色々なIF集   作:超人類DX

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そろそろストーカー達に断固たる対応をしなければと思う今日この頃。

眷属ではあるけど、少しだけ外様っぽい二人の朝の様子。


そんな関係

 執念が服を着て歩いてるとすら思えてしまう程に我の強い女性、篠ノ之束は比喩表現とかじゃなしに天才だ。

 もって生まれた規格外の才能は、造られた存在たる織斑姉弟と同等だった。

 

 そんな彼女が姉弟の実質的な保護者となった『怪物』と出会ってしまった事で、それまでの規格外の才に常人では到底たどり着かないレベルの『努力』を重ねてしまった。

 

 その結果はご存知の通り、今の束は怪物を超えた何かとして君臨している。

 怪物だった男を手に入れ、気ままに生きる本当の規格外となって。

 

 その代償に多くの繋がりを失った事は否定できない。

 怪物を愛した姉弟を出し抜き、永遠の別れを告げた事は束にとって忘れられない程の苦い思い出なのも確かだ。

 

 けど、それでも束は……。

 

 

「白龍皇? それが何?」

 

「ほら、前に堕天使がこの街で何かやらかそうとしたのを止めたろ?

俺とキミは部長さんのストーカー達がしゃしゃり出てくるのを止める為に現場を離れてたけど、どうもその時に白龍皇が出現したんだとよ」

 

「出現したのは分かったよ、でもそれと私に何の関係があるの?」

 

 

 死した怪物を造り上げ、永久に近い時を共に居続ける事を選んだ。

 例え世界が滅びようと、住む世界そのもが変わっても、束は自らの手で強引にこの世に呼び戻した怪物と共に在り続ける。

 今度は自分の許可無く死ぬ事を決して許さず、勝手に先へ行くことも許さず、嫌だと言おうが決して手放さない。

 

 本人はそれを『飼うことで屈辱を味あわせる』と宣うが、この執念こそが束なりの愛情表現なのかもしれない。

 薄っぺらい繋がりを超える婚厄者の名の下に、束は今日も元・怪物が居る事に安心するのだ。

 

 

「関係なんか欠片も無いぜ――と、言いたいところだけど、多少はそうでもないんだよ」

 

 

 そんな束と誠という名前に変わった元・怪物は現在、別世界を生きたリアス・グレモリーの兵士として日々を生きている。

 住む場所はリアス達の住むマンションと同じ棟であるとはいえ部屋は別々で、5LDKの間取りの部屋に二人で住んでいた。

 これは共に住んでるリアス達が大所帯だから自動的に同じマンションに住むが故であり、正直5LDKは広すぎるし、束の簡易ラボ部屋以外は基本的に使用してない部屋の方が多い。

 

 そんなもて余し気味な高級部屋に住む束と誠は只今簡易的な朝食――安売りシリアルを食しながら最近出現した白龍皇についての話をしていた。

 

 

「束ちゃまの中でドライグも聞いてる体で話すけど、キミがもう一人の赤龍帝だからだ」

 

「元々ドライグ君と白い龍ってのが宿敵同士だったから関係ないとは言い切れないと? ドライグ君も言ってたけど、私はそんなどうでも良い話にわざわざ乗るつもりはないよ。

第一赤龍帝をこの世界で大々的に名乗ってるのは彼なんだから、彼に処理云々は任せるべきじゃん。でしょうドライグくん?」

 

『まぁな、今更白いのに対して興味なんぞ沸かん。

別世界とはいえ、先代――というか一誠と共に引導を渡してやったしな』

 

 

 この世界の白龍皇との忘れかけていた因縁について語る誠に、束と束の腕に籠手として出現したドライグは『一切興味なし』と言い切った。

 

 束はそもそも宿敵に対しての関心が0、そしてドライグは一度先代である誠と共に引導を渡してやったに加えて、今更白龍皇と戦った所でその誠を超えた次代の束が負ける訳も無いと解りきってるので、同じく関心はないのだ。

 が、力を託して全盛期からほど遠く力を落とした誠はそんな二人(?)に対して少し真面目な顔をしながら口を開く。

 

