ディオドラからのストーカーが永久的に無くなったという事で、少しは以前の明るさを取り戻しつつあるアーシアは、最近実はモテたりするイッセーへの想いを更に募らせていた。
「先輩、姉様から自己トレーニングの新メニューを貰いました」
「お、サンキュー小猫ちゃん」
命を救われたばかりか、ストーカーからも守ってくれた。
それだけにアーシアは余計にイッセーを好いているのだけど、少しだけ悶々とする事も多くなっていた。
それは、最近少しばかりイッセーとの距離が近くなっている様に見えてならない小猫の存在だった。
「仙人モードになるのか? てか俺はなって欲しいし、あの姿で修行を一緒にしたい!」
「そんな無駄にキリッとした顔で言われると嫌と返したくなるのですが……」
「何を言うか小猫ちゃんよ! 黒歌に教えられた技術を磨く為には数をこなさないといけないんだぜ? だったらなるべきだろ? 俺は真面目に言ってるんだぜ?」
「なったら高確率で鼻の下を伸ばす癖に……」
「………………」
小猫は実に可愛らしい女の子だ。
だからこそ、黒歌という姉と再び共に兵藤家にて暮らせる様になってから急激にイッセーとの距離を物理的に縮めてる事に対してとても焦りの気持ちが大きくなる。
今だって、二人専用の修行メニューを黒歌に組んで貰い、その事についての相談をし合ってるのだけど、物理的な距離がかなり近い。
具体的には一枚の紙に書かれた文字を二人で読んでるから身体がナチュラルに密着してる。
「おほん、何だか仲が良いようだが、少し近すぎやしないか?」
それは他の者も感じてるらしく、ゼノヴィア等がこうやって二人を離そうとしている。
(思った事が言えない私って……)
ハッキリとした事が言えぬ自分の勇気の無さにちょっとした自己嫌悪に陥るのもアーシアらしいといけばアーシアらしい。
「キミ達二人だけで秘密の修行とやらをしてるらしいが、少し水臭くないか?」
「うーん、そう言われてみればそうだな……。黒歌に頼んでみるか?」
「……………」
「あ、そうだよ! マコトにも頼んでみようぜ! アイツも強いし!」
「それは、どうだろうか。彼はどうも今一つわからん部分が多いというか……」
何かもっと劇的なものがあったら。
アーシアはマコトの話題となった途端に微妙な顔をするゼノヴィアを横目に思うのだった。
はぐれ悪魔だった訳でもなければ、魔王でもないし、もっと言ってしまえば元は普通の人間の筈だった。
それにも拘わらず、異様な戦闘力を持つマコトに対して、リアスは並々ならぬ関心を持っていた。
「むむ……最初からイッセーの話をちゃんと聞いておくべきだったと後悔しているわ」
逃した魚はかなり大きかった。
当初何の関心も持たなかったマコトの底知れぬ潜在能力に気づけなかった己を恥ながら、リアスはセラフォルーの将軍となったマコトに対する執着を強めていた。
「あの……マコトは部活に入る気は無いと言ってますが」
「解ってるわ。勧誘なんてしないから安心なさい」
「はぁ……」
ちょっと不自然にすら思うレベルにマコトの事を気にするリアスに、イッセーはちょっとだけ当初していた己の言動や行動を後悔していた。
「部長、少し彼にこだわり過ぎでは? 彼は歴としたセラフォルー様の将軍ですし……」
「ええ、でも気になるのよ。アナタ達も気にならないの? 彼のあの異様な強さとか」
「それは確かに思いますけど、密かにセラフォルー様直々に訓練された賜物だからとも思いますよ。
持ってる魔力がそのまんまセラフォルー様と同じですし」
「それが異様なのよ。
たった数ヵ月であれほどの力を身に付ける事が」
寧ろ何故違和感を感じないのかが不思議でならないリアスは、如何にマコトが異常なのかを訴えると、ゼノヴィアが少し同意するように頷く。
「確かにこの前の戦いの時も、完全に場馴れしてるかの様な動きだったし、相手を殺傷する事にも全くの躊躇いが見えない。
まるで歴戦の殺し屋みたいな」
「よせよ! マコトは殺し屋なんかじゃないぞ!」
「た、例え話だ! わ、悪かったからそんなに怒るな……」
殺し屋と表現するゼノヴィアにイッセーが怒る。
しかし確かにゼノヴィアの表現も間違いではないと、イッセー以外の者達は思った。
