色々なIF集   作:超人類DX

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あーもう! なんでこうなるかなぁ!!


嘘予告2 用務員さんとぽんこつな――

 女性のみが起動できるパワードスーツのその軍事的価値により、世界は女性の立場が強くなる女尊男卑へと変わっていった。

 だからこそISと呼ばれるそのパワードスーツを男が起動したともなれば大騒ぎにもなるし、その価値も高まるしその身を研究してやろうという悪意も生まれる。

 

 だからこそ世界で初めて男でありながらISを起動させた織斑春人は女性率100パーセントだったIS学園へと入学する事になった訳だが……。

 

 

(……)

 

 

 織斑春人は間違いなく性別は男である。

 だがその容姿はかなり幼く、更に言えば姉の千冬にとても近い顔立ちな為一見すれば女に間違われる事が多い。

 つまり男性耐性がそれなりに低い学園の女子達からの視線を教室のど真ん中の席で一手に受けてしまう訳であり、かなり萎縮気味だった。

 ――――少なくとも見た限りでは。

 

 

「見ろよ箒、なんか大学生が使ってそうな椅子と机だぜ。しかもホワイトボード!」

 

「わかったから少し落ち着け……」

 

「いやぁ、まさか起動させたおかげで箒と同じ学校――しかもクラスまで一緒ともなればテンションも鰻登りってもんだぜ!」

 

「まさか暇さえあれば会ってる奴がテレビに出てくるとは思わなかったぞ私は」

 

 

 転生してから大分経ち、織斑春人としての第二の人生を謳歌している今、やっと待ちにまった原作の最初の場面。

 男性の起動者としてこれから色々な事を経験するのは、チート能力を持つので心配はしていないが懸念すべきは自分の存在によりその中心から追い出した二卵性の双子の兄にて原作主人公の一夏の存在だ。

 

 

「それにしてもやはり目立つな春人は」

 

「真ん中の席に加えて千冬姉に似てるしなぁ、昔から妙にモテモテだったし慣れてんだろ多分」

 

 

 千冬に似ている顔立ちな為、一夏よりも春人がちやほやされ、今一夏の隣で特に興味も無いと他人事の様に呟く長い黒髪の少女である篠ノ之箒の姉でありISの開発者たる束からすらも構われる。

 それは春人としても良いとは思うのだけど、問題は箒だ。

 

 

「それよりさ、縁が無いと思って殆どISについては知らないから、出来れば勉強に付き合って欲しいんだけど……」

 

「構わないぞ。……まぁ私もISについては深く知らないからほぼお前と一緒に学ぶ形になるが」

 

「全然良いぜ、いやぁ、小学校以来だなぁ、こうやって一緒に勉強するの」

 

「宿題はしょっちゅうやっていただろう。引っ越してしまった後でも」

 

「そりゃあそうだけど、なんか心持ち的なのが違うじゃん?」

 

「それは確かにそうかもしれないな……」

 

 

 性格が違う。

 原作の様に何かに付けて暴力暴力のヒロインとは思いたくもない様な苛烈な性格が一切感じられない。

 これが春人にとってのひとつの誤算であり、元々篠ノ之箒というキャラクターが気にくわなくて一夏の弟として転生してからも殆ど絡む事なく一夏に全部押し付けていたつもりだった。

 

 しかし蓋を開けてみれば、今の箒はとても落ち着いた性格をしており、その美少女たる容姿も相俟って欠点が消えたヒロインの様だった。

 

 

(……僕が転生した影響?)

 

 

 その理由を自分の転生である事と考えた春人は、窓際の一番後ろの席に座る箒と、普通にその隣にちゃっかり座ってナチュラルに近い距離感で話し込んでる一夏を盗み見しながら、この箒なら……と考える。

 随分と虫の良い話だが、第二の人生は無条件で他人から受け入れてもらえる事に慣れすぎたせいで本気でそう思ってるのだから質が悪い。

 

 

「あ、春人がこっち見てる。手でも振ってやるか?」

 

「私達が煩いんだろう。もう少し静かにしような?」

 

 

 その箒本人からは死ぬほどどうでも良い他人――姉の束が他人に向ける認識よりも更に上のソレになっているとは知らないで……。

 

 

 

 所変わって此方はIS学園用務員室。

 本来用務員として行動しているのは、この学園の真の学園長なのだが、その学園長と偶然知り合い、そのままスカウトされる形で一夏と箒が入学する約一年前から用務員として学園の清掃や雑用の仕事をしている者がいる。

