色々なIF集   作:超人類DX

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どうしてこうなるのかなぁ!!


大嘘予告・副担任さんの憩い

 これって殆ど俺と箒が勝手に呼び慕ってるだけなんだけどさ、箒は血の繋がる姉の他に、俺は血の繋がる姉と――うーんと、弟なのかどうかは未だに微妙としても、そんな血の繋がりとは別に姉や兄と呼び慕う二人がいる。

 

 身体が弱いという事になってる弟の付き添いで高校受験に同行した時に何故か試験会場にあったパワードスーツに二人して触れたらそれが動いてしまい、まぁ何だ……本来なら女性にしか起動不可能な筈の中でのイレギュラーとして揃ってこのIS学園にぶちこまれた訳だが、何の因果かこのIS学園に非常勤校医と用務員として勤務しているんだよね、その二人が。

 

 

「け、決闘ですわ!!」

 

「良いよ……それでキミが解ってくれるなら………」

 

 

 それはそれとしてだ。

 正直に言えば箒がもし居なかったら単純に肩身の狭い思いしかないこの学園での学生生活がスタートした訳だけど、俺はトラブルを回避して出来るだけ楽しい生活にしたいと思う。

 無論、どうであれこの学園に入る事になってしまったからには予備知識の時点で遅れているのでちゃんと勉強はするし、同じクラスとなっている弟とも『角の立たない』関係を維持しつつ外様から見守ってあげようと思う。

 

 いきなり朝起きたら弟として沸いて出てきた意味不明でどこの誰ともわからない不気味な奴だろうとも10年も兄弟をやらされてりゃあそれなりに慣れてくるんだよ、本音は別にしてもね。

 

 

「あーらら、アイツも大変だねぇ……」

 

「他人事だな」

 

「そりゃそうだろう。小競り合いになってるのは春人とあのオルコットさんって人なんだし」

 

 

 女絡みでのトラブルが多い春人が頑張ってくれるってんなら応援くらいはするってもんだよ……と、互いの祖国のディスり合いから発展した修羅場を箒と他人事の様に眺めながら、春人大好きな千冬姉が身体を弱いのを理由にオルコットさんの話を却下しようとするのだが、本人はやる気があるらしい。

 

 

「大丈夫です先生……やります……」

 

「しかし……」

 

 

 嫌にやる気の春人に姉が渋るが、結局その意思に押される形でめでたくオルコットさんと春人の決闘が決まるのでした、めでたしめでたし。

 

 

「決まりですわね。ところでそちらの方はどうされますの?」

 

 

 ―――と、思ってたら全然関係ない俺に飛び火してきた。

 何でだ……。

 

 

「俺? ……いや何で俺?」

 

「決まっていますわ、貴方も男だからですわ」

 

 

 自薦もしなければ他薦されてもいない俺を敵意丸出しで睨んで来たオルコットさんの理由に俺は理由になってないだろうと内心突っ込む。

 

 

「いやいやいやいや自薦は勿論、他薦もされてないんだぞ? 第一キミと春人の問題じゃないか。なぁ?」

 

「え!? あ、あー……確かにそうかも」

 

 

 箒とは反対隣の女子に同意を求め、それに対して急に話し掛けられて驚きながらも頷いてくれたので、俺は『ほら』とオルコットさんに俺を巻き込むなと遠回しに促す。

 

 

「ふん! 逃げるのですか? そちらの弟さんの方が少しは骨があるようで……」

 

「逃げるって……えぇ? 無関係な事に巻き込まれてるだけと言ったら逃げてる事になるのか?」

 

「別にならんだろ。何せ急にお前に振られた訳だし」

 

「だよな?」

 

 

 わざわざ争う理由もないのに争う程無駄な時間も無い――――つまり単に一々付き合う程暇でも無いってのが本心な訳で、箒の同意も得られたところでオルコットさんは失望したかの様な表情になると、わかりましたと言って話を終わらせた。

 

 

「決まりだな、春人とオルコットが試合を行い、勝った者がクラス代表とする」

 

「わかり、ました」

 

「はい」

 

 

