色々なIF集   作:超人類DX

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駆け足ぎみですね。

やっぱり書き足しました。


戦闘前の生徒会長

 かの黒神めだかと人吉善吉は、たったの2日かそこいらで全盛期の戦闘力を取り戻したらしい。

 それは、魔法使いと呼ばれた黒神めだかの兄だかがプロデュースしたからだとか。

 だけどそんな人物は俺の周りに居ない……居ないけど、それでも俺は強くなった。

 その集大成を試せるのが…………今日なのだ。

 

 

「よし」

 

 

 10日という時間を使った戦闘訓練はちゃんとモノとなった。

 しかし相手はライザー・フェニックス。

 油断なぞしないし初めから全開で挑むつもりだ。

 なんせ相手はライザーだけでは無いのだから。

 

 

「気合いが入ってるわねぇ」

 

「おうよ。なじみ以外に全力を出し尽くせそうな予感がするからな」

 

 

 駒王学園・オカルト研究部部室。

 レーティングゲームとやらが始まるまで……そしてその会場とやらへ向かうための集合場所となっているこの場所で、俺はこれまでの事を思い出しながら右手を開閉させて時が来るのを待っていた。

 10日……長いようで短いこの期間でどれ程力を付けられたのか、ライザー・フェニックスに届けたのか。

 それが本日で全てが決まると思うと、口元が緩んで仕方ない。

 

 

「少し落ち着きなさい。そんなに気を張りすぎると空回りしてしまうわよ?」

 

「む? ………うむ、そうだな」

 

 

 俺だけでは無い、リアスも姫島三年も木場同級生も搭城一年もこの10日で出来る限りのパワーアップを果たしている…………いや、リアスに関して言えば、なじみの与えた課題をクリア出来たということで俺からちょっとした贈り物を送っておいた。

 どうやら見る限りだと、その贈り物をモノに出来てると見るが……兄貴は最後まで一緒に鍛錬してくれなかったからよく分からんかった。

 今もちゃんと部室の端の壁に寄りかかって目を閉じてるが、大丈夫なのだろうか……。

 

 

「開始十分前となりましたので、お迎えに上がりました」

 

 

 しかし考えている余裕はもう無く、10日振りに見るメイド服の悪魔が変わらずの抑揚の無い声と共に現れ、開始が近い事を宣言する。

 リアスによれば、レーティングゲームとやらの会場はこの部室から例の魔法みたいな感じワープするとか何とか言ってたが、メイド服の悪魔がそれを説明してる感じ本当らしい。

 

 

「本日のレーティングゲームは、両家の方々が其々モニターで拝見することになっており、陣営所属では無い兵藤一誠様は、予め参加のご承認もされております」

 

「つまり、普通に動いても問題ないと?」

 

「そういう事です。寧ろ我が主であるサーゼクス・ルシファー様はそれを望んでおられます」

 

 

 サーゼクス・ルシファー……なじみに変な執着心を持ったままのせいでちょっと色々変な事になってる魔王か……。

 なるほど……それなら未だ見ぬ彼のご期待に沿える様に頑張るっきゃあないね。

 なんてちょっと好戦的な笑みになりながらリアスを見てみると、どうにも微妙な顔をしていた。

 

 

「お兄様……いえ『兄』が見ているのね。

はぁ……イッセーを試してるだけって見え見えで正直嫌ね」

 

 

 あ、そうか。

 サーゼクスとやらとこのメイド悪魔……ええっとグレイフィアとやらは夫婦なんだったな。

 で、当ののサーゼクスとやらは、なじみに対してどうのこうのと思ってこのグレイフィアとやらを蔑ろにしてるとか聞かされたら、そりゃあ思うところもあるか……。

 

 

「俺は別に構わんがな。寧ろ人間の可能性を宣伝出来る良いチャンスだと思ってる程だぞ、フッフッフッ。

しかしまぁ……なんだろうな、すまないと俺が言う事じゃ無いと思うが、グレイフィアとやら――なんかすまん」

 

「いえ……兵藤様と安心院さんもまるで関係が無い話ですからお気になさらず。

何時までも引き摺り続ける我が主に問題があるだけですので」

 

「……。結構魔性の女よね……安心院なじみって」

 

 

