いえ、続かないけどね。
離婚のストレスで一時期円形脱毛症にすらなっていたサーゼクスとミリキャス父娘。
其ほどまでに妻ないし母から拒絶されたショックが大きく、吹っ切るまでに多くの時間が掛かった。
妻ないし母が知らぬ男と寝ているという現実を突き付けられもすればそうなるのも仕方の無い話だし、誰も責められやしない。
そんな二人を救ったのは、地獄の底まで突き落とされた妹ないし叔母のリアスと、リアスに心底尽くす赤龍帝の少年――そしてグレイフィアを補正と謎の洗脳力で寝取った男に同じく何かしら奪われた仲間達の存在だった。
その者達が居なければ今の自分は居ない。そう断言できる程に種族の壁を越えた真の友。
地獄の底から這い戻りし逆賊のチーム。
それが神を破壊する為に集いしD×G
曰く『平和な世界』と了承も無く転送させられた逆賊者達は、とあるネガティブ気味な少女と知り合い、交流を続けた。
その結果D×Gチームの一人であるヴァーリが、何故だかわからないままその少女に懐かれ、かなり勇気を出した少女の誘いに乗り、共に街へと降り立った。
曰く、魔王が支配する世界で、所謂職業斡旋場みたいな所で仕事を受け、その仕事を完了すればそれに見合った報酬が得られる。
この世界の通貨を持たず、今までその少女に金銭面で助けられてきたチームD×Gは恩返しのつもりで少女――ゆんゆんというちょっと変わった名前の少女の誘いに乗り、職業斡旋場に登録したのだが……まぁ、お察しの通り素のパラメーター的なものがこの世界の理を超越してしまっているせいで、誰も彼もまともな数値が出ず、逆に最弱の職しか得られなかったらしく、ゆんゆんが一番大きい職だったとか。
「デカい蛙を駆除するんだって。
一匹につき1000エリス」
「じゃあ100匹狩れば10万だな」
一周して表示されるスペックが最弱であるチームD×Gに紹介される仕事は初心者に与えられる様なものばかり。
しかしそれでも誰も文句は言わず、今日の飯の為に仕事を引き受ける。
無論ゆんゆんも同じであり、寧ろ漸く獲られた仲間が居るというこの現実がただただ嬉しかった。
「メンツはどうしようか? 僕達全員で行くのも少し効率が悪いし、別れて別のお仕事でもするかい?」
「だな。じゃあ俺はこの水路の補強工事ってのをやろうかな、この世界のインフラの殆どは魔法的なもんで補われてるらしいから地味に調べたいし」
「俺はこのマンティコアとグリフォンの捕獲というものをやりたいのだが……」
「さっき受付から駄目と言われたでしょう? アナタは私と一緒にお花を摘みに行くの」
「じゃあ私とミリキャスはお兄様のお手伝いをしましょう」
「うん!」
ひとつの低級任務に全員は効率が悪いと、思い思いのクエストを別れて受注していき、当初の蛙駆除の任務はゆんゆんとヴァーリと余ったイッセーが受ける事になった。
「蛙ねぇ……」
「デカいだけらしいし、肩慣らしにもならんだろうが今日の飯の為だ」
「が、頑張ります……!」
指令書を眺めながら歯応えが無さそうだと呟くヴァーリをイッセーが宥める。
師に似て戦闘バカな面があるヴァーリ的にはあまりやる気の出ないクエストだが、飯の為には頑張るしかない。
ましてやミリキャスと歳の近い子供にこれ以上金銭面で面倒を見て貰うのは流石に情けないのだ。
「あのー……」
「「あ?」」
「?」
クエストも受注し、全員が準備に取り掛かる中、イッセーとヴァーリとゆんゆんも害虫蛙駆除の為の準備――といってもイッセーとヴァーリは素手だしゆんゆんもポーション的なものがあるかの確認なのだが、そんな三人に声を掛ける者が居た。
振り返ってみれば、そこには水色の髪をした少女とそこはかとなくイッセーっぽい少年が一人……。
「聞き間違えじゃ無ければ、今からジャイアント・トードの駆除のクエストをやるのですよね?」
「……? そうだが」
「っ!? で、では一時的で構わないので私達と一緒に行きませんか!?」
「ふ、二人だと……特にコイツとだけだと不安で仕方ないんです!!」
「は、はぁ……」
どうやら同じクエストを受けてるのを何処からか見ていたらしく、同行を申し出てきた。
何やら水色の髪をした少女がそこはかとなくイッセーっぽい少年と『ちょっと! 不安ってなによ!! この引きニート!』、 『本当の事だろうがこの駄女神!』と、言い争いになっている。
「一人頭の数が減るが、どうする?」
「まー良いんじゃねぇの? ゆんゆんは?」
