色々なIF集   作:超人類DX

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何気にですけど、原作より少しパワーアップしてたりする一夏きゅん。

その理由はスパルタに加えて出会った天使さんのお陰……か?


衝動的に

 良いから失せろ。

 初対面でいきなり浴びせられた言葉は、殺意に満ち足りた声。

 

 勿論恨みを買われた覚えも無い。

 一体何だったのだろう、本音に連れ出されてからは顔を合わせてないけど、思い出すと少し腹が立つ。罵声を浴びせられる謂れはないのに。

 

 

 それと織斑一夏。

 只でさえ彼が起動者になった事で私の専用機開発は完全に凍結して複雑なのに、同室ばかりか裸まで見られ、挙げ句の果てにはあの姉に何か吹き込まれてイライラする事ばかりしかしてこないでストレスばかりだ。

 

 本音には再三釘を刺して専用機開発の凍結については知られてないけど、姉が余計な事を言わないという保証はない。

 何もしなくて良いと宣える天才様なのだから。

 

 

 

 

 クラス代表戦当日。

 試合会場のアリーナ席は満席であり、試合が始まるのを待っていた。

 

 

「一試合目からいきなり一夏と凰が戦うとはな。

アイツはちゃんと凰と仲直りしたのだろうか?」

 

「してないだろ多分」

 

 

 最近メンタル値が勢いよく、それこそ温暖化の影響で南極の氷山が崩れ落ちるくらい削られまくってる一誠も、箒に連れられる形でキャーキャー騒いでる女子生徒に混ざって一夏の試合を見届けようと、テンション低めに座っている。

 

 

「どちらが勝つと思う? 凰は中国の代表候補生で確かな経験も豊富だが、ここ最近の特訓で一夏も腕を上げてる……と素人目には見えるのだが」

 

「更にド素人の俺に聞かれてもな。第一俺は凰さんの専用機がどんなのかすら知らんし」

 

 

 入らされたからには勉強だけはするものの、基本的にIS自体にはそれほど関心も無いイッセーの冷めた態度に箒は苦笑いを浮かべるのと同時に、精神的に今は落ち着いている様だと安心する。

 

 

「一夏が出てきたぞ」

 

「…………」

 

 

 こういう事で少しでも忘れてくれれば……そう願う箒はピットから専用機・白式に搭乗し現れた一夏を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 さて、そんな一誠の精神を削る『声』を持ってしまっている者の一人黛薫子は、あの騒動以降イッセーと接触するのを控え、別のルートからの取材を行っていた。

 

 

「織斑せんせー」

 

「む、黛か? 職員室になんの用だ?」

 

「本日の対抗戦の取材許可ですよー、何せ今年の対抗戦は例年とは違いますからね~」

 

「だから私か……」

 

「正直言うとそれだけではありませんけどね……」

 

「? どういう事だ?」

 

「実はですね……」

 

 

 薫子は一夏とイッセーの担任である千冬に接触し、今回の対抗戦の取材をという理由を使って特にイッセーの事を調べようとしていた。

 勿論聞いた所で千冬が答えてくれるとは思えないし、もっと言えば唯一二人の男子の内一夏が圧倒的に周囲のウケが良いので、イッセーの取材をした所であまり意味は無い。

 しかしそれでもあの衝撃的な罵声を浴びせられて以降、薫子はイッセーの背景に興味を持ってしまったのだ。

 

 

「兵藤……だと?」

 

「ええ、織斑君には専用機が渡されたしたが、彼には未だその話は上がってませんからね」

 

「……………」

 

 

 だから然り気無く話をシフトさせ、イッセーの話題に持っていった瞬間、千冬の表情が僅かに揺れる。

 

 

「以前お前が兵藤に罵声か何かをいきなり浴びせられた……と聞いたが」

 

「えっと……まぁ。でも誤解だった様で和解はしてますよ?」

 

 

