短編としては長すぎましたんで…
さて、いよいよ開始されるレーティングゲームとやらだが、指示に従ってワープした先は先程見た景色とまるで変わらないオカルト研究部の部室であり、先導したグレイフィアとやらが居なくなってた。
「……。まさかとは思うが、レーティングゲームとやらの会場が此処なのか?」
「ええ、学園を模したのよ」
シレッと答えるリアスに何とも言えない気分になる。
この場所が学園のレプリカ空間……なのは空気で感じて解ってはいるが、例えレプリカでも学園の中でドンパチやるのかと思うと実にしょっぱい気持ちになる。
しかしそうは言ってられない状況なのもまた然りと思考を切り替えていると、先程まで居たグレイフィアとやらの声が聞こえる。
『この度、レーティングゲームの審判役を務めさせて頂く事になりました、サーゼクス・ルシファー……チッ……様の女王、グレイフィアと申します』
「グレイフィアったら様を付けるのも本当は嫌だったのね、舌打ちが聞こえたわ……いや、痛い程わかるけど」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫でしょ。
それで何かするようなら、安心院なじみも『器もクソもねーな』って言うでしょうし」
まあ……会ったことは無いが、聞いてみると中々に可哀想な事になってるからな、そのサーゼクス・ルシファーとやらは。
よりにもよって『なじみ』に執着を持ってしまったとか、水面に映る月を掴むが如くどうにも出来ないし。
『両陣営が転移されたその場所が本陣となりますが、此度のレーティングゲームは、特別参加となります兵藤一誠様が『人間』であり、駒の力を持たないという事でプロモーションのルールは廃止となります。
つまり、個人が持つ力のみで相手陣営の
そっか……俺が入ってるせいでそんな事になってるのか……。
なんだかおおごとにしてしまって申し訳ないな……。
『プロモーションの廃止以外は普段のレーティングゲームのルールとなります。
それでは、お時間となりましたので開始させて頂きます。尚、制限時間は夜明けまでとなります』
やっぱり抑揚の無い声のまま開始の合図をし、校内放送のスイッチが切られると共にチャイムが鳴り響く。
成る程、レプリカとはいえ再現度は高いな。
「さてと、全員この通信機を付けてちょうだい」
完全開始の合図を皮切りに部室の空気が張り詰める中、リアスに手渡されたのは耳に掛けるタイプの通信機だった。
俺を含めた全員がそれを受け取って耳に掛けると、早速とばかりにリアスは作戦を展開する……ゆったりと姫島3年が淹れた紅茶を飲みながら。
「プロモーションルールが無い。
つまり個人の力が露呈される戦いになるけど、数では圧倒的に私たちが不利よ」
リアスが俺達を見ながら、現状の戦力の差を口にするが、誰もその事で不安がったり恐怖を抱いてる様子は無い。
それは当然兄貴もだ。
俺は……まあ、ライザー・フェニックスと戦うまでリタイアしないようにと気を張ってるんだが。
「重要なのはイッセーをライザーと一騎討ちに持ち込ませる事にある。
だから私を含めて可能な限りライザーの戦力を削る……。
だから原始的かもしれないけど、私達全員でわざと表に出てライザーの眷属達を誘き寄せるわ」
リアスの出した作戦は、王である自分を含めた囮であり、俺をライザー・フェニックスと一騎討ちさせる事を第一の目標にするとの事。
まあ、プロモーションのルールが無いのなら本陣に拘る理由も無いし、王であるリアスさえ討てば向こうもそれで勝てるからな。
わざとだだっ広い運動場のど真ん中で盆踊りでもしてれば誘い込めそうだが……そう簡単に奴が乗ってくれるかどうかだが、此処で待ってても同じことだ……という事で全員が頷いた。
何か言ってきそうな兄貴もだ。
「なら行くわよ皆……。
ホント……こんな事しか言えなくてごめんなさい」
自嘲した顔で笑いながら頭を下げるリアスに、兄貴以外の全員が気にするなという意味を込めて微笑みながら首を横に振る。
「私も初めから全力よ……最初から……グレモリー家としてでは無く
その答えがリアスにとって起爆剤となり、その瞬間がリアスの活力となる。
鮮やかな赤色の髪は今の俺と同じく漆黒に染まり、瞳は全てを見通すかの如く透き通る……………来たか。
「……!?」
「え、部長……?」
「み、見間違いかな? 部長の髪の色が……?」
「あらあら、私とイッセーくんとお揃いですわ……フフフ」
