色々なIF集   作:超人類DX

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ちょっと内容の修正とおまけ

マイナス一誠とは真逆になった兄貴。

何が……とは本編で


実は……………な、兄貴

 さて、兄貴達から一旦距離を置いた訳だが、引き続き依頼を行うのは変わらない。

 人間である俺にはさっきリアス・グレモリー……あー……『リアス』に聞かされた其々の『種族事情』というのはわからない。

 故に兄貴とシスターが仲良しなことが間違っているのかなんてのも分からないし、だったらしゃしゃり出るなと言われても仕方ない。

 しかし、これはリアスが学園の生徒として俺に依頼してきた事だ。

 だから、俺は俺でやれるだけの事をやる。

 それが依頼人であり『友』となった彼女の望みなのだから。

 

 

「やはり兄貴は勘が鋭い。先程のバーガーショップにはもう居ないぞ……」

 

 

 少し騒ぎになってしまい、その場から撤退してから再び兄貴と金髪が目を引くあのシスターが共に居た店の近くに戻ったが、既に居なかった。

 多分……恐らくだが兄貴はあの時点で俺と気付いていており、シスターを連れて何処かへ行ってしまったのだろうという、新たな変装を施しておいた俺の予想に同じく別の変装服に身を包んだリアスがコクりと頷きつつも何処か余裕がある表情を見せていた。

 

 

「大丈夫よイッセー。セーヤの居場所なら解る」

 

「何?」

 

「これでも私はセーヤの主よ。

あの子と私が主従関係で繋がりがある限り、その気配を辿るのは容易いの」

 

 

 ほう…………主従関係になると分かるのか。

 俺にはよく分からんが、なじみとかくれんぼしてても即発見され『何処にいようとキミなら刹那で捕まえられるからな』とドヤ顔で言ってたアレと同じ様なものか。

 

 

「こっちよ。本当は近くまで転移すれば直ぐなんだけど、人が多い此処でそんな事をすれば大騒ぎになるから、少し歩くわよ」

 

「うむ」

 

 

 転移? なじみの腑罪証明(アリバイブロック)みたいに一瞬で何処にでも飛べるスキルみたいなものなのか……?

 どうやらなじみのように隠密性は無いようだが、なるほど悪魔というのも凄いものだ……っと?

 

 

「早くイッセー」

 

「む? あぁ……分かったが、手を繋ぐ必要は無いぞ?

俺は方向音痴では無いからな」

 

 

 どうやら何処に居るだろう兄貴を探知出来たらしいリアスが俺の手を掴んで引っ張るので、その必要は無いと掴まれた手を離させる。

 これ以上ベタベタと女性に触れまくってたら、マジで怒られてしまうからな……………なじみに。

 

「……嫌なの?」

 

「は? いや別にどうとも思わんが、それ以上に師匠に怒られるのはな……」

 

 

 180㎝近くなった身長を持つ俺を見上げながらそう言ってくるリアスに対して、さっきから……正確に言えば彼女をリアスと呼び始めてから、変な罪悪感を抱いている自分が居る。

 向こうの親切を無下にしてしまったというアレな感じの。

 しかしこれは駄目だ。なじみが怒ったら宥めるのに3日掛かる……掛かるのに。

 

 

「折角お友達になれたのに?」

 

「(ピクッ)友達?」

 

「せっかく親しく出来るチャンスなのに?」

 

「(ピクピクッ)親しく?」

 

 

 物凄い魅力的な事を、捨てられた犬みたいな顔をして言ってくるリアスに俺の精神は揺さぶられる。

 てのも、恥ずかしい話俺は友達が実に少ない。

 松田と元浜とか曹操…………くらいしか思い浮かばない辺り絶対多くない。

 なじみ? アイツは師であり姉であり親でもありな……取り敢えずに大事な奴であって友人じゃないと思ってるのでノーカン。

 

 

「見知らぬ女性に対してならアナタの考えは間違って無いかもしれない。けど、私達は……まだ見知らぬ関係?」

 

「…………。違う……か?」

「そう、違うわ。だから私に触れてもセーフなのよ、分かった?」

 

「そうだったのか…………知り合いはセーフだったのか」

 

 

 思えば知らない女にとなじみは言ってた様な……。

 てことはセーフなのか、触れても良いのか……。

 ふむ……。

 

 

「ふぁ、ふぁひふふほ?(な、なにするのよ?)」

 

 

 良いなら良いんだろう。

 そんな気持ちに傾いた俺はついついリアスの両頬に手を伸ばし、痛くないように掴んで伸ばしたし回したりしていた。

 うむ、柔らかい。

 

