色々なIF集   作:超人類DX

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残念なというよりはぽんこつというべきなのか?


残念な先輩、残念な天使、残念な黒猫

 性癖に正直過ぎる以外はわりと基礎スペックが高い生徒会長のイッセー。

 いや、寧ろその正直過ぎる性癖のお陰で基礎スペックの高さが完全に薄らいでいると述べた方が正しい。

 

 

「納得できません」

 

「いや何が?」

 

「私が貴方に負けた事がです」

 

 

 だからこそ、生徒会選挙にて敗北を喫した支取蒼那――またの名をソーナ・シトリーは新生徒会となって暫く経った今でも負けた事が悔しくて生徒会室に突撃してくるのだ。

 ………わざわざ自分の眷属達と一緒に。

 

 

「だっておかしくないですか? アナタの支持率はあの時男子だけしか居なかったのですよ? なのに何で投票数で私が下回るのですか?」

 

「そんなん知りませんし、開票したらアンタの方が下だったでしょうに」

 

「だからそれが納得できないのよ! 作為的な匂いしかしないわ!!」

 

「…………元ちゃーん、お前の主さん何とかしてよー」

 

「ソーナ先輩、取り敢えず落ち着きましょう?」

 

「これが落ち着いていられるわけがないでしょう!? ちゃっかりアナタは書記だし!」

 

「だってしょうがないじゃないっすか、コイツが会長やるんだもん」

 

 

 負けた事が余程悔しいのか、未だにヒスを起こす悪魔としての元士郎の主に若干鬱陶しさを感じるイッセーは元士郎に丸投げするも、ソーナ本人は全くといっていい程納得する様子が見られない。

 

 

「とにかく納得ができないわ! 今からでも再選挙を要求したいくらいにね!!」

 

 

 そんなソーナのヒスだが、彼女の眷属達は放置してる傾向があり、女王の真羅椿姫以外の面々は他の生徒会役員である祐斗や小猫やレイヴェルと談笑していた。

 恐らく本人達もこの往生際の悪い主に付き合いきれないのだろう……それはイッセーも何となく察してたので敢えて何も言わなかった。

 

 

「元ちゃん、生徒会は大変?」

 

「いや別に。イッセーはなんやかんやで性癖にオープンになりすぎな所以外はスペック高いからな」

 

「そんな面を知ってる人達からの投票の積み重ね……といってもシトリー様は信じてくれないんだよね」

 

 

 元士郎にとっては眷属仲間となる子達からの問いに祐斗と一緒になって答えている。

 なんやかんやで新生徒会の面々に対する好感度は割りと低くは無いらしい……ソーナ以外は。

 

 

「くっ、リアスの眷属もだけど、私の眷属まで手懐けて……!」

 

「別に何もやってないっすよ俺は。

ハァ……胸が無いと心まで狭いのかよ、だから落選するんだよ、この戦闘力(おっぱい)たったの2のゴミめ」

 

「んなっ!?」

 

「それに比べてグレモリー先輩のなんたる心の広さよ。

アンタと違って祐斗と小猫が生徒会入りしても『よろしくね?』と言ってたし、やっぱりおっぱいが最強だと心にもゆとりがあるもんだ」

 

 

 だから段々鬱陶しくなってきたイッセーは、予てより思っていた事をぶちまけてみると、ソーナはこれでもかというくらい顔を真っ赤にしながらイッセーを睨んだ。

 

 

「わ、私を貧乳と言いたいの……!?」

 

 

 あ、やばい地雷踏んでる。

 と、談笑していたソーナの眷属達は一瞬怒りに顔を真っ赤にしている主を見るが、相手がイッセーだったので止めるのはやめた。

 

 

「あぁ、ちなみに白音――小猫は現状は5……将来はスカ○ター破損確定だ。

つまりアンタは将来性コミコミでそれ以下だね」

 

「!?」

 

「え、流石に今の身体じゃシトリー様に負けますよ私……」

 

「何言ってんだよ小猫、俺が言ってるんだから間違いないって。

レイヴェルも恐らくは将来楽しみだし」

 