 危やうく俺まで巻き込まれそうになったのを何とか逃げて一安心。

 クラス代表だなんて名だけの体の良い雑用なんて俺はごめんなのだ。

 春人とオルコットさんが互いににらみ合い、そんな春人を見て一部の女子と千冬姉が勝手に悶絶してる所を外様から眺めながら、俺は入学決定の際に渡され、こっそりちょくちょく会っては一緒に勉強して使い込んだ分厚いISの教本を広げるのだった。

 

 

 

 

 

 さて、そんなこんなな授業も、箒と一緒に必死こいてしていた予習もあって何とか乗り越えられた。

 途中、副担任でリアス姉や箒なんかよりひょっとして胸がデカい山田先生に何度もあれこれと心配されたりもしたけど、予習の成果はバッチリで基本的に割りとスパルタ式なタイプの千冬姉に怒られずに済んだ。

 何故か春人に驚かれてたけど。

 

 

「予習してなかったらスタートから挫折してたぜ」

 

「私もそれほど詳しく無かったしな。やはり二人に言われてやっておいて正解だった」

 

「………」

 

 

 そんな訳で放課後となった訳だけど、今俺と箒と、少し離れた席に座っている春人は千冬姉――おっと、学校では織斑先生と呼ばないと怒られちゃうか? とにかく先生に言われて教室に残されており、暇なので箒と一緒に今日やった授業の復習をしながら話をしている。

 くっちゃべりながらやると全然頭に入らない筈だが、箒とだとこれがまた不思議な事にスラスラと頭に入る。

 

 まぁまだ基礎中の基礎についてしか予習してないので、専門知識系統が出てきたらそうもいかなくなるだろうが……。

 

 

「あのさ……」

 

「あ、箒の姉ちゃんの顔写真じゃん。やっぱ開発者だから歴史の偉人みたいに顔写真とか載るんだな?」

 

「間違いなく天才だからな姉さんは――っと、何だ春人?」

 

 

 ちょうど開発者である篠ノ之束についての頁を読みながら感想を言い合っていた俺と箒にいつの間にかこっちに近づいていた春人に話し掛けられて、勉強の手を止める。

 

 

「おぅ、何だ春人?」

 

「何でそんな親しげなの……?」

 

「はい?」

 

 

 春人の質問の意図がっつーか主語が抜けてて分からなかった俺と箒。

 

 

「6年振りなのに、何でそんなに親しげなの?」

 

 

 それを察したのか、何故か少し不愉快そうな顔して俺と箒が何で親しげなのかを聞いてきた。

 そういえば箒自身は春人と6年ぶりに顔を合わせたんだっけか……。なんて思っていると、春人に全く関心が無くなった箒はただただ冷静に答えた。

 

 

「一夏とは引っ越して別れても連絡を取り合っていたし、暇が合えば会ってたからな」

 

「え……僕、しらない……」

 

「お前とは顔を合わせてすら無いしな。わざわざ会いに行くのも迷惑だろうし」

 

「おいおい、それじゃあ俺になら何の気兼ねも無く会えるぜって聞こえるんだが?」

 

「私はそうだと思ったのだが……迷惑だったか?」

 

「いーや全然? 箒と一緒に居るの楽しいし」

 

 

 迷惑だったか? と言った時に見せた然り気無い上目遣いに内心『あ、かわいい』とか思いながら迷惑なんてひとつもないと返しつつ何となく頭を撫でる。

 内緒にしてたつもりは途中から無かったが、あまり関わりたくは無いのが箒の本音なので春人にも千冬姉にも黙ってた訳だが、まぁ別に犯罪をしてた訳じゃないので悪いとは思ってない。

 一々親兄弟に友人関係を逐一話さないといけないわけじゃないしな。

 

 

「……箒ちゃん、政府の人に監視されてるんじゃ……」

 

「あぁ、姉さんの事で何度か尋問を受けたり家を変えなければならないということは多かったな。

しかし今の世の中電話ひとつあれば声だって聞けるし、会う約束だって取り付けられる。

監視されてるといっても古い友人に会ってるというだけで悪いことはしちゃいないしな」

 

「大変だよな箒も」

 

「流石に慣れてしまったさ」

 