「いや、何と無くだ何と無く……ふふ。

ほら行こうぜリアス、兄貴の居る場所の案内を頼む」

 

「え、えぇ……。(何故ほっぺ?)」

 

 

 そっか友か。

 そうかそうか……うーん、なんかいい気分だな。

 やる気っていうか心が満たされるって感じ? 実に清々しいね。

 

 

 

 

 

 

 愚行でも無ければ善行でもありはしない。

 彼はどちらの手段もその時に応じて決行する。

 実に平和で平等的だ。

 思えば僕と初めでコンタクトを取った時もそうだった。

 あの頃のイッセーくんは単なる『己を虐めぬいて結果を残す事でしか自分を確立できやしないつまらない』ってだけの、兵藤誠八というイレギュラーに主人公の座を奪われた男の子だった。

 ああ、断っとけば僕は何にもしちゃいないぜ? 兵藤誠八というイレギュラーは僕にとってもイレギュラーであり、下手すれば8年前の時点では僕ですら手を出せない存在だったんだ。

 まったく、『何処の誰が』彼をこの世界に連れてきたのやら……。

 まあ、そんな事はどうでも良いか……今や兵藤誠八くんには何の興味も価値も無いんだし。

 

 兵藤一誠……本来はスケベで熱血で紆余曲折の後最高峰の赤龍帝となるハーレム王を目指す健全な少年。

 その彼が誠八くんへと、主人公補正の大半足る赤龍帝の籠手を移された一誠……それが僕と出会い、僕の持ちうる全てを与えて来た……謂わばめだかちゃんと人吉君を足して更に倍にした主人公だ。

 

 赤龍帝では無い代わりに、奪われても尚折れずに居たことで覚醒した一誠くんオリジナルのスキル無神臓(インフィニット・ヒーロー)は、ある意味かつて僕の持っていたスキルの大半を完成させてくれためだかちゃんの持つ完成(ジ・エンド)を凌駕している。

 何がと言われりゃあ答えてやるが、完成というスキルは完成させた時点ではそれ以上の成長の見込みが無くなる。

 だけど一誠くんの持つ無神臓は、そのスキルの持つ限界を…………例え話、RPGゲームのキャラクター育成なんかがそうだ。

 そのキャラクターのレベル限界が100として育成をスタートさせた場合、めだかちゃんのスキルなら一気に100レベルまで到達させる事が出来る。

 

 しかしながら一誠くんのスキルの場合、そこからが本番となる。

 ゲームをプレイする諸君の知る通り、本来レベルが100になったらそれ以上いくら経験値をつぎ込んでも上がることは無くなる。

 たけど一誠くんの持つ無神臓は……そのレベル上限を完全に取っ払い、無尽蔵に底上げさせるんだよ。

 つまり、レベルカンストという概念を消して何処までも力を増大させる。

 プラスなら無限に、マイナスならマイナス無限にな。

 

 恐らく『努力の先を得た快感』がそのままスキルとして形になったんだろうね。

 彼って自分の事に関しては全く妥協しやしねぇし。

 だから僕は彼を不知火君以上に僕の写し鏡にしようと決めた。

 一周回ってアホだけど、何処までも真っ直ぐに道を進んでいく彼のその主人公力とスキルは僕にとって手離すには実に惜しい。

 だから僕が全てをつぎ込んでやろうと決めたあの日、僕は言ったんだ。

 

 

『例え他の連中に勧誘されても、最終的には僕の元に戻って来いよ?』

 

 

 僕が何かしらの事情で消滅した場合のバックアップになること。

 それが僕とイッセーくんとの間に交わされた約束。

 めだかちゃんの様に生徒会長になるのも構わないし、誰と親しくなろうが良い。

 だが、しかし……極限の選択を迫られた時……最後に僕を選べばな。

 なので……。

 

 

「良いってば……俺は子供じゃないんだから手なんて繋がなくても」

 

「良いじゃない。こうしとけばカモフラージュになるでしょ?」

 

「なんの?」

 

「ええっと、恋人同士?」

 

 

 …………。仕方ねーから少し付き合ってやるよ。

 ハーレム物のラノベ展開的にな。

 

 

「随分と楽しそうな事をしてるじゃねーのイッセーくんや?」

 

「どわっ!?」

 

「…………。誰?」

 

 

 それに、ビックリされるのも楽しいしね。

 

 

 

 

 

 まずいヤバい速い。

 夢の中での会話が最近のトレンドだった筈のなじみが出現しおった。

 

 

「な、何でