色々なIF集   作:超人類DX

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続く。

匙きゅんがんばれ



変な関連性

 織斑一夏と篠ノ之箒にとって、一誠とリアスは肉親以上に兄や姉として慕っている存在だ。

 かつての世界で転生者なる存在によって擦れた精神性にねじ曲げられ掛けた時に出会い、彼等から生きる為の技術を教えられ、周りの環境がどうなろうが決して変わる事のない完全なる自己を確立出来たのはこの二人のお蔭だ。

 

 故にまたこうして、今度は二人にとっての故郷となる世界にて生まれ変わった今は、二人を支える為に高めたこの技術を投入する。

 

 リアスと一誠に惹かれた者達と共に……。

 

 もっとも、かつての世界にて邂逅した更に違う世界の束が、不可能としか思えない所業を達成し、その成果たるもう一人の一誠を連れてる状態で再会するとは思わなかったし、もっといえば暫く協力までしてくれるとは思わなかった。

 

 ましてや自分達の世界での束は千冬共々最後まで転生者側に居たのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「昼飯の時間だぜ」

 

 

 リアスの兵士となってから10年以上が経つ現在。

 妙にハイテクなIS学園とは良い意味で違った、普通の学舎での学生生活を、リアスや一誠の直の後輩という形で送る事になれた織斑一夏は、仲間でありかけがえのない友人でもある篠ノ之箒やシャルロット・デュノアや布仏本音と殆ど行動を共にしている。

 同じ学年というのもあるのだが、何より一夏は中々に男前な容姿を持っているのもあるせいか、密かに女子達からの受けが宜しく、それのせいで同性の友人が全く居ないのだ。

 

 

「今日はリアス姉が作ってくれた弁当だぜ」

 

「これを楽しみに午前中の授業を頑張ったといっても過言じゃないもんね~」

 

「どこで食べようか? 天気も良いし、僕は屋上なんかが良いと思うけど」

 

「うむ、それが良いな。では飲み物を買ってから屋上へ行こうか?」

 

 

 

 入学初日から本音、シャルロット、箒という贔屓目に見ずとも美少女な女の子達ととても仲良さげに居るばかりか、学園でも頂点クラスの美少女であるリアスや、それに準ずるレベルの布仏虚、二学年のドジっ子巨乳童顔美少女の山田真耶や、更識刀奈等々、とにかく美少女との謎過ぎる関係を持ってる一夏は嫉妬される事ばかりであり、今でもこの面子以外の友人は本当に居ない。

 

 まあ、本人も友人を欲しがらず、箒達さえ居れば別に他がどうなろうと知った事じゃないといったカラッとしすぎた性格な為、困ってる様子は微塵もないのだが。

 

 

「クソ、織斑野郎……」

 

「毎日毎日見せつけやがって……」

 

 

 昼休みと同時に美少女達と屋上へ行くために教室を後にした一夏に男子達の嫉妬光線が放たれる。

 

 ちなみに、二学年所属の一誠と誠も似たような経験は一度あったのだが、アッチは片方がリアス一筋で他の女子達からの誘い全部を丁重に断り続けていたり、片方は妙に軽い性格で一応それなりに同性から嫌われてるって訳じゃないのだが、常に後ろに美少女だけど相当取っ付きにくくて癖のありすぎる性格をした束が見張り同然に見てるせいか、そういった感情はなかったし、寧ろ誠に関してはちょっと同情されていた。

 

 なんせ軽いナンパじみた事をしても成功した試しもなければ、束に拉致られるので。

 

 

「……………………」

 

 

 そんな状況のリアス眷属の男子軍な訳だが、今回はそこについてのクローズアップはしないし、あまり面白い話でもないので割愛しよう。

 今回は教室を出ていく姿をただじーっと、近寄る事も許されずに見ているだけしか不可能になってしまった一学年の女子にて美少女ランク上位の生徒会役員……塔城小猫とギャスパー常々一夏達に抱く嫉妬についての一部をご紹介しよう。

 

 

(リアス部長の手作りお弁当……)

 

「羨ましい……」

 

 

 

 ご存じの通り、塔城小猫は現在生徒会に所属し、ソーナ・シトリーの戦車として在籍している転生悪魔の一人だ。

 しかし彼女はその昔、もっと言えばこの世界に似た別の世界においてはリアス・グレモリーの戦車だった。

 しかし彼女は――いや、彼女だけでは無くその記憶を持つ者達は転生者という存在の出現により主であるリアスを裏切って見捨てるという暴挙をやってしまった。

 

