色々なIF集   作:超人類DX

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電波を受信した結果、電波が出来上がった。


憑依してしまったモード
さようならネタ


 誰にも打ち明けられない。

 誰とも共有できない。

 誰も己を理解できない。

 

 そして何者だろうと解って貰いたくない。

 

 

 

 顛落・再起・復讐

 短い人生の中でそれだけの経験をした先に掴んだ最後の勝利は確かに救われたのかもしれない。

 そう思わなければ生きてる意味を持てないから。

 

 その果てに待ち受けたものが永遠の別れであろうとも、そう思いたかったのだ。

 

 

 目付きも悪い、愛想も無い、協調性も実はない。

 

 おおよそ人として何の魅力も持ち合わせない少年が居たとしても、関心は買えない。

 寧ろ本人が周囲と距離を離そうとしてるのだから始末に負えない。

 だがそんな少年は運が良いのか悪いのか、色々な意味で恵まれていたのだ。

 

 

「いい加減彼女欲しくね?」

 

「あ?」

 

 

 とある日常。とある学校風景。とある休み時間。

 人として最低限は持つべきだろうコミュニケーション能力を完全にポイ捨てしてるせいで全く友が居ないまま拗らせた成長をした少年は、中学の頃に出会って以降何故か構ってくる大親友を自称する少年の唐突なフリに、ドマイナーな漫画本へと下げていた視線を思わず上げた。

 

 

「だから彼女だよ彼女。俺達も高校生なんだぜ? 浮いた話の一つや二つ欲しいじゃん? 灰色の青春よりピンクの青春が欲しいじゃん?」

 

「………」

 

 

 黒髪をウニの殻の様に刺々しい髪型に何処となく猿寄りの顔をした中学の頃からの知り合いの少年の何時もながらのニヤケ面に話を振られた方の――明るい髪色を持ち、少なくとも見ただけなら整った容姿を持ちながらも死んだ目のせいで全部が台無しになっている少年は『またか……』と()()()の頃ならノリノリで応じていただろう話に対して『付き合う気は無い』という意思表示のつもりで漫画本に視線を戻す。

 

 

「その話を俺にした所で満足のいく返しは期待できないと思うぞ」

 

「知ってる。だから高校生になった今お前も女体の素晴らしさを知って貰おうと思ってよ?」

 

「………」

 

 

 『言われなくても知ってるよ、とっくの昔にな』と、自分側に引き込みたいと思ってるらしい猿顔の少年に対して内心呟きながら少年は漫画のページを捲る。

 この猿顔の少年がこんな性格で、性に対して正直なものだから女子からの受けが相当悪いのだが、少年にしてみれば彼の性格は決して嫌いではなかった。

 

 だが漫画を読む少年に関心は無かった。

 

 

「そもそも俺達のいるクラスって結構可愛い女子が多いと思わないか?」

 

「お前がそう思うならそうなんだろうぜ」

 

 

 いや、具体的にはこの世界の異性には何の関心も無い。

 猿顔少年の言うとおり、今通う学校の女子生徒の容姿レベルはかなり高い。

 その理由は絵に描いた様な変態な校長が学力関係なく女子は容姿さえ良ければ合格にした為だったりする訳で、見渡せばアイドルでも狙えそうな容姿を持つ女子生徒達で溢れかえっている。

 

 しかしそれでも漫画を読む少年に関心は無かった。

 

 

「例えばあっこで楽しそうに飯食ってる女子三人とかさ~」

 

「あぁ、そうだなー」

 

「ちょいちょい、漫画から目を離してちゃんと見ろっての! ほら、もしもで良いからあの三人の中なら誰が良いかだけ考えてみようぜ!」

 

「………」

 

 

 漫画を取り上げられ、向こうで机をくっつけて弁当を食べてる三人組の女子を指して誰が良いかと問われた少年は、死ぬほどめんどくさそうにこちらに気付いてない三人組を見る。

 内一人……猿顔少年と同じく中学の頃同じクラスだったショートヘアの少女と目が合った。

 

 

「……!」

 

 

 が、少年と目が合ったと気づいたのか、慌てて目を逸らされ、何事も無かったかの様に残りの二人の少女と談笑に戻る。

 

 

「無いな」

 

「マジかお前!? どう見てもアリだろ!?」

 

「無いものは無いんだからしょうがないだろ……」

 

 

 目が合った少女含めて興味が無いとバッサリ切り捨てた少年に猿顔少年が大袈裟に驚くが、その隙に漫画本を取り返して読書に戻った少年が考えを改める事は無かった。

 

 

「じゃあお前はどんな女の子が好みなんだよ?」

 

 

 少年の『無いな』という聞こえたのか、先程目が合ったショート気味ヘアの少女が明らかに肩を落としたのに気づいた猿顔の少年が少し罰が悪そうに漫画を読む少年に好みを……わざとちょっと周りに聞こえる様に問う。

 実はおちゃらけている様に見えて、少年に対しては本当に友情を持ち、故にそんな世界全体に大して冷めてる態度の少年に目が合った少女が淡い想いを持つ事を見抜いているからこそのフォローだったりするのだが、全く全然そんな友の心遣いに気付く気配も無い少年はというと……。

 

 

「長い赤髪の子」

 

「………」

 

「………」

 

 

 ずっと()()()()()想いを、ある意味研がれた刃の如く言い放つのだった。

 

 

「そ、そうか……。でも現実に居なくねーか?」

 

「あぁ、居ないな……」

 

「だろ? だったらもっと……なぁ?」

 

「…………」

 

 

 明らかに落ち込む向こうの女子の一人を気にしながら話している事も知らず、少年は冷めた顔で淡々と漫画のページを捲っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「わ、悪い西蓮寺。上手くフォローしようとしたつもりが……」

