色々なIF集   作:超人類DX

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考えてみた結果、こうなってしまう方が逆に自然になってしまうので色々と期待を裏切る話に……


金と銀の転校生

 更識先輩によって春人がひっぱたかれたという話を聞いた千冬姉は姉さんが激怒し、後日生徒会室にまで乗り込んだらしい。

 元々あの人は春人に関しては異常に思える程に過保護だから予想はしていた話だったりする訳だけど、意外な事にそんな姉を相手に先輩は一歩も退かずに相手取ったのだとか。

 

 お陰でここ最近の姉さんはとても機嫌が悪く、俺達のクラスの空気はお世辞にも良いものとは言えないものだった。

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

 

 

 だから授業前はそんな不穏な空気を少しでも忘れようとクラスの人達は楽しんでおり、今日も朝来れば席の近い女子達が何やらカタログみたいな小冊子を広げてわいわいとトークをしていた。

 

 

「あれは何の話をしてるんだ? ブランド物の服の話か?」

 

「多分ISスーツの話だろう。

スポーツ用品の様に社によっては色々なデザインのものがあるらしいからな」

 

「ほーん」

 

 

 ぶっちゃけ水着みたいなものに見えなくもないISスーツの話をしているのだろうという箒の話を聞いて納得するのと同時に、箒なら何着ても似合うんだろうなぁとぼんやり考えていると、俺達に気付いたのか、そのスーツの話をしていた女子達が小冊子を見せながら話しかけてきた。

 

 

「ねぇねぇ織斑君はどこの使ってるの?」

 

「え? さぁ……男子用なのかも本当かわからんスーツを入学時に渡されたからよくわからないな」

 

 

 参ったぞ、こういう流行りのものに疎いから上手く話を広げられる自信がねぇ。

 

 

「そうなんだ、でも織斑君って男の子でがっちりしてるから、あんまり選べなさそうだよね」

 

「弟君の方は華奢だからアレだけどさ」

 

「俺なんかは乗る機会もまだまだ先だし、別に拘りもないしなぁ」

 

「篠ノ之さんはどこのを使ってるの?」

 

「私か? 私も特に選んでないぞ、なるべく安い奴を……」

 

「ダメダメ! 女の子がそんなんじゃ女子力が下がっちゃうぞ! ほら、折角だから一緒に見てみましょう」

 

「いやでも私も……」

 

 

 と思ってたら箒が拐われてしまった。

 俺は何着ても良いと思うんだけど、女子というのはそういう訳にもいかないらしい。

 箒もどちらかといえば疎い方だし、割りと戸惑ってるのが見えるというHR前を過ごしている内に呼鈴が鳴ると、山田先生とやっぱりまだ機嫌が良くない千冬姉さんが入ってきたので一斉に背筋を伸ばす。

 

 

「諸君、本日より本格的なISの訓練に入るのでスーツを忘れるな。

忘れた者は授業に出さんから覚悟しろ」

 

『……』

 

 

 やっぱり機嫌が悪いのが口調でわかるわぁ……めんどくせ、と思ってると、山田先生が気を使ってるのか目一杯の笑顔を浮かべる。

 

 

「忘れた場合は一応水着で代用可能で、それも無ければ申し訳ありませんが見学という形になりますので織斑先生の仰る通り、忘れてはいけませんからね? さて、これよりHRを始めますが、まずは皆さんに転校生二名を紹介したいと思います!」

 

 

 山田先生も大変だなぁ……なんて思ってると、転校生二名という言葉に全員が反応する。

 最近テンションが著しく低い春人も反応してるし、元気が出て何よりだな――とか何か他人事みたいに考えてる内にその転校生二名が入場していた。

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 

 一人は金髪の―――ありゃ、男子の制服じゃん。

 え、これはまさかの……。

 

 

「お、男?」

 

 

 そう、男。

 ナイス代弁だ、前の席の夜竹さん。

 皆がざわつく通り、今名乗ったデュノアって人はどうも男らしい。

 どうも女声にしか聞こえないし線が細すぎるけど、まぁ春人みたいなタイプも前例であるし、ありえなくもない訳で。

 

