色々なIF集   作:超人類DX

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感想大量でモチベは上がった。

しかるに文はおそまつ


ヘスティア・ファミリア(バグ)

 外界から流れ着いたと言う奇妙な集団。

 聞けば理という概念に反逆し、勝利した代償として本来ならば存在そのものが抹消されていた筈だったらしい。

 それなのに生きている理由は本人達にもわからない――と、サーゼクス達は言っているが、何となくの勘ながらヘスティアはサーゼクス達がまだ何かを隠している可能性を見抜いていた。

 もっとも、それをわざわざ無理強いして喋らせる気はヘスティアに無いし、その然り気無い気遣いがサーゼクス達に好意を持たれた理由だったりするのだが。

 

 

「ヘスティアさん。キミが見つけて連れてきたベル・クラネル君はかなり面白いよ」

 

「そう、なのかい? 街に来たばかりでオロオロしていた所を見かねて話しかけてみたんだけど」

 

「まず彼は僕の妹と娘……そして将来義理の弟になるイッセー君の特性をそれぞれ混ぜ合わせた様なモノを持っている。

絶対に磨けば伸びる……というか既にコカビエルとヴァーリ君が彼に手ほどきしている」

 

「え!? あ、あの戦闘狂っぽい師弟に!? べ、ベル君大丈夫かなぁ……」

 

「大丈夫大丈夫、ああ見えて二人はちゃんと加減できるし本当に危なければガブリエルとアザゼルが止めに入るからさ」

 

 

 今日と明日を生きる為に始めたヘスティアのアルバイト。

 それは出店にてじゃが丸くんなるコロッケみたいな食べ物を売りさばく仕事なのだが、その仕事を手伝うのは異界にて元最強の魔王であるサーゼクス・ルシファー――否、サーゼクス・グレモリー

 

 

「いらっしゃい、じゃが丸くん美味しいよー!」

 

「キャーッ!! 四つください!」

 

「私は五つよ!!」

 

「ならば私は六つ!!」

 

「ははは、今日は女性のお客さんが多いね」

 

「……」

 

 

 その美男子っぷりに女性客が増えに増え、売り上げが好調通り越して盛況となり、長い赤髪を後ろに縛り、動きやすいタンクトップに黒のコックパンツのサーゼクスをまるでどこかのアイドルを祭り上げるかの如く女性達がみつぐ。

 ヘスティアとしてはバイト代もはずむので良いのだが、わざとらしくじゃが丸くんを貰う際にサーゼクスの手を握ろうとする女性客を見ていると微妙に嫌な気分になる。

 

 

(売り上げは倍以上に上がったのは良いけど、なんだろ、ムカッてする……)

 

 

 サーゼクス、コカビエル、アザゼル、ヴァーリ、イッセー、ガブリエル、リアス、ミリキャス……そしてつい先日拾ったベル。

 孤独だった日々から一気に増えたヘスティアの家族はまんま子供のベル以外は一人一人がその気になれば世界征服でもおっ始められそうなレベルであり、まさしくヘスティア一人では手に余るメンツな筈なのだが意外な事に誰しもが身勝手な真似をせずヘスティアに従っていた。

 その中でも他の者達からリーダー格にされてるサーゼクスはこうしてヘスティアの仕事を手伝ってくれるので、神とは全くの正反対に位置する悪魔の……しかも元魔王である事を時々忘れてしまう程だった。

 

 

「お客さん、後ろがつかえてるからその手を離してくれないかい?」

 

 

 第一悪魔なのに親切だなんて聞いたこともないのだ。

 ヘスティアはただただ戸惑いながらも放っておいたら何時までもサーゼクスの手を握っているだろう女性客に注意をしながら小さくため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 明日をのんびり生きる為にヘスティアとサーゼクスがアルバイト中の頃、他の仕事をして外に出払っているイッセーとヴァーリを覗いたメンツ達は今、一番新しくファミリアに加入した少年、ベルとそのベルを片手で相手をしているミリキャスの試合形式の模擬戦を見ていた。

 

 

「ちょっと速いと思う。

えっと、ごめんね? 僕って何時も教えられる側だったからアドバイスとか不馴れなんだ」

 

「い、いやそんな事は無いよ。あ、ありがとう……」

 

 

 文字通りまだ子供の域。だが全員がベルの潜在能力の高さを認めており、それを引き出す為には同年代のミリキャスが修行相手に相応しいのだが、見ての通りどうやらベル少年はミリキャスに対してどこか違う感情を芽生えさせてしまった様子。

 

 

「差があるとはいえ、小僧は時々攻撃を躊躇う事が多いな」

 