「………」

 

 

 はははと、箒の姉関連で政府から色々とストレスの溜まる事をされて来たのに慣れたと返すが、実はこれはブラフだ。

 てのも会う約束をすればイッセー兄かリアス姉が一瞬で会わせてくれるし、監視の目を誤魔化す逃げの技術を二人から学んでるのでどうとでもなるのだ。

 これもわざわざ春人に言う必要も無いので黙ってるし、本人も何かを疑ってる様だがそれ以上追及しては来ない。

 

 

「話してくれればよかったのに……」

 

「身体が弱いお前に言っても迷惑だろうからと箒が言ったんだよ」

 

「それにあまりこういう事は言いたくないが、私は一夏と会うのが目的だからな」

 

「………」

 

 

 おーい箒ちゃん、それはぶっちゃけ過ぎじゃないか? いや俺もそんな本音があったりするけど。

 だって昔からそうだもの。すぐ具合悪いっちゃあ千冬姉や箒の姉ちゃんに構われてるせいで完全に俺と箒は蚊帳の外だったし、例えば遊園地をもし一緒に行くとしても具合悪くなったら中止になる。

 

 他にも理由はあれど、俺や箒としてはなるべく春人と関わるのは――っと? 何故俺が睨まれるんだか……気付かないフリするけど。

 

 

「お待たせしました篠ノ之さんと織斑君達!」

 

 

 微妙な空気になりかけ、さてどう誤魔化すかと考えようとしたその時、まさにグッドなタイミングで教室に入ってきたのは、山田先生だ。

 入ってくるなり、ちと空回ってる感じのテンションな先生が来た事で春人の睨みつけも無くなり、何故残されたのかについての説明を一緒に受ける。

 

 

「えっとですね、寮の部屋が決まりました!」

 

 

 どうやら寮の部屋についての説明らしい。

 男子二人だし、同じ寮って訳にもいかないからその説明か何かなんだろう。

 数日は家から通う話はどうやら無しになったようだ。

 

 

「わかりましたが、荷物とかどうするんです? 家から暫く通えとあったので何にもございませんが……」

 

「私が持ってきてやった、感謝しろ」

 

 

 俺の質問に対し、山田先生が答えようとした瞬間、遅れてやって来た千冬姉が俺には小さめのボストンバッグを寄越し、春人には……キャリーケースがひとつ、ふたつ、みっつぐらい寄越さず千冬姉が持っている。

 

 

「着替えと、携帯電話の充電器があれば良いだろう?」

 

「明らかに春人の荷物が多い気がするのですが……」

 

「春人には色々と必要だからな」

 

「そうでっか……」

 

「………」

 

 

 相変わらず春人にはお優しいなぁ千冬姉は。良いんだけどね、確かに今渡された荷物の中身があれば俺的にも問題ないし。

 だから山田先生と特に箒はそんな顔しなくて良いぞ。依怙贔屓だなんて思ってすらいないし、それと春人……その妙に勝ち誇らなくても良いと思うよ。

 

 

「そ、それじゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね?

夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。

ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますが、二人とも今のところは使えません……」

 

「大浴場なんてあるんだ、へー?」

 

 

 山田先生が誤解でもしちゃったのか、俺に対して妙に気を使うような態度で色々と説明してくれる中に出てきた大浴場にはちょっと興味が。

 まぁ、殆ど女子高だし入れる訳が無いのは流石に他人の気持ちに無頓着とか言われる俺でもわかっ――

 

 

「大浴場は入れないよ一夏……女子と入りたいとかならべつだけど……」

 

 

 わかってたのに、春人が勝手に勘違いしたのか、俺に対して軽蔑するような目で言う。

 よく見れば千冬姉も呆れてるし……あっれー? 俺大浴場に入りたいなんて一言も言ってないんですけどー?