 転生者の放つ魔性のようなものに魅入られ、身体を捧げ、本来手放すべきではないリアスとの繋がりをあっさり捨て去ってしまった。

 無論、正気に戻る事になって今では自分達の馬鹿な行動を心底後悔しているのだが、既にリアスはかつて捨てられた際に救ってくれた赤龍帝や、自分達の知らぬ間に繋がりをもった者達と心底幸せそうに生きている。

 

 故に小猫達は謝罪はしたけどかつての様な繋がりを取り戻せる事は永久に失われる事になってしまった。

 

 

(…………)

 

 

 だがだ。しかしだ。それで諦められる程この小猫を含めた記憶を持つ者達は物分かりの良い性格はしていなかった。

 今小猫と一緒に居る臆病なギャスパーですら、リアスを裏切ってしまった事を心底後悔し、何としてでも元の関係に戻りたいという執念を持っているのだ。

 

 

「どうしよう小猫ちゃん? あの人達が居る限りリアス部長に近づけもしないし……」

 

「かといって暗殺しようにも、簡単にさせてくれる程あの人達は弱くない」

 

「そうなんですよぅ……。

この前ライザー・フェニックスとのレーティングゲームだって、あの織斑一夏って人が一人で完封したらしいし……」

 

 

 今度は何があろうとも裏切らない決意と覚悟は確かにある。

 しかし既にリアスには自分達を歯牙にもかけない繋がりを持ってしまっているし、その者達の実力にしても、かつての転生者による意味不明な指摘による強化をしていたりする小猫達でも手こずるレベルの強さを持っているのだ。

 

 

「映像で見る限り、彼の魔力には『相手の力を一時的に零にしてしまう力』が備わっているみたいです……」

 

「それでフェニックスの不死特性を無力化してたらしいからね。

冥界では最強の兵士候補として名が知れ渡ってるし」

 

 

 未だに実力の底が見えない一夏達に対して下手な真似はできないから強く出れないのがソーナ達の現状であり、小猫達もただ遠くから眺めて歯痒い思いをするしかできないのだ。

 

 

「篠ノ之箒って人はリアス部長に声が似てるし、一体何者なんだろうあの人達って」

 

「私達があのクズ男に騙されてた時に部長と部長を助けた赤龍帝の人が集めた仲間だと思う。

そして間違いなく私たちみたいに記憶を持ってる」

 

「部長がそうだったもんね……」

 

 

 ソーナ曰く、もっとも警戒しなければならないのは、リアスと長い間共にしてた赤龍帝の兵藤一誠と、もう一人の兵士である篠ノ之束、そして女王の更識刀奈。

 

 一誠は言わずもながら、束は社会的な抹殺までもを得意としているし、刀奈に関してはソーナと色々と被るから――と、前にソーナ自身が彼女に嫉妬していた。

 

 

「魔力性質が同じだからね……。

しかも応用力は向こうが上っていう……」

 

「しかも性格はセラフォルー様にちょっと似てるというのもあるし、会長さんからしたら一番嫌ってる相手かもしれないね」

 

 

 若手の中では最強の女王候補にすら挙げられてる刀奈について、若干苦々しそうな表情で語らう小猫とギャスパー。

 そう、彼女達は基本的に一夏達とは波長が合わないのだ。

 

 

 

 

 

 

「いーちゃん♪ 一緒にご飯食べよっ?」

 

「わざわざ言わなくても、大体何時も一緒に食ってるだろ」

 

「まぁまぁ、こういうラブコメ風の空気を醸し出すのが大切なのよ」

 

「わ、私も一緒ですからね?」

 

「勿論よ真耶ちゃん?」

 

 

 そんな噂をリアスのストーカーグループにされてるとは知らないし、知ったところで割りとどうでも良かったりする元17代目更識一族の当主更識刀奈は、かつての世界から一切変わらぬ想いを今日も生まれ変わる事で歳が同じとなった一誠を愛称で呼びながらお誘いをしていた。

 

 気紛れ猫みたいな性格な癖に、一誠に対してだけは、犬の様に懐いてる。

 それがまた真耶にまであきらかに好かれているというのもあって、色々と顰蹙を買っていたのは今は昔だ。

 

 

「誠も一緒に食うか?」

 