特に、相手を殺傷する事に対する一切の躊躇いがたいという部分が。
「で、でも無口な方ではありますけど、決して悪い人ではないと思います……」
「だよな!? 流石アーシアはわかってるぜ!」
「あ、あははは」
ブラコンのフィルターのせいで、あくまでもマコトは大切な弟だと言い張るイッセーが、アーシアの一言にこれでもかと喜んでいると、リアスが何かを決意したように口を開いた。
「暫く、ほんの少しだけ彼の事を見てみたいのだけど……どうかしら?」
その異様な強さを知る為に、そして望むべくは手元に……。
どんな理不尽な目に逢いそうになっても彼が居ればその運命を打ち破れるかもしれないという気持ちを隠しながらのリアスの一言にイッセーが案の定ムッとした顔をする。
「それってアイツを監視するという意味でですか? やめてください、そんな真似をしたら俺はアナタを幻滅してしまう」
「そうじゃないわ。
こう、レクリエーション的な意味で交流を深めつつ知っていくという意味よ。
ほら、彼はセラフォルー様の将軍だしイッセーの兄弟だから、良い関係を築きたいじゃない?」
「………本当でしょうね? もし嘘でしたら、いくら部長だろうと許せなく――」
「本当よ本当。
その証拠に前々から考えていた事があるのよ? ほら、イッセー的にも寧ろ歓迎できるはずだわ」
「…………」
ブラコンモードが発動して、名称とは裏腹に少し男前な雰囲気を醸し出すイッセーにリアスはとても人の良さそうな笑みを浮かべながら、紙切れ一枚を見せる。
すると、眉を寄せつつその紙切れを見たイッセーは途端にとてもだらしない顔をした……らしい。
(…………)
リアスの目付きが少し鋭くなったことに気付けずに。
その週末。
マコトは凄まじく風邪をひきたくなって前日に無茶な事をしまくったのだが、起きてみれば嫌味なレベルでの健康体だった。
「これもまた今までの罰という奴なのかな……」
根の部分で他人を信じる事が出来ず、愛情をくれた者達にすら根底の部分では否定してきた男は、確かに今やっと歩み寄れる様になれた。
だがここまで来るのにどれだけ酷い事をその者達にしてきたか……。
それを思うとマコトは今の状況を今までやってきた事への罰だと思ってしまう。
「ひゃほーい! 見ろよマコト! 貸しきりに加えて水着美少女だらけだぞ!」
「………………」
バシバシと背中を叩きつつ肩を組んでくる双子の兄というより、別世界の自分自身の声がとても大きく、音楽ホールの中で歌でも歌っているかの如く響き渡る。
実際は音楽ホールではなく、ただの市民温水プール場なのだが。
「皆、今日は貸しきりにしたから好きなだけ遊びましょう!」
「うおぉっす!」
「………………」
何故温水プール場等にマコトが居るのか。
それは今週の中頃に突然イッセーから、夏休みは色々あって水遊び的な事が出来なかったから、温水プールに行かないか? と誘われたからだった。
自分を誘うくらいなら友人を誘えば良いじゃないかと、当初は断ろうとしたマコトだが、余りにも押しが強すぎるのと、別に他の用事があった訳でもなかったので、少し付き合うくらいなら良いかという軽いノリで頷いてしまったのが間違いだった。
だって当日現場に到着してみれば、イッセーや同居人のアーシアのみならず、リアス達までもが普通に来ていたばかりか、実家パワーか何かでも使ったのか、貸しきり状態になっていたのだ。
「という訳でアナタも楽しんでくれたら嬉しいわ」
「は、はぁ……」
正直言うと、これ以上マコトはリアスとは関わりたくはなかった。
セラフォルー達とは違って、彼女は純粋なこの世界のリアス・グレモリーだし、持たぬ者だ。
既にイッセーや仲間達にも恵まれてる彼女に思う事はないし、余計な真似をするべきでもないと思うが故に、出来ることならソーナ達共々関わるのを避けていきたい。
「…………」
「こういうのを『皮肉』って言うのかな」
「多分ね……」
なのにどうだ? 実際は避けようとすればする程、それが仇になってるかの如く、リアスの関心を買い続けてしまっているではないか。
「軽い親睦会……とは言ってるけど、それだけじゃない声が彼女から聞こえるわ」
「そっか……そうだろうなぁ」
しかも親睦会だとリアスは人の良さそうな笑みを浮かべて言ったが、実際それだけではないことは既に見抜いてるし、その実に関しても正直複雑な気分にさせられるものだった。
「クロに付いてきて貰って正解だったな」
「うん、今のマコト君でも多分ストレスになりそうだし」
黒歌に相談しといて良かったと、プールサイドのベンチに、彼女を隣に腰掛けながらマコトは理解してくれる味方の存在の有り難みを今一度噛み締めた。
当然、それなりに空気を読んで上下着る水泳着に着替えはしたけど、とてもじゃないが泳いで遊ぶ気にはなれない。
無論、黒歌もまたその我儘ボディを主張しまくる水泳着を着てるけど、得意か苦手かと問われたら苦手寄りな水に浸かる気にはなれない。
「セラフォルー様には言わなくて良いの?」
「こんな事で一々魔王のアイツを呼び出してたらキリはがないしな……」
「それは確かに」
世の中は本当に儘ならない。
今更すぎる悟りを二人はするのだった。
「……。黒歌が傍に居るせいで微妙に話し掛け辛いわね」
そんな居たたまれない気持ちでベンチに座って泳ぎもしてない二人を、プールに入って眷属達と遊びなかまら様子を窺っていたリアスは、黒歌の存在にちょっと歯痒さを抱いていた。
ある程度彼女の同行は予想してたし、それに対して反対意識も無かったのだが、実際こうしてみてると、彼女の存在がガードの役割を果たしていて、容易に近付けない。
「考えてみれば、何で黒歌は彼にあんなにも心を許しているのかしら? 元ははぐれ悪魔で接点なんて無い筈だし、結局はセラフォルー様の眷属にもなっているし……」
だから今更になって冷静に黒歌についても考えるリアスは、あまり二人にとって突っ込んで欲しくない部分についてを考えている。
確かに黒歌としてはマコトとの接点なんて再会するまでゼロだし、もっといえば直接対面するまで存在すらも知らなかった。
まさかあの二人がかつての白音と一誠だったとまではさすがに気付いてないものの、よくよく考えれば不明瞭な点がリアスにしてみれば多すぎるのだ。
「そんなに気になるのでしたら、一緒に遊びましょうと誘えば宜しいのでは?」
「彼の性格を考えたら断られるかもしれないでしょう? もし一度でも断られたらこの先簡単に誘えなくなるわ」
あまりにもジーッと他の眷属の者達が楽しそうに遊んでる横で、ベンチに座ったまま動こうとしないマコトと黒歌を眺めてるリアスに、女王の朱乃が少し呆れ気味に進言する。
彼女もまた、リアスとまではいかないものの、マコトの持つ異様な力に対して疑問を抱いてる口だが、イッセーの弟かつ、これまで一切の害が無かったのを知ってるのでそこまで彼に対して思う事は無かった。
第一彼女の場合はマコトと一言たりともまだ口を聞いた事がないのだ。
「けど、確かにこのままならここまで漕ぎ着けた意味が無いし、少しアクションを起こしましょうか。行くわよ朱乃」
「え? わ、私もですか? いえ、構いませんが……」
そう言ってリアスは朱乃を連れてプールから上がると、何やら話し込んでる二人のもとへと近付く。
「楽しんでるかしら?」
遠目から見ても楽しんでるとは思えないが、これは所詮会話の切っ掛け作りの為であり、リアスは後ろで見ていた朱乃が微妙な顔をしてるのを知らずに、とても良い笑顔を浮かべながら二人に話し掛けた。
「「……………」」
そんなリアスに対して、マコトは明らかに胡散臭いものを見るような目をしていて、横に居る黒歌は右目を閉じて左目だけの状態でリアスをジッと見ている。
「招待した身としては、是非ともアナタ達にも楽しんで貰いたいのだけど、ひょっとしてプールは嫌いだったかしら?」
「……いえ、別に。
ただその……もう少し休もうかなと」
「……………」
仮にも水着姿の美少女二人……横の黒歌を含めたら三人に囲まれてる形だというのに、マコトは顔色ひとつ変えないばかりか、少しだけ嫌そうな表情だった。
この辺が、今プール内で仲間達とバレーしながらはしゃいでるイッセーとの違いだと、リアスの後ろに控えてる朱乃は思う。
「そう、じゃあひとつ聞くけど泳ぎは得意?」
「……多分普通ですが」