 

 

「お、織斑君は女子と一緒にお風呂に入りたいんですか!?だっ、駄目ですよ!?」

 

「落ち着いてくださいよ先生、大浴場があるんだなーとしか思ってませんし、この学園の状況考えたらいくら俺でも無理な事ぐらいわかってますって。なぁ箒?」

 

「ええ、よく()()から唐変木とか言われますけど、そういう事ぐらいならちゃんと察せますから一夏は」

 

 

 つーか正直言っちゃうと他人の裸体なんか見ても面白くないし。

 これも秘密だけど、前にリアス姉と箒とイッセー兄とで混浴くらいは経験してんだよなぁ。

 その時のリアス姉と箒の姿を見ると他の人なんか……ねぇ?

 

 

「ところで寮についての説明はわかりましたが、私は何故残されたのでしょうか?」

 

「それは部屋割りについて教えておくべきだと思ったからだ。体制が整うまでお前はこの二人のどちらかと同室になって貰おうと思ってな」

 

「はい?」

 

 

 他人の裸体のどうでも良さについて考えていたら、箒が残された理由についての説明を千冬姉からされてポカンとしてしまう。

 

 

「何故私が……?」

 

「古くからの馴染みだからな一夏にとっても春人にとっても」

 

 その理由を千冬姉が答えるが、さっき二人が来る前に春人とは6年ぶりで碌に関わってもないし、関わるつもりもなかったという会話があったので若干微妙な空気が流れる。

 

 

「では篠ノ之が選べ、どちらと同室になる?」

 

 

 その質問はどうかと思うんだけどな千冬姉……。

 そう思いながら千冬姉に問われた箒は多分一秒も満たない内に口を開いた。

 

 

「ならば一夏と同室でお願いします。

一夏とは引っ越しの後も連絡を取り合ってましたし、暇があれば会ってましたので」

 

「! そう……か」

 

 

 多分千冬姉もどっちを選ぶのかを分かってた上で聞いてきたんだろう、即答で答えた箒にほんの少しだけ声を詰まらせながらも鍵を渡し、さっきから地味に殺気を向けてくる春人へと視線を移した。

 

 

「では春人は私と同室だ」

 

「え……先生……と?」

 

 

 いや、訂正しよう。恐らく千冬姉は箒が俺と同室を選んだ事で喜んでただけだ。

 春人と同室になれるからと……はぁ、弟想いのお姉ちゃんだよホント。春人本人は戸惑ってるけどさ。

 

 

「私となら安心できるだろう? そら、行くぞ」

 

「ちょ……ま、待って! 他の人―――」

 

 

 決まるが早いか、大量のキャリーケース片手に春人を抱えた千冬姉はさっさと行ってしまったのを俺と箒と山田先生はただ見送った。

 

 

「最初からそれが目的だったなあの人」

 

「私がお前と同室であることを選んだ瞬間、そうとう喜んでいたからな……。空気が読めてなによりだ」

 

「あ、あの……その……だ、大丈夫ですか?」

 

「? 何がですか?」

 

「えっと……弟さんの方がどうも織斑先生に多く構われてるといいますか……」

 

「あぁ、べつに? 身体弱いししょうがないでしょ? それに箒と同室なら変に緊張しなくて良いですし」

 

「山田先生が気になさる必要はありませんよ、大丈夫です」

 

「は、はぁ……」

 

 

 変な誤解をされてしまった様で、二人して大丈夫と言っても先生の同情めいた視線は結局止まらず、『困った事があったら何でも言ってくださいね?』と俺と箒の手を握りながら寮部屋の前まで送って貰うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 少しだけ嫌な光景を見てしまった気がする。

 一年一組副担任の山田真耶は、今年になって正式な教師としてIS学園に勤務し、最初に受け持つクラスの双子の兄弟について考えながら小さくため息を吐き、フラフラとちょうど去年から始まった一年間の研修の際に知った憩いの場へと向かう。

 

 

「どう見ても織斑先生が弟君の方ばかり贔屓されてる様なので、大丈夫なのかなと思いまして……」

 

 

 教師という職の大変さを研修の中で知る内に、やはり向いてないのかと悩み始めた頃に偶然発見した憩いの場に踏み入り、開口一番に先程見てしまった先輩教師の面について打ち明ける真耶の視線の先には……。

 

 

「あの、すいません。去年から言ってますけど、ここ別に進路相談室でも教師の休憩所でも無いんですけどね……」

 