 

「二人がそういうスタンスなら別に良いよ。確かに束ちゃまの言うとおり別世界の俺とドライグが大々的に龍帝である事を公表してるし、アイツが負けるとも思ってないから任せてしまうのもアリだ。

けど、問題は向こうの反応だ。イチ坊が横で聞いてたらしいんだけど、どうやら向こうの白龍皇と白い龍はドライグが二人存在してる事に気付いちまってるみたいなんだよ」

 

「ふーん」

 

『俺達が殺した白いのの宿主の雌ガキとは違ってバカでは無いらしいな』

 

「まぁな、どうやら俺達が殺した白龍皇と違って男らしいし、何より戦いたがりっぽいんだわ」

 

 

 チビチビとオレンジジュースを飲む束のどうでもよさげな反応とは真逆に、誠は力を無くしてるが故に前とは別の意味で警戒的だった。

 

 

「堕天使のコカビエルだったか? 部長さんとたっちゃん――じゃなくてなっちゃんの二人で半殺しにした所に現れて身柄を回収しに来たついでに表側の赤龍帝のイッセーを見に来たらしいが、その時もそいつは『すぐ近くにキミと同じ赤い龍の力を感じる』と言ってたらしいぜ。

つまり、もしそいつと束ちゃまが出会したら間違いなく見抜かれるばかりか、連中に赤龍帝が二人存在してる事がバレてしまう。

そうなると、根本的にめんどくさい事になるとは思わねぇか?」

 

『確かに要らぬ詮索をしようとする輩は増えそうだな』

 

「束ちゃまはそんな連中に対してのスルー能力は高いからどうでも良いかもしれないけど、正直心配なんだよ」

 

「は? 心配ってなんで?」

 

 

 イッセーに処理するかしないかの判断は任せるにしても、その白龍皇が束の存在を知ってしまったらと思うと、地味に心配する声に束は何故と返す。

 

 

「だって相手は男だぜ? しかもこれは俺の勝手な目測だけど、アイツ――っつーかイッセーよりも束ちゃまの方が強いと踏んでる。

だからもしキミがもう一人赤龍帝で尚且つイッセーよりも強い事を知った場合、興味を持たれるんじゃねーかと思うんだよ。

戦いたがりみたいな性格らしいしソイツは」

 

『そう言われると地味に鬱陶しくなりそうだな……』

 

「俺の時は転生者に色を振り撒くだけの能無しに成り果てたからさっさとぶち殺して――あ、違う、あの世にご招待してあげたんだけど、この世界はそういう訳じゃない。

もしだぞ? 下手にその野郎が束ちゃまに惹かれたとなったら……なぁ?」

 

「なぁ? ってなにさ?」

 

「うん、非常に複雑になる。主に俺が」

 

 

 要するにその白龍皇にソーナ達みたいにつきまとわれやしないかを心配しているらしい誠。

 いや、束なら間違いなく消せるだろうが、何というか心持ち的な意味で複雑らしい。

 

 割りとアッサリとした吐露に束は一瞬だけ止まって誠を見る。

 

 

『そんな要らん心配をするのか? 間違いなくタバネの中身を知ったら逃げ出すだろ』

 

「それなら構わねぇけどよ、束ちゃまはやっぱりなんやかんや言っても可愛い子だからなぁ。ちょっと心配だぜ」

 

『コイツの表裏全部を知った上でその台詞を平然と吐けるお前も大概だな』

 

「そうか? 小さい頃から知ってるから抵抗感なんてほぼ無いだけだぜ?」

 

 

 これが娘を心配する親父的な意味で語ってるのか、それとも別の意味なのかは束も何となく解ってしまうが、敢えてそこについて聞く気はない。

 

 

「あっそ、じゃあその白龍皇ってのを一目見てみるよ」

 

 

 だがちょっとした意地悪はしてやる。

 ガキ扱いされるのは嫌なので。

 

 

「そうそう、やっぱ一目見て――――え!? 会うの!?」

 

 

 見事なまでのノリ突っ込み的なリアクションに束は軽く笑う。

 