「嫌ですわイッセー様♪ アレだけちゅーちゅーされたら大きくもなりますわ!」

 

「………させたのはお前等なんだけどね」

 

「…………………」

 

 

 ソーナに気を使っての発言だが、即座にイッセーに勝ってると言われてレイヴェル共々テレテレしてる小猫にソーナは言いようもない敗北感を植え付けられてしまう。

 確かにリアスやその女王の姫島朱乃―――というかこのメンツの女性の中では慎ましいかもしれない。

 けど、けどだ……それは現状の話だしもっと言えば流石に小猫には勝てるという自負はあるし、そこまて貧乳でもない。

 

 それなのにこのちゃらんぽらんが服着て歩く様な男は自分に向かって何てほざいた? 小猫にも将来コミコミで大敗? ふざけるな!

 

 ソーナは座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がると、会長席に座るイッセーの机をバンバンとぶっ叩きながら、まさに怒髪天を衝くといった表現が似合う怒りを露にする。

 

 

「貧乳じゃない!! 周りが無駄にデカいだけよ!!」

 

「おおっ?」

 

 

 怒り方がマジ過ぎてつい少しだけ引いたイッセー。

 まさか思ってた以上にコンプレックスに思っていたとは思わなかったらしく、バンバンと破壊する勢いで机を叩きまくるソーナをどうどうと馬に対する扱いのように落ち着かせようと口を開く。

 

 

「すいません、まさかそんなに怒るとは。いやでもほら、世の中には貧乳でも良いという人も居るわけじゃないですか? だからそんなに悲観せんでも大丈夫なんじゃありませんか? …………俺には理解できないけど」

 

「最後が余計よ!! しかも貧乳じゃない!」

 

「いや貧乳だろ。レヴィアたんに比べたら確実に無いだろアンタ」

 

「い、妹だから将来はあれくらいになる!!」

 

「いやぁ無理だろ……。

確か聞くところによるとアンタの歳の頃にはすでにあの大きさレベルだったらしいし?」

 

「こ、個人差! そう個人差があるのよ! 絶対になるわ!」

 

「えぇ……姉よりすぐれた胸を持つ妹なんて存在しねぇって誰かが言いそうなもんじゃん」

 

 

 ソーナをここまで感情的にさせるのはある意味で才能だ……と眷属達が思う中、未だ火にガソリンをぶちまけるかの如く煽りまくるイッセーにとうとうソーナが目尻に涙を貯めだす。

 

 

「ある! あ、あるもん……ふぇ……!」

 

「え、泣いたんだけどこの人……えぇ……?」

 

「最低だよ兵藤君」

 

「ソーナ先輩の事泣かせたのはダメだよ」

 

「だってここまでムキになるとは思わないだろ。元士郎の話からして堅物イメージしか持ってなかったし……」

 

「いえ、それでも貧乳で弄るのはよくないです。

私は他人事とは思えませんので」

 

「僕も言い過ぎだと思うよ」

 

「私もあまり擁護はできませんわね」

 

 

 メソメソとファンなら前屈みものなソーナの姿を前に他の者達も流石に言い過ぎだとイッセーに注意し、微妙に解せない気分になるものの、ここは皆の意見を汲んで、取り敢えずソーナに謝るのだった。

 

 

「すいません」

 

「くすん……じゃあ私は貧乳じゃない?」

 

「え、そりゃ貧――」

 

「ふぇぇ……」

 

「――じゃないですハイ」

 

「えへへ♪」

 

 

 ニマニマと笑うソーナ。完全にキャラが消し飛んでるが、あいにくそこまでソーナを知らないし知ろうともしなかったイッセーは内心『超めんどくせーぞこの人』と思うだけだった。

 

 

「先輩のあんな姿初めて見たかも」

 

「ちょっときゅんってなっちゃったわ……」

 

 

 

 

 

 

 徹底的な敗北。

 それが俺の人生の分岐点なのかもしれない。

 あの敗北が無ければ力を磨く事もしなかっただろうし、あらゆる意味での同志にも巡り会わなかったと思う。

 皮肉な事にあの女から受けた敗北があるから俺が在る。

 あの人外女からの苦い敗北が……な。

 