「ホント? それなら少し泳ぎ方を教えて貰えると嬉しかったりするわ。
実は私はそんなに得意ではないから……」
「……………。兄に教えて貰えば宜しいのではありませんか? 恐らく私より得意ですし」
「うーん、イッセーの場合はほら、あの子を慕う子達が妬いちゃうかもしれないし……」
「……? 貴女様は兄を好いていると思っていたのですが」
「勿論大好きよ? ただ、今日はアナタ達と親睦を深めたいと思ってるし、招待相手にこんな事を頼むのもおかしな話だけど、それもまた深められる要因になれそうでしょう?」
「………………………」
よくもまあペラペラと口が回るものね……と、リアスに対して思う朱乃は、ふと先程から一言も声を出さない黒歌を不審に思う。
(そういえば、ずっと片眼を閉じながらリアスを見てるけど……)
彼女ともあまり会話をしたことが無く、小猫の姉の元はぐれ悪魔という認識しかない朱乃は、黒歌のこの行為の意味を理解できずに首を傾げる。
(打算的な感情が視える。
でも……悪意とはまた違うから先輩も複雑だろうな)
実は眼で視てその者の感情をある程度感じ取れる黒歌は、先程から笑みを浮かべながらマコトに対して色んな誘い文句を放ってるリアスを視ていた。
その結果は、何かしらの打算はあれど、根本的な悪意は無いという、極めてマコトにとって強く出にくい結果を見抜いてしまって黒歌もまた複雑な気持ちになってしまう。
(しょうがない……)
きっとマコトは自分以上にこのリアスに対して複雑だと思ってるに違いない。ましてやかつての世界では文字通り子供の頃からずっと一緒だったのだから……。
そう思った黒歌は閉じていた右眼を開きながら、腹を括ってその口を開いた。
「あー、リアス・グレモリーさん? 妹がお世話になってる上に私達にまでこうやって気を回して貰える事はとても感謝してるのだけど、ちょーっと待って頂けないかしら?」
「……。何かしら?」
その場凌ぎにしかならないが、時間稼ぎにはなる筈だと思った黒歌が、少しだけ声が低くなるリアスに対して言った。
「あのね、マコト君が動かないのは実は理由があるのよ。あ、といっても私が理由なんだけどね?」
「理由?」
「そうそう。
実は私朝からこう、悶々としててね? とてもプールに入る余裕が零っていう事をマコトくんに相談したのよ。
そうしたらマコトくんが隙を見たら更衣室か何かまで抜け出してスッキリさせてくれるって言ってくれたのよね」
「………………………は?」
一瞬何を言われたのか解らずに朱乃共々ポカンとするリアス。
横に居たマコトもビックリした顔をしてるけど、黒歌は敢えてそのまま、少し頬を染めながらそんなマコトにもたれつつ甘えた様な声で言った。
「お腹が熱くて、マコトくんが欲しくてしょうがないんだにゃあ……♪
だからぁ……少しだけ更衣室に籠るから待っててくれない?」
「な……!」
「しょ、正気ですか……アナタ」
「正気ではないかなぁ? だって……うふふ♪ 発情期だもの」
ここで『そんな話は聞いてない』と声には出さず眼で訴える辺りは流石だが、リアスと朱乃にしてみればなんちゅー恥ずかしい話だとビックリする訳であり……。
「待て待て待てぃ!! 黒歌! それはダメだろ!? まるでエロ漫画みたいなシチュエーションにマコトを引きずり込むのは狡いぞ!!」
当然マコト関連にだけは耳がとてもよくなるイッセーが素晴らしきスピードで飛び魚の様にプールサイドへと飛ぶと、そんな事はお兄ちゃん許しません! とばかりに黒歌に詰め寄っていた。
「許さん許さん!」
「毎度思うけど、イッセーくんにどうしてそこまで反対されなくちゃならないのよ?」
「お兄ちゃんだからな! 脱・童貞は同じ日で同じ時間と決めてる!」
(いや、もうとっくに童貞じゃなくなってるし……)
「ちょっと引くわよそれは……」
「ええぃ! とにかくダメだ! そもそもマコトは―――
ある意味騒ぎにすることでリアスから遠ざかる事には成功したが、別の意味での厄介事が発動されてしまった感は否めない。
だがそれ以上に、ある意味イッセーのこの言動以上にドン引きしたのは……。
「が、がほっ! そ、そうだ! 兵藤一誠の言う通りだ!