 

 

「花壇の土変えと、壊れた棚の修理完了――っと」

 

 

 作業用のツナギを着た若い見た目の青年。

 兵藤一誠という名の異界からペアである少女と共に流れ着いた者である。

 

 

「残りは放課後まで暇潰しか。

へへ、やることやってさえいれば自由時間が長くて給料も良いなんてボロい仕事だぜ」

 

 

 作業日報を書き上げ、今の時代では化石とさえ呼ばれるブラウン管テレビをつけ、未だに世を騒がせる二人のIS男性操縦者についてを扱ってるワイドショーを眺めながらお茶を飲む。

 本当なら今頃保健室で非常勤校医として居るリアスを呼びたいが、互いに仕事中であるのでそれはせず、放課後まの時間をのんびりと過ごす。

 

 

「イチ坊と箒は大丈夫なんかねぇ……」

 

 

 偶然知り合った自分とリアスが経験させられた忌まわしき思い出に酷似する経験をさせられていた弟分と妹分の事を考えながら……。

 

 

「まぁ、俺と違ってあの二人は完全に『折り合い』を付けてるし大丈夫なんだろうけど」

 

 

 イチ坊こと一夏の写真がTV越しに映り、その隣には世界最強の女性と吟われる一夏の実姉でありこの学園で教師をしている織斑千冬をかなり幼くさせた織斑春人の映像が流れる。

 

 これが転生者……。かつて自分とリアスが地獄に一度突き落とされた原因たる転生者と顔立ちから何から違うにしても嫌でも重なるが、イッセーは気だるげにリモコンを使ってチャンネルを変える事で振り切る。

 

 

「まあ、精々イチ坊を踏み台にでもして悦に浸れば良いさ」

 

 

 自分と違って折り合い付けた事で逆に強くなれた弟分の事を思いながら。

 

 

 

 

 

 さて、そんな訳でイッセーとリアスは単なる給料目的でIS学園で働いている訳だが、実の所単なる用務員でしかないイッセーはこの学園の空気にも等しき目立たなさだったりする。

 リアスは非常勤校医なのとその美しき容姿もあるのでそれなりに知られているが、帽子を目深く被り、土いじりや清掃や備品修理という裏方全開の仕事を淡々とやるイッセーはたまに見る顔もよく見えない用務員さん程度でしかなかった。

 

 本人的にも空気である方が良いと思っているし、そうなってしまう理由もかつてリアスと共に生きる為に転生者から逃げ続けた内に会得した特性みたいなものであった。

 

 

「良いねぇ、クソ野郎やリアスちゃんの裏切り者共に煩わされる事のない生活ってのも」

 

『俺は頗る暇だがな。この世界には張り合いのある相手など居らんし』

 

 

 それはイッセーとリアスの望んだ物であるのだが、イッセーの中に宿る相棒の龍はちと退屈であり、腑抜けた顔で椅子の背凭れに身体を預けながらTVの音声をBGMに週刊紙を読んでいる宿主に少しの不満を感じる声を放つ。

 

 

「それは――悪いと思っている。

本当ならお前を向こうに残して俺とリアスちゃんだけで逃げられたら良かったんだけど……」

 

『それはそれで嫌だぞ俺は。

どちらにせよ歴代の中では間違いなく最強で最新の領域に進められたのだしな。

強いて言うならあのカス野郎を始末できなかった事が心残りか……』

 

 

 相棒の龍にとって宿主のイッセーは全てを奪われても這い上がった歴代最強の宿主だが、それ以上に歴代の宿主の誰よりも濃密に心を通わす事ができた本当の意味での相棒だ。

 いくらこの世界が龍にとって退屈で暇だとしても、この最良の相棒と永遠に別れて新たな宿主の元へと行く事を考えたら退屈の方が遥かにマシだ。

 

 

『まぁ、真なる赤龍神帝と無限の龍神を破壊した事で奴等は越えられたという証を得られたし、贅沢は言えないな』

 

「その後が余計大変だったけどな当時は。

あのクソ野郎がマジになりやがったし」

 

 

 間違いなく世界最強の龍へと一度は到達できたのだから。

 

 唯一無二の無神の赤龍帝……それが全盛期の兵藤イッセーでありその力はこの平和な世界でも鈍る事はない。

 修行頻度は落ちているものの、今でも暇を見つければリアスと共に一夏と箒にもしもの時の為の生きる術を叩き込む為に維持さている。

 