 

「そこまで言うなら逆に興味あるじゃん? 昔アンタに対抗する為に造ったIS・赤帝と対になる新作造りのサンプルとしても良質そうだし?」

 

「な、なるほど……そういう意味で会うのか。

まあ、それこそ束ちゃまの自由だし別に――」

 

「もっとも、アンタの言う通りな展開になるか、もしくは意外にアンタより良いと思ったら友達くらいにはなってやらないこともないけどね」

 

「え……」

 

『………』

 

 

 フッと笑いながら言ってしまった束に、誠は持ってたスプーンをポトリと落とし、ドライグは声は出さないものの『また始まった』と思う。

 

 

「と、友達? え、マジ? 男だってイチ坊が言ってたんだぞ?」

 

「だから? 有益で人格的に良いならそれなりな対応にもなるでしょ?」

 

 

 わっかりやすいくらいに動揺する誠に束は楽しくて仕方無い気持ちを抑え込みながら、更に煽る。

 

 

「ましてや何時までも子供扱いしてくるような男にはうんざりしてた所だし?」

 

「……あ、うん」

 

 

 この台詞は誠もかなり堪えたのか、一気に黙り込んでしまった。

 この時点で束は隠しきれないレベルの歓喜に心を支配されていたのだが、その次の瞬間だった。

 

 

 

「ま、そうなったらしゃーないし、その時が来たらもう俺に価値も無くなるわな。

生きる動機も無いし、だったらそのまま死ぬしかねーや」

 

 

 突然テーブルにあったフォークを手に持った誠は、自身の首にその先を突き立て様としたのだ。

 

 

「何してんだよこのバカ!」

 

「あ」

 

 

 文字通り、自分の頸動脈を刺し切ろうとする誠に対してさすがにちょっと慌てた束が割りと全力で誠の持ってたフォークを奪い取って阻止する。

 

 

『だから言ったんだ、おちょくり過ぎると真に受けるってな』

 

「普段は逆に私がおちょくられてるんだから、これくらいで死なれても困るよ」

 

 

 ドライグの呆れた声に束は若干ながら罰が悪そうな声を放ちながら目に生気が消えてる誠を見る。

 

 

「ちょっと、いきなり自殺しようとするのはどういう了見? まさか今の冗談を真に受けた結果だなんて言うつもり?」

 

「……まぁね」

 

「何で?」

 

 

 割りとスイッチが入るタイミングがわからなくなる誠に束は問う。

 すでに先程までのほのぼのとした朝食の空気は消え去っている。

 

 

「キミにこうして甦らせて貰ったんだ。

キミが俺をどうこう出来る権利がある、だからキミが俺に対する価値が無くなったら生きてる意味がないだろ?」

 

「それで死ぬと? 私がふざけてたとはいえ、そういう勝手な所は変わらないね」

 

「性分なんだよ。

前にも言ったろ? キミに捨てられたら俺はもうどうにもならねぇよ」

 

 

 束に要らないと言われたら即座に死ぬ。

 ある意味誠の根の一部と言われたらそれまでだが、今では束しか己のすべてを知らないせいか、かなりやってる事が重い。

 が、その言葉を聞いた束が内心偉くニヤニヤしてる辺り、彼女も大概だったりするのだが。

 

 

「あっそ、飼い犬としては上等な忠誠心で褒めてあげるよ。

でもひとつだけ言っておくよ? 死ぬんだったら私が死ねと言うまで自殺はダメ」

 

「おう……」

 

 

 誠が自分にだけすがっている。

 その事実は非常に束の心を潤わせるものだった。

 

 

「いつまでもショボくれられてもウザいし、しょうがないから言ってやるけど、さっきのは全部冗談だよ。

この束さんが、そんなどうでも良い奴に興味を持つと思う? 向こうが仮に持ったとしても私は持たないよ、間違いなくね」

 

「……」

 

 

 復活させ、復活してからの二人は典型的なダメコンビになっている。

 束は誠の持っていた強大な力に対しての対抗心のみの関心だと思いきや、完全に力を弱体化させてる今の誠に対しても歪んだ執着を示すし、誠も誠で0から復活させてくれた束には確かに妹分的な意味で見てる部分はあれど、それ以上に自分の過去からなにからすべてを知る彼女の傍でしか自分でいられないという、これまたどうにも歪んだ気持ちを持っている。

 

 

「あーもう! 普段は私をおちょくってる癖に、自分がやられるとこうなるって勝手なんだから!