黒歌、清くて強いお前がそんな野蛮な男ととだなど許せるか!!」
『……………………』
何故か、どういう訳か、どこから嗅ぎ付けてきたのか、全身包帯まみれで車椅子状態の白龍皇が、誰が見ても満身創痍な出で立ちで叫びながら現れ、黒歌に対して気色悪さしか感じない台詞を吐き散らかしてるのだ。
「ば、バカ野郎! 何で姿を見せるんだ!!」
「離せ美猴! 黒歌が、俺の黒歌が奴に汚されるんだぞ!!」
『……………』
突然の来訪者に全員が唖然とする。
黒歌とマコトですら、リアスに対して気を割きすぎて、彼とその友人の接近に気付けなかったのだ。
「あぁ、黒歌。そんな連中に肌を露出するなんて駄目だ。
今からでも遅くはないから俺と共に……」
「す、すまねぇ! 本当にすまねぇ! こ、コイツが突然お前の家に行くとか言い出して、留守だったのを親御さんに此処に居ると聞いて勝手に……」
「美猴……」
ディオドラを思い出させる台詞と共に車椅子を操作して黒歌に近づこうとするヴァーリを必死に抑えながら、友人の美猴は必死にマコトとイッセーに謝り倒した。
「こ、このまま帰るから許してくれ……」
「いや、うん……お前ホント大変だな」
「何を言ってる! 今日こそ黒歌を連れて帰るんだ!」
「黙れ怪我人! そんなザマじゃ無理だって何回言わす気だ!?」
「完全では無いが問題はない! さぁ黒歌! 今日こそ―――あごがっ!?」
しかしそんな苦労虚しく、そろそろ本気で鬱陶しく感じた黒歌によるフルスイングのアッパーカットがヴァーリの顎を破壊し、彼の身体は車椅子ごと宙を舞ながらプールの中へと沈んだ。
「ヴァーリィィィ!?!?」
急いで助けんとプールに飛び込む美猴。
これにより、今度はまともに喋る事すらできなくなったのだが、当の本人である黒歌は生ゴミを視るような目でしながら一言。
「殺されないだけありがたいと思うんだな、このボケが」
白音時代において、時折見せたチンピラ口調で半ケツ晒して浮いてるヴァーリに吐き捨てるのだった。
「危ない危ない。またマコト君がプッツンしちゃうかもしれなかったから、今度は私が直接ぶちのめしたよ。
ま、アレで今度は喋れなくなったし、暫くは実に平和になれそうだわ」
「お、おー……美猴がちょっと可哀想に思えてきた」
「普通なら縁を切ってもおかしくないけど、あの人はいい人過ぎますよ」
何だか微妙なオチを迎えてしまい、作戦もほぼ失敗に終わってしまったリアス。
「えっへへ~♪ 我慢する代わりにパフパフしてあげるわマコトくん」
「もぷ……」
「どわぁ!? く、クソ……凄まじきメロンなのは認めるし、マコトが若干羨ましいが、今は駄目だ!」
「嫌よ、イッセーくんだって何回か経験あるんだからこれくらいはねぇ? あ、それよりも今ならマコトくんにちゅーちゅーされたら母乳が出せる気が……」
「…………………チッ」
道のりは遠そうだった。
終わり
補足
避けてるのに逆に関心を強められる。
皮肉な事に……。
その2
クロさんが頑張った結果とストーカーによるある意味なファインプレーにより何とか今回は避けられたけど……