「いやお前そりゃ……なぁ?」

 

「はぁ、コカビエルはどうしてそうなのかしらね……」

 

「は?」

 

 

 戦闘バカことコカビエル以外はベルの様子の根底を見抜いている。

 これに気付かないとはコカビエルとその弟子であるヴァーリ……そして向けられる本人であるミリキャスだった。

 

 

「僕の戦い方がベルくんの役に立つとは思えないけど……」

 

「そ、そんな事だって無いさ! 現に僕はミリキャスのおかげでちょっとは戦える様になったんだし!」

 

 

 加入当初はこんな事も無く、ただ自分と同年代っぽい子が居た事に喜んだだけだった。

 それが初ダンジョンに潜り、その面白さについついレベルを考慮せず一人下へと進んだのが始まりだった。

 

 

『良かった……! 大丈夫ベルくん!?』

 

『う、うん……』

 

 

 馬と人を合成させたかの様なモンスターに襲われ、あわや大惨事な所を助けられた。

 小川を流れる水流を思わせる様な華麗さでモンスターを文字通り叩き、父親と叔母と同じ滅びの魔力で文字通り消し飛ばす。

 幼いながら母を奪った転生者への復讐の為に覚醒したミリキャスの力は一見すれば年相応さを感じさせない恐怖をもたらすのだが、ベルはその華麗な動きに……そして心配してあわあわしているミリキャスに見惚れてしまった。

 

 その日からだろう、ベルがバグメンツ達に戦い方を教えてほしいと懇願したのは。

 全ては弱い自分から脱却する為……ミリキャスに認めて貰う為に。

 

 

『それにしてもあの人はどうしたんだろうね? 剣を持ったまま石像みたいに固まってるけど』

 

『本当だ、誰だろ?』

 

 

 華麗に気紛れついでに助けようとした金髪女性が剣を構えたままフリーズしていたけど、ベルの目はミリキャスしか映らなかった。

 

 

『イッセーさん! リアスさん!』

 

『んぉ? どうしたベル坊?』

 

『イッセーさんはどうやってリアスさんと同じ力を扱えるようになったんですか!?』

 

『え、どうしたのベル君?』

 

『え、えっと、ぼ、僕も扱えたらなぁって。そうしたらミリキャスの助けになれるかもしれないし……』

 

『『……』』

 

 

 それからベルは遮二無二に走り始めた。

 今のままでまずミリキャスに男としてすら認識して貰えないとベルは今までにない努力という才をまず抉じ開けた。

 唯一純粋な人でありながら、血族しか扱えない滅びの魔力を体得したイッセーにその条件を聞いたり……。

 

 

『えーっとだな……俺の場合は殆ど偶発的というか、俺とリアスちゃんだから可能だったっつーか』

 

『な、何でもいいです! 教えてください!!』

 

『ど、どうしましょうイッセー? アレが理由だったって教えるのはどうかと思うわよ? まだ子供だし……』

 

『だよなぁ……。いやでもベル坊も男だし、言うだけ言ってやろうぜ。

あのなベル坊、俺の場合は……あ、耳貸せ』

 

『…………!? そ、そう、なの……?』

 

『おう』

 

 

 その条件に真っ赤になったり。

 最終ゴール的な条件に悶々とする夜を過ごす事になってもベルはひたすらミリキャスに追い付かんと走り続けた。

 

 

「サーゼクスの娘にねぇ……。

ミリキャスって基本的に上――つまり父親を見て育ったからなぁ。

まず並ばないと話にならないし、落としたければ越えないとなぁ」

 

「で、ですよね……はぁ」

 

「でも大丈夫ですよ。私が昔そうだったように、気力さえあればきっと貴方も進化を果たせる筈」

 

「で、ですよね!? よ、よーし頑張るぞ!!」

 

 

 転生の神が転生者の為に本来の性別を無理矢理入れ換えられた女の子の為に……。

 それが情景となりてベルに力を与えると信じて。

 

 

 

 

 オラリオの冒険者の平均レベルが大幅更新された。

 それはつまりそれまで最高レベルの眷属を抱えていたとあるファミリアの長の耳にも届いてしまう訳で……。

 

 

「噂の域は出ませんが、あのヘスティアに眷属が大量に加入し、その一人一人のステイタスの平均が高すぎるとの事です」

 

「その噂の域ではどれくらいなのかしら?」

 

「……じゅう」

 

「10? そんなまさか――」

 

「ご、50……」

 

「………――は?」

 

「さ、最低でも一人一人のlevelが50に到達している……という噂です。しかも登録の時点で」

 

