輪廻を超越した白い猫は黒い猫となり、今懐かしき愛し人達と再会する。
「セラとババァは勿論覚えてるだろう? 彼女はかつてリアスの戦車だった塔城小猫がその姉に生まれ変わった姿だ」
「お久し振りですセラフォルー様、ヴェネラナ様」
少し席を外したマコトが戻ってきたかと思ったら、女を連れていたという事で当初驚いたセラフォルーとヴェネラナだが、彼女がかつてリアスの眷属である小猫――つまり白音である事を彼女の中にある気質と共に知ることで二重の意味で驚いた。
素直になりすぎて天然タラシと化したマコトが見知らぬ女をナンパしたのではなかろうか――という疑いが持たれない辺りはある意味流石なのかもしれない。
「シャルロット様……とお呼びすべきでしょうか?」
「呼び捨てで構いませんよ。
今の私は地位も何も無いただの悪魔ですから……」
「そっか、お姉さんとして生まれ変わっていたんだね。
いーちゃんに近いね」
「ええ、先輩はどうやらこの世界のイッセーさんの弟として生まれ変わっていたようで、最初は先輩から全てを一度奪った奴と同じ存在かと疑ってしまいました」
「………今まさにそうなのかもしれないがな」
お互いだけが知る合言葉の様に互いの気質を感じ取る事で本物だと見抜ける。
それが人外サーゼクスを追いかける事で達した領域に立つマコトを追いかけた者達による一種のコミュニケーションであり、姿が変わろうともそれは変わらなかった。
「はぐれ悪魔の黒歌か……。
はぐれ悪魔になった理由についてはちゃんとわかったから、後は私に任せて? 必ずその認定を取り消すから」
「ありがとうございます。
これでやっと生きてる実感が沸いてきました」
「良かったな塔城さん」
「先輩、今の私は塔城小猫ではありませんよ?」
「………そうだったな、クロ」
つまる所、彼等にとって同じ世界を生きた者は損得関係なく受け入れる存在であり、セラフォルーもシャルロットもマコトも黒歌として生きる白音を迎え入れたのだ。
後は……。
「この眠ってる二人はどうする?」
「すー……すー……」
「うぇへへへ、おっぱいがいっぱいじゃあ……」
聞かれては色々とマズイので黒歌が瞳術で眠らせた小猫とイッセーをどうするかであった。
眠らせた後放置するのは流石に良くないので二人を抱えて来た訳だが、瞳術の催眠が凄まじく効いているのか、特にイッセーはとても幸せそうな夢を見ながら眠っている様だった。
「いーちゃんと同じ顔でこんなスケベそうな寝言言うのも変な感じがするね……」
「ええ、まあ、新鮮味はありますけど……」
「あら、そうでも無いんじゃありませんか? 昔一誠も割りと胸を押し付けて抱くと結構暴れるのを止めてたし」
「それはヴェネラナ様だから出来た事ですよ。
まあ、今の私はあのムカつく鳥女よりも遥かに勝ってますがね、胸も何も!」
「あー……そういえばこの前もいーちゃんは結構おっぱいを……」
「その話は良いだろ! ……で、どうするんだよこの二人を? ていうか今気付いたが、このやり取りってイッセーの中に宿るドラゴンに見られてやしないだろうな? だとしたら割りと面倒な事になるんだが」
「それには心配及びませんよ先輩。
二人に幻術を掛けた際、彼の中の神器の意思にも掛けてますので、今頃全く違うものを見てるのではありませんか?」
フンスと胸を張ってドヤる黒歌に、セラフォルーとシャルロットは先程マコトから聞いていた彼女の別次元の進化に感嘆していた。
「それが別次元の仙術の力なの?」
「ええ、私に開花の方法を教えたなんとかハゴロモさん曰く、六道仙術だとかなんとか」
「逞しくなりましたね……」
下手をしたら全開状態のマコトよりもマルチな力を駆使できる黒歌の方が厄介なのではと思う程に進化をしていると思うセラフォルーは、心の中で『私ももっと強くならないと』と思う。