 なじみは何もしてないと言うが、アイツの見た目と性格って第一印象なら騙されるレベルで引き込まれるものがあるからな……。

 それが後の魔王だったとしても例外じゃあ無かったらしいし、リアスがぽつりと口にしたその言葉もあながち否定出来ないのがな……。

 

 

「安心院さんって、10日前に此処に来た人ですよね?」

 

「ん、あぁ……そうだぞ」

 

 

 しかし、それでも俺の師匠である事に変わりは無く、落ち度がどちらにあろうとも俺はなじみの味方に付く気しかないと内心思ってると、それまで黙って見てた搭城一年が俺の着ていた制服の袖を引っ張りながら、質問をしてきた。

 搭城一年のその質問に、『そういえば、この場にいる者はあの日なじみを見てたんだったな』と思い出しながら頷くと、同じく黙って見てた姫島三年も俺に対してこんな質問をしてきた。

 

 

「アナタの師匠と聞きましたが、どんな方なのですか?

どうも底が見えなくて把握できなかった事しか分からず、少しばかり気になるというか……」

 

「む? うむ、そうだな。

見たのなら分かると思うが、あの通り魅力的過ぎる姿と声を持ち、宇宙が誕生する遥か昔から存在する人外だな。

後は……まあ、結構オモシロイ奴?」

 

「「……」」

 

 

 ……。だよね、宇宙誕生の遥か昔から存在するなんて然り気無く言われたらそんな顔するわな。

 ポカンとした表情を揃って――てか一緒に聞いてた木場同級生も同じく浮かべているのを見て、苦笑いが込み上げてくるしかない。

 

 

「………………」

 

 

 だって、あの兄貴もそんな顔してるもん。

 それほどな存在なんだよね……ホント俺ってよくアイツの弟子になれたもんだよと今でも思うくらいで――む?

 

 

「えっと、失礼します……。お邪魔して申し訳ありません、兵藤一誠さんに少しだけご用が……」

 

「…………」

 

 

 部室のドアがノックされ、おずおずとした様子の声と共に姿を見せたのは、実に10日振りの再会となるアーシアとやっぱりちょっと不機嫌気味なレイナーレだった。

 

 

「お前等……」

 

「あ、イッセーさん。

ごめんなさい、これをどうしても渡したくて」

 

「ふん」

 

 

 この二人は今回の出来事には関係の無い人物であり、この場所に入るのは駄目なんじゃないのか? とリアスとグレイフィアとやらに確認の意味を込めた視線を送ってみると、どうやら少しなら大丈夫らしく、二人とも黙って頷いてくれた。

 それに少しホッとしながら、用件があるとの事らしく、何やら紙袋を差し出してきたアーシアに首を傾げる。

 

 

「これは?」

 

「10日前にイッセーさんが『個人的な事だから』と私達に預けた生徒会の制服と腕章です」

 

「なに?」

 

 

 差し出してきた紙袋を受け取りながら中身の説明をされた俺は、思わずといった感じに中を見ると、確かにアーシアの言った通りに10日前二人に預けた生徒会専用の制服と会長の腕章だった。

 

 

「何故これを?」

 

 

 全てが終わる明日以降ならわかるが……とよくわからん気分でアーシアに問うと、答えたのはアーシアでは無く、その隣のレイナーレだった。

 

 

「何故って……アンタはこの学園の会長でしょう?

個人的な理由で動いたってのは解るけど、アンタがその格好じゃないとしっくり来ないじゃない……。

それに、庶務見習いの私達に会長の席を預けられても困るわ」

 

「む……」

 

 

 フンだ……とやっぱり不機嫌に言ってくるレイナーレを見て、やっぱり勝手にし過ぎたせいで怒ってるのだろうと感じ、少し申し訳無いなと思ってると、クスクスと笑っているアーシアが『違いますよ』と優しげな声を聞かせながらこう言った。

 

 

「もう、こんな時くらいは素直になりましょうよ?

レイナーレ様は『どうせ戦うのなら私達に見せた時と同じ格好で見たい』って言いたいんですよ」

 

「ちょ……!?」

 

「なに? そうなのか?」

 

 

 天野夕麻の姿では無い、本来の姿で現れたという理由か、レイナーレと本名を口走りながら彼女の心の内を代弁してくれたアーシアに、俺はそれが本当なのかと確かめる。

 するとレイナーレは突然挙動不審気味な態度になって俺を睨み、ズイッと身を寄せて来ながら言うのだ。

 

 

「そ、そうよ文句ある!?