「……」

 

 

 とある女神は噂でしかないものの、万年貧乏女神に加入した『妙な集団』の力を聞いて軽く興奮を覚えた。

 あの中で一人だけならまだ納得できた……が、全員が己の抱える眷属最強のlevelを倍以上を突き放している。

 

 事実かどうかは別にしても、興味が沸かないわけもなかった。

 

 

「その者達は普段何をしているの?」

 

「基本的にギルドからダンジョンに潜る事を規制されている為、最年少の少年と少女以外は普通に街中で働いて収入を得ている様です」

 

「ということは貧乏でもなくなってきた訳ね……」

 

 

 確かに登録の時点でおかしなlevelに達している集団が毎日ダンジョンに入ればそれだけでパワーバランスが崩れるのは間違いない。

 あのヘスティアも妙な連中を引き入れたものだと美の女神は思う。

 間近で見てみるのも悪くない……そう思ってしまうのも無理はないのかもしれない―――――それがちょっとしたイザコザになるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 その日サーゼクスはすっかり板についてしまったじゃが丸くん売りの仕事も終え、ヘスティアを先に帰らせて出店の片付けをしていた。

 

 

「昔を考えたらこんなにのんびりとその日を過ごせるなんてね」

 

 

 神々が蔓延る世界と知った時は身構えたが、その神の一人であるヘスティアは良い意味で神らしくないし、人々の様子を見るかぎり余程有能なのだとわかる。

 元の世界の腐りきった連中と比べるのも烏滸がましいくらいにこの世界は平和で、すっかりサーゼクス達は気に入っていた。

 

 

「失礼、もしかしてもう閉店かしら?」

 

「?」

 

 

 今日は帰ってミリキャスとお風呂に入って親子の時間でも過ごそう。そう思いながら片付けと掃除をしていた時だった。

 平和な世界に気を抜いていたせいか、声を掛けられるまで気付かなかったサーゼクスは片付けの手を止めて顔を上げると、一人の女性がそこに立っていた。

 どうやらお客さんらしい。

 

 

「じゃが丸くんかい?」

 

「そのつもりで来たのだけど……あら、貴方一人?」

 

「先に帰って貰っただけさ、うん、特別に作ってあげるから少し時間をもらえるかな?」

 

 

 その佇まいからして『ただ者』ではないと瞬時に察知した。

 長い銀髪を靡かせ、妙な色気を感じる気がするのだけど、生憎サーゼクスにはそういったものはまるで効かず、寧ろ内心『銀髪か……』とちょっとセンチな気分にさせるだけだった。

 

 

「………」

 

「…………」

 

 

 じゃが丸くんを揚げる音だけが二人の耳を擽る中、わざわざ『変装』もせずやって来た女性は赤髪の青年を見て戦慄していた。

 

 

(なるほど……ウチの者達を総動員した所で片手間に返り討ちにされるわね)

 

 

 鼻歌なんか唄いながらじゃが丸くんを揚げている青年は一見すれば無害に見えなくもない。

 だがしかし、その奥に感じるこの感覚はまるで真逆……GODを殺すDEVIL。

 なるほど、満更嘘でも無く、こんな領域に立つ者が少なくとも後4、5人は居る。

 

 

「はい出来上がり、お待たせしました」

 

「ありがとう、お代よ」

 

「まいど!」

 

 

 これまでの不運を拭い去る天運だあの女神は。

 これほどの男をこんな使い方をしてる辺りはしょうもないが、もし自分なら……。

 

 

「? どうかしたかい?」

 

「いえ、お店の片付けをしてる所ってあまり見ないから……迷惑かしら?」

 

「別に迷惑ではないけど、見ても面白くはないと思うよ?」

 

「構わないわ、興味あるもの――アナタに」

 

 

 試そう。美の女神はその性質を全開にさせ、赤髪の青年に迫った。

 ほぼ特性ともいうべき色香を放ち、青年を頂こうと…………しかし。

 

 

「あまり悪戯はするものじゃないよ」

 

「っ!?」

 

 

 サーゼクスにはまったく効くはずも無く、触れようとしたその手は優しく払い除けられた。

 

 

「敢えては聞かないけど、キミの放つそれで周囲の人達が狂ってしまう。だから悪戯はやめるんだ」

 

「……………………」

 

 

 効力がまったくない。

 既婚者だろうが老人だろうが魅了させてきた自分がまったくこの男には効果がない。

 周囲に居る者達にかかった魅了に対して気を使う程度にこの男の精神レベルは既に神の上を行ってる。

 

 