 だからこそ俺はリベンジを誓う。

 負けた時の屈辱を倍にして俺はあの人外女に挑んでやる。

 

 それが俺の今の生きる動機なのだから。

 

 

 

 悪人顔と言われ続けて何年経つのかもわからないし、特にどう思うこともなくなったとある堕天使の朝は早い。

 

 

「チョーシくれんなやボケナス! 今日こそどちらがボスの右腕か決めてやんよ!」

 

「フッ、すぐに熱くなるのは頂けないな。それに俺はコカビエルの右腕なんぞに興味は無いよ。

何せ一番弟子なんだからな」

 

 

 目覚まし代わりになる言い争いによる起床。

 最上級堕天使とも吟われるコカビエルの朝は、こんなスタートである。

 

 

「まあ、そろそろどっちが本物の『白』なのかをハッキリさせようとは思っていた」

 

「ケッ、使い古されたロートル神器なんざ『白夜』の前じゃカス同然だぜ」

 

「言うね。ならば早速――」

 

「やめんかガキ共」

 

 

 どちらも言ってしまえば銀にも白にも見える髪を靡かせ、片方は槍を、片方は背から白く輝く翼を出しながら庭で睨み合っている少年二人に、堕天使コカビエルはその両方に拳骨をくれてやることで場を収める。

 

 

「朝っぱらから喧しいんだよ、今度は何なんだ?」

 

「俺は悪くないぞコカビエル。コイツがいきなり突っかかって来たんだ」

 

「ハァ!? なぁに言っちゃんってんのかなぁ! テメーがしたり顔でボス自慢してきたからだろうが!!」

 

「…………………。ハァ」

 

 

 ひょんな事から多少の面倒を見ることになった二人の少年。

 片方は元悪魔祓いで、エキセントリックな言動の多いフリード・セルゼン。

 そしてそんなフリードに対して相手にしない様に装いつつ地味に挑発を繰り返すのは、ハーフ悪魔のヴァーリ・ルシファー。

 

 経歴から考えたらまさに水と油な二人だが、コカビエルの前ではそんな経歴など些細なものであり、どちらも手の掛かる子供だった。

 

 

「どっちがどうだなんて各々が勝手に思っていれば良いだろうが、そんな事より飯だ飯」

 

「「チッ」」

 

 

 互いがコカビエルをリスペクトするばかりか、どっちがコカビエルに近いかで一々揉める。

 本人からしてみれば、白龍皇と聖槍使いというだけの子供という認識でしかないのでどっちがどっちなど無いに等しいし、平等に扱ってるつもりだった。

 今も飯にしろと言うコカビエルによって矛は収めたものの、互いに舌打ちをしながらソッポを向いてしまっている。

 

 

「朝から要らん体力を使わせるな。で、飯は?」

 

「ルフェイたんとアーシアたんが作ってんぜ?」

 

 

 コカビエルの問いにフリードがすかさず答え、ドヤ顔をヴァーリに向ける。

 その顔を向けられてヴァーリは舌打ちをまたするが、今ここで事を起こしたら怒られると思ってるのか、仕掛ける様子は無く、黙って頷く。

 

 

「よし、じゃあ飯だ」

 

 

 それを聞いたコカビエルが欠伸を交えながらわざわざ一から資金調達までして購入した人間界マイホームの中へと消えていく。

 昔の彼ならまず考えられない状況なのだが、それを知る者も突っ込む者もいないので、ご近所さんから『顔は怖いけど結構話せる人』なんて言われてても誰も驚かないし……。

 

 

「あ、フリード様とヴァーリ様、朝の修行は終えられたのですか?」

 

「ご飯の準備はできてますよ!」

 

「お、おはようコカビエル……」

 

 

 

 

 

 

「……………………………………。お前が何で居る?」

 

 

 びっくりするくらい美人の通い妻が居て、それが表向きには敵対種族の最高幹部クラスの存在だとしても、少なくとも此処に住み着く面子達は驚きはしない。

 

 

「な、何でって、それはお話があって来て……その……」

 

「話?」

 

「朝食を作るのを手伝って頂きました」

 