おお、驚いてるな……。
ふっ、そりゃあそうだ。昼間は俺が、夜寝てる間は夢の中でなじみが仕込んだんだ……。
リアス程の女なら可能だし再現可能なのさ、この――
リアス・グレモリー
所属……グレモリー眷属
備考・
ライザー・フェニックスにとっての今回のレーティングゲームは、レーティングゲームだなどと思っていない。
娯楽目的でこのゲーム擬きを安全な場所から眺めてるだけの上級悪魔どもには悪いが、今回の戦いは己個人が自分の同等の資質を持った人間の可能性を見るためのものだ。
だから通常のレーティングゲームのルールであるプロモーションシステムを無しとし、真っ向勝負にしやすくするように陽動した。
そしてその作戦はどうやら成功したようだと、本来は一誠がそこ座る生徒会長の席にゆったりと座るライザーは薄く微笑んでいると、自身の女王であるユールベーナが椅子に座るライザーの足元に跪きながら口を開く。
「相手方の陣営が王を含めて全員移動を開始した様です」
「そうか……」
ユールベーナ以下眷属達全員から跪かれている状態で、ライザーは只それだけ返事をしながら目を伏せる。
「通常なら王が本陣を捨てて移動するなど正気の沙汰では無いのですが……ライザー様はそうは思っていない……ですか?」
「まぁな……。そもそもこの程度の娯楽なぞで兵藤を測ろうとは思わん。
馬鹿な連中は最後まで人間ごときと奴を嘗めているし、恐らくリアスが打っただろうあの手にしても、奴等の事だ……『レーティングゲームの基本も知らんのかと』バカにしてるに違いない。
同族ながらとことん哀れな連中だな」
ライザーには純血悪魔に誇りなんて持っていない。
純血では無くても強い存在はいるし、もっといえば今回の事で一誠の様な人間が存在していたと知って、認識が更に変化している。
凝り固まった認識が視野を狭め、結果同族同士で殺し合って数を減らした……ライザーにとっての純血悪魔とはそんな認識だった。
「俺は才能が無いと言われて、見下されても折れずに強くなった奴を知っている。
兵藤みたいな男をな……」
それでもかつてライザーが出会い、友となった者も少なからず居る。
名をサイラオーグ・バアルと呼ばれる男でライザーが認めた友だ。
「サイラオーグの奴に兵藤を会わせてやりたいぜ……。
ククッ、アイツなら喜びそうな男だからな……」
努力を苦とも思わず、才能無いと馬鹿にされても折れずに上り詰めた友と一誠を重ねながら微笑むライザーを見て、眷属達は妹のレイヴェル以外頬を紅潮させる。
眷属達にとってのライザー・フェニックスとはこういう男だった。
どこまで高みに立ち、それでいて分け隔てなく接する。
「ではライザー様」
「ああ。
元々俺は真正面からぶつかり合うこそが戦いだと思っているし、そろそろ隠すのも飽きた」
ユールベーナの言葉にニヒルな笑みを浮かべながらライザーはそっと立ち上がり、眷属達にとっては待ちに待った言葉を聞かせた。
「それは……つまり……?」
「ああ、もうフェニックス家の三男坊の真似事はやめだ。
今日から俺はお前達の王――ライザー・フェニックスだ」
『!!』
内に隠していた圧倒的な王としての気質を出しながらの宣言に、眷属達は歓喜した。
本当の王が立ち上がったと……そして自分達がその下僕であれた事に。
何処かぼんやりしているレイヴェル以外の全員が右手にフェニックスの象徴たる炎を灯しているライザーへと視線を向ける中、王としての絶対の宣言を下す。
「行くぞ……全員油断するな。
奴等は数こそ少ないが一人一人が強い……しかし此方とて同じこと。
もはや只の敵ではなく
胸を張れ、相手を見据えろ、決して逃げるな。
それで負けても笑っていろ…………俺が許す!!」
『はっ!! 全ては王たるライザー様の為に!』
「よっしゃ………行くぜ!!」
右手に灯した炎を握り消したライザーが全員にそう告げた瞬間、眷属達の士気は最高潮に高まり、ライザーを先頭に全員が生徒会室から飛び出す。
全身に先程の手に灯した炎とは違う……虹を思わせる七色の炎を纏いながら。
ライザー・フェニックス。
所属・ライザー眷属
備考……………
補足
その2
ライザーさんのは異常とかでは無く、炎自身にとあるマフィア漫画の様な色んな効果をもつ属性を加えられるという力がある。
増殖、構築、分解、活性、沈静、硬化、調和……みたいな。
その3
続きなんですが……めっちゃくちゃ長くなるので断念します。
ホント……2~3話で纏められん……。