「んぁ? あぁ、良いよ俺は。

なっちゃんと真耶てんてーのお邪魔になるし、今束ちゃまに呼ばれたから行かないといけないし……精々楽しめよモテ男め」

 

「あー、束ちゃんかぁ。それならしょうがないわね」

 

「が、頑張ってね?」

 

「真耶ちゃんがハグでもしてくれるんなら頑張れるんだけどねー……?」

 

「え、ええっと……ごめんなさい?」

 

「フッ……わかってるさ、そう言われるはな! チクショー! 覚えてろよイッセー!!」

 

 

 本人があきらかに三年のリアス一筋で、刀奈からのアプローチ全部を似もなくボクサーのフットワークみたいに避けまくるのもあるので、嫉妬するだけ逆に損なのと、そのイッセーに顔が似てる従兄弟らしい誠があまりにも色々と残念なせいで上手いこと中和されてるのだ。

 今も真耶にごめんなさいされて、半泣きで教室を飛び出していく誠に対する同情する空気が他の生徒達から流れている。

 

 

「日之影って篠ノ之にどんな弱味を握られてるんだろうな? 毎度呼び出されてるし」

 

「前に日之影が女子テニス部のマネージャーと話をしてるのを後ろから篠ノ之か石像みたいな表情でガン見してるのを見た時は、日之影が殺されるんじゃないかと恐怖したくらいだしな」

 

「そうそう、体育の授業で男女混合のフォークダンスの時なんかも、他の女子と楽しそうにやってる日之影をじろーっと見てたし、その時パートナーやってた奴が完全に怯えてたもんな?」

 

 

 篠ノ之束は確かにリアス等に一切引けを取らぬ美貌とスタイルを持ってはいるが、性格に難があるというのか、大体何時も誠を呼び出してる女王様みたいな所があるというか、放つ殺気が怖すぎるというか……。

 逆に誠が同情される程であり、男子達が出ていった誠に同情しているのを一誠達は聞いていた。

 

 

「誠君はねー……。ちょっと軽い所があるからしょうがないわよねー」

 

「絶対に篠ノ之さんがどう思ってるか知ってるのに、のらりくらりとしてるのがイケナイんじゃないかなって思うのですが……」

 

「まあ、聞けば彼女が小さい頃から見てた妹みたいなものだっていう認識が取れ切れてないんだと思う。

……俺自身なせいか解る気がするよ」

 

 

 荒唐無稽で誇大妄想にも程がある野望を本当に実現させた体現者とも云える束と、その生き証人である誠のコンビの複雑な関係は、一誠達でも深入りするのは控える程のものだ。

 特に束の抱いていた特大の執念は、立ち向かう事を避けて生きる事を選んだ一誠とリアスが素直に尊敬してしまうレベルだ。

 

 

「死んだ人間一人を完全に蘇らせるなんて、神の領域を完全に踏み潰してるからな……。

彼女の執念は俺やリアスちゃんには全くない側面の強さだよ」

 

「執念通り越して狂気でもある気はするけどねー」

 

「まぁな、だからこそ成し遂げたんだろうぜ」

 

 

 それ以上に彼女が誠に対して深すぎる感情を持ち続けたそのある意味の一途さもまた凄まじい。

 あらゆる意味で負けた気分にさせられる束の精神的な凶悪さは、自分達も学ぶべきなのかもしれない。

 

 と、今頃束から色々とされてるだろう誠に一誠は、とんでもないモンスターを育てたもんだなと思うのだった。

 

 

 

 

 

 さて、そんな凶悪モンスターみたいな認識をさてれいる束はといえば、実に冷めた目付きで物陰から隠れて向こうを伺っている誠を見ていた。

 

 

「匙が一人で弁当食べてるぞ」

 

「……………」

 

 

 その理由は、誠が一誠としての全盛期の頃から常々気にしていた友人に成り得たかもしれない少年、匙元士郎の事をずーっと気にかけまくるからだったりする。

 今だって疲れた中年サラリーマンみたいな雰囲気で一人旧校舎裏のちょっとした森林っぽい地帯でご飯を食べてる元士郎をソワソワしながら見ていた。

 

 

「クソったれめ、あのバカ共が匙にふざけた真似ばかりしやがるせいですっかりひとりぼっちじゃねーか、……!」

 

「だったらアンタが話しかけてみたらよ?」

 