「ん……」
「んが?」
結局二人をどうするのかと決めかねている内に二人は起きてしまう。
「ここは……?」
「あ、あれ? 部長と副部長のおっぱいは……?」
「「「「…………」」」」
ぼーっとしながら身体を起こす二人を前に、四人は無言で顔を見合わせる。
「あ、あれ姉様……? それに弟さんも」
「セラフォルーさんも……あれ? 何で部長の実家のメイドさんまで……?」
「……………」
セラフォルーはともかくとして、シャルロットと会っていた事をこの二人の口から洩らされたら厄介とは云わぬものの面倒な事になりそうだ――――――と、いうマコトの心の声を瞬間的に読み取った黒歌が咄嗟に瞳術を発動させようとする。
「クロ」
「!」
しかしそれを止めたのな他ならぬマコトだった。
シレッと愛称で呼ぶマコトにちょっとドキッとしながらも両目を通常の状態に戻した黒歌は、セラフォルーとシャルロットを前にして困惑する二人に話しかけた。
「起きた様だね二人とも、いきなり倒れたからビックリしちゃったわ」
「倒れた?」
「私と先輩がですか?」
「ええそうよ。
多分疲れていたのね、それでなんだけど二人に話があるの」
適当に言って無理矢理納得させる黒歌がセラフォルー、マコト、シャルロットの三人へと視線を移して二人の視線を誘導させる。
「貴方達が倒れた後、そのままには出来ないと思って安全な場所に運ぼうとしたのだけど、見ての通り魔王の一人に見付かってしまったようなのよ。まぁ、見て分かる通りこの人は私を捕らえるつもりは無いらしいけど」
「それはわかりましたけど、どうして部長のご実家のメイドさんが?」
「確かマコトと仲良くなった……えっと、シャルロットさんでしたっけ?」
「それは――」
上手いことセラフォルーの事をごまかした黒歌がシャルロットについて説明しようとすると、割って入る様にマコトが口を開く。
「メル友になったんだよこの人と」
「え? め、メル友?」
妙に言葉のチョイスが古い言い回し――ではなくて、携帯は持ってても連絡先が自分と両親しか登録されてないマコトが会ってまだ数日程度の女性悪魔とメル友になったという事実にイッセーは少なからずショックを受けた。
「で、ちょうどグレモリー先輩の所でパーティーがあるって聞いたもんだからこうしてセラと会って掃除談義をしてた」
「「………」」
「「「………」」」
どう聞いても無理がありそうな理由を逆に堂々と言い放つマコト。
ある意味嘘ではないといえばそうなのだけど、怪しい密会にしか見えないので嘘っぽい。
「こ、こんな夜にか?」
「こんな夜にだ」
「こんな場所で……ですか?」
「こんな場所で、です」
しかしあまりにも無表情かつ堂々と言うものだから本当に思えてきた二人は取り敢えず納得する事にした。
(せ、セラフォルーさんといい、このメイドさんといい、なんでマコトと仲良くなれるんだよ……)
数日前に知り合った程度のシャルロットがどうして誘いの言葉を貰えるのか……? イッセー的には寧ろ軽い嫉妬というものがフツフツと沸いてしまう。
女性にたいして二度目になる嫉妬を覚えてしまうイッセーだった。
「まあ、とにかくそこの黒歌ちゃんの事は大体知ってる訳だけど、私は捕まえたりとかしようとも思ってないし、情状酌量の余地もある」
「え……!? では姉様のはぐれ認定は……!」
「私が必ず取り下げるし、その後の事もちゃんと考える。
イッセー君のお家に住めばアナタとも気軽に会えるし、住まわせてあげられないかな?」
「!! そ、そりゃあ勿論! やったな小猫ちゃん! この分ならお姉さんと離れ離れにならなくて済みそうだぞ!」