「えっと……私も別に……」
取り敢えずしょうがないので同行を許可する事にする。
そうでないと取っ組み合いの喧嘩を何時までも止めそうに無かったので。
「取り敢えずわかったから、少し待って貰えるか?」
「は、はい……。(よ、よっしゃあ! 何となく強そうだったから寄生できないかとか考えたけど、上手く行ったわ!!)」
「ま、待ってます。(す、少しはまともな飯が食えるぞこれで!!」
実は寄生要因だったりするのだけと、そうとは知らずに準備を完了した三人は、チームのサブリーダー的な位置に自然となっていたアザぜルから呼び出される。
「全員集合しろ!」
「おっと、久しぶりのアレか?」
「良いじゃん気合いが入って。あぁ、ゆんゆんも入る?」
「何をするのでしょうか?」
「来てみればわかるさ………あぁ、そこの人達、もう少し待ってて貰えるか?」
「「?」」
ギルド場の丁度真ん中に立つアザぜルのそのアウトローじみた容姿に一部女性が頬を赤らめていたり、男が嫉妬したりする中を掻き分け集合する。
「さて、少し久々だが、心機一転の意味を込めてやろうと思う……異論は?」
『無し』
円陣を組み、円陣の真ん中に立ったアザぜルの言葉に意図がまだわからないゆんゆん以外の全員が頷くと、アザぜルは一度軽く目を閉じてからゆっくりと口を開いた。
「よろしく!」
「へ? えっ???」
「あ、ゆんゆんも入れてやりたいんだが……」
「当然だろ、ほら、ヴァーリの隣に入れ」
「あ、は、はい……!」
アザぜルの挨拶にチーム全員の声が重なり、ゆんゆんが困惑する中、チームが結成されてから自然と行われた願掛けの様な儀式はスタートした。
「負けた後の飯は美味いか?」
『NO!』
「気持ち良く風呂に入れるか?」
『NO!』
「ぐっすり眠れるか!?」
『NO!!!』
「だったら勝つしかねぇだろ!?」
『Yeah!!』
「い、いえぁっ……!」
突如始まった円陣と掛け声に見ていた周りの者達は困惑し、ゆんゆんもよくわからないけど拙い様子で付いていこうとする。
「We gotta Win!」
『Win!』
「Win!」
『Win!』
「Win!」
『Win!』
「Win!」
『Win!』
「Team D×G――」
『Go!!』
誰が始めようと言った訳でもない。
アザぜルの声に続いて全員が右足で床を踏みながら声を合わせ、最後は全員で締める。
その妙なテンションに周囲からの注目も半端なかったのだが、この逆賊チームに最早羞恥の概念が欠落しているのか、久々の円陣を終えて満足しながらそれぞれの仕事の為に散り散りとなる。
「妙な儀式も慣れちまったなオイ」
「願掛けみたいなものだからな」
「は、初めての体験でした」
どうであれ円陣も終わり、各々のクエストへと去った後、イッセーとヴァーリとゆんゆんはポカンとして突っ立っていた同行者と共に蛙狩に向かうのだった。
まさか後々になって変に多く関わるとは知らずに……。
終了
コカビエルはどう頑張っても人を2、3人はアレしてそうな悪人顔だった。
戦闘バカという性格もあるせいで余計にそう見られがちだし、実際ゆんゆんはコカビエルがちょっと怖かった。
しかしながらそんな悪人顔なコカビエルも深く対面すれば中々面倒見の良い男であるし、実際そんな姿に惹かれたのが天使のガブリエルだったりする訳で。
異界の地でもその美しき容姿は周囲の男達の心を奪うのに十分なガブリエルが知らぬ所でファンクラブみたいなものが出来たりするのだが、当の本人はその悪人顔の男と常に行動が一緒で、どう見てもその男の前では女の表情を見せている。
だというのにコカビエル本人は特に応えもせず、またそんな立ち位置に居るのだからヘイトを集める訳で……。
「ガブリエル? あぁ、アイツは本当に強くなったな。
時間さえあれば毎日戦いたいぐらいだ」
戦闘欲が強いせいでこんな回答ばかり。
本当はもっと深い見えない線で繋がってるからこその回答なのだが、当然そんな事を知らぬ面々はヘイトを蓄積していく。
「く、クソ、あんな怖そうな顔なのにあんな美人に好かれてるなんて……!」
「コカビエルのおっさんとガブリエルさんの事か? まぁ、あの二人はアレが自然だからな……」
「お前だってそうだろ! 俺と同類かと思ったらリアスさんとだなんて!! この裏切り者め!!」
「何時裏切ったんだよ……」
下ネタ的なトークだと神憑り的に話が合い、てっきり自分の同類と思っていた蛙駆除任務後からひょんな事が続いて知り合いになったカズマなる少年に裏切り者扱いされるイッセー。
