色々なIF集   作:超人類DX

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お義父さんが息子の性癖を知ってしまった時のショックは如何程なのか。


頑張れ男の子達

 ディオドラ・アスタロトとのゲームの日取りが決まってから二日。

 この日リアス達は冥界のテレビ局から出演のオファーが掛かかって不在だった。

 

 後々まで語られる『乳龍帝伝説』の始まりとはまだ誰もこの時は知らない。

 

 ともかくリアス達が留守になるという事で久々に手持無沙汰となったマコトと黒歌は、家でのんびり――

 

 

「取材が終わり次第、リアス達にも話をするつもりだが、お前達にも一応教えておこうと思ってな」

 

 

 と、いう事もなく、てっきりリアス達に同行していたとばかり思っていたアザゼルが真面目腐った顔と共に現れ、のんびり過ごす事はほぼ無くなった。

 

 

「…………」

 

「何を教えておくのかな?」

 

 

 アザゼルの事はどちらかと言えば嫌いなタイプだったマコトは、顔を見るなり露骨に嫌そうな顔をしていた。

 それはもう、ピーマン嫌いな5歳児がするソレとまったく変わらないものだった。

 

 なので仕方なく黒歌が仲介に入ると、露骨に嫌そうな顔をされて、ちょっと出鼻を挫かれたアザゼルはオホンと咳払いをしながら二人に一枚の紙を手渡した。

 

 

「今度リアス達の対戦相手となるディオドラ・アスタロトの事だ。

聞いてるとは思うが、ディオドラ・アスタロトは四大魔王の一人であるアジュカの身内の一人だ」

 

「へー?」

 

「………………」

 

 

 ディオドラ・アスタロトについての情報を出されても、のっけから彼に関心が無かった二人の反応は冷たいものだった。

 そしてアジュカ・ベルゼブブに対しても昔からどうでも良かった。

 

 

「アジュカ自身知ってるかどうかは知らんが、どうやらこのディオドラには色々と黒い疑惑が多くてな。

その疑惑にアーシアに執着する理由があると思ってる」

 

「ふーん」

 

「………」

 

 

 疑惑が黒かろうが白かろうが、どっちにしても大して興味が無い二人の無関心過ぎる返事にアザゼルは果てしなく微妙な気持ちになる。

 

 

(コイツ等……。

仮にも自分の肉親の対戦相手がもしかしたら危険かもしれないっていうのに、何故こんな態度なんだ……)

 

 

 余りにも心配の素振りが無さすぎる二人に、アザゼルは微妙に納得できない気分だった。

 

 

(特に兵藤誠は異常過ぎる。

いくらセラフォルーの眷属とはいえ、転生して半年にも満たない様なひよっこがサイラオーグを叩きのめすか? それにヴァーリですらコイツに殺されかけたらしいし……)

 

 

 贔屓目に見ずともサイラオーグやヴァーリは間違いなく強い。

 それを新人も新人な転生悪魔が再起不能手前まで叩きのめせるのは異常過ぎる。

 神器を持たぬ者が――いや、何か特別な力を秘めているのか? 気付けばディオドラの事は横にマコトの異常さについての考察に切り替わってしまったアザゼルの視線に気付いたのか、マコトは不愉快そうな顔をしながら横に居る黒歌に耳打ちした。

 

 

「ねぇ、マコト君が『気色悪いから見るな』だって」

 

「……………」

 

 

 何故か最初から嫌われてたアザゼルは黒歌経由で毒を吐かれてしまい、何とも言えない顔をする。

 とはいえ、そんな事で一々凹める程アザゼルは繊細ではなかった。

 

 

「悪いな、眷属を持ちたがらなかったあのセラフォルーが自ら認める眷属であるお前達が気になって仕方ないんだよ。

聞けばお前はヴァーリを半殺しにしたらしいし」

 

「そういえばアナタは彼の育ての親だったっけ?」

 

「まぁな、贔屓目を抜きにしても奴は天才といえる白龍皇だった。

そんなアイツを全力では無かったにせよ叩きのめしたのだから気にならない訳がない。

……てか、そもそも何でアイツは家に来たんだ?」

 

 

 マコトの秘めた異様なものが知りたいアザゼルがヴァーリの話をすると同時に、思い出した様に何故彼が兵藤家に来たのかを問う。

 

 だがアザゼルは、聞かない方がある意味良かったのかもしれないと知る事になってしまう。

 

 

「それは――」

 

 

 今更の様に、そういえば何故ヴァーリが来たのかを知らなかったアザゼルの質問に、黒歌が微妙に嫌そうな表情をしながら説明をしようとしたその時だった。

 

 

「アンタの義理の息子とやらが一方的に黒歌の事を仲間だと思い込んで連れ戻しに来たんだとさ」

 

「黒歌を……?」

 

 

 突然割って入るかの様にマコトが素の口調で話す。

 突然の事で驚いたものの、アザゼルはなるほどと元はぐれ悪魔でほんの少し禍の団に居たらしい黒歌を見る。

 

 

「ヴァーリの仲間だったのか黒歌?」

 

 

 あのヴァーリにしては、わざわざ出て行った者を追いかけるのは珍しいと思いつつ聞いてみる。

 

 

「いいや、仲間だと思った事なんてこれっぽっちも無かったわよ私は」

 

 

 だが黒歌から返ってきた言葉は、マコトと同じように心底ヴァーリという存在自体に興味が無いと云わんばかりの態度と共に放たれた。

 

 

「そ、そうか……」

 

 

 戦闘バカのアイツが珍しく他の理由で動いたと思ったらこんなオチか……と、今頃生きてはいても重症だろう義理の息子に御愁傷様と心の中で呟いたアザゼルだったが、マコトが続く様に放った言葉に唖然となってしまう。

 

 

「それだけなら腕の一本でもへし折るだけで勘弁してやったが、あのガキ、よりにもよって黒歌をそういう目で見てやがった。

……チッ、いっそブチ殺してやれば良かった」

 

「は?」

 

 

 そういう目とは何の事だ?

 嫌悪感丸出しな顔をしながら物騒な事を呟いていたマコトに思わず目を丸くしていたアザゼルに、黒歌が微妙な顔をしながら補足した。

 

 

「自意識過剰で言うつもりは無いけど、お宅の義理の息子さんが私に迫ってきたってだけの事よ」

 

「はぁ!?」

 

 

 理由はわからないけど……と、めんどくさそうに締めた黒歌に今度こそアザゼルは困惑した。

 

 

「ヴァーリが? は? あの戦う事しか頭に無くて、若干EDを心配したあのヴァーリがお前に迫った!? 何かの間違いじゃないのか!?」

 

「でなければわざわざ家にまで来る理由があのガキには無いだろ? 兄貴の成長を待ってると言ってたのに」

 

「……………」

 

 

 う、嘘だろ……。アザゼルは義理の息子であるヴァーリが色に目覚めていた事をまだ信じられない様子だったが、確かにマコトの言うとおり、勝手に仲間だと思ってる相手である黒歌を連れ戻しに来る以外で来る理由は無い。

 宿敵たる相手の成長をわざわざ待ってから戦うという筋金入りの戦闘狂さをアザゼルこそが一番知っているのだから。

 

 

「あ、アイツはイッセーとは真逆に一切女に興味を示さない戦闘狂だったんだ。

それが……禍の団に行ってからそんな事になってたなんて……」

 

 

 女の趣味は悪くない様だが……と、本来の時間軸とは違って清楚な格好をしている黒歌を見ながら思うアザゼル。

 とはいえ、話を聞くに若干ストーカーの素質が感じられてしまうのがまた何ともいえない。

 

 

「そもそも彼とは会話をした覚えが無かったんだよね。

孫悟空の子孫の人が一々に間に入ってきたから勝手に仲間扱いしたんだと思うんだけど」

 

「そ、そうか……。

だがその……敵の組織に身を置いてる相手とはいえそこまで叩きのめさなくても良かったんじゃないのか?」

 

「じゃあアンタに聞くが、自分が大切に想う人が横で知らねぇ男に『お前を理解できるのは俺だけだ』だとか『お前が必要だ』だとかほざいてたら思わず殺したくならねぇのか?」

 

「…………………スマン、俺が間違ってた」

 

 

 おい息子よ、お前はなんつー気持ち悪い口説き方をしてやがる。

 と、今更ながら女性の扱い方の教育をしなかった自分に後悔し、頭を抱える。

 というか、ディオドラ・アスタロトがアーシアを求愛する時のそれに似てるのが尚更嫌だった。

 

 

「そもそも彼が私を理解できるなんて不可能だと思うわ」

 