 『俺にその声を聞かせるんじゃねぇ! 殺すぞクソボケがァ!!!』――後にも先にも初対面でいきなりあんな事を言ってきたのは彼だけであり、きっとこの先もないだろう。

 彼の傍らに常に居る篠ノ之箒曰く、昔彼を苛めたとある女の声に似ていたので脊髄反射的に反応してしまった……との事だがそれが余計に興味を持ってしまう。

 

 

「個人のプライバシーを洩らすつもりは無いぞ私は?」

 

「ええ、ええ……わかってます。これは単に私の個人の興味ですからね」

 

「……そういう事か。だが残念ながら私も兵藤の事は深くは知らん。

わかっていて話せる範囲といえば、奴が一夏と同時期に篠ノ之と知り合っていた事と、ゴシップ記事の通り孤児で、孤児院を脱走し続けていたぐらいだ」

 

「なるほど、篠ノ之さんが彼に世話を焼くのはそれが理由でしたか。

けれど織斑君……というか先生も彼の事は知らなかったのでしょう?」

 

「まぁな」

 

 

 頷く千冬の表情は少し固く、薫子はまだ何かを知ってるのを見抜くが、これ以上踏み込んでも聞き出せるのは無理だろうと判断して取材を終えると、職員室を後にする。

 

 

「まだ何か知ってる様だけど知るのは無理か……。

うーん、大々的な織斑君と比べて報道自体も少なかったから余計に謎ね……」

 

 

 孤児で保護されても脱走を繰り返すストリートチルドレン。

 今のところ薫子が知るイッセーの情報は少なすぎる……だからこそ余計に気になる。

 

 

「うーん、今の世の中であんな正面から罵声されたものだから却って衝撃的だったのよねぇ。

寝ても覚めても気になるわ兵藤くんが……」

 

 

 皮肉にもあの罵声が夫と娘と義理の妹を裏切ったグレイフィア・ルキフグスの声質に似ている薫子の関心を買ってしまった。

 本人がそれを知ったら果たして何て顔をするのか……。

 

 

「取材をしてみたいけど私の声がイケナイのか。

はぁ……結構悪くない声って言われたこともあるんだけどなぁ」

 

 

 だが薫子は偶然見てしまう。

 ISという概念が当たり前になってきた自分の認識を真っ向から破壊する龍の帝王の一撃を……。

 その姿を見るまで残り数十分……。

 

 

 

 

 

 

 試合が開始のブザーが鳴るのと同時に一夏は白式唯一の武装である雪片弐型を手に、鈴音の搭乗する甲龍と激突する。

 

 

「へぇ、少しはやるじゃない。私の初撃を避けるなんて」

 

「まともに喰らってたらセシリアにどやされるからな!」

 

 

 お互い近距離型の為、得物同士のぶつかり合いで火花が散る。

 既にアリーナ席は熱狂の渦が回っており、一夏と鈴音は何度も打ち合った。

 

 

(鈴のISは近距離型だが、中距離攻撃も可能……既に情報だけはセシリアに言われて集めてある。

それが――)

 

 

 何度か打ち合う中、甲龍の肩部分の空間が歪む。

 

 

「喰らいなさい!」

 

「! 来たっ!」

 

 

 その瞬間、一夏はガードの体勢を取り、見えない何かに殴られた衝撃を受けながら大きく吹き飛ばされた。

 

 

「くっ……」

 

「へぇ、少しはやるわね。アタシの龍砲を初見でガードするなんて。

まぁ、ダメージを逃がす事は出来なかった様だけど……」

 

 

 全身を叩く衝撃により壁際まで吹き飛んだ一夏は体制を立て直し、再び襲い掛かる見えない衝撃波をギリギリのタイミングで避けていく。

 

 

「セシリアに言われてお前のISについての前情報を仕入れてなければ全部食らってたぜ」

 

「またあの女の入れ知恵? …………腹立つわ」

 

 

 僅かに歪む空間を見てギリギリで避ける。

 これもセシリアの無理矢理なスパルタ教育の成果であり、一々セシリアの名前を出されてイラつき始めた鈴音の龍砲を避けた一夏は、練習していた必殺技の準備に取り掛かる。

 

 

(千冬姉から教えられた必殺技を撃つには距離が足りねぇ。だから瞬時加速を使って一気に距離を詰める。

後はタイミングだが……何故かまた怒って龍砲を乱射し始めてる今なら穴はある……!)

