何も考えないでゴーしてください。
続きもありません
※今更どうにもならないやり直し
それはとても数奇な人生だと思う。
不幸のどん底に落とされたり、這い上がったりと随分と忙しい人生だったけど、歩み続けた者達は皆言うのだ。
『大変だったけど、とても楽しかった』
卑屈でも嫌味でも無く、全員が口を揃えてそう言える人生だった。
だからこそだ、再び運命が交差する事になっても皆は困惑よりも喜びの感情が勝った。
だからその結束力はとても固く、外部からの茶々入れ等に動じはしないのだ。
悪魔の少女と、赤き龍帝が手にした繋がりは……。
全てに気が付いた時は全てが手遅れだった。
総てを平服させる力を持った男によって世界は支配され、その男の持つ魅力に取り憑かれてしまった者達は、その男が満足して死ぬまでその身を捧げ続けなければならなかった。
ある一人を裏切ってしまったという現実に心を折りながら。
バカだった。愚かだった。どうかしていた。
たった一人の男の戯言を信じてしまったばかりに、友を裏切ってしまった。
だがその者の名を口にする事は許されなかった。
何故なら男はその者を毛嫌いしていたからだ。
だから友も、恩を受けた者達の皆が彼女の名前を口に出すことは出来ず、ただひたすらに我慢し続けた。
文字通り――朽ち果てるまで。
出来るなら謝りたいという気持ちを常に抱いて……。
だからなのだろうか、彼女達の身に不思議な事が起こった。
時間を遡り、人生をやり直すという奇跡が。
勿論当初はあの男に再び支配される事を恐れたが、幸運な事にその男はこの世界に存在すらしていなかった。
それを知った彼女達は理由はわからないが、とにかく歓喜したのは間違いなかった。
今度は間違えず、裏切ってしまった彼女を決して裏切らないと誓えるのだから。
故に彼女の幼馴染みだった者、彼女に命を救われて眷属となった者……とにかく彼女に縁のあった者達は急いで退行して小さくなった我が身に鞭を打って彼女の元へと走った。
だけど、彼女達の目に飛び込んできたのは、幸せそうに笑う彼女と――
「リアス・グレモリーが
「リアス・グレモリーが
「同じく
「
「同じく
「
「僕も同じく
「
全く見知らぬ――本来彼女が持つべき眷属では無い眷属達だった。
勿論、彼女への贖罪の気持ちを抱く本来の眷属は大層なショックを受けたのは間違いない。
当然どうしてなのかと詰め寄ってしまった。
けれど彼等を束ねる王であるリアスはとても無関心な瞳を自分達に向けながらアッサリと言ったのだ。
「私達がそうだったから、もしやとは思ったけど、どうやらアナタ達は私の脳の隅の隅に仕舞われた記憶のアナタ達な様ですわね。
残念ながら、今更何を企んでいるのかは知りませんが、我々に関わるのはやめて頂けるかしら?」
とても冷たく、かつての優しさと甘さを微塵も感じさせない覇気を纏いながらリアス・グレモリーははっきりとかつての幼馴染みと友人達を拒絶したのだ。
それは解りきっていた事だけど、彼女達に多大なショックを与えたし、そんなリアスの寵愛を受ける見知らぬ者達に酷く嫉妬してしまった。
殆どの駒が使われ、残りは僅かに兵士の枠のみが空いてるだけ。
勿論当初元リアスの眷属だった者達はその兵士の駒でも構わないと、残りの駒をめぐって勝手に争いを始めたのだが、リアスはそんな者達には目もくれず、新たに二人を兵士として迎え入れたのだ。
一人は騎士の少女に目付きが似ている少女。
一人は戦車の少年に背丈や体格の微妙な差を除けば瓜二つな少年。
「はろはろ~! 私が噂の篠ノ之束さんだぜ!」
「新人悪魔になりました日之影誠っす。夢はかわいい女の子と毎日イチャイチャしたい! そして結婚したい!」
この二人の加入によりますます駒の数が減り、結局残りは兵士が数枠という所にまで減ってしまった。
仕方なく幼馴染みと親友を自称する悪魔の少女は、リアスの元眷属達を自らの眷属にし、何年も機会をうかがう事になったのだけど、リアスもその眷属達も、ろこつなまでに自分達を避け、結局彼女達はリアス・グレモリーに拘るがあまり、ストーカー集団と揶揄される様になったのだとか。
それはリアス達が高校生になって人間界の学校に通う事になった時も、自称親友の幼馴染みが実家の力をフルに使用して無理矢理同じ学校に入学する程度には……。
「流石に謝って許されるとは思ってないわ。
けど、リアスとはもう一度……」
「女王は私でしたのに……」