私やアーシアにとっては、今のその格好よりコッチの格好の方が見慣れてるのよ!

だからあの時みたいに今回も『生徒会長』としてやりなさと言いたいの……って……うぅ、何でこんな事まで言わなきゃ気付かないのよ……」

 

「……………。お前」

 

「……。私とアーシアと安心院なじみは、今回はアナタのサポートは無理……だからせめてその制服を着て欲しい――ただそれだけよ。

最近はそこのリアス・グレモリーばっかり構うアナタが悪いのよ……まったく」

 

「……」

 

 

 キッと俺……では無くて何故かリアスを睨むレイナーレの言ってる事の最後の方は小さくて良く分からんが、とにかくこれを着て欲しいのは分かった。

 うむ……。

 

 

「リアス……良いか?」

 

 

 今回の事に関してのリーダーはリアスであり、着替えて良いかと訪ねると、リアスは緩やかな笑みを見せながら頷いてくれた。

 …………ともなれば、決まりである。

 

 

「ありがとうな二人とも……。

ふふ、自作とはいえ気に入ってくれてる人が居てくれるとやはり嬉しいものだな……フッフッフ」

 

 

 着替えるに決まってる。

 着ていた制服の上着とYシャツを瞬時に脱ぎながらちょっと嬉しく思っていた。

 

 

「っ!? イ、イッセーさん! 女性が多いのにこんな所で脱がないでください!」

 

 

 まあその際、何時もの様にアーシアが顔を真っ赤にしながら両手で顔を覆って怒りだすのだがな。

 あれ、10日振りだからこれもちょっと懐かしいかも。

 

 

「時間が無いんだ、少しくらい大目に見てくれ。

それと何度でも言うが、俺はこの鍛え上げた肉体を……」

 

「見たくない人……特に女の子も居るって考えは無いのかしら?」

 

 

 でも俺は考えを変えない。

 超頑張って作ったこの肉体を見られて恥ずかしいと思うことなぞ皆無だからな!!

 そういう考えを理解して貰うまで、これまでの時と同じ説明をしようとすると、何時もならアーシアみたいに怒らない筈のレイナーレの冷静な突っ込みに一瞬だけ言葉に詰まってしまった。

 いや、冷静に考えれば確かにそうだよな……的な意味で。

 

 

「と、言いたいけど、確かにこの10日で結構鍛えてたのね……」

 

 

 しかし流石レイナーレは解ってくれるらしく、俺の10日の結晶を直ぐ褒めてくれて嬉しかった。

 

 

「フッ……だろ? もっと褒めてくれても構わんぞ?」

 

「レ、レイナーレ様もそんなしげしげと眺めないで注意を――」

 

「よく見なさいよアーシア。

リアス・グレモリーもその他の連中も特に何も言ってないじゃない……………少なくとも見慣れる程このバ会長は見せたって事にな・る・け・ど・ね!」

 

「いだ!?」

 

 

 てな訳で、相変わらず変な所でアーシアが怒り、珍しくレイナーレが俺の味方をしてくれた――と思ったら笑顔になって俺の背中をつねってきたり、それを見てリアス達が生ぬるい目を向けてきたりとか色々あったが――

 

 

「ふむ、やはりこの格好が一番落ち着くな」

 

 

 新たなYシャツと黒の学ランに袖を通し、きっちりボタンを閉めた俺は十日振りの制服にちょっと満足な気分に浸る事が出来た。

 

 

「ほらバ会長、忘れ物よ」

 

「おっと済まん。十日の間は苦労かけた」

 

「そう思うのなら勝ってきなさい」

 

「どうかご無事で……」

 

 

 最後にレイナーレから投げ渡された『会長』の腕章を腕に取り付け、全ての準備は整った。

 

 

「お時間となりましたので、皆様を会場へとご案内いたします」

 

 

 後はレイナーレとアーシアの言う通り、ライザー・フェニックスに俺の持てる可能性をぶつけるだけ。

 

 

「行くか……」

 

 

 十日振りに戻った生徒会長・兵藤一誠として……初めから全速力でな。

 

 

無神臓(インフィニットヒーロー)……ver黒神めだか・改神モードON.