 

「チッ、いい加減に当たれ!!」

 

 

 単に嫉妬心に駈られてるだけなのだが、唐変木だけは鍛えた所で変わってない一夏には解らず、ひたすらタイミングを伺いながらシールドエネルギーを雪片弐型に貯める。

 

 

(虚センパイが応援してくれてるんだ……無様な真似は晒したくない!)

 

 

 虚が見ている……だから無様な敗けは見せないと、とことん少女達の思惑の逆を行く一夏は遂にそのタイミングを見切る。

 

 

「今だ!! 二段式の瞬時加速!!」

 

「っ!?」

 

「そして喰らえ!! これが俺の零落白―――」

 

 

 隙を突いた一撃が鈴音へと襲う。

 だがその一撃は中断される……。

 

 激しき爆発音と共に突如空から落ちてきた何かによって。 

 

 

「な、なに!?」

 

 

 思わず停止した一夏は煙の上がる方向を見るのと同時に通信が入る。

 

 

『織斑と凰! 試合は中止だ!! 今すぐピットに戻れ!』

 

 

 通信を入れたのは千冬だ。

 

 

『侵入者だ、今すぐ教師により鎮圧させるだから早く戻るんだ!』

 

 

 どうやら侵入者らしい……煙が晴れた先に悠然と佇むソレを見て理解した一夏は言われた通り避難しようとしたが……。

 

 

『Boost!』

 

 

 全身が血の様に赤いそのISは、機械音声と共に両の手から拡散式のビームを放ち、一夏と鈴音を逃がさないとばかりに襲い掛かってきた。

 

 

「っ!? 逃げられねぇ!!」

 

「危ない一夏!!」

 

 

 赤い光線が直撃する瀬戸際、鈴音が龍砲を放って相殺させた。

 

 

「た、助かったぜ鈴……」

 

「無事で良かったわ、けどあの全身装甲のIS……私達を逃がしてはくれそうもないわね。というか何なのあのIS……さっきからブーストという音声と共にエネルギーが跳ね上がってる」

 

「増幅させてるのかよ……」

 

「恐らくね……ただ、エネルギーを増幅させるなんて技術は聞いたことが―――っ!? 来るわよ!!」

 

 

 予期せぬ侵入者の出現に、先程までの喧嘩も忘れて連携を取る二人。

 しかし相手の謎のISは思っていた以上に強すぎたらしく、鈴音の予想通り、時間と共にエネルギーを倍加させる赤いISは、想定していた速度を遥かに越えた速さで二人の目の前へと肉薄し、一撃で地面へと叩きつけた。

 

 

「ガッ!?」

 

「うがっ!?」

 

 

 たった一撃で戦闘不能に追い込む攻撃力を持つISが無言でこちらを見下ろしている。

 

 

「ま、まずい、今のでスラスターがやられた……」

 

「わ、私もよ……これじゃあ動けない……」

 

 

 何とか立ち上がったものの、二人のISから火花が散っており、ダメージレベルが深刻だ。

 だが相手は容赦せず再び倍加の掛け声と共に右腕ちエネルギーを収束させ始める。

 

 

「あ、あれ……撃つつもりか?」

 

 

 見ただけでマズイということを理解した一夏の全身から嫌な汗が吹き出る。

 先生方はまだ来ない……それはつまり詰んだに等しき状況であり、赤い閃光がアリーナ全体を支配する中……。

 