 

 この広い学園の中で一人か二人しか存在しない用務員さんが、ただただ嫌そうに――されど仕方ないとばかりに買っておいた日本茶を淹れ、真耶に差し出す。

 

 

「織斑先生が今年入学した双子の片方ばかり妙に甘いってのはわかりましたけど、本人が平気って言ってるのだから無理に余計な事はしない方が良いでしょうに」

 

「で、ですが露骨といいますか……」

 

「身体が弱いんでしょう? そりゃあ構わない訳にもいかないし、頻度も多くなりがちにもなるでしょうし、本人だってそれを知った上でそういう生活をしてるんだから慣れてるに決まってるでしょうに」

 

「そ、そういうものなのでしょうか?」

 

「言う程男は脆くは無いんですよ……って、何で俺が貴方の相談を聞かなければならないんだ。あの小娘といい……」

 

 

 めんどくさそうに、自分の分も淹れたお茶を飲みながら用務員――兵藤イッセーは自分と違って折り合いを付けられてる弟分―――弟分である事は話さずに平気だから黙って見てやれと促す。

 

 去年の夏頃だったか、リアスと共に学園での仕事に慣れ始めてきた辺りに偶然迷い混んできた当時研修生で教師の大変さに迷いを持っていた真耶に、適当な事を言って煙に巻いたつもりだったのが、気付いたらあの生徒会長の子と同じように暇さえあれば押し込んで来てはあれこれと相談してくる様になってしまった。

 

 

「わかりました、イッセーさんがそう言うのであれば暫く様子を見守ってみます!」

 

「いや、俺の言うことに一々従って貰うのも困るんですけどね」

 

 

 年齢的には年下だが、教師というのもあって敬語を使うイッセーは、この童顔巨乳の新人教師の空回りになりかねない気合いに対して突っ込む。

 最初見た時から危ういというのか、教師になって大丈夫なのかと思うくらいドジりやすそうなタイプなのだが、リアスと結構仲が良いように見えたので、仕方なく柄じゃないと自覚しつつの相談事に乗ってしまっている。

 

 

「それと下の名前で呼ぶのはちょっとやめて貰えませんかね?」

 

「え!? だ、ダメなんですか……? 更識さんは呼んで良いのに……?」

 

「いや、あの子は言っても全然聞かないから……」

 

「だめ……なんですかぁ……?」

 

「……………………。もう良いです、好きに呼んでください」

 

 

 その結果、楯無こと刀奈と同じく妙に懐かれてしまい、名前で呼ばれてしまっている。

 本人は何か距離感の近さを感じて嫌なので苗字呼びにさせたいのだが、それを言うと今みたいに泣きそうな顔をするし、諦めてじゃあ好きにしろと言えば誰がどう見てもわかる喜びにはにかむ。

 悪意が無い相手に対しての耐性がリアス以上に無いからこそのある意味での弱点といえるのかもしれない。

 

 

「でもやっぱり不安ですよ、織斑君大丈夫かなぁ……」

 

「…………」

 

 

 そんな訳で山田真耶とは知らない仲では無く、しきりに一夏を心配し続けるのを見かねたイッセーは、しょうがないと携帯を取り出すと、スピーカーモードにして誰かに電話し始める。

 

 

「えっと誰に……」

 

「静かに」

 

 

 誰と電話するのだろうかと、スピーカーから聞こえる呼び出し音に首を傾げた真耶に声を出すなと釘を刺すと、それと同時に電話相手が出る。

 

 

『イッセー兄か、どうしたんだ?』

 

「え……こ、この声って織――むごっ!?」

 

「おうイチ坊、聞いたぞ、箒と一緒の部屋なんだって?」

 

『? そうだし今横に居るけど、今誰かの声が聞こえた気がしたんだけど、リアス姉と一緒か?』

 

「いや、誰も居ない。リアスちゃんは今保健室じゃないか?」

 

『ふーん?』

 

「……………」

 

 

 思わず驚きで声が出そうになる真耶の口を咄嗟に手で押さえながら、弟分と妹分と会話するイッセーを、口を押さえられた真耶はただただ驚いた。

 まさかイッセーが一夏と箒とこんな親しげだなんて……政府から渡された資料の中にあった各々の人間関係調査の資料に名前なんか無かったのに……。

 