これまた上手いことシャルロットの話題を逸らす事に成功した様で、姉がはぐれ悪魔から解放されるという事に安堵する小猫と共に自分の事の様に喜ぶイッセー。
こうして上手い具合にマコトの傍に居ても違和感の無い流れを作り出す事に成功するのだった。
まあ、その説明を全く何も知らないリアス達に説明する方が色々と大変なのだが。
あれよあれよの内にセラフォルーが精力的に活動した事により黒歌のはぐれ悪魔認定が消え去る事になったに加え、正式にセラフォルー・レヴィアタンの第二の眷属――僧侶となった事で誰も手出し不可能という状況までになった。
それはリアスとソーナのレーティング・ゲームが終わった直後にセラフォルーが直々に宣言した効果が大きかった。
「以上の理由により、はぐれ悪魔とされていた黒歌ちゃんのはぐれ認定を取り消す事をここに宣言するよ。
まさか反対だなんて言う意地悪な人は居ないよね? 彼女がはぐれになったのは元主の悪魔が悪いんだからさ?」
『………』
笑ってるが有無を言わさぬ迫力を見せたセラフォルーに逆らえる勇気のある悪魔は居なかった。
それに調査によればはぐれの理由があまりにも元主に非がありすぎたというものも公になっていたので、異を唱える者は皆無だった。
こうして取り敢えず権力だけは持っておいたセラフォルーの裏技により黒歌のはぐれ認定はあまりにもあっさり解除され、晴れて自由となった。
「一応魔王のままで良かったよ。これで黒歌ちゃんは正式に自由だよ☆」
「ご迷惑をかけました……」
「それは言わない約束でしょう? 黒歌ちゃんだっていーちゃんと会えた今、離れるだなんて出来ないでしょうしね?」
「それはまぁ……」
シャルロットよりも先んじて堂々とマコトの傍に居れる権利を得た黒歌は内心テンションが上がりまくっていた。
そもそも存在すらしてないと諦めていただけに余計だった。
「そういえばこの世界の鳥女は普通の悪魔でしたね」
「そう都合よく知ってる存在とは出くわせないって事だよ。
そもそもこうして四人集まれてる自体がこれまでの事を考えたら奇跡だぜ」
黒歌が白音時代からとにかく気にくわなかった鳥女ことレイヴェル・フェニックスは調査の結果普通の悪魔の少女で、今なら体型の意味でも勝てると思ってただけに黒歌的には少し残念だったが、それでも有り余る幸福を前にすれば些細な出来事でしかない。
「でもどうやらこの世界の鳥女はイッセーさんに惚れてる様ですね」
「みたいだね、いーちゃんはどう思う?」
「どうって言われてもな。別に良いんじゃないのか? ただ、キミとレイヴェル・フェニックスがそうだった様に、どうやらこの世界のキミとレイヴェル・フェニックスも馬は合わん様だがな」
「仲良しだったら複雑にも程がありますよ」
リアスとソーナのレーティング・ゲーム終了後に目撃した、レイヴェル・フェニックスのイッセーに対する態度とそれを見て明らかに気にくわなそうな顔をしていた小猫を見て、世界が違えど犬猿の仲だったのを知り、懐かしいやら複雑やらの気持ちだった。
もっとも、マコト達が生きた世界のレイヴェル・フェニックスの強さは半端無い領域で白音時代の黒歌は一度も勝てなかったレベルだが。
「後はババァを上手く自由に出来れば言うこと無しなんだがよ、思ってた以上にこの世界のジオティクスのおっさんがババァに執着してるせいで難しい。
今日も連れてこれなかったしよ」
「私といーちゃんで食事に誘ったらおじ様に『シャルロットは仕事を命じてるから申し訳ないが出直してくれ』って門前払いされちゃったもんね……」
「聞いていた通りに昼メロみたいな空気でしたね。
この世界のヴェネラナ様が物凄く怖い顔をされてましたし……」
後はシャルロットさえ自由にさせてあげられたらパーフェクトなのだが、これが中々難しく、思っていた以上にこの世界のジオティクスがシャルロットに拘るせいで難航してしまっていた。