「え!? そ、それは……拒否られたらと思うと怖いし……」

 

「……………」

 

 

 覗いてる暇があるならさっさと接触しろと冷めた声で言う束に、誠は気持ち悪いくらいイジイジした態度で断られるかもしれないと返す。

 この態度がまた束をムッとさせる要因だった。

 

 

「ホモなの?」

 

「ホモちゃうわい! 純粋に心配なんだよ、連中の奴隷みたいになってるし」

 

 

 自分以外にこんな態度なのが、なんかむかつく。

 要するに匙に対して束は嫉妬してるのだが、それに気付いてない誠は時折ため息を吐きながらチビチビとご飯を食べてる匙をずーっと見守っている。

 

「大丈夫かなぁ、束ちゃまはどう思う?」

 

「知らないよ、知りたくば今すぐ本人に聞けば?」

 

「き、聞いても良いのかな?」

 

「…………」

 

「え? ちょ、束ちゃま!?」

 

 

 知らねーよ。と思う束。

 男子の友人に恵まれてなかったせいか、妙に拘る誠の心中はそれなりに察してはいるが、気に入らないものは気に入らない。

 だからまだウジウジと悩む誠に対して当て付けの如く束は一人で細々と食べている匙の元へと行ってしまった。

 

 

「ねぇ」

 

「!? し、篠ノ之……?」

 

 

 物陰から『あわわわ!』と慌てながらも出てはこれないヘタレを背に、束はとても冷たい表情で驚いた顔をしている匙を見下ろす。

 

 

「な、何か用かよ?」

 

「別に無い。偶々キミが一人で寂しくこんな所で食べてるのを見ただけだし」

 

「っ……一人で悪いかよ」

 

 

 生徒会入りしてから完全にクラスでも孤立してしまった元士郎は、束の一言に結構傷付いた。

 が、そんな事を一々気にする束では無い。

 

 

「悪いとは言わないね。

見るからに幸の薄そうな顔してるし」

 

「……………」

 

 

 なんで俺篠ノ之にこんなディスられてるんだろ……。

 とかなり辛辣な一言を言われてかなり凹む元士郎。

 実はその後ろの誠が自分をかなり気にかけていて、それに関しての嫉妬をされてるとは露にも思わないだろう。

 

 

「悪魔の眷属になったら主は単なるストーカーで、その片棒まで担がされてるんだもんね? そりゃしょぼくれたくもなるけど、そのしょぼくれ加減のお蔭であるバカがキミを気にしすぎて実に気に入らないんだよね?」

 

「え? ある奴?」

 

 

 何の事だ? と思う元士郎だが、束のなんともいえない冷たい視線に尻込みしてしまう。

 

 

「欲を言えば、キミがとっとと適当な女とイチャイチャしてくれたら解決するんだけどね? 居ない?」

 

「ぶっ!? な、何だよ突然!? いねーよ!!」

 

「じゃあさっさ作って安心させてくれないかな? じゃないとこっちもムカついてしょうがないんだ?」

 

「何でお前にムカつかれなきゃなんないんだ! そ、そりゃ所属柄そう思われてもしょうがないとは思うけど……」

 

 

 女作る暇なんて本当に無いし、ましてやちょっと好意を抱きかけた相手が強烈すぎて少しトラウマにすらなってる元士郎。

 この束にしても癖が強い性格なのは知ってるし、そらに振り回されてる誠の事も見たことはあるが、正直羨ましいとはあまり思えない。

 

 いや、前に見た時は本人も若干嬉しそうだったかもしれないが……と、思った所で元士郎はピンときた。

 

 

「まさか俺を気にかけてるのって日之影……?」

 

「……………」

 

「え、何でだ? 俺は日之影と話をしたことなんて無いのに……」

 

「さぁね、兎に角あいつがキミに同情してるのだけは間違いないよ。

まあ、ヘタレだから気にするだけで話しかける勇気すらないみたいだけど」

 

「な、何で? 本当にわからんぞ……」

 

「直接本人に聞いたら? とにかくキミが不幸オーラ撒き散らす度にあいつが私をほったらかしにするからさぁ、飼い主としては飼い犬に反抗されるのは嫌でしょう?」

 

「か、飼い犬? そ、そんな関係なのかお前ら……」

 

 

 そんな気はしてたけどマジだったのかよ……と、ちょっと引いた元士郎。

 いや、この表現は束の誇張だし、近いかもしれたいけど基本的にそんな酷いことはしてない。

 精々四つん這いになった誠の背中に乗ってやる程度くらいだ。

 