「流石ガブリエル様で、手際も何も見習うべき所ばかりでした!」

 

「…………」

 

 

 スートハート・リーダーのガブリエル。

 天界一美女と吟われる純粋天使が堕天使の中でも異端中の異端で基本的にフラフラしてるだけの悪人顔の堕天使相手にモジモジしてたとしても……やはりされてる本人のリアクションは薄いのだ。

 

 

「話なら飯を食いながら聞いてやるが。お前、ミカエルにバレたら煩いのではないのか?」

 

「だ、大丈夫よ! ちょっとした散歩と伝えてあるので!」

 

「大丈夫じゃないだろその理由は――まぁ良いが」

 

 

 ひょんな事からヴァーリとフリードが其々拾ってきた少女・アーシアとルフェイとガブリエルが作ったらしい朝食に手をつけながらコカビエルは、最初に出会って以降何故か会う度に挙動不審なガブリエルを見る。

 

 

「……」

 

「う……」

 

 

 思いきり目を逸らされた。

 だからどうだこうだという訳では無いのだが、自分が苦手ならわざわざ来る事なんて無いのに……と、悪人顔故の思考回路全開で、モジモジしてるガブリエルを見つめ続けるコカビエルは、大方自分の行動を監視しろとミカエル辺りに言われてるのだろうと結論付け、目線を切る。

 

 

(ガブリエル様、どうしてお話されないのですか!)

 

(だ、だって……! い、いざこうすると頭の中が真っ白に……)

 

(これでは何の為に来たのかわからないではありませんか!)

 

(ヘタレかお前は……。戦闘意欲の権化のコカビエルが気付く事なんてないぞ?)

 

(つーか堕天使のボスにってのがまず難儀すぎるっしょ)

 

(何だ? どいつもこいつも俺を見てため息なんぞ吐いて?)

 

 

 子供達全員からの生温い視線に、若干居たたまれない気分でハムエッグを食べるコカビエル。

 と、ここまで来れば少しは微笑ましい話なのだが、このガブリエルという天使はそんじょ其処らの天使とは訳が違った。

 

 

(コカビエル……コカビエル……!)

 

 

 見る限りは遅れた思春期みたいな態度だが、その内面は――いや、コカビエルと直接何かしない以外でのガブリエルは中々にアグレッシブなのだ。

 例えばそうだ……今はこうして慎ましく朝食を共にしているのだが、実は昨晩の時点でコカビエルの自宅の周囲を謎のカメラ片手にウロウロしていたり……。

 

 

「あ、そうだ。全員に聞くけど俺のハンカチを知らないか? 黒い奴」

 

「俺は知らないな」

 

「んー、俺っちも」

 

「お洗濯物の中にはありませんでしたよ?」

 

「私も見ませんでしたが……」

 

「………」

 

 

 その私物を頂いたりと、直接の接触ではなければ嘘みたいな行動力となる。

 それは所謂ストーカーともいえるのだが、本人は最初に出会った頃、既に人外の領域へと進化していたコカビエルに指一本で捩じ伏せられた衝撃からくる想いらしいのだが、これでよく堕天しないのかが不思議なくらいだ。

 今だってコカビエルが無くした筈のハンカチをこっそり隠し持ってるし、そのまま頂く気満々だ。

 

 

「まあ安物だからまた買えば良いし探す必要は無い」

 

 

 まさかガブリエルが失敬してるとは思っていないコカビエルも特に気にする事なく食事に戻る。

 とある人外に徹底的な敗北を与えられて以降、その人外を超越する為だけに力を磨き続け、またそれしか頭に無い堕天使は色々と鈍い所も多いらしい。

 

 

「で、話というのは何だガブリエル?」

 

「えーっと……」

 

 

 だが、一度戦争時の状況下により叩き潰したこの天使が進化をしているのは放たれる雰囲気でわかる。

 まるで人外が示した可能性の一部を己が掴んだ様に、このガブリエルもまた種としての力とは全く違う新たな可能性の一部を掴んでいる。

 

 それは一度目以降、何度か戦った事があるので間違いない。

 

 