しかもそれに加えて……。
「セラフォルー様、マコト君、黒歌、偶然ですわね?」
「「「………」」」
何が理由なのか分からないが、何故かそれまで関わりがほぼ無いと思っていたこの世界のリアスから目を付けられてしまっており、今もこうして冥界のレストランで駄弁って居た三人に対してさも偶然を装い、眷属達と共に良いとすら言ってもないのに相席までしてくるのだ。
「外でセラフォルー様達がここで食事をしていると聞いたので少しご挨拶にと思いまして……」
「あー……うん、そんな畏まらなくても良いよリアスちゃん?」
「……………」
「昨日も偶然会った気がするんだけど……」
微笑むリアスに対してセラフォルーが対応する訳だが、その後ろに立つ眷属達が若干げんなりした顔をしてる辺り、偶然どころがマジで探し回ってたのだろうと伺える。
「よ、よぉマコトに黒歌…………………なんかスマン」
「その顔からして探し回るのに付き合わされてたって所か?」
「ええ、最近の部長はちょっと変というか、あれ程イッセー先輩が言ってもマコト先輩に興味を示してなかったのに、急にこんな事に……。姉様がセラフォルー様の眷属になった時も小さい声で『イッセーと小猫の身内で更にチャンスが……』って一人で言ってたし……」
「………………。なるほどね」
仙術が進化した影響か、感知能力が跳ね上がってる黒歌はこの世界のリアスが、どんな意図をもって近づいてくるのかを察してしまい、かなり複雑な気持ちになっていた。
セラフォルーに対して何やら話続けるリアスを横目に、少しだけイッセーも意図を知ってしまったのだろう、マコトに対して申し訳なさそうに謝る。
「すまねぇマコト……。
お前も悪魔になれたし、オカルト研究部に入れると思って部長に色々説得したせいかもしれない……」
「お前まだそんな事をあの人に言ってたのか?」
「だ、だってよ。お前と一緒にチラシ配りとかしたかったから……」
「……………」
等と上目づかいで言われても、鏡を見てる気になって気持ち悪いとしか思えないマコトは何とも言えない顔だ。
「そもそも部活に入る気なんて無いんだぞ俺は」
「そ、そうだよな。お前の気持ちとか全く考えてなく、ただ俺がそうしたいからって勝手な事をしちまったんだよな……。
ホントにごめん」
「別に謝らなくても良いけどよ……」
「すいません、昨日のレーティングゲームで匙先輩にリタイアさせられた事が余程ショックみたいで……」
「そういえば負けてたな彼に……」
「完全に油断してた。
そんな実力でもないくせに匙を嘗めてた……」
「反省してるなら良いんじゃないの? 反省して次に生かす事が大切だし」
「ああ、次は負けねぇ」
先日のレーティングゲームの際による匙からの敗北が、ある意味成長させてる様だ。
ブラコンなのは変わり無いが。
ちなみに他の眷属達は小猫を除いてマコトと黒歌を遠巻きに見てるだけで会話に加わろうとはしてない。
どうやらどちらも其々イッセーと小猫の肉親とはいえ、潜在的な違和感的な恐怖があるみたいだ。
「取り敢えず落ち着いたら白音には仙術を教えるけど……キミはどうするの? 一応ヴァーリ・ルシファーの事は知ってるけど、今のキミではとても太刀打ちできないよ?」
「ああ、それは解ってる。夏休みの残りを使って出来るだけ鍛えてみるつもりだよ。
じゃないととてもじゃないけどハーレム王にはなれないしな!」
「ハーレム王って……」
マコトの可能性の存在がハーレム王って……。
丸くなったとはいえ、横で知らん顔をしてるマコトの性格とはまるで違いすぎるイッセーの正直にも取れるストレートな欲望に苦笑いが出てしまう黒歌。
(あ、でも先輩もある意味ハーレム王でしたね……今もかな?)