「ふふ……なるほど、そう言われたのは初めてよ」

 

 

 逆に笑えてきた。いや、更に興味が沸いた。

 この男がそうであるように、他の者達もきっと自分に靡く事はないだろう。

 一体どんな生き方をすればこれほどの精神力に達したのか……美の女神はますます興味を持ってしまった。

 

 

「名を教えてくださるかしら?」

 

「僕かい? ……ま、いっか。僕はサーゼクス……サーゼクス・グレモリー。

ただのじゃが丸くん売りさ」

 

「ふふ、笑えないわね。それほどの力を持って商人を名乗るだなんて。私は――」

 

 

 修羅を潜り抜け、種の強さを完全に超越した神越の悪魔に。

 さて、そんな訳で変な目のつけられ方をされたサーゼクスは、ホームに帰り、ヘスティアが求めていた家族の在り方である夕飯の席にて思い出したかの様に話した。

 

 

「ねぇねぇ、ヘスティアさん。フレイヤって神に覚えはある?」

 

「!? な、ど、どこでその名を!?」

 

「店じまいしてる時に来たんだよ、フレイヤって名乗ってた」

 

「はぁ!? そ、そ、そそそ、それで!? 何かされたのかい!?」

 

「別に何も。ちょっとした悪戯をしてきたからやめろとは言ったけど特に何も」

 

「そ、そう……ぐっ……」

 

「なんだヘスティア? そのフレイヤとやらに何かあるのか?」

 

「い、いや……まぁ……それなりに」

 

 

 妙に苦虫を噛み潰した表情をするヘスティアはまずサーゼクスが心配だったが、どう見ても魅了されては無さそうだったので取り敢えず安心する。

 考えてみればこの神越メンツを知られれば他の神々から目を付けられる事は予測できてはいたが、まさかその最初があのフレイヤだとは……。

 サーゼクス自身は悪戯を仕掛けられたと平然と言っているが、それでもヘスティアは不安だった。

 しかし――

 

 

「そういや飲み屋で俺も神の一人と会ったぞ? しかも名前聞いて若干驚いたなぁ」

 

「っ!? アザゼル君も!? だ、誰?」

 

「ロキって名乗ってたな。まさかこの世界じゃ女神だとは思わなくて驚いたぜ」

 

「悪神・ロキか。

確かヴァーリくんとイッセーの二人でボコボコにして下水道に投げ捨てたんだよね。懐かしいなぁ」

 

「いきなり襲ってきたからな」

 

「あそこら辺もカス野郎に掌握されてたし、口封じに必死こいてたぜ」

 

 

 アザゼルもアザゼルでどうやら……ヘスティアにとっては腹立つ相手のロキと会った様で、その名を聞いた瞬間取り乱した。

 

 

「ま、待って! キミ達の知るロキが男なのはわかったけど、ロキは駄目だって! 特にアザゼル君は遊んでそうな顔だから心配しかないよ!」

 

「失礼なやつだな、別に偶々会ってちょっとそいつの眷属達と飲んで喋っただけだぜ?」

 

「ええっ!? もうそこまで!?」

 

「イッセーには馴染みがある妙な関西弁口調でな。なんつーか……印象としては無いな」

 

「何が?」

 

「胸が。今まで少なめの女は数多く見たが、ありゃ文句無くナンバーワンに無かったぜ」

 

 

 くっくっくっくっ、と笑うアザゼル。

 

 

「胸なんぞどうでも良い、そいつは強いのか?」

 

「可能ならちょっと戦ってみたい」

 

「落ち着け戦闘バカ師弟。

天上界から降りてきた神は基本力がセーブされてるんだぜ?」

 

 

 等と呑気に飲みながら語るアザゼルが何となくそこら辺にだらしなさそうだと思っていたヘスティアはジト目で睨む。

 

 

「み、ミリキャス、よかったら食べる?」

 

「僕は良いよ。ベル君が食べなきゃ」

 

「テンパり過ぎだろベル坊」

 

「もっと普通になさいな」

 

「で、でも緊張しちゃって……」

 

「?」

 

 

 そういう心配が皆無なのが寧ろ子供グループな辺り頭が痛くなる。

 特にサーゼクスはあのフレイヤに目を付けられた――これからは閉店の後片付けも残ろうと心に誓うヘスティアなのだった。

 

 

終わり




補足

元四大魔王、目を付けられた。
銀髪だったので若干センチになっちゃったけどな。


その2
アザゼルさんはコミュ力半端ないのですぐ誰かと仲良くなれてしまうのだ。


続きは……感想でも来たら多分やるかな。

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