 

 

 ……? そういやなじみはどうしてるのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 安心院なじみにとって、今回のレーティングゲームは、只の余興にもならない出来事だ。

 弟子である一誠の成長を目にする為だけ。

 確かに対戦相手であるライザー・フェニックスは一誠よりも格が上だ。

 だがそれでもなじみは確信があるのだ……主人公としての覚醒を早くから成している今の一誠が勝つだろうと。

 戦いの中ででもそれ以外でも無尽蔵に成長する一誠は10日前とは違うと……。

 それに、一誠の影響を今のところ強く受けたリアスも――

 

 

「な、何ですって……? も、もう一度お願いします……」

 

「小さい声で言ったつもりは無いんだけど……仕方ないなぁ。

だから、僕も一誠と同じ様にリアスちゃんを気に入ったから、一誠とまではいかないけどそれなりに色々教えてあげようと思ってね……と、言ったんだよ僕は」

 

 

 サーゼクス・ルシファーは驚愕……否、受け止めがたいショックを受けていた。

 それは、この後始まるレーティングゲームにて、己を差し置いて弟子となり、全てを貰ってる兵藤一誠が如何なる者なのかを目にしようと、正直どうでも良い魔王として準備していた時だ。

 一京分の一のスキル腑罪証明(アリバイブロック)を使って再び現れてくれた安心院なじみが、はしゃぐサーゼクスを半分無視する様に出した言葉が、彼女を求めて止まない……いや病まないサーゼクスの精神ダメージを煽りまくっていた。

 リアスの兄……つまり兄妹なのに、知り合って少ししか経ってない筈の妹を贔屓する……。

 

 

「な、何で僕じゃないんですか?」

 

 

 思わず泣きそうな声と顔で、何時もの魅力的な笑みを見せるなじみに問うサーゼクスは既に気が狂いそうになっていたけど、何とか精神を保ちながら聞いてみた。

 するとなじみは、たった一言だけ……少女の様な声でサーゼクスに今まで頼まれても嫌だと突っぱね続けてきた理由を話した。

 

 

「いや、単純にキミのキャラが鬱陶しいってのもあるけど、やっぱりキミが『超越者』って呼ばれてるからかな。

確かに最初はそうじゃ無かったのかもしれないけど、完成するのが簡単だと分かってる奴に時間を割くのもかったるいじゃん? だとすれば、キミと似た年代を考えると、アザゼル君の方が僕は好きだね」

 

「なっ……!?」

 

「あ、別にちょいワルが好きって意味じゃないよ」

 

 

 いや、そんな事はどうでも良い。何故アザゼルが!?

 ぶっちゃけ正直今すぐにでも戦争覚悟でアザゼルを消滅させてやりたくなったサーゼクスだが、そんな考えは直ぐに消えてなくなった。 

 

 

「それにキミには嘗て、それとなく何度も課題を出してあげたけど結局クリアしてないし」

 

「………え?」

 

 

 課題? 何だそれは?

 初めて聞かされた事実に思わず顔を窺うサーゼクスに気にせず、なじみは続ける。

 

 

「リアスちゃんは一誠の影響を受けたお陰か、一発クリアしたんだよ。

それに、僕に対してヘーコラしないで一誠を取ろうとする気位も中々好きだしね……フフ」

 

「そんな……」

 

「ま、そういう訳だから、気分が乗ったら話し相手にでもなったげるよグレモリー君。じゃ、僕は二人の応援に行ってくるよ。バイバーイ♪」

 

 

 言うだけ言ってさっさと去ったなじみを引き留める事も出来ず、サーゼクス・ルシファーは失恋した子供の気持ちで思いっきり泣きたくなった……とだけは言っておく。




補足

見られる事に快感は覚えません。
単純に誉めて欲しいだけです。


その2
リアスさんはサーゼクスさんを『お兄様』と今まで呼んでました……が。
グレイフィアさんとミリキャス君の扱いを知ったせいで半分幻滅中です。
故に、兄となりました

その3
安心院さんは単純にアザゼルさんを引き合いに出しただけで、特にどうも思ってないです。
まあ、中二病時代にその体現者みたいな彼女と出会ってから向こうがどう思ってるか知りませんが。

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