 赤龍帝であるのとは別に、全てを奪われ、その復讐心が爆発する事で覚醒したイッセー自身の精神性から生まれた異常性は常に成長を促す。

 つまりそれは単純にイッセーは強いという事であり、空気に徹していてもほんの一握りの者には予感めいたもので見抜かれてしまうものなのだ。

 

 

「おっはよー! イッセーさん居ますかー?」

 

 

 こんな風に、授業中な筈なのに当然の様にサボって用務員室へと突撃してくる者がここ一年で現れてしまったのだから。

 

 

「あ、居た居た、ふふーん、グレモリー先生は居ないわね? 可愛い現役女子高生ですよ~?」

 

「……………………」

 

『また来た……』

 

 

 宿主のイッセーにしか聞こえない相棒の龍ですら微妙に嫌そうな声になるくらいは何故かしつこい女子高生に、イッセーもまた微妙に嫌そうな顔をしてしまう。

 

 

「またキミか。悪いが仕事中だしキミは授業中な筈だろう? 先生方には黙っていてあげるから戻りなさい」

 

「TV付けながら雑誌読むお仕事なんて聞いたこと無いなぁ? それに授業は受けなくても問題ありませんし?」

 

 

 若干遠回しに鬱陶しいから帰れと促しても、日本人とは思えない髪の色や目の色を持つ少女はニコニコしながら、ダメと言ってるのにも拘わらずイッセーも座っている横長のソファーに座り出す。

 

 

「はぁ……この場所が一番落ち着きます」

 

「落ち着くのはわかったけど、だからといって授業をサボる理由にはならないよ」

 

「わかってますって~ ふふーん、グレモリー先生が居ないと構ってくれるから余計帰りたくないな~?」

 

「…………」

 

 

 やたら保健医のリアスに対して笑っているものの変な対抗意識を感じる言い方をする水色のはねっ毛に赤目の美少女と呼んでも差し支えのない少女は、然り気無く距離を詰めてきた。

 

 

「おい、それ以上俺に近寄るのはやめろ」

 

「あ……」

 

 

 当然、困るどころか下手したら懲戒免職ものなのでイッセーは肩に頭を乗せてこようとしてきた少女の顔を掴んで押し退けると、少女は口を3の形にさせながら不満を洩らす。

 

 

「ぶーぶー、いけずー!」

 

「いけずじゃないよ、はぁ……まったく」

 

 

 リアスは何も言わず、この少女とも面識がある上で特に何も言わないけど、イッセーにしてみればこんな小娘に一々距離を詰められるのはただただ鬱陶しいだけなのだ。

 現在二学年で、用務員をやり始めた頃の自分と同時期に入学し、何の仕掛けか生徒会長というものになっていた訳だが、その直後に空気に徹していた自分を認識し、特に何をした訳じゃないのに何故かこうなった。

 表では人を食った様な飄々とした性格なのだけど、自分やリアスに絡む時はかなり子供っぽい。

 

 特にリアスに対しては意味不明な対抗意識を子供染みた感じに剥き出ししており、その理由もまた訳がわからない。

 確か疎遠になった妹についてを急に話してきたので適当にそれらしい事を言って煙に巻いた辺りからだったか……。

 

 

『妹の簪ちゃんとはやっぱりもう仲直りできないと思います』

 

『ふーん……それで良いのかキミは? 随分と落ち込みながら急にベラベラ話してたじゃないか?』

 

『そうでしたね。うん……私が言ってはならないこたを言ってしまったし、謝る所で言ってしまった過去は無かったことにはできないので……』

 

『あ、そう。ならばキミの出来る事をしてあげれば良いだろ? 例え嫌われてしまおうがさ』

 

 

 別にその妹というのにも何の関心は無かったが、取り敢えずかなり凹んでたのと、悪意のない者には根は結局お人好しなイッセーは、この少女の悩みや愚痴をきいてあげていた。

 その結果、例え自己満足でも自分は妹に出来ることをするという覚悟を決めたらしく、それ以降からどうも距離を詰めてきた――という経緯もあったりする。

 

 

「実は久々に簪ちゃんと話をしてみようかなって思ったんです。今年この学園に入学したので……」

 

「へー?」

 

 

 イッセーに押し退けられて不満を洩らしていた少女が急に沈んだ表情を浮かべながら話し始める。

 どうやら来た理由のメインがこれらしい。

 