「騎士も僧侶も戦車も、全然知らない人だし……」
「いや、あの戦車と兵士の人は聞き覚えがあります。
確か部長と共にどこかへと逃亡した人だと……」
記憶を持つソーナ・シトリーは、記憶を持たぬかつての眷属達と関わる事はせず、同じ記憶を共有するリアスの元眷属達を自らの眷属として抱え、今日も無意味にリアスとの仲を縮める策を無駄に考える。
「リアスとお風呂に入って背中の流しっこがしたい……」
「私達だって同じですわ……」
その考え自体が永久に不可能だというのに……。
駒王学園には、凄まじい美少女軍団が二組存在している。
ひとつは支取蒼那が生徒会長を勤める生徒会役員達。
副会長の姫島朱乃
書記のギャスパー・ヴラディと搭城小猫
会計のアーシア・アルジェントと木場優奈
そして庶務の匙元士郎。
一人だけ男子が混ざってる事以外は文句無く美少女達と持て囃される生徒会と二分する人気を誇るもうひとつの美少女達。
オカルト研究部に所属する者達がまさにそれだった。
「せんぱーい、また例の生徒会長から怪文章が届きました~」
「また? ……本当にしつこいわね」
「どうしましょうか? いい加減直接言ってしまう方が良いのでは?」
「却って喜ばせそうな気がするけどねー……」
リアス・グレモリーを筆頭としたこれまた文句無い美少女軍団。
若干性格に癖のある者が多いけど、それでも文句無い美少女と呼ばれる彼女達は、とある事情を持つが故の鋼の様な結束力を持っていた。
「その搭城さんだっけか? 毎日毎日リアス姉の事ばっか聞いてきて鬱陶しいんだよな」
「私なんか、姉さんに声が似てるから、連中に捕まるとしょっちゅう声真似をしろと言われるし」
「僕達がお姉ちゃんの眷属なのが気に入らないみたいだからね」
リアス・グレモリー
更識刀奈
布仏本音
布仏虚
篠ノ之箒
シャルロット・デュノア
織斑一夏
「前に手足へし折ってやったのにまだ懲りないのかよ」
そして兵藤一誠。
彼等は昨今稀に見ぬレベルの結束力を誇る陣営であり、一応まだ公式ではないにせよ、リアスの種族たる悪魔達の中で行われるレーティング・ゲームにおいても未だ無敗だった。
故に彼女達は比較的冥界内でも一種の若手ヒーロー扱いをされており、そんな彼女に対して実家の大きさを利用してストーカー紛いな真似をしているソーナ・シトリー達の評判はドン引きするレベルで悪かった。
「大丈夫さ、この束さんの魔法の手に掛かれば二秒で冥界内のネットワークに侵入し、連中のストーカー行為を押さえた映像を実家やらテレビ局に送りつけられるぜ――ってか、もうポチってやったもんねー」
「流石束ちゃま。
社会的に抹殺するその手腕は本当に震えが止まらないぜ……」
挙げ句の果てにはここ二年程前に突然加入した新たな眷属二人……篠ノ之束と日之影誠の力もまた凄まじく、最早公式戦に出ても一気にトップにおどりでるのでは無いかとなにかと期待されていた。
「そろそろ向こうの実家に呼び出されて折檻でも貰ってしまえば良いのだけど……その気配が無いのよね」
「多分グルとか? シトリー家全体があのソーナ・シトリーを後押ししちゃってるとかでは?」
「だとしたら此方もグレモリー家として抗議しないとならないわね。
生憎、利用する気で良い子ぶっていたお陰で冥界でのイメージはそこそこ悪くないし、私達って」
完全に先手を打つ形でソーナ達との関わりをほぼ断ち切る事に成功したリアス。
彼女達がかつて自分を見捨てて転生者の男に走った者達なのは既に承知してるし、謝りたいと宣ってる様だが、許すとか許さない以前に関わりたいとは全く思わない。
今のこの状態が――本当の意味での大切な者達とこうして再び生きていけるだけで満足だし、邪魔をされたくはないのだ。
「あんな連中の所に居る匙君は大丈夫なんだろうか……」
「あぁ、そういえば生徒会に入ってから毎日死んだ眼をしてるよなあの先輩。
この前も一人で黙々と雑草刈りしてたし」
「あまりにも見てられなかったから僕と一夏と箒とのほほんさんで手伝ってあげたら、泣きながらお礼を言ったり『自分が情けない』って言ってたよね……」
唯一引っ掛かるのは――というか、日之影誠的に引っ掛かるのが、どう様子を見てもソーナ達と違って記憶を持たない匙元士郎というか生徒会の庶務にて、ソーナの兵士である少年の奴隷みたいなコキ使われっぷりであり、一夏やシャルロット達もまたちょっと彼には同情している様子だった。