 

「しょ、しょうがないよ、猿山君のせいじゃないから」

 

 

 呆気なく、バッサリと、冷たい刃の如く好みの対象外だと言われてから時間が経った放課後。

 掃除当番で教室の清掃をしている冷めた少年に多大な精神ダメージを与えられた西蓮寺なる少女は、フォローのつもりで振って大失敗したと心底謝る猿顔少年こと猿山に首を横に振りながら苦笑いした。

 

 

「ったく、リトの奴め。あんなハッキリ言わんでも良いのによ。籾岡と沢田は何か言ってたか?」

 

「えーっと、苦笑いしてたかな。結城君とはそんなに関わりないし……」

 

「じゃあ怒ってた訳じゃあ……」

 

「それも大丈夫、寧ろあの時結城君が好みのタイプを話してた事に驚いてたし……」

 

「まさかの赤髪と来たからな……」

 

 

 『わざと言ってねーかアイツめ』と中学時代から妙なフォローをして貰ってる猿山に西蓮寺春菜は内心『こんな面があると分かればあんなに嫌われること無いのに……』と結城リトの親友っぷりを如何なく発揮しまくる猿山に苦笑いだ。

 

 

「あしらうつもりで適当言ったかもしれねないし、あまり落ち込むなよ?」

 

「う、うん……結城君とまともに話した事ないけど」

 

「アイツってあんなだから敵を作りやすいからな。だから逆に西蓮寺の様な気持ちを持ってるのが見抜きやすいんだ。なのにあの野郎め、二言目には『無いな』だなんて……」

 

 

 結城リト経由で少なくとも話をする仲程度の関係になった猿山と西蓮寺。

 片方は親友で在りたいと、そして片方は想い人として。

 

 

「心配すんな西蓮寺、俺が必ず西蓮寺を意識する様にしてやるからよ!」

 

「うん……もっと私が結城君に話し掛けられる勇気があったら良かったのに、ごめんね?」

 

「気にすんな! ほっといたら孤独死しそうな親友に春が来そうなんだからな! わっはっはっ!」

 

 

 そして……結城リトの抱える何かを端的に感じ取り、シンパシーを感じる者同士として、猿山ケンイチと西蓮寺春菜は友だった。

 

 

猿山ケンイチ

彩南高校一年

 備考・同じナニかを持つ結城リトの親友で在りたい、実は普通に良い奴。

 

 

西蓮寺春菜

彩南高校一年

 備考・結城リトと同じナニかを持つが、それとは別に惹かれた災難予備軍少女。

 

 

 共通・覚醒前の○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生きる資格があるのか。生きていても良いのか。

 一度息絶えた赤ん坊の身体に宿り、何もかもが違う世界で生きる理由を見出だせず死んだ様に生き続けてる結城リトには秘密がある。

 

 

「………」

 

『今日も騒がしい小僧だったな』

 

 

 結城リトとして生きる前の記憶。

 容姿も生き方も、世界も、何もかもが違うただ一人の悪魔少女を愛した少年とその少年に宿った龍の力。

 

 その龍の意識は結城リトという少年として生き直している今でも宿っている。

 そして人格と精神から生まれた異常性も……。

 

 

『だが見所はあるが、どう思う?』

 

「どうも思わないよ、知らないまま生きた方が本人にとっても幸せなんだから」

 

 

 力は全盛期(むかし)と変わらない。変わっているのはこの容姿と結城リトとしての人間関係。

 多忙だけど両親も居る、今頃晩飯でも作って待ってるだろう妹も居る。

 それ故に結城リトとして生き直しをさせられている少年は罪悪感で一杯だった。

 

 

「本当の結城リトじゃないのにな俺は」

 

『大した慰めにはならんだろうが、本来の小僧は生まれたその瞬間死んだ。その脱け殻の器にお前という人格が入っただけの話だろ』

 

「………」

 

 

 本当は違う。本当の名前は別にある。

 結城リトの両親にも妹にも申し訳なさでまともに顔を合わせるのも怖い少年は、ずっと一緒の相棒の慰めに対して自嘲気味に笑う。

 

 

「じゃあ俺の人格を消滅させて本来の結城リト君に返してやりたいよ」

 

『………』

 

 

 復讐の果て、与えられた罰は拭えぬ罪悪感。

 そして愛した者との永遠の別れ。

 

 結城リトな誰にも打ち明けられぬ罪悪感で心を壊しかけていた。

 

 

 結城リト

 彩南高校一年

 備考・無限の罪悪感から抜け出せない人外。

 

 

 

 

 

 

 

「………ただいま」

 

「あ、おかえりリト。ご飯できてるけど先に食べる?」

 

「お、おう……着替えてくるよ」

 

 

 その2

 無神臓・幻実逃否―――――――――――赤龍帝。

 

 

 

 結城リト以前の名前……兵藤一誠。

 

 

「学校どうだった?」

 

「ふ、フツーかな……」

 

「ふーん? 友達の猿山さんだっけ? その人以外に友達はできた?」

 

「別に……」

 

「そっか……まぁ友達多くなって帰りが遅くなるのも嫌だしそれはそれで良いかも……なーんて?」

 

 

終わり

 

 

 

 

 




補足

他人を引き上げてしまう特性が進化してる結果、猿山くんと西蓮寺さんがようこそ状態に……。

その2
この猿山くんは内面的に実はイケメン化してますが、それに気付いてるのが西蓮寺さんとリト君のみという悲しさ。
故に原作とモテ度はそんな変わらないという……。


その3
お風呂に宇宙人美少女が現れた場合別の意味でメンタルが大変な事に……。



そして続きなんてない。

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