「我々の管轄内に居る人間に不穏な動きをする者が居まして……」

 

「ほう?」

 

 

 例え、少しストーカーちっくになってても進化の証は確かにあるのだ。

 

 

 コカビエル

 グリゴリ幹部

 備考・超戦者

 

 

 ヴァーリ・ルシファー

 アザゼルの義息子、コカビエルの一番弟子(自称)

 備考・白龍皇、無幻大

 

 

 フリード・セルゼン

 聖剣計画雛型被験者・コカビエルの右腕(自称)

 備考・白夜騎士、千古不磨

 

 

「おいフリード、それは俺のベーコンだ」

 

「ハァ? 名前なんて書いてあるんですかぁ? 早い者勝ちだぜ」

 

「………やはりお前とは一度どちらが上か話し合わないとならないようだな」

 

「けけけ! 上等だぜ表出ろよ? 刹那でおねんねさせてやっからよォ?」

 

「今喧嘩するなら飯抜きにするぞガキ共?」

 

「………。いやー、ご飯が美味しいなフリード!」

 

「だねだね! あっははは!」

 

「もう、少しは仲良くしましょうよ?」

 

「そうですよ」

 

「「………チッ」」

 

 

 アーシア・アルジェント

 偶然救われし幸運の聖女

 備考・聖母の微笑

 

 

 ルフェイ・ペンドラゴン

 偶然に白夜を見て魅了された旅人

 備考・我流魔戒法師

 

 

 

「要するに、その連中を釣り上げる為に俺が上手いこと誘導しろと? まぁ、このツラならその手の事なら簡単にやれるが……」

 

「わ、私は寧ろ愛嬌があると思ってますよ!?」

 

「無理して言うなよ、別にわかってるし……」

 

「無理なんかじゃないのに……」

 

 

 ガブリエル

 スートハートリーダー

 備考・縦応無神

 

 

以上、チームコカビエル

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒーロー? おいおいよしてくれよ、俺がそんな柄な訳ないだろ。

ヒーローやるよりおっぱいサーチしてた方が余程建設的だぜ』

 

 

 人生詰んだ矢先、その暗闇から抜け出そうともがいた自分の手を点かんで引っ張り上げてくれた少年は何時もこうだった。

 

 

『妹と疎遠で、しかも悪魔の眷属になってしまったから迂闊に会えない? フッ、この俺様に任せな』

 

 

 お気楽な言動、ちゃらんぽらんな言動。

 しかし何故か頼もしさを感じてしまう。

 

 

『良いっすか? 理由はちゃんとあるんで、もし俺がアンタ等に勝ったらこの人のはぐれ認定は取り消して貰う』

 

 

 端から見れば正気の沙汰とは思えない行動力。

 ただのちっぽけな人間の子供一人が、爪弾きとなった自分一人の為に悪魔の王四人に喧嘩を売る。

 

 

『ガキと思って油断し過ぎだぜ内三人の魔王! 龍拳・爆撃だぁぁぁっ!!!』

 

 

 だが少年は約束を見事果たした。

 どうしようも無い状況下だった自分の柵を、飛翔する龍帝の如く取り除き、自由を与えてくれた。

 

 

『さぁてと、最近のガキは結構やるもんだと示せた後はアンタ一人だけど、此処からが正念場って奴かな。

そうだろ最強の魔王さん?』

 

『いやいや僕は白旗を上げるよ。元々その子のはぐれ認定を取り下げるのは賛成な訳だし、何より互いに無傷じゃ済まないだろ?』

 

『へぇ~

流石あの人外女の背中に立つ人外って訳か。ちぇ、お見通しってわけかい』

 

『気分を害したなら謝るよ。でも僕としては君の敵にはなりたくはないからね。それに奇しくもその子の妹さんは僕の妹の戦車なんだし』

 

『あぁ、あの将来おっぱいスカウターぶち壊れ確定の子かぁ』

 

『おい、僕のリーアたんに変な事したら殴るよ?』

 

『じゃあヤる理由が出来たな魔王!!』

 

 

 あの日以降、いやもしかしたらその前から。

 少年の中から感じた同じものを見抜いた時から思っていたのかもしれない。

 本人が否定しようとも、自分にとってはヒーローなのだと。

 

 だからこそ自由をくれた少年に対して――

 

 

 

 

 

 

「こんにちわ~ イッセー君はいますか~?」

 

 

 アグレッシブになる事にした。

 それはもう熱烈に、オープンに、激しく。

 

 

「!? どっから入ってきたお前!?」

 

「どっからだなんて酷いなイッセーは? 勿論普通に入ってきたんだよ? ほら、お昼ご飯のお弁当忘れていったでしょ?」

 

 

 誰だあの巨乳女子は!? と、高校入学して三ヶ月後の事だ。

 見事に四人の内三人の魔王に勝って少女のはぐれ認定を取り下げさせた少年・兵藤イッセーの家に押し掛けて無理矢理住み着く様になった後に癒し系美少女としてもてやされる小猫の姉の黒歌は、この時はまだ生徒会長にはなっていない、変態男子のトップクラスとして堂々と女子の殆どに嫌われていたイッセーの所属するクラスへ、忘れ物を持ってきたという名目で突撃した。

 

 

「お、おい兵藤!? だ、誰だその巨乳美人は!?」

 

「聞いてないぞ兵藤!? 何時知り合ったんだよ!?」

 

 

 このお弁当を届ける為に、妹とイッセーと一番付き合いの古いフェニックスの娘さんとの間に壮絶なバトルが繰り広げられた訳だが、見事『反則』ともいえるスキルを駆使して勝利した黒歌は、この時既にモテない、変態、女子の大敵という称号を欲しいままにしていた希望の星であるイッセーに自分との関係について問い詰めてくるクラスメートにタジタジになっている所に腕を絡める。

 

 

「嫁さんですけどなにか?」

 

『なにぃぃぃっ!?!?』

 

「違うんだけど!?」

 

 

 イッセーに対しては倍のアグレッシブさを持っている黒歌が、薄手のセーター越しに主張する豊満な胸を押し付けながら嫁を自称するものだからさぁ大変。

 それまで女の影なんて絶対ないと信じていた男子達から嫉妬の怒声が、同じくあり得ないと思っていた女子から驚愕の声が教室を揺らす。

 

 

「裏切り者が!!」

 

「死ねィ!!」

 

「のわー!?」

 

 

 当然この後男子達から嫉妬の意味で袋叩きにあったのは云うまでもない。

 そして現在、そんな影を見事に植え付けられても尚妙なカリスマ性を持つイッセーは、先代からの指名により新たな生徒会長となり、妹の白音やライバルのレイヴェルが後輩として、同学年の元士郎と祐斗が生徒会入りした中、学園生活自体にそんな興味もなかった黒歌だけは自宅に留守番しながら悠々自適な暮らしをしていた。

 

 

「~♪」

 

 

 イッセーの家には黒歌一人であり、両親は居ない。

 それはかつて不慮の事故で亡くなったからであり、黒歌が住み着く前には既に独りだったらしい。

 とはいえ、死ぬ前からどういう訳かイッセーの両親は悪魔のフェニックス家当主夫婦と仲が良かったらしく、その後はフェニックス家からの支援によって暮らしているとか。

 まあどちらにせよ黒歌にとってイッセーはイッセーで大好きである事は変わらない。

 

 皆が帰ってくる前にレイヴェルの母であるエシル・フェニックスによって叩き込まれた家事をこなし、帰ってきた時は学園で楽しくやってるだろう妹とレイヴェルの分以上にイッセーに構って貰おう。

 

 あの時は自分よりも背も低かったけど、勝利の宣言するかの様に魔王達に振り上げた際に大きく見えたあの背に目一杯飛び付いてやる。

 きっとイッセーならしょうのない奴めと苦笑いしながら受け止めてくれる。

 

 

「大好きだよイッセー、だから早く帰ってきてね? フフッ」

 

 

 その安心感が黒歌を突き進ませるのだ。

 

 

 黒歌

 元はぐれ悪魔。

 備考・安察願望、六道の片割れ

 

 