 

「こっちだ一夏、凰!!」

 

 

 詰みを覚悟した二人の元へ生身の援軍がやって来た。

 

 

「ほ、箒!? お前避難してなかったのかよ!?」

 

「あ、ISも持たないのに何してんのよ!」

 

「話は後だ! 早くISを解除しろ!!」

 

 

 その一人、箒の姿に驚く二人だが、迫力に負けて言われた通りISを待機状態へと戻し、そのまま腕を掴まれて抱えられる。

 

 

「なっ!? あ、アンタ凄い腕力ね……。

アタシと一夏を抱えるなんて……」

 

「そ、それよりどうするんだよ? て、てか一誠は一体何をしようと………」

 

「見ていろ……そして出来れば内緒にして欲しい」

 

 

 ひょいと軽々と二人を抱えた箒は、背を見るだけでも殺気立っている一誠を見つめながら懇願する。

 

 

『……………最優先ターゲット発見』

 

「……………」

 

『本当にムカつくな。話にもならん劣化品とはいえ鎧とはな』

 

 

 ISの概念を越えた領域を言いふらさないように……。

 

 

『Boost!』

 

「き、来たぞ!? は、早く逃げろ!」

 

「何やってんのよアンタ!? そんな生身でアレをどうにかできるわけ―――」

 

 

 超高速で落下してくる赤いISを見上げながら一歩も動かない一誠に逃げろと叫ぶ二人。

 しかし一誠は逃げない……全力の殺意の下に左腕に本当の龍帝の籠手を纏い、赤いISと同じ『Boost』というおっさんのような掛け声と共に全身から赤いオーラを放つと……。

 

 

「龍拳・爆撃!!!」

 

 

 赤い装甲を纏う左腕を落下してきたIS目掛けて突き出し、爆発と共に赤い龍が出現する。

 

 

「………は?」

 

「な、なに……あれ……真っ赤なドラゴン……?」

 

 

 衝撃的過ぎる光景に唖然とする一夏と鈴音を他所に、イッセーが作り出した赤い龍は咆哮と共に飛翔し、急停止したISの胴体を貫いた。

 

 

「龍拳。

夢で見るより迫力があるな……ふふ」

 

 

 イッセーが作り出した赤い龍が、一体誰が作り出したのかも知らない機体を喰らいながら空の彼方へと消えていくのを見上げながら思わず微笑む箒。

 そう、この姿こそリアス・グレモリーを介して見て惹かれたイッセーの背中。

 

 

「お、俺は夢でも見てるのか? い、一誠がすげーことした……」

 

「ば、化け物……」

 

 

 拳を天に掲げて勝利するこの姿こそ……イッセー。

 生で見られた嬉しさに身体が火照る箒は思わず抱えていた二人を落としてしまう。

 だが残念ながらこの光景を見せてしまった後は色々と大変だ。

 

 何せ多くの生徒が避難したとはいえ、目撃者は居る。

 この二人然り、モニター室で見ていた担任しかり……。

 

 そして……。

 

 

「な、なにあれ……? ひょ、兵藤くんがやったの……?」

 

「い、いっちーが凄いことした……ね……」

 

「………………」

 

 

 皮肉な事に避けて通りたかった相手にもバッチリ見られてしまった。

 

 

「………しまった、織斑君が危ないと思って衝動的に。

いや、というかあのガラクタを作ったのは誰だ?」

 

 

終わり 




補足
自覚なしだけど、センパイの応援に対して無様な真似はしたくないと頑張った結果ちょっと強い。

だが出てきたのはインフレオーバーな何かだったという……。

そしてその態度で余計にイライラしちゃう他の子。


その2
龍拳・爆撃

元ネタ、そのまま龍拳で赤い龍が出てくる。

ちなみにかつての仲間のヴァーリも使えて、彼の場合は白い龍。


その3
本当に皮肉な事に、避けたいのに惹いてしまう。

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