確かに言われた通り、暇になればガブリエルの様にその容姿で注目されまくりなリアスとこっ恥ずかしいイチャイチャをしてるのだから仕方ないと言えば仕方ない。
とはいえ……だ。
「あ、カズマさんだ」
「いらっしゃい、一人かしら?」
「どうもミリキャスとリアスさん。ちょっとイッセーと話をしに……」
「ふーん、そっか。もしよかったら僕もお話したいな?」
「へ? えーっと……おう」
「ホント!? えへへ、じゃあ後でね! 早く終わらせに行こうリアスお姉ちゃん」
「ええ、そうね……ふふ」
「……」
「……………」
「……何だよ?」
「ちょっとゲスに加えて……まさかキミまでヴァーリみたいなロリコ――」
「ちげぇよ!!」
何かの一件以来、妙にミリキャスに懐かれたカズマはイッセーからロリコン二号扱いされていた。
無論一号は、カズマのパーティに加入しためぐみんなるゆんゆんと同族の少女に顔合わせれば絡まれ、そんなめぐみんに嫉妬するゆんゆんに挟まれてるヴァーリだ。
「にしても、試しにスティールを教えたサーゼクスさんがクリスのパンツをスティールするなんてな……」
「本人に悪気は無いってだけはわかって欲しいわ。
アレからめっちゃ絡まれるだろ……つーか、あのシーフってアレな訳だし」
「は?」
「いや何でもない……。
そんな事よりよカズマ君、キミんとこのアーククルセイダーさんを何とかして欲しいんだけど。
毎度毎度コカビエルのおっさんに『しばき倒してくれ!』って――俺でも引くんだけど」
「そ、そういう人種なんだよ。俺もまさかあそこまで怖いもの知らずとは思わなかったんだ」
「今はまだガブリエルさんも笑って済ませてるけど、その内ヤバイんだぜ? あの人尋常じゃないくらいコカビエルのおっさんが大好き過ぎるんだ」
「お、おう……忠告はしとくけど、多分俺ではどうにもならねぇ」
妙な化学反応が起きておかしな事になっているチームD×G
「見付けたぞコカビエル! きょ、今日こそ私と決闘しろ! そ、そしてあの鬼畜めいた力で私を虫けらのごとく捻り潰してみろ!!」
「……。戦う意思が見えないガキの相手なぞしてられるか、他を当たれ」
金髪系に何故か好かれる悪人顔だったり……。
「アタシのパンツ盗んだ変態さん、今日も盗むのかい?」
「か、勘弁してくれないかな? 本当にわざとじゃないんだ。
まさかああなるとは思わなかったというか―――――女神って以外と根に持つタイプが多いのかい? あのアクアという、何故か力をほぼ落としてる女神みたいに……」
「…………さてね、アタシには何の事だかわからないな」
元魔王なせいか余計にシーフに絡まれたり。
「見付けたわよ! ほら、慰謝料を寄越しなさい!」
「またお前か、サーゼクスじゃないが俺とてわざとじゃねぇんだがな」
「黙りなさい! 堕ちた天使の分際で女神に粗相を働いたのだから当然よ! 早く財布を出せ!!」
「ちょっと冗談で耳朶噛んだだけじゃねーか……」
チャラそうな堕天使が金にがめついほぼほぼ脱落女神に慰謝料請求されたり……。
「そろそろ帰りたいのだが……」
「駄目です! 今日こそ私と爆裂魔法パーティーを組むと言うまで帰しませんからね!」
「いい加減にしてよ! ヴァーリさんは私の大切な仲間なのに、取らないで!!」
「…………」
別にそんなつもりもないのにロリコン扱いされるハーフ悪魔だったり……。
「カズマさんと話してると落ち着くんだ。何でだろう?」
「べ、別にマイナスイオンを放出してる訳じゃねーぞ?」
「それとお腹がきゅんってして……」
「お、俺は本当に何もしていません!!!」
その二号になりかけてる不運な男だったり……。
「確かに平和だね」
「そうね……誰からの目に怯えずにこうしてのんびり過ごせるって素晴らしいわ」
「だよなぁ。まぁ寝る時の体勢は今も変わらないけどな?」
「こればかりはね……。落ち着くから……」
「へへ、俺もそうだよリアスちゃん」
特に変わらずイチャイチャしてるペアだったり。
「ヴァーリ、合わせろ!!」
「お前もな! 行くぞ――」
「「龍拳・爆発!!!!」」
ただひとつ言えるのは――毒を以て毒を制す的な意味で敵になる連中は総じて――乙である。
終了
補足
まぁ……ロリコンになっちまっただとでも言ってやれ。
その2
イッセーくんとリアスちゃんは延々イチャイチャやっとります。
これは変わりません。