色々なIF集   作:超人類DX

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……。無理矢理作った続きだよ。


元・堕天使総督と……

 戦士というよりは研究者気質。

 冷めてる様で友の為に熱くなる。

 それが堕天使・アザゼルの性格であるのだが、基本的にちゃらんぽらんな態度を取るばかりなので誤解されがちな男だった。

 

 かつては堕天使という種をまとめるリーダーの様な立場に立ち、そのちょっとワル系の入ったイケメン容姿により中々女性の受けも良く、盟友のコカビエルには無いカリスマ性があった。

 

 そんな男が盟友の死を切っ掛けに覚醒し、地位も名誉も全て捨ててまで仇討ちの為に奔走したのはご存じの通りであり、今現在の彼は全ての報復を与えた果てに流れ着いた世界にて、真なる仲間達と共にのんびり楽しくをモットーに生きている。

 

 

「ダンジョンという空間に興味はあるし、この世界の鉱石なんかにも興味ある。

此処に来てちと血が騒ぐ材料が増えちまうとは思わなかったぜ」

 

 

 別世界における見たこともない物は何でも珍しく見える研究者気質のアザゼルにとって、オラリオのダンジョン自体が研究対象に入る。

 残念ながらその異様なlevelのせいで潜入規制を厳命されているので一気に深く潜る事はできないが、最近仲間になったベル・クラネルが友の娘であるミリキャスと共にダンジョンから持ち帰った物質を分けて貰うだけでも十二分らしい。

 

 

「この鉱石は冥界の石に近い波動を感じるし、ふむふむ砕くと中身は金か……」

 

 

 気兼ね無く己の好きな事をして過ごせる。

 神にしてはちんちくりんなヘスティアに拾われて運が良かったと改めて感じながら、ダンジョンから持ち帰った様々な物を解析していくアザゼル。

 

 

「そろそろ一休みすっかなぁ……」

 

 

 気づけば軽く三徹しているのだが、本人に疲労の色は見えず、軽い気分転換つもりで作業を中断し、少し老朽化しつつも居心地は悪くないヘスティア・ファミリアのホームの一室にて、椅子に座った状態で身体を伸ばす。

 

 

「連中に命を狙われるという事に気を張る事もなく、思う存分趣味に没頭できるなんて何時以来か。

ったく、最後の最後で俺達も運ってのに恵まれたもんだぜ」

 

 

 このホームの主たるヘスティア曰く、ファミリアの中では文句無く貧乏に位置すると愚痴る様に言っていたのを思い返すが、アザゼルや他の仲間にしてみれば常に転生者やら転生の神の手に堕ちた連中からの襲撃に気を張り続けなければならない元の世界に比べたら、多少金欠に困る程度なぞ何の問題にもならない。

 というより働き手が多い今となっては貧乏からも多少は脱却できるものであるし、現に自分達が加わってからは明日の飯に困った事は無いのだ。

 

 

「ちょっくら一杯引っ掛けに行くか」

 

 

 寧ろアザゼルを含めて各々の分野を生かした資金調達のお陰で軽く飲みに行ける程度の金は手元に常にある訳で。

 この世界に飛ばされた際に身に付けていた財布の中身を確認しながら立ち上がったアザゼルは、既に夕日が射すオラリオのホームを抜け、一日の終わり前の最後の活気に賑わう街の中へと消えていくのであった。

 

 

 

 

 

 オラリオ冒険者の最高levelはフレイヤ・ファミリアに属するオッタルの7。

 しかしここ最近新たに現れた集団による登録により、その最高levelが大幅更新された――という噂は中々に広まっている。

 勿論ファミリアの上位陣の耳にも入っており、それがどんな姿をした者なのか、どこのファミリアの者なのか等々、知りたがる者は後を立たず、とあるファミリアもまた同様だった。

 

 

「チッ、今日も居なかったぜ……クソが!!」

 

「落ち着いてベート」

 

 

 オラリオの歓楽街に位置する豊饒の女主人なる酒場。

 街でも随一の人気を誇るその酒場には名を聞いただけでざわめく名のあるファミリアに所属する者達が利用することも少なくない。

 勿論、ただ今口調荒くグタを撒き散らすこの少年もその名のあるファミリア所属の者であり、仲間達に諌められている。

 

 

「ギルドに聞いても情報規制だか何だかで口を割らねぇし、限界まで下に行っても影も形もねぇ!」

 

「そもそも本当かどうかもちょっと怪しいし……。それっぽい人を見たのがアイズだけだからな」

 

「本当に見たの? しかも五階層なんて浅い場所で?」

 

「多分。白髪の男の子を助ける為に赤髪の女の子が明らかに低レベルじゃない動きでモンスターを『消して』いた」

 

「けっ! 何かの間違いじゃねーのか?」

 

「………」

 

 

 ちょっとした都市伝説化している、強大な力を持つ冒険者の存在。

 それを確かめる為にファミリア総出で捜索を行ったのだが、遠征しても何をしても影も形も無い。

 これだけ探して居ないともなれば最早単なる冗談だったのかもしれないとすらとあるファミリアの眷属達は思い始めていた。

 

 