「それは、兵藤誠なら理解できるのか?」

 

「ええ。マコト君は私の全てを理解しているし、私もマコト君を理解できるわ」

 

「…………そ、そうか」

 

 

 おい息子よ。

 黒歌は間違いなく無理だから諦めてくれ……と、切実にディオドラみたいにならないで欲しいと願うアザゼルだが――

 

 

「離せ! お、俺は黒歌を迎えに行く! 黒歌を理解できると嘯く奴にはもう負けん!!」

 

「その身体じゃ無理だっつーの!! そもそも組織を抜けて魔王の眷属になった時点で住む世界も違うんだよ!」

 

「違う! きっと黒歌の妹を人質に眷属なることを強要されてるだけだ!! アイツを理解できる俺が助けずに誰が助ける!!」

 

(あ、あぁもう! 一匹狼ならぬ一匹猫だった黒歌の事をヴァーリに教えちまったあの日の俺を殴って止めたいぜ!)

 

 

 ドブ川を漂流していた所を仲間に助けられ、完治もしてないのに血塗れミイラみたいな出で立ちで再び黒歌の所へ行くと妄言混じりに暴れ、それを仲間達がため息混じりで止めようとしてるレベルにまで達してる時点で、多分少しだけ手遅れなのかもしれない。

 

 

「そうだ、妹だ。

妹も共に連れ出せば戻ってくる筈だ。

彼女は黒歌の妹だし、きっと黒歌の様になれる筈……!」

 

「お、お前、それは流石に俺でも引くぜ……」

 

 

 何度も言うが、まだ少しだけ……。

 

 

続く?

 

 

ヴェネラナ・グレモリー

 

 

 先代バアルの第二夫人の子として生まれ、滅びの魔力は持たぬが自身の子達がそれを受け継いだという意味ではヴェネラナは確かに成功者なのかもしれない。

 しかし……そんなヴェネラナでも、いや、あのヴェネラナ・グレモリーですら嫌いだと思ってしまう存在が居た。

 

 

「シャルロット、調子はどうだい?」

 

「普通ですが……」

 

「そうか、それは何よりだ。

それにしても、最近キミはよく外に出掛けるみたいだが……」

 

「友人と会っているだけです……。

それと旦那様……近いのですが」

 

「………………………………」

 

 

 シャルロット・バアル。

 先々代バアルの不倫の結果生まれたバアルの家系から消された女。

 そして、夫であるジオティクスの寵愛を受けるこの女がヴェネラナはどうしても好きになれなかった。

 

 

「掃除がありますので……」

 

「待ってくれシャルロット! それならその後ゆっくり話でも……」

 

「奥さまに構う方が先ではございませんか? では」

 

 

 不倫の結果生まれてしまった、生まれ損ない。

 それがバアル本家から向けられるシャルロットの扱い。

 けれどシャルロットは名を名乗ることは許されず、家系から消されてはいるもののバアルから捨てられてはいない。

 何故か……?

 

 

「はぁ……」

 

「シャルロット」

 

「! お、奥様……」

 

 

 彼女は正統な家系として生まれては無いが、宿すその血はまさにバアルそのものだったからだ。

 それはつまり……滅びの魔力を。

 

 

「ボサッとしていないでさっさと仕事に戻りなさい」

 

「は、はい……!」

 

「それと、夫に何を言われたのかは知りませんが、変な気は起こさないことです」

 

「も、勿論、私にそんなつもりは毛頭ございませんから」

 

 

 生まれてこの方、シャルロットは罵倒され続けた。

 褒められた事なんて一度たりとも無い。

 だからなのか、常に人の顔色ばかりを伺う様になっていた。

 特にヴェネラナに対して……それが鼻についてしまう。

 

 

「で、では失礼します奥様……」

 

「……………」

 

 

 最近、リアスの眷属の兵士たる赤龍帝の弟――セラフォルーの将軍がバアル次期当主候補たるサイラオーグを一方的に叩きのめしたという騒ぎがあった。

 その為、サイラオーグとその母であり昏睡状態のミスラへの風当たりが強まっている。

 

 やはり消滅の力を持たぬ者はこの程度だったのか……と。

 

 それにより、シャルロットは知らないが、初代当主であるゼクラム・バアルがバアルの正統な力を持つシャルロットに目を付け始めていた。

 