 

「あんな連中の下に付いててこの先良いことなんてまず無いと思うから、早めに何とかしておくべきだと思うよ。それじゃ」

 

「…………」

 

 

 ソーナ達とは切れるならさっさと縁を切れと言って去っていく束。

 そんな単純な状況じゃないから出来るわけがないと元士郎は思うが、将来を考えたら納得してしまう部分が多いのもたしかだった。

 

 

「俺だってわかってるよ、言われなくても。

でも……俺には出来ないんだ」

 

 

 弟と妹に苦労はさせない為には、我慢しなければならない。

 例えそのままストレスに殺されてしまおうとも……。

 

 

「……はぁ」

 

 

 全く話した事すら無い相手にすら心配される様なら終わってるな……。

 ますます自分が情けなく思えてならない元士郎はすっかり食欲を失ってしまい、弁当を残すことにして教室に戻る事になった。

 

 

「あ、匙先輩だ。こんちわっす」

 

 

 今日もどうせ放課後はろくでもない事をさせられるんだろうと思うと胃が痛いと腹部に手をあてながら歩いていると、一夏、箒、本音、シャルロットと出くわし、挨拶をされた。

 

 

「あぁ、キミ達か。相変わらず仲が良いな」

 

「そういう先輩こそ……えっと、顔色がかなり悪いすけど……?」

 

「具合でも悪いんですか?」

 

「別に、何時もの事だよ」

 

 

 なんだかんだとリアス眷属の中でも、一年組とはそれなりに話が出来る距離感になってる元士郎が皆から顔色の悪さを心配されるが、素っ気ない声で大丈夫だと返す。

 

 

「また会長さん達に一人で仕事を振られたとか……」

 

「いやまだ言われちゃいないよ。放課後言われるかもだけど……」

 

「相変わらず苦労を成されて……」

 

「手伝ってあげようか?」

 

「この前デュノアさんには言ったが、キミ達に手伝って貰う訳にはいかないぜ」

 

「そんな事を言ってる場合じゃないですよ。

サジ先輩は他の眷属の人達と違って変じゃないし……ね?」

 

「そうそう、リアス姉のストーカーじゃないしな」

 

「寧ろ完全に巻き込まれてるとしか思えませんから」

 

「…………」

 

 

 こぞって心配してくる一年組に、若干泣きそうになってきた元士郎。

 他人から優しくされるのがこんなにも心に来るものなのか……。

 束の言ってた事はある意味当たっていたのだ。

 

 

「いや、マジで良いから。

本当に良いから……これ以上俺に優しくするな……泣きそうになる」

 

「サジ先輩……」

 

 

 俯いて肩を震わせる元士郎に一夏達はますます元士郎が可哀想に思えてしょうがなかった。

 特にシャルロットは、昔リアスや一誠達に向けられた思いやりで泣いた事を思い出して同類意識すら芽生えていた。

 

 

「まだ時間もあるし、少し飲み物でも飲みながらお話しましょ? 一夏も良いよね?」

 

「ああ、勿論だぜ」

 

「匙先輩なら私も賛成だ」

 

「なられっつらごー!」

 

「う……ぐぅ……!」

 

「笑いませんから、泣いて良いですよサジ先輩……ね?」

 

「く……ひっく! うぅ……!」

 

 

 そして遂には泣いてしまった元士郎に、思うところがあったのか、シャルロットが肩を貸した。

 いや、女性なので肩というか完全に胸を貸してるがシャルロットは気にしなかった。

 

 

「シャルがリアス姉みたいだ……」

 

「昔の自分と同じものを感じたのだろう。私もスゴくわかるぞ」

 

「デュッチーも大変だったもんね……」

 

 

 

 

「ぐすっ、うぁぁ……!」

 

「よしよし、もっと吐き出してください。僕でよければいくらでも貸しますからね?」

 

 

 ソーナ達の思惑通りといえばそうなのかもしれない。

 が、ある意味その思惑を徐々に越えてる感もまた否めない。

 

 それほどに彼の現状はリアス達ですら同情する程なのだから。




補足

地味にかつての転生者補正で強化されてるけど、同じくらい力を付けてるのでどうにもなりません。

てか、ヤバイが2、3人居るしね。

その2
匙くんがんばれ

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