 

「タイミングというか、間の悪さってとことん続くものですよね。

ほら、織斑兄弟が入学したでしょう? その兄弟の片割れに政府が専用機を与えるって話になったのですけど、その機体の開発の為の人員やコアって実は妹が持つ筈だった専用機に使われる筈で……」

 

「つまりそれのせいで凍結され、余計イライラしてて話をしようとしても突っぱねられたと……?」

 

「あはははー正解~……。『何でも自分で出来る貴女なんかに慰められる理由なんか無い』って言われちゃいましたー……♪」

 

 

 おどけて見せてるが、どう見たって無理してる様にしか見えない少女の姿にイッセーも若干ながらその間の悪さに同情したのと同時にサボってまで来た理由も理解した。

 

 

「なるほどね、授業なんかに集中できないから来た訳だ。リアスちゃんの所の方が良かったと思うけど」

 

「嫌ですよ、グレモリー先生には絶対弱味は見せたくありません」

 

「俺に見せても不正解だろうに」

 

「良いんです~! イッセーさんになら全部見せられるんですぅー!」

 

 

 リアスの名前が出た途端、またしても変な対抗意識を燃やし始めた少女にイッセーは呆れた表情だ。

 

 

「餓鬼かキミは――あぁ、まだ餓鬼の年齢か」

 

「むっ! 餓鬼じゃありませんよ! ほら、ちゃんとおっぱいだって大きくなってるし、その内グレモリー先生だって追い越します!」

 

「リアスちゃんは無理だろ。ほら、あの新任の眼鏡かけた先生ぐらいあるし」

 

 

 妙に胸を強調しながら若干寄ってきた少女にイッセーは冷静すぎる態度でリアスが上だとハッキリ言うと、少女もリアスの戦力を知ってるせいで言葉に詰まる。

 

 

「ぅ……じゃ、じゃあ! 張りと揉みごたえで勝つもん! だ、だからその……さ、触ってみたりとか……」

 

 

 しかしそれでも負けたくないのか、自分で言いながらも徐々に恥ずかしくなってきたのか、もじもじしながらとんでもない事を宣うのだが。

 

 

「嫌だね。リアスちゃん以外のなんか価値もクソもねぇわ」

 

 

 即答で彼は少女の勇気を切り伏せた。

 

 

「むー! イッセーさんのバカ!」

 

 

 他の者からは無かったのに、イッセーもリアスも確実に自分を子供扱いしてくる。

 いや、現に自分はイッセーを特に前にすると肩肘張らずに居られるし、安心できる。

 己に課せられた使命や道について考える必要もなく、一人の人間として居られる……だから彼女――更識楯無は同年代にしか見えない若々しい少年の様ながらも包容力が凄まじいこの青年に懐いているのだ。

 

 

「バカってなんだよ、確かに学は無いけど……」

 

「そういう意味じゃありませんし、いい加減名前で呼んで欲しいの!」

 

「はいはい、わかったから落ち着けよ更識さん」

 

「苗字じゃなくて……!」

 

「え? あー、何だっけ? 楯無さん?」

 

「それは実家の当主が名乗る名前で、本当の名前は前に教えたじゃないですか! 刀奈ですよ!」

 

「そうだっけ? はい、刀奈さん――これで満足?」

 

「う……よ、呼ばれたら呼ばれたで恥ずかしい……」

 

「どっちなんだよ、めんどくさいな……」

 

 

 多分それは蕀の道かもしれないのに……




補足
悪意が無い相手には基本的に押されると、根っこのお人好しさにより相談くらいには乗るらしい。
そのせいで変な事になりましたけど。

その2
故に彼の前ではかなり子供っぽくなるぽんこつなたっちゃん。
リアスちゃんに凄く対抗意識を燃やしまくりだぜ。

その3
妹に対しては違う意味での覚悟を決めており、例え永久に嫌われてしまおうが、姉として出来る事をする覚悟が入りました。

その4
転生者とその妹が仲良くなったら―――――専用機は転生者に渡るので濃厚ですね。

続き?
ぽんこつなたっちゃん。リーアたんに懐かしいのほほんちゃん、イチャイチャしてるいっくんと箒ちゃんが転生者やそれに与するヒロイン達を遠巻きに眺めながら楽しく用務員さん&保険医さんとお茶でも飲んでる話にしかなりませんので、ありませんね

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