首を傾げる。
すると留妃と名乗った少女は背にあった翼みたいなものを鋭い槍の様に月音に向かって憎悪を込めて放ちながら言う。
「今そこの汚らわしい男に貴女が襲われそうになってたでしょう!? だから助けに来たの!」
「襲われそうって……」
「おい、ずっと趣味悪く後を尾けておきながらいきなりな挨拶だな」
「!? 私の攻撃が指だけだで弾かれた……!?」
妙に話が噛み合わないと気付いた紫は、横で本当に人差し指だけで留妃なる少女の攻撃を弾いて防ぐ月音に内心感嘆しながら問う。
「あの、何の事だかさっぱりなんですけど? 私が月音さんに襲われそうになったとは?」
そういえばずっと後を追ってきたと言ってるということは今さっきのやり取りも見られてたのか……と思うとちょっと照れてきた紫に留妃はギロッとやる気が消えてる顔をしてた月音を睨んで指を指しながら怒鳴る。
「私はちゃんと見たわ! さっきこの男がアナタに………!! そ、その……え、えっちな事しようとしたのを!!」
「………ほぇ?」
「はぁっ!?」
若干恥ずかしかったのか、最後辺りは真っ赤になってうつむきながら放つその言葉に、それまで腑抜け顔だった月音が一気に驚いた顔をする。
「テメーもそんな訳のわからねぇことほざくか! 俺をどうしてもロリコンにしたいのかよ!?」
「そう、アナタはそのロリコンとやらよ! こんな小さな子に最低よ!!」
「違うってんだろうが! ぶっ殺すぞテメェ!!」
「何が違うのよ! よくわからない変な力でこの子を騙してそんか穢れた事をしようと考えてるでしょう!?」
「するかボケェ!! 仙童さんに聞けば一発じゃあ! なぁ!?」
「え、えっと……そういう目的で私を連れ出してくれたんですか月音さん? そ、そのぉ……よくはわかりませんけど、月音さんがそうしたいなら私は良いかなって思ったりしますぅ……」
「ほら見なさい! 絶対にこの子は助け出すわ!」
「違うからね!? これは珍しい俺の純粋な気持ちだからね!?」
もじもじしてる紫の態度が却って説得力を与えてしまい、完全に留妃とかいう月音にしてみれば欠片の興味もない少女からロリコン扱いされてしまった月音。
『厄日だなとことん……その内ロリコン龍帝だなんて呼ばれやしないだろうな? そうなったら俺は泣くぞ……』
「お前まで言うのかよ!? 誤解だっつーの!」
「何が誤解よこのケダモノ以下の畜生男!」
「えっちな事……なんだろ、その言葉を聞くととてもお腹の中が熱いですぅ……月音さぁん……」
「no!! 10年早いんだよキミには!」
破壊の龍帝時代の彼を知る者が見たら、『こんな奴に殺されたのか……』と泣くかもしれない程度に、今の月音は振り回されまくりだった。
続く
補足
有罪か無罪か……それは皆様の心の中でお決めください。
その2
本人はひまわり畑での放置で怒らせちゃったのと、やっぱり子供相手だからという純粋な理由で接してるつもりが、どんどん変な方向に認識されていく。
まあ、幼女に聞かれたからと抱っこしてハ○太郎みたいにくんかくんかしてりゃあそりゃロリコン扱いもされるわなぁ。