シャルロットとかつての世界のグレイフィアとアレクシアの教育の賜物か、行儀よくお茶を飲むマコトはある意味今のイッセーの夢を体現してたなと思う黒歌。
もっとも、当時の本人は本気で迷惑がってたし、確か何かの時に『自分は誰とも永久に関係なんか持つわけ無い』と冷徹な顔して言って全員がその場に崩れ落ちた記憶を思い出す。
「その点マコトは最近モテモテだよなー
セラフォルーさんに膝枕して貰ってたりとかさ」
それが今ではこうなるとは。
シャルロットとセラフォルー曰く『反抗期が終わった反動』らしいが、正にその通りだと思う。
「黒歌もマコトの仲間な訳じゃん? どうやってそんな簡単に人見知りのマコトと仲良くなれるのか知りたいくらいだぜ」
「確かにそれは気になります。
この人まったく喋らないんですよ? それなのにどうやって……」
「返事が無いからって直ぐに会話を諦めようとするからよ。
根気強く自分は敵じゃないよと示しながら話し掛ければ割りと何とでもなるものよ」
「……………」
反抗期の終わったマコトのギャップは本当に卑怯なレベルで凄いのだ。
例えば今会話に出た通り、セラフォルーが膝枕を成功したりするのもそうだ。
「宜しければ黒歌さんを私と同じ学年にして学園に入れ、マコト君と一緒に親睦を深めるという意味でオカルト研究部に入部して頂けたらと思うのですが」
「それはいーちゃんと黒歌ちゃんの意思が重要だと思うけどな? 私から入れとは命令できないよ?」
「それは勿論ですわ」
「…………あれ、なんで私も?」
「私の肉親だからでしょうか?」
「俺としてはどっちも入ってくれるなら嬉しいけどな。
マコトは言わずもながらで、黒歌はほら……素晴らしいメロンちゃんな訳じゃん? ふへへへ――あいてっ!?」
「見境なしですか先輩は……この変態」
「す、脛は反則だぞ小猫ちゃん……! それに男は女性の持つメロンちゃんに弱い生き物なのだ! そうだろマコト!?」
「俺に振るなよ……答えづらいだろ」
こんな下ネタに付き合うのもそうだし。
何より言うことが一々ドキッとさせられる事ばかりだ。
「でもどっちかと言ったら好きだろ?」
「俺は胸のあるなしはどうでも良い。
その人が好きなら好きだって思うだけだ」
「とても先輩の弟さんとは思えない台詞……イッセー先輩も見習ってください」
「くっ、そこはクールなんだな。
じゃあやっぱりセラフォルーさんは好きなのか?」
「まーな」
「ちゅ、躊躇無し……だと? じゃ、じゃあ黒歌はどうなんだ!?」
「クロも好きだぞ? でなきゃこんな風に話なんかできないし」
「言い方をそのまま捕らえるとチャラ男にしか思えませんけど……?」
「……。確かに最低なのは否定できませんね……すいません」
(自覚はしてないでしょうけど、今の先輩はナチュラルに口説いてきますからね……)
今だってイッセーの質問に対して平然と好きと返すマコトに対して脊髄反射的に飛び付いてペロペロしたくなるくらいだ。
(良いよなセラフォルー様さぁ? この前先輩と合体出来たらしいし。
うぅー……私も先輩が欲しいよぉ……)
それを世間では発情期と呼ぶのだが、肉体が白音の頃よりも成熟してしまってるせいか、はたまた目と鼻の先に長年欲する人が居るせいなのか、黒歌はイッセーと白音に色々と質問されて答えるマコトを見つめながら下腹部に触れて全身が火照るのを感じていた。
「クロ? お前顔真っ赤だぞ? 大丈夫か?」
「別に大丈夫――ひんっ!?」
しかも今のマコトは素直なせいか、自分の変化に対してもすぐに気付いた上で心配までしてくれるし、挙げ句の果てには発情して火照った影響で頬を上気させていたのを熱か何かと勘違いしたのか、何の躊躇も無くしかもレストランの中なのに顔を近づけて額をくっつけてくるのだから、辛抱たまらん状態の生殺しにも程がある。
「あ、アレはリア充がやるデコ付けじゃないか!? ま、マコトの奴あんな高等テクをいつの間に!」
「…………」
「あれ小猫ちゃん? どうしたんだよぼーっとして……」
「っ!? な、なんでもありませんから……!!」
「お、おう……?」
(ね、姉様とマコト先輩を見て、自分がイッセー先輩にされてる想像をしてしまっただなんて言える訳がありません……!)
