と言われてしまっても反論できないデス
「この際だから聞くけど、アナタは小猫と付き合ってるの?」
手を貸すにあたり、細かなゲームのルールと把握とゲームに向けて少しでも実践の勘を養うためにリアス達に同行して修行する事になったイッセー。
既にセーガには今回の事をそれとなく伝え、約一週間ほど学校とバイトを休んでの修行であり、修行の舞台となる場所もリアスの実家が所有している別荘のある土地で行われるということで、今その別荘目指して山道を歩いている。
その最中、前を歩いていたリアスから唐突に白音との関係について問われたので、ただ普通にイッセーは荷物を持ちながら口を開こうとしたのだが……。
「えーっと、多分カテゴリー的には付き合ってませ――」
「嫁さんですけど?」
自分で言ってて実に最低だなと思いつつも答えようとしたイッセーの声に覆うかの如く隣を歩いていた白音が平然と嫁宣言をする。
「嫁って……」
「違いますからね?」
その余りの宣言っぷりにリアスだけではなく、普段小猫の性格やら様子を知ってる朱乃と祐斗も驚く訳だが、イッセーはそんな小猫の宣言を否定した。
「仲はアホみたいに良いし気も合うとは思ってますがね」
「ぐぬぬ……恥ずかしがる事なんてないのに」
「「「………」」」
ぐぬぬと顔を歪める小猫を見て、こんなアグレッシブだったのかと気付かされた仲間達は微妙な顔になる。
塔城小猫――つまり白音は兵藤一誠に好意を持っている。
それはもう、隠す事もなくオープンに。
そもそも出会いは単なる偶然であり、まだ年齢的には一誠が小学生の高学年時になる。
当時小猫はリアスの眷属になったばかりで、また眷属になった理由ともいえる大きなトラウマのせいで軽く人嫌いを発祥していた―――つまりコミュ障手前まで拗らせていた。
当時の小猫を知る者にしてみれば仕方ないといえる話だし、実際問題その方が本人的にも精神的に楽だった。
しかしひょんな事から当時リアスの眷属になってからは全く外に出るのとがなかった小猫が人間界に連れていかれた時、出会ったのだ。
『ちょっとそこの白髪の子。その空き瓶捨てるなら俺にくれ、売って金にするから』
空き瓶を回収して金に変えようとゴミ箱を漁りまくる少年・イッセーと。
勿論その時は特に思うことも無いし、何で空き瓶なんか集めてるのだろうと思っただけだったが、その妙に子供離れした……悪く言ってしまえば銭ゲバみたいな行動は人嫌い手前まで発祥していた小猫にほんの少しだけの興味を持たせることになり、数百本もの空き瓶をたった数百円に変えてホクホクした顔をしている少年の行動を観察した。
『? さっきの白髪の子じゃん。
キミ、そういやどこの子? 学校じゃ見ないし……』
「………」
『? なんだ腹減ったのか? うーん、今日は700円稼げたし、キミも瓶くれたからお礼してやるよ』
観察して飽きたら帰ろう。そう思ってただけなのに少年イッセーは腹を空かせたと勘違いしたのか、白音の手を無遠慮に掴んで行き着けらしい駄菓子屋に案内する。
その時生まれて初めて奢って貰った駄菓子の味は忘れられないし、思えばこの掴まれた手による繋がりが互いの中に潜む開けられる事はない扉について知る切っ掛けになったと思う。
何故ならイッセーも白音も天然の……本来なら自覚せずそのまま失われる筈の異常性を持つ者なのだから。
『ごめん兄ちゃん、空き瓶くれた子が腹すかせてたからちょっと奢っちゃった』
『別に大丈夫だよ。寧ろ知ってて無視する方がダメだからね』
双子の兄……将来的には義理の兄となる誠牙との出会い。
この兄もまたすぐそこで出会ったばかりの白音を優しく招き入れてくれたし、何度もお世話になった。
それが始まりであり、この出会いは誰にも話すことはしなかった。
そして出会いからちょくちょくこの兄弟に会いにこっそり抜け出す事が多くなったのと同時に白音はイッセーが好きになっていた。
その周りに自分と同じくらいちんまいのが出てきては好意を見せる事になろうとも、イッセーに関してだけは異様なアグレッシブさをみせる様になった白音の心は変わらない。
いや、互いの中にある『扉』を開け、掴む事もなかっただろう『可能性』を覚醒させてからは更にアグレッシブさに磨きが掛かったともいえるだろう。
リアスに倣って人間界の高校に入学し、癒し系マスコットだなどと勝手に持て囃されてはいるが、実際の白音は癒し系どころじゃない。