 もし、もしそうなったらサイラオーグとミスラがどうなってしまうのか。

 何の努力も無しに、しかもジオティクスの気まで惹いて庇護下に置かれていたシャルロットが、肩身の狭い思いをしながらも努力で這い上がってきたサイラオーグやミスラの立場を奪うのか。

 

 それがヴェネラナには納得できなかったのだ。

 

 

「はぁ……いっそのこと」

 

 

 だからついついシャルロットに対して黒い念を抱いてしまう。

 ………………そのサイラオーグが現在シャルロットをストーカーしてるとは知らずに。

 いや、知ったらきっと余計にヴェネラナはシャルロットを嫌いになるだろう。

 

 彼女が別世界の自分自身だとは知らずに……。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 ディオドラ・アスタロトの事はどうでも良い。

 今マコトが目指すはシャルロット――つまりかつてのヴェネラナの完全な自由だった。

 しかし思っていた以上にバアル本家――大王派達はシャルロットを手離そうとはしない。というかジオティクスも。

 

 

「おい脳筋」

 

「お、お前は……! ぐっ……!」

 

 

 だからマコトは強行策に出る。

 その為にはバアルの協力者が必要だった。

 

 

「お前の母親を何とかする代わりに協力しろ」

 

「!? な、なんだと? それに協力とは……」

 

「…………。シャルロット・バアルを自由にする」

 

「!!!」

 

 

 だから手っ取り早く扱いやすそうな脳筋――ではなく、ミイラ状態のサイラオーグを復帰させ、協力させる事にした。

 対価は彼の母の復活……。

 

 

「クロ」

 

「了解です先輩」

 

 

 その対価を払う形で、彼の母を復活させたマコトは動く。

 

 

「シャルが自由になる為にバアルの名が邪魔をするっていうのなら……そうだな、この世から消えて無くなるしか――」

 

「シャル!? ちょっと待て! 何故キミがあの人の事をそ、そんな親しげな愛称で――」

 

「黙ってろこのクサレストーカー。

聞こえてるだろ初代バアルとやらよ? なぁ、今此処でシャルを完全にバアルから除名すると宣言しろ。

これは頼みでも無ければ願いでもない――命令だ」

 

 

 全ては愛してくれた者の為に。

 その為にマコトは進化を解き放つ。

 

 

「! そ、その力は消滅の……!? 何故転生悪魔の貴様が……!」

 

「知った所で意味は無いだろうが老いぼれ。

所詮貴様等がすがっていた力なぞ誰にでも再現できたってだけの話だろうしな……」

 

 

 かつてサーゼクスとリアスと触れ合う事で進化し、会得した滅びの魔力を。

 

 

「おいストーカー野郎」

 

「俺はサイラオーグだし、決してストーカーのつもりは――ぬぐっ!?」

 

 

 今にして思えばこの力は宝物だった。

 会えなくなった皆との繋がりの一つだった。

 けれど前に進まければならない。

 今を共に生きる者達をちゃんと見て、共に歩く為にマコトは――いや、日之影一誠は……。

 

 

「お、俺に魔力が……しかもこの力は消滅の……!?」

 

「!? な、何をした、魔力も力も持たないサイラオーグが何故突然!!」

 

「さぁ? けどこれでアンタの望む正統後継者が完成したのだけは間違いないな」

 

 

 その力を気にくわないストーカー野郎に託した。

 

 

「おいストーカー野郎」

 

「えっと、口を挟むようで申し訳ないのだけど、息子をストーカー呼ばわりするのは一体……?」

 

「あ? コイツはアンタの――あー、大叔母? のシャルロットをストーカーしててな」

 

「……………はい?」

 

「ち、違う! ストーカーではなく影から見守っているだけだ! 母に変な事を吹き込むな!」

 

「サイラオーグ、ちょっと正座なさい」

 

「は……はい……」

 

 

 ………嘘です。




補足
アザゼルさんに胃腸薬を与えなければ、ストレス性胃腸炎が大変な事になるでしょうってか、普通にストーカー予備軍化してたのにショックだった。


しかし、親の心子しらず。
初めて意識した異性に対する執着心は最早うちは誰かさん並だった。





最後は嘘だからホント気にすんな。

前に進む為に、リアスとサーゼクスとのの思い出の証だった滅びの力をサーゼクスに文字通り魔力ごと渡し、共闘する展開とか無いし。

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