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「きゃあああああああ―――っ!」

 

 

 はーい来ました、黄色い声! 俺には一生涯縁もなけりゃあ別に要らないっちゃあ要らない歓声が教室の窓ぶち破る勢いで響いたよ。

 咄嗟に俺と箒は耳をふさいだけど、大正解だぜ。

 

 

「三人目の男子よ!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」 

 

「地球に生まれて良かった!」

 

 

 大袈裟なリアクションが飛び交い、久しく見ない騒ぎっぷり。

 しかしこのシャルル・デュノアだっけ? ……本当に男か? 見れば見るほど見えねぇんだけど。

 

 

「なぁ一夏、彼は本当に男なのか?」

 

「箒も思ったのか? 俺も思ったし、そもそも俺と春人みたいにニュースにすら出てないっておかしくないか?

あんだけ頼んでもねーのに世界中に顔写真載せられてよ」

 

「政府が隠したという線はあるかもしれないが、それにしてもな……」

 

「だろ? ていうか、今の時代に完全に情報を隠すって逆にムズいだろ? フランス人にネットで言われるリアルスネークさんが居ないんならしょうがねぇけど」

 

「なんにせよ、後でリアス姉さんに聞いてみよう、姉さんの観察眼は凄まじいからな」

 

「観察がスゴすぎて相手の技量を会得しちゃうくらいだからな、間違いないぜ。逆にイチ兄はそういう所が凄まじく鈍いけど」

 

「イッセー兄さんは良くも悪くもリアス姉さんバカだからしょうがないさ」

 

 

 この騒ぎをBGMにシャルル・デュノアの中身を取り敢えず探る方向に決めた俺達が頷き合うそのタイミングで、千冬姉さんがホワイトボードを思いきり叩いた。

 

 

「静かにしろ馬鹿共! 誰が私語をしろと言った!!」

 

『…………』

 

 

 お祭りムードも一瞬で吹き飛ぶ千冬姉さんの怒号。

 まあ、悪いのは騒いでる俺達なので怒られて然るべきだと俺は思う。

 

 

「み、皆さん、転校生は二人いますからね?」

 

 

 山田先生も本当に大変だ、上司にも生徒にも気を使ってさ、芯が強くなかったら挫折するぜホント。

 一瞬で空気が張り詰めたものへと戻った空気の中、もう一人の銀髪で眼帯しててなんな不機嫌な顔してる小さめの……今度は絶対に女子だろう転校生に話を振る先生をみる。

 

 

「………………」

 

「挨拶をしろラウラ」

 

「はっ、教官」

 

 

 最初は山田先生に話を振られても無言そのままだった銀髪だが、千冬姉さんに言われた途端急に声を出す銀髪。

 てか教官てなんだ?

 

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」 

 

「了解しました」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「………………」

 

 

 お、おう……別の意味で空気が止まっちまったせいでクラスは無言になる。

 ボーデヴィッヒさんってのもそれ以降言葉を繋げようとしないし……。

 

 

「あ、あの、以上‥‥‥ですか?」

 

「以上だ」

 

 

 再三言うけど、マジで先生って大変だよな。

 色んな性格のガキ相手にしなきゃならなん訳だしさぁ……俺には無理過ぎる職業のひとつだわぁ――なんてぶっきらぼうに言われて軽く凹んでる先生に内心応援の気持ちを抱いていたら……。

 

 

「! 貴様が……!!」

 

「ん?」

 

 

 その愛想の悪いボーデなんとかさんが俺の目の前に立って何やら憎しみの籠った目で見下ろしているではないか。

 はて、俺は全く彼女とは接点なんて無いんだが、等と考えてると手を振り上げて―――――あ、これ殴られんのか俺?

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 さてどうするか、時間して1秒にも満たないだろうがここはその薄く短い時間を使って冷静に考えよう。

 

 俺は後0.5秒もしない内に彼女に殴られるだろう。

 それに対して俺はどうするべきなのか? まず例その1

 

 

『普通に避ける』

 

 

 別に殴られる理由なんて無いので避けてしまえば良い。

 しかしそれだと逆に目立ちそうだ。

 

 ならばその2…

 

 

『カウンターで殴り返す』

 

 

 ……………。うん、これは無いわ。

 流石にそれやったらもっと目立つし、波風が立ちまくるからこれは却下。

 

 じゃあその3

 

 

『殴られてしまえ』

 

 

 別にマゾではないけど、これなら何となく波風も立たずに何で殴ったのかも聞けそうな気がする。

 よし、これで行こう……あまり気は進まないけど角を立たせない為の必要な犠牲だわ。

 

 と、いう訳で時は動き出す(嘘)

 

 

「で!? な、なんだよ突然(棒)」

 

 

 取り敢えず殴られてから、それらしいリアクションを取る。

 するとぼーなんとかさんは、俺を睨みながら一言……。

 

 

「私は認めない。貴様があの二人の兄弟であるなど、認めるものか」

 

 

 なんてやっぱり意味がわからん事を言って席に行ってしまった。

 なんだよ認めないって? 何のこっちゃさっぱり――

 

 

「……………ふ」

 

 

 ………………。あぁ、はいはい今わかったぜ春人。

 なーるほど、お前と千冬姉さんの知り合いだった訳だ、お前が一瞬俺にほくそ笑んだの見たら直ぐわかったぜ。

 

 

「大丈夫か一夏? 横槍を入れると却って目立つと思って……」

 

「俺と同じ事を思ってる時点で流石だよ箒、やっぱり箒は俺のベストパートナーだぜ」

 

「う、うむ。しかしあのボーデヴィッヒという奴はどうやら先生と春人の知り合いらしいな。

しかもどういう訳かお前を恨んでる……」

 

「みたいだな、そういや前に暫く二人で外国に行ってたが、その時知り合ったんだろうな」

 

「あぁ、家に帰ってきたお前に書き置きと生活費を置いて放置した話か……」

 

「お陰で堂々とお前と二人でリアス姉とイチ兄の所に泊まれたから深くは考えなかったけど、まさかの伏線回収にビックリだぜ」

 

 

 ったく、そういう星の下に生まれちゃったんだからしょうがないだろボーデヴィッヒさんよ。

 

 

「ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合し、今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 

 そしてお姉さんよ、フォロー無しですか。そうですか……ま、元々期待なんてしちゃいないんだけどね。

 

 

「それと織斑、デュノアの面倒をみろ」

 

「あ、俺すか?」

 

「他に誰が居る?」

 

「先生、僕も――」

 

「お前は自分の事をすれば、良い。ほら、着替えに行くぞ」

 

「な、なんで一緒――わっ!?」

 

 

 そしてナチュラルに本当に男なのか微妙なデュノア君についてを押し付けられ、お姉さんは嫌がる春人を抱えてさっさと教室を出てしまった。

 あーぁ……。

 

 

「えっと、君が織斑一夏君だよね? さっきも自己紹介したけど、僕はシャルル・デュノア、よろしくね?」

 

「あ、うん」

 

 

 どうすんのこれ? 更衣室に案内しろってか? 大丈夫なのかよ本当に? なんて思ってたら、お姉さんが居なくなってホッとしたクラスメートの何人かが遠慮がちに声を掛けてきた。

 

 

「あ、あの一夏君? さっきの大丈夫?」

 

「へ?」

 

「ほら、ボーデヴィッヒさんに叩かれて……」

 

「あぁ、アレ? 全然大丈夫だけど、わざわざ心配してくれたのか? おおぅ、身内以外に心配されたの初めてだわ」

 

 

 他人に心配されるのに慣れないので妙なむず痒さを覚えてると、もう一人の女子が話しかけてくる。

 

 

「ボーデヴィッヒさんと知り合いなの?」

 

 

 まあ、いきなり叩かれたのを見れば誰もがそう思うわな……しかし俺は全然知らんのだよね。

 

 

「それが全然知らん子なんだよな。

多分だけど、うちの姉と春人の知り合いだとは思うがね」

 

「織斑先生の事は教官なんて呼んでたから何となくそうなのかなぁとか思ったけど、弟君とも知り合いなのおりむー?」

 

 

 いつの間にか居たのほほんさんの質問に、隣に座ってた箒と一緒に頷く。

 

 

「間違いないな。でなきゃあの二人の兄弟だなんて認めないなんて台詞に説明が付かないし、前に二人が外国かどっかに半年くらい行ってたから多分その時知り合ったんじゃねーのと俺は思ってる」

 

「え、二人って……おりむーは?」

 

「俺? 行ってないよ?」

 

「な、なんで!? 一人でお留守番してたの!?」

 

「私も大体知ってるから代わりに説明するが、一夏が学校から帰ったらリビングのテーブルの上に当面の生活費と、『暫く外国に行く』という書き置きだけ残して既に出発してたらしいんだ」

 

 

 箒、それ言ったら変な空気になるじゃ……。

 

 

「ひ、ひどい……」

 

「一夏くんだけおいてけぼりって、普段の様子を見てるとそんな気はしてたけど、そんな露骨に……」

 

「そ、それは僕もちょっとどうかなって思うかも……」

 

 

 あ、ほら、皆して変な顔になっちゃったし、転校生君までしんみり顔に……。

 

 

「待て待て、俺は別に気にしてねーって。

第一同行した所で荷物持ちさせられるだけだし、二人には内緒だけど、居ない間箒と楽しくしてたから問題無かったんだぜ」

 

「一夏はそう言うが、私は一番怒りを覚えたぞ。だから敢えて言ったんだ」

 

 

 そりゃ箒はそういうの嫌うからそうかもだけどさぁ、俺は本当に何にも思ってないんだよ。 

 だって即座に連絡して箒と一緒にイチ兄とリアス姉の所に入り浸ってたんだぜ? そこは流石にぼかすけど。

 

 

「でもいくらなんでも格差というか……」

 

「良いんだよ別に。困った事に本当にどうとも思ってないし、そんな事よりここで何時までもくっちゃべってたら遅刻しちゃうぜ? ほら行こうぜ」

 

「う、うん……」

 

「えっとデュノアくんだっけ? 更衣室に案内すっから一緒に来いよ。

他の皆はまた後でな~」

 

 

 これ以上変な顔されても対応に困るので、誤魔化す為にデュノア君の腕を掴みながらさっさと退散する。

 強がりとかじゃなくて、当時もそんな書き置き残されても『ふーん』程度にしか本当に思わなかったし、寧ろ『あれ、じゃあ箒と遊びまくれるしイチ兄とリアス姉の家に暫く泊まり放題じゃね?』と、メリットばっかりしか見てなかったんだ。

 

 俺はそういう薄情者であって、皆に同情される様な奴なんかじゃないんだ。

 その半年の間に箒と俺は二人に色んな所に遊びに連れてって貰えたしな。

 

 

 とまぁ、デュノア君目的で集まった他クラスの女子に追い回されながら俺は考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

「私、やっぱり教師失格です」

 

「授業前に来たかと思ったら、また何時も以上にネガティブな……」

 

 

 そんなドライな一夏と箒の心境を知らずに、先程転校生を紹介してから完全にオロオロしてしまった副担任の山田真耶は、片方の転校生が一夏を叩いたのに止めるどころか注意もできなかった自分を恥じ、完全にネガティブ思考になって用務員室に寄っていた。

 

 

「止める事もせず、注意もしない教師なんて……」

 

「殴られたのがイチ坊だったんでしょう? 多分本人も言うでしょうが、全く気にしないから大丈夫ですよ」

 

「そういう問題じゃなくて、注意もできなかった事が……」

 

「生真面目っすねぇ。世の中にゃあセクハラして捕まる教師も居るってのに……」

 

 

 授業前の僅かな時間な為なのか、ISスーツを下に着込んでパーカーを羽織ってるという、彼女のスタイル的に悩殺ものな格好をしてる年頃の女性を前に平然とした顔をしてるイッセーは、仕事前の一服のお茶を片手に、気にしいな真耶にあきれていた。

 

 

「箒もそうですけど、あの子達は環境が環境ですので自立心が高いんですよ。

その転校生の小娘にひっぱたかれた程度で一々気にする性格なんてしてませんし、貴女も新任にしてはかなり特殊なクラスに配属させられてる難易度を考えたらしょうがない面もある。

第一、担任の織斑先生だって特に注意もせず話を進めたのでしょう?」

 

「え、ええ……生徒であるとはいえ弟なのに」

 

「じゃあ良いじゃないですか。寧ろ話を聞けば聞くほど、もう一人の……ええっと、名前なんかどうでも良い小僧が叩かれた方がはるかにめんどくさいでしょうからね」

 

「確かに、もし一夏君じゃなくて弟さんの方だったら織斑先生が大騒ぎを起こしていたかも」

 

 

 あの露骨な差を考えたら、もしラウラが春人を叩いてたら千冬が下手したらラウラを半殺しにしていたのかもしれない――と、先日まで行われていた楯無への殴り込み騒動を考えたら納得してしまう真耶。

 

 

「ほら、そろそろ授業が始まりますよ先生? 今日は初めての実践授業なんだから遅刻なんてしたらそっちの方が問題だ」

 

「そ、そう……ですね! ありがとうございますイッセーさん! 少しだけ胸のつかえが取れた気がします!」

 

「……下の名前で呼ぶのはちょっと」

 

「え………だ、だめなんですか?」

 

「あ、いや、わかりましたハイ! 好きに呼んでも良いから、そんな泣きそうな顔してこっちをみないでください」

 

「えへ」

 

 

 だが、教師ではないけど先輩ではあるイッセーに背中を押されて気を持ち直す事ができた真耶。

 良くも悪くも研修時代から相談に乗って貰ってるせいか、小さな事でもすぐイッセーに相談してしまうという、軽い依存が入ってるのかもしれない。

 

 

「あ、あのぅ……第二グラウンドのお掃除ってしますか?」

 

「? 先生の授業が終わったら整備も兼ねて行く予定ですが、それが?」

 

「えっと実は今日、授業で少しだけISに乗るんですけど、出来れば……その……」

 

 

 同僚のリアス馬鹿なのは既に嫌という程知ってるし、他にもあの更識楯無が頗る懐いてるのも知ってる。

 そんな面子を考えたらドジでトロイ自分なんかどうしようもないのだって知ってる。

 

 

「み、見てくれたらなー……なんて」

 

 

 両手の人差し指をちょんちょんさせながら上目遣い気味に言う真耶は、基本的に無愛想な用務員が恐らく………なのだろう。

 

 

「授業中の現場につなぎを着た男が居たら不審者以外の何物でも無いでしょうに」

 

「で、ですよねー……」

 

「それに見た所で期待できるリアクションなんかできませんよ俺は」

 

「それは……た、ただ見てくれたら頑張れるとおもったから……」

 

「子供じゃないんですから……まったく」

 

「ご、ごめんなさい、やっぱりいいです……も、もう行きます」

 

 

 トボトボと雨にずぶ濡れになった犬みたいにしょんぼりしながら出口へと向かう真耶に、ため息を吐いたイッセーが口を開く。

 

 

「確か第二訓練の壁の一部が壊れてたんで、先にそれを修理しに行くかもしれません」

 

「!」

 

「まあ、だから? その拍子に先生を見るかもしれません。だから……頑張ってください山田先生」

 

「は、はい!!」

 

 

 山田真耶とはそういう女性なのだ。

 

 

「なーに、言ってんだか俺は」

 

『行くのか?』

 

「言っちゃった以上はな……しょうがない先生だよホントに」




補足

この千冬さんがまず留守番させる訳も無く、一夏放置で連れていったらフラグ立ちましたの方が自然かなって。

期待させておいて申し訳ねぇ。


その2
その代わり、色々やってたシリーズのほぼ全部ほったらかしなシャルちゃまとナチュラルに仲良くなれそうだなって……。

まあ、風呂場に突撃されて身の危険を感じる恐怖が降り注ぐでしょうが……。


その3
半分育児放棄されてる一夏ですが、本人は寧ろ箒さんや二人と一緒に居られるとウェルカムなんでWIN―WIN

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