「そもそも平均levelが50っていうのがおかしいし、だったらステイタスとかどうなっちゃうんだって話だし……」

 

「999オーバーだとしてもお伽噺にもならないしな」

 

「へん! 此処まで探して居ねーなら誰かの悪戯だろうよ!」

 

 

 平均level50

 全ステイタスが999オーバーのカンスト

 そんなのが最低でも6人以上は居るファミリアなんて聞いた事もなければ、仮に居たらそれは最早全員が天上界から降りてきた何者かとしか思えない。

 やはり単なる都市伝説でしかなかったのか……と、唯一の目撃者であるアイズなる少女までもが『アレは幻想だったのか』と思い始めたその時だった。

 

 

「お嬢ちゃん、ポン酒はないのか?」

 

「ぽんしゅ?」

 

「あー……何でもねぇ。えっと、ここでの定番の酒でいいや」

 

 

 とあるファミリア団体のまさに真後ろの席に、一人店員に注文している男が居る。

 いや、それだけなら何の問題もないし、見渡せば男なんて大量に居る。なのにとあるファミリア団体の誰しもが、注文を終えて酒と料理を待つ男の気配に反応してしまった。

 

 

「誰……?」

 

「一人か……?」

 

 

 顔立ちは相当整っている。年齢は恐らく二十代中盤……。

 それだけならばこの者達にしてみれば関心を示す材料にはならない。

 問題はその男の放つ隠しきれない『覇気』ともいうべきか……。

 

 

「お待たせしましたー♪」

 

「お、来た来た! サンキューお嬢ちゃん」

 

 

 強い。

 身体付きからして相当の手練れの者だ。

 一見すれば出された料理と酒を楽しんでいるだけの男に見えるが、まるで隙が無い。

 

 

「うん美味い。今度コカビエルとサーゼクスの二人も連れてこようか。

イッセーとヴァーリは……まぁ、まだ早いか」

 

 

 酒を煽りながら食べる男を盗み見る様に観察する。

 やがて満足したのか、お代を払って店を出ていくその男をずっと食べるのも飲むのも忘れて観察していた者達は、ずっと沈黙を貫いていた長へ意見を求める。

 

 

「どうするロキ?」

 

 

 仲間の一人に問われ、糸目の女性は頷く。

 

 

「噂の連中かどうかはわからへんが、確かめる価値はあるやろな」

 

 

 クイッと先程男が出ていった出口を顎で指した瞬間、全員が立ち上がり、お代を払って外へ出る。

 

 

「チッ、どこへ行きやがった!」

 

 

 人々が行き交う大通りに出て、その者達は先程の男の姿を探す。

 その甲斐あってか、程無くして金髪と黒髪が前後ち別れた髪型の男は発見する事ができた。

 

 

「居た……」

 

 

 あの感覚……いや全員が働いた勘が気のせいとは思えない。

 だからこそ大通りを抜け、人通りが少なくなっていく道を一人歩く謎の男を気配を隠して全員で尾行する。

 あの都市伝説の一人なのかもしれないという予感と共に。

 

 

 だが――しかし――

 

 

『え……?』

 

 

 確かに直前まで十メートル程先を一人歩いていた男の姿が一瞬にして……消えた。

 

 

「っ!? 消えた!?」

 

 

 狐に化かされたかのごとく消えた男に一瞬ほんの動揺してしまう。

 誰しもが自身の力に対して少なからず自信があるという自負があるが故に心が乱れた。

 その僅かな乱れという穴を抉じ開けるかの様に、その者達の真後ろから……。

 

 

「誰か探してるのか?」

 

 

 酒場で店員に注文した時に聞いた声と同じ声が、まるで冷たいナイフを首筋に突き付けられたかの如く全員の心を凍り付かせた。

 

 

『!?』

 

 

 動揺した者達の背後から聞こえる低く、よく通る男の声に後ろから心臓を掴まれたかの様に固まった。

 普段なら相手に虚を突かれて動揺して動けないということがあり得ないのだが、全員が全員指ひとつすら動かせなかった。

 

 

(い、一瞬で俺達全員が気付かれない速度で後ろを取られた……!)

 

(は、速い……!)

 

 

 全員の心臓が早鐘し、全身から吹き出る嫌な汗が止まらない。

 尾行を気づかれたばかりか背後まで取られた……その時点で確定的に後ろに今立つ男がただ者ではない事はわかった。

 しかしこの先の行動がわからない……。正直に後を尾行()けていまましたと正直に言うか? いや、それは名のあるファミリアに所属する者として情けなさすぎる。

 しかしこのまま黙っていたところでどうすることも出来ない……。

 誰しもが次への行動に移せず、足踏みをしていたそんな時だった……。

 

 

「別に取って喰うわけじゃねーんだから、少し()()()()よ?」

 

『…………!』

 

 

 耳通りの良い低い男の声が、まるで子供をあやす父親の如くその者達の耳へと入った。

 そう……たったそれだけの言葉なのに、百戦錬磨ともいうべき者達は、今初めて酒場で見ただけの男に対して『絶大な安心感』を覚えた。

 

 

「ぁ………う………」

 

 