ほら、しょうがねーから膝くらい貸してやるよ! 本当に仕方なくね!」

 

「……………」

 

 

 すっかり食べる気が失せた朝食をテーブルに放置し、束がかなりわざとらしく、さも嫌々ですてきな感じで言いながら誠を連れてソファーに座らすと、そのまま膝枕をしてあげた。

 

 大体こうすると誠は喜ぶのはとっくに知ってる事のひとつなのだ。

 

 

「あーめんどくさい。

私が飽きて関心がなくなったら死ぬだって? ホント駄目な男だねアンタは? つーか飽きると思ってんの?」

 

「……一瞬そう思う時があるからよ」

 

「あっそ、どうせ私は薄情で人嫌いでめんどくさい女ですよ。

良かったね、そんな女の傍に居られてさ?」

 

「あぁ……」

 

 

 と、如何にもめんどくさいですよ私は的な態度をする束だが、内心は凄まじい歓喜でどうしようもなくなっていた。

 ヘラヘラしてるけど、自分にしかすがりつけない、自分にだけしか頼れない、自分にだけしかこんな弱い面を見せられない。

 

 散々子供扱いしてきた男が、今まさに自分にだけに――

 

 ずっと掴み損ねて来たからこそ、束は今の状況が堪らなく好きだった………声にも態度にも出さないけど。

 

 

「本当にアンタは束さんが居ないと駄目なんだから。

この分じゃ学校にも行けないし……はぁ、しょうがないなぁ本当に」

 

「ごめん……」

 

 

 ギュッと束の腰に腕を回し、例の腹部に顔を埋める抱き枕モードに入った誠にますます束は、誠が自分の顔を見てないのを確認しつつ、ニタニタと頬の緩みが収まらない。

 

 

「で、こんな真似をする癖に知らない女にナンパする最低男はどうしたいの? 今なら聞いてあげないこともないぜ?」

 

「もう暫くだけこのままで……」

 

「へぇ? ガキ扱いしてきた相手にこんなガキみたいな事をねだるんだぁ? へぇ……ふ、ふふふ♪ ほんとーに駄目な奴なんだから!」

 

 

 手離す訳が無い。

 死ねとだなんて言いもしない。

 あれだけ遠かった背中にやっと追い付いた今、今度は永久にこの男を逃がしはしない。

 

 

「あ、リアスちゃん? 今日は先に学校行っててよ? ちょーっと遅れるからさ?」

 

「…………」

 

「………っと、今遅刻の連絡をしたんだけど、どうする? 変態男のアンタは何がしたい? 言ってごらん?」

 

 

 現役だった頃の誠に対して父性を抱いて家族の様に愛した千冬と一夏には悪いと思っている。

 

 

「っ……へ、へぇ? 子供扱いしないんだ?」

 

「…………………………俺が調子の良い奴だってのは知ってるだろ?」

 

「嫌って程にね。じゃあ束ちゃまだなんて子供扱いする呼び方も今は無しだよ?」

 

「わかってるよ……束」

 

 

 でもあの時――自分に力を託して逝った時に漸く解ってしまったのだ。

 飼うとか飼わないとかじゃなくて、ずっと永久にこのメンタルは地味に弱い彼と一緒に――と。

 

 

「あ……発情した犬みたいに今から犯されちゃうよぉ……♪」

 

 それが篠ノ之束の執念であり、強さの秘密なのだから。

 

 

『めんどくさい二人だな……まったく』

 

 

終わり




補足

束ちゃまに造られた今、その命は全部束ちゃまに委ねてるものの、割りと要らないと言われたらかなり辛いらしい。

具体的には即座に頸動脈切って死のうと思う程度には……

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