「一誠的には気にならないというか、関わりは無かったらしいけどよ、俺はアイツとは友達なれたかもしれなかった奴だから気になるんだぜ」
「ホモを疑うくらい毎日気にしてるんだよ?」
「え、ほ、ホモなんですか?」
「ちがわい! 純粋に心配だし、俺は真耶たんみたいな女の子がバッチリ大好きなのだ! というわけで今晩デートでも……」
「ええっ!? わ、私には一誠さんという心に決めた人が……」
「ちくしょう! 違う世界の俺自身なのになんでこうもモテ度の差がハッキリしてるんだ! 俺だって可愛い女の子と死ぬほどイチャイチャしたいのによぉ……!」
些を気にしつつ、別世界の自分自身――つまり一誠とのモテ度の差を嘆く誠。
彼は実の所、かなり特殊な道筋を経て、本来なら死んでいる筈なのを、今真耶を口説こうとしてた彼を後ろから思いきり刺し殺そうとせん目で視てる束によって『復活』した存在だ。
詳しくは省くが、少なくともそんな手に出る程度には束にある意味愛されてるのだが、本人は彼女を生前から妹か子供扱いしているので、毎度毎度束に折檻されるのがお約束だった。
「本当に見境の無い発情犬だねアンタは? なに? 昨日あんだけヤらせてあげたのに、まだ足りないわけ?」
もっとも、今では実力共に完全に逆転してしまった束にほぼ逆レ◯プ同然に搾り取られてるのだが……。
「お、おう……すまん」
そんな事もあってか、誠は基本的に束に頭が一切上がらない。
昔から上がった試しは無かったが、彼女の狂気と執念によって造られる形で復活してからは、完全に尻にしかれていた。
「束姉さんもそんなツンケンした言い方をしないであげれば良いのに」
「甘いぜ箒ちゃん。
コイツの場合は甘やかしたら完璧に付け上がるからね。
ホント、なんでこうもコイツと一誠くんはこんなに違うのかわかりゃしないよ」
「え、えぇ? き、基本同じだろ? なぁ一誠?」
「まあ……街に行ってナンパして何度も玉砕する気にはなれないけど」
「そりゃそうだろ! お前モテモテだもん! リアスさんどころかたっちゃんや真耶ちんに好かれてる時点で人生の勝ち組だろ!? それに比べて俺は脳味噌が一度ぶっ壊れるは、死ぬまで結局童貞だったとかだぞ!? そりゃ束ちゃまのおかげてこうしてまた無駄話できる様にはなれたけどもさぁ……」
周囲からすればさっさとくっ付けば良いのにと思われてるのだが、生憎束の方も中々素直じゃないというか、変な方向に誠に対して拗らせてるので、半分怖がられてるのだった。
「いや、普通に考えて束さんと関係持った時点でナンパはやめるべきだろ」
「そのせいでアナタは学園の女子から不真面目に思われてるのですからね」
「うっ! べ、別世界の俺自身とは思えぬ真面目さ。
余計に敗北した気持ちだぜ……。な、なぁ束ちゃま……ちょっと慰めてよ?」
「は? それくらい自己完結で済ませてくれない? いちいち私を頼るなし」
「だ、だよね……うん……ごめん」
「…………………。あー! もうわかったよ! 膝枕してあげるから泣きそうな顔しないでよね!」
とはいえ、拗らせる原因だった死からの復活に成功したせいか、前と比べたら束自身もほんの少しは素直になりつつあった。
具体的にはメソメソしてる誠を文句を言いつつも膝枕してあげたりといった程度には。
「誠さんの場合はもう束さんしか居ないと思いますけどねー」
「そうだぜ、文字通りの命の恩人なんだしな?」
「別世界の姉さんとはいえ、アナタしか姉さんに付いていけないですので、安心させてください早いとこ」
「…………」
「だってさ? そろそろ本気だして子供の何人か作ってみる? 本当は嫌だけど、アナタがどうしてもと言うのなら孕んであげないこともないぜ?」
「いや、うん……」
つまり――今更かつてリアスを裏切ってしまった者達がどれだけ心変わりしようが………無駄なのだ。
終わり
補足
既に完成してるリアス眷属。
立ち入る隙も無いし、むしろ追加二人が余計に癖が強いのでどうにもならん。
その2
復活させられたので、名前を一誠自身に譲り、取り敢えず改名して束ちゃまのお尻に毎日敷かれる生活を送っとります。
本人は割りと幸せなんで、束ちゃまの無理難題も全力で叶えようとしてますけどね。
ちなみに、本人は別世界の一誠のモテモテっぷりに嘆いてるけど、ほぼ毎日束ちゃまに色々されてるので、イーブンかもしれない。
そして、少しでも彼に好意を持つ異性が出たら、束ちゃまがガチギレしてしまうので、出来ればこのままで良いと祈ってあげましょう。