「ちょっと熱っぽいな……」
「……う……う……」
食べたい、欲しい、やっとこんなに近くにまでなったマコトに全てを委ねてしまいたい。
悶々と前世越しに抱いた思いは強烈なまでに黒歌の理性を破壊していく。
「………………。随分と小猫の姉と親しい関係の様で?」
「そりゃあこれからは仲間だし、いーちゃんはそういう子なんだよ本当は? リアスちゃんは知らないだろうけどさー?」
「……………………」
そんなやり取りを向こうの席でセラフォルーと共に眺めていたリアスは、最近になって明らかにマコトから避けられてると気付いた分、少し納得ができなったとか。
サイラオーグやジオティクスがシャルロットに隙あらば接触しようとする様に、この世界の男はちょっとどこぞのシスターフェチな悪魔チックな男が多かった。
「黒歌、俺達の仲間だったお前が何故そこに? 俺を裏切ったのか?」
力と戦いを求めて危険な場所へと渡った若きハーフ悪魔もまたその一人だった。
「裏切る? 可笑しいね、一度も仲間だとは言ってないのに裏切るも何も無いと思うけど?」
「…………………」
宿敵の家に住み着き、あまつさえそこの双子の兄弟と楽しげにしているのを遠くから覗いていた若きハーフ悪魔は我慢できずに連れ戻そうと現れるが、当の本人はその若きハーフ悪魔に対して心底関心が無い目をしながら仲間になった覚えは無いと切り捨てた。
「ヴァーリ! お前に黒歌は渡さないぜ!」
「黙ってろ兵藤イッセー、今お前と遊んでる暇はない。
黒歌、俺が強くなるにはお前が必要なんだ、だから一緒に……」
「しつこいな、お前みたいな欠片の興味もわかない奴に必要とか抜かされると寒気がするから、三秒以内に私の視界から消えてくれないかしら?」
しかも頭の先から足の爪の先まで興味が無いとまで言われてしまい、聞いていたイッセーに笑われてしまう始末。
「ならば俺がお前に勝ったら俺と来い。
そして未来永劫俺と共に――」
しかしそれでも彼は黒歌に拘った。
戦い以外にこれ程拘った事が無かった彼にしては珍しかった。
「………………………………………………………………………………………………………」
「お前は確かセラフォルー・レヴィアタンの眷属だったな? さっきから黒歌の横に居るが、黒歌のなんだ?」
しかし地雷だった……主に反抗期終わりの反動で逆に鬱陶しくなった彼の。
「ガバッ!? き、貴様―――グバァッ!?」
それはもう、可哀想なくらいの公開処刑だったと後に眺めていたイッセーは半笑いで語っていた。
「あぁ……先輩が私の為に……。
あはぁ……ん♪ 下着がびしょびしょにゃあ……」
「い、言ってる場合ですか姉様! 早く止めないと!」
「ま、マコトの奴あんなに強かったのかよ……」
「今夜は赤ちゃんできるまで燃え上がれそうだよいーちゃん……ふふっ♪」
殴って、蹴って、また殴って、殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴り続け、とにかく相手が可哀想になるくらいしこたま殴りまくってぼろ雑巾の様にしてやったマコト。
「三人は誰にも渡さねぇ。
もし奪うなら――親でも殺す」
それはもう……周りにしてみればドン引きでも言われた本人達は嬉しくてそのまま燃える夜を想像してキャーキャーはしゃいだとか。
嘘だよ
補足
ハーレム王にはなりたいけど、とにかくそれに相応しき強さもきちんと持つという決意があるせいか割りと小猫たんからデレられてるイッセーくん。
しかし悲しいかな彼の目は何時も女の子のメロンちゃんに向いてしまっている……。
その2
何故かこの世界の男子はストーカー気質が多い。
…………しかもストーカー相手は決まってその背後にヤバイのが居るオマケ付き。
その3
この黒歌は普段冷静に話しますが、基本的にマコトを前にするとかつての姉の口調に無意識に近くなるらしい。
あと、盛り方も凄まじい。