 

「弟君は織斑先生と同室だって聞いたが、大丈夫なのか?」

 

『何だよ、イッセー兄までそんな事聞くのかよ? 副担任の山田先生にも妙に心配されたけど今更だろ。

アイツ身体弱いし、寧ろ妥当じゃんか……なぁ箒?』

 

『ええ、私としても正直言うと春人とはそこまで親しくはありませんからね。同室になって体調を崩されても対処法もあまり知りませんし』

 

「………」

 

「そっか……」

 

 

 電話越しにきこえる二人の心境を聞いた真耶は、本当に気にしちゃいないんだと理解する。

 

 

『それより用務員室って何処だよ? 今から俺と箒で遊びに行きたいんだけど』

 

「あー……悪い、俺これから校内清掃しないといけないから明日来いよ? 明日なら、ちょうど放課後の今ぐらいの時間ならリアスちゃんとも合流できるし」

 

『そっか……仕事ならしょうがないか』

 

『手伝えるなら手伝いたいのですが……』

 

「ばっか、俺の仕事だしこれで飯食ってんだからそんな気遣いは要らんよ。お前達は学生らしくちゃんと勉強したり青春でもしてろ、んじゃな」

 

 

 かなり二人とは仲が深いのか、比較的ラフな口調であると口を押さえられ続けた真耶は感じながら、電話を切ったイッセーに解放される。

 

 

「お、驚きました。篠ノ之さんと織斑くんとお知り合いだったのですね?」

 

「ええまぁ……。それよりわかったでしょう? アイツ等が別に強がりじゃないって事を」

 

「は、はい。わざわざありがとうございます!」

 

 

 携帯をしまい、机の引き出しから備蓄していた一口サイズのバームクーヘンを真耶にあげつつ口の中に放り込むイッセー。

 この頼りない新人教師を納得させる為とはいえ、ここまでするのはどうなんだろうか……と今更ながら考えるが、さっきから妙にキラキラした眼差しを貰うので考えるのはやめた。

 それより、別にリアスと共に二人と親しい事についてバレて困ることはそんなに無いが、春人のこともあるので一応真耶には口止めをしておく。

 

 

「あの、余計な勘繰りとかされたくないので、二人と親しいことは黙ってて貰えますかね?」

 

「それは構いませんけど……何でですか?」

 

「何となくですかね深い意味とかも無いですが一応……先生と俺の秘密って事でどうか」

 

「! イッセーさんと私の……」

 

 

 特に深い意味も無いけどそう念を押した瞬間、少し下を向いて一人ブツブツ言い始めた真耶は、やがて勢いよく立ち上がると……。

 

 

「わ、わかりました! イッセーさんと私だけの秘密ですし、絶対に誰にも言いません!」

 

「気合い入れる所間違えてるんですけど……」

 

「いえ! 絶対に言いませんから私!」

 

「は、はぁ……」

 

 

 よくわからん子だな。と、無駄に気合いが入ってる新人教師さんを眺めながらお茶を飲むイッセー。

 ニヘラニヘラとしながらしきりに『イッセーさんと私だけの秘密……』と言ってるその意図は知らずに。

 

 

「あの、所で折角教師にもなれましたし、記念に飲みに行ったりなんか……」

 

「飲みに? ……………あ、そっか、先生は成人してましたね。

別に構いませんよ、リアスちゃんと予定が合えば――」

 

「ぐ、グレモリー先生とはまた別日にして、ま、まずはイッセーさんと――」

 

「それは嫌です。変な誤解されたくありませんから」

 

「うぅ……」

 

 

 リアス馬鹿なので仕方ないのだ。




補足

本人は怠がって適当言ったつもりが、言われた本人からしてみれば大当たりだったらしく……。
ちなみにリーアたんは特に何も言いませんし寧ろ余裕に構えてます。


その2
一夏も箒も単純に『巻き込まれるのはいやだ』という事で空気に徹する気満々であり、弟には是非頑張っていただきたい。

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