「ここの土地って売ればいくらになんだろうか……」
「数億は確実でしょうね」
「マジかよ、金持ちってスゲーのな……」
例えるならいやらし系。
イッセーに対して持つ無限に等しき好意は年々増幅し、種族特有の発情期なんか入れば大変な事になる。
喰えば喰うほど進化し続けるその異常性と共に。
「では早速修行を行いたいけど、その前にイッセー君がどれくらいの実力なのかを把握したいわ」
「あんまり期待されても緊張しちゃいますよ」
あの無限のチビ龍神だの、チビ堕天使だのに負けるつもりは全くない。
白音の心は今日も平常運転なのだった。
予想以上に自身の神器の力を引き出せている。
リアスは同じ神器使いの騎士の祐斗相手に余力を残した状態で模擬戦をこなしているイッセーを見つめながら思っていた。
「イケメンめ、常日頃からイケメンと持て囃されるだけあってやるじゃねぇか」
「そ、そろそろ名前で呼んで欲しいんだけどな……」
「ふん! モテモテイケメン野郎とは相容れねぇぜ!!」
神滅具使いだからといえばそれまでかもしれない、しかしその力を使いこなすには本人の地力も必要とされるのはリアス達も知っていた。
祐斗の剣擊を叩き落とし、豪快な一撃で地を砕くその力は十二分に戦力となる。
それに小猫の方も……。
「ドラゴン波」
「キャア!?」
……………。あれ、何で手からビームなんて出してるのだろうか? 何時の間にあんな技を覚えたのだろうか? 既に逃げ惑うしか手が無くなっていた朱乃に向かって手からビームを出して追い込んでる小猫を見て顔がひきつるリアス。
『Boost!』
「ファイナル・ドラゴン波ァッ!!」
「んな!?」
なるほど、同じように初動の構えは違えど両手からビームを出して祐斗の剣事吹っ飛ばしてる彼の影響なのねとリアスは知る。
「そこまで、まさか手からビームが出るとは思わなかったけど、何となく強いのはわかったわ」
「はぁどうも……」
「うーん、先輩と比べると威力がまだ心許ないんですよね」
心許ないと言ってるわりには朱乃が逃げる度にビームが森を破壊してるのだけど……とリアスは思ったが口に出さず、とりあえず本日の修行はここまでにした。
「今日はお疲れ様、明日は今日で出た各々の課題を克服する修行に切り替えるつもりだからしっかり身体をやすめなさい?」
「「はーい」」
「「…………はい」」
まだまだ元気そうなイッセーと白音とは反対に、ボロボロのナリとなった祐斗と朱乃はフラフラになって部屋へと戻る。
やはりイッセーと関わりが一番強い白音が気付けば一番強くなっていたのはリアスも予想していたので特に驚きはしないものの、逆にそんな強さまで引き上げたイッセー……というか兵藤兄弟にますます興味を抱くのは必然的だった。
「先輩、お風呂入りましょう?」
「入ってくれば良いだろ」
「もう、鈍いですね先輩は、一緒に入りましょうって意味ですよ」
「嫌だよ。ナニされるかわかったもんじゃねぇし」
「……………。その言い方からして一緒に入った事が?」
「ありますよ? なにか問題でも?」
「……いえ、別に」
自分の眷属の年下の女の子がどんどん大人になってる事にちょっとショックなリアスは、グイグイと嫌がるイッセーを浴室まで連行しようとする白音にちょっとした嫉妬心を抱く。
「はぁ……仲が良いのは構わないけど、私達も居るのだから少しは遠慮して欲しいわね?」
「そりゃそうだ。ほらお前のせいで怒られた」
「納得はしましょう。ごめんなさい」
「………」
ぺしっと軽くイッセーに額を小突かれ、謝る白音にリアスはため息を吐きつつ、先に浴室へと入っていく。
王の自分より小猫が懐いてるイッセーに対してなのか、見た限りだと鬱陶しそうにしてても大切にされてるのがわかってしまう小猫に対してなのか……それはリアス本人にも複雑ゆえにわからない。
「はぁ……私にもあんな男の子が居ればなぁ」
どこかの世界であるなら今ぼやいた通り、互いに愛し愛される関係だったりする訳だが、この世界ではあまりにもロリっ娘がアグレッシブ過ぎてあまり興味も持たれてない。
「リアスちゃん……なーんて呼ばれたりね」
何時か夢で見た自分を心底大切にしてくれる男の子に出会いたい。
リアスが頑なに婚約を拒む理由は実はそんな夢を見てしまったからだった。
補足。
コンセプト……あらゆる世界のもしも。
故にベリーハード時空的なテイストも微妙に……。