「うへへ~ イッセー匂いがするお布団にゃ~♪ あはぁ……気持ちよくなりたいにゃぁ……」

 

 

 数時間後、ほぼ全裸でイッセーの布団の上でよがってた黒歌が発見され、布団をビショビショにしてしまってたので大層怒られた黒猫が居たとか。

 

終わり。

 

 

 

 

 

 

 ソーナはムカムカしていた。

 

 

「イッセー、鉢植え替えたぜ?」

 

「掃除も済ませたよ?」

 

「予算認可もしときました」

 

「取り敢えず言われた通り、垂れ幕は作りましたわ」

 

 

 思っていた以上に生徒会として機能させているイッセーに対して。

 

 

「へ、へぇ? 役員の皆様が有能で助かりましたね?」

 

「否定はしないっすよ。あんだけ荒れてた元士郎をここまで修正させたアンタの教育とやらは確かに凄いです」

 

「え!? ……………あ……ま、まぁ当然でしょう! なんていっても私ですから?」

 

 

 でもそんなムカムカも変にチョロい所がイッセーのせいで出始めていたソーナは褒められたと思って忘れかける。 

 

 

「もっと無いのかしら? こう、私の良いところを言われてあげても良いわよ?」

 

「は? ……………………………………………………………………………………グレモリー先輩なら千は褒められるけどアンタの場合は特に無いんですけど」

 

「はぁ!? あるでしょう!? スレンダーだとか! リアスより可愛いとか!!」

 

「うっわ……ひんぬーが負け犬の様に吠えてるんだけど、つーか最近何なんすかアンタ?」

 

「ひ、ひんぬー言うな! 良いでしょう!? 最近暇なんですよ!!」

 

「だからって部外者なのに生徒会室に入り浸るかよ」

 

 

 イッセーの要らぬ一言のせいで、所謂ウザかわいいという属性をひねり出したソーナだが、色々と対象から外れているイッセー的には鬱陶しい先輩さんの域を出ないし、さっきからレイヴェルと小猫がジロリとソーナを睨んでいる。

 

 

「だって仕方ないでしょう? アナタは私が好きだからこうして顔を出してあげないと」

 

「………………………は?」

 

「「…………」」

 

 

 そして睨んだ通り、訳のわからない事を言い出すソーナに素で反応してしまうイッセー。

 後ろでレイヴェルと小猫が指をバキバキ鳴らしながら臨戦態勢に入ってるのも構わずソーナは言うのだ。

 

 

「だって私をからかうのは好きだからなんでしょう? だから貧乳だってありもしないことを言ったり……。

でもあんな悪口はダメですよ? 私が運良く意図を察したから良かったけど……そ、それにお互いの事をもっとよく知らないといけませんから。

だから最初はお友達からで……でも友達だからといって他の女の人と仲良くなるのは良くありませんからね? それともしその……む、ムラムラしたりしたらしょうがないので何とかしてあげなくもないです。仕方ないですもの、アナタはスケベさんですから……で、できたら初めてだから優しくはしてほしいです。

そしてもしも子供ができたら父と母に挨拶して欲しいですね、当主候補からは外れるでしょうけど人間界で暮らせば良い話だし、白い家に子供は後5人………いや、サッカーくらいはできそうな人数は欲しいかな? 夜は絶対にチューして、そ、それ以上の事をするのが条件ですからね?」

 

「おーい元ちゃーん、この人の頭が壊れてるんだけどー?」

 

 

 どこかの拗れたひんぬー会長コースみたいな事を。

 

 

「「有罪(ギルティ)」」

 

 

終了




補足

人外にボロクソにやられ、再起した結果無敵気味チームが完成されたらしい。
そして天使さんに私物をぱくられてハスハスされたりするけど……本人は怖い顔なのとアザゼル黒歴史ハーレムを見てるので『まぁ死ぬまで独り身だな』と思ってて気付けない。


その2
実はレヴィアたん経由で存在だけはしってたけと、ひんぬー言われて泣かされた結果……変な勘違いに走ってしまったとさ。


その3
割りと真剣に好きだけど、白音たんもレイヴェルたんも個性が強すぎるので何時しかこうなっちゃったとか。

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