 これは何だ? 何だこの感覚は? 異様なまでの安心感に心が落ち着いていくのと同時に、この目の前の男が『異常』な男である事を持たざる者だからこそ本能で察知してしまう。

 ただ一人、長であるロキなる人物だけは、目の前の男が明らかに異常である事を見抜いていても、その声に対して精神を揺さぶられる事はなかった。

 

 

「勝手に後をつけたんは謝るから、それ以上ウチの子を達を苛めるのは堪忍したって?」

 

 

 ただの一言で行動を起こす意思という概念全てを『削ぎ落とされて』その場に崩れ落ちる者達を庇う様に、ロキなる人物は自分より一回り以上は背の高い男に向かって言った。

 

 

「……。へぇ?」

 

「………」

 

 

 意思の強い気迫。

 その気迫を受けて男は何かを知ったかの様に軽く笑みを溢す。

 

 

「俺の突いた『無意識』をはね除けたか……なるほどなるほど」

 

「何が言いたいんや……?」

 

 

 何というか、男の目はまるで素材の良い実験動物を発見したマッドサイエンティストの様な目で、ロキなる者の全身を無遠慮に観察しながら名を問う。

 

 

「名を教えてもらえるか?」

 

「人に名前を訪ねる時は自分が先に名乗るもんやろ?」

 

「おっと、それもそうだな悪い悪い。俺はアザゼルだ」

 

 

 アザゼル。それがこの男の名前。

 その容姿も合間って、ニヒルな笑みと共に名を名乗る姿が妙に絵になる。

 

 

「見ての通り、お前達に後を尾けられる理由も無いだろうそこら辺のイチ住人さ。それで、お前の名は?」

 

 

 未だに惚けた表情で膝を付く仲間達が無事である事を確認し、ロキは名乗る。

 

 

「ロキ・ファミリアの長……ロキや」

 

 これでもそれなりに有名な名である自負はある。

 だから名乗れば流石にわかるだろうと思ったロキはちょっと挑発的にアザゼルに対して名乗った。

 

 

「は?」

 

 

 すると一瞬何故かキョトンとした顔をしたアザゼルは……。

 

 

「え、ロキ? ……え、マジで?」

 

 

 思っていた反応とは違う、どこか困惑したリアクションだった。

 

 

「何やねん、ウチがロキじゃないと疑っとんのか?」

 

「違う違う、お前が神格クラスなのは何となくわかってたが……ロキって名前に驚いただけだ。

えーっと、ちなみに聞くけど――お前男だよな?」

 

 

 何故か自分がロキである事に驚いているし、かなり失礼な事を言われて一瞬でカチンとしたロキは声を荒げた。

 

 

「はぁ!? どこ見てほざいとんねん! どっからどう見ても美少女やろ!」

 

 

 当たり前だが女神の一人であるロキは失礼なと怒るのだが、アザゼルは何故か疑った表情だ。

 

 

「えぇ……嘘だぁ? だってどう見ても―――あ、ごめん」

 

 

 アザゼルはロキという神を知っている。

 勿論この目の前の女性の事では無く、元居た世界における悪神・ロキの事を。

 そのロキの姿は男だった――故にこの目の前の女性がロキである事に驚くし、なんというか男と疑うレベルで彼女の胸は――とアザゼルはロキの胸元を見てから、かなり申し訳なさそうに謝った。

 

 

「おうゴラ、今どこ見て謝った?」

 

「ウチの長と比べたら――いや、これまで多くの女を見てきたが、そんなに無い奴が初めてでよ。

確かに声は紛れもない女だが、女声の男も居るだろうしとか思ってな……はははー」

 

「よーし、喧嘩売ってるんやな? そうなんやろ?」

 

「ちげーって、気に触ったんなら謝るっての!

ほら、世の中には無い方が良いって奴も居る訳だしよ、そんなに悲観しなくても大丈夫だぜ………………多分」

 

「っしゃあ! その喧嘩買ったぁ!! 成敗したるぅぅ!!!」

 

「おっと……。そんなに気にしてたんだな、ワリィ」

 

「その憐れんだ目をやめぃ!!」

 

 

 男と勘違いされ、挙げ句密かにコンプレックスな部分をナチュラルに刺激され、果てには哀れみの眼差しまで向けられるという三連続コンボによりプッツンしたロキは、それでも尚どこか可哀想な人を見る目で謝るアザゼルに殴り掛かった。

 

 これが『無意識という概念を支配する異常』に覚醒したアザゼルとロキ・ファミリアに出会いだった。

 

 

「だから別にバカにしてねーっての! 気に触ったなら謝るし、平和にいこうぜ? そもそもそっちが尾行してきたんだしよ」

 

「じゃあかしぃ! その態度が癪に触るんや!!」

 

 

終わり




補足

どこぞの目を閉じたさとり妖怪ちゃんみたいな、無意識を弄くる異常。

それがアザゼルさんのスキル。
本人は仲間達の中では下から数えた方が早い実力と思ってますが、別にそんな事はなかったりする。


その2
大丈夫、アザゼルさんはちょいワル風紳士だし、この後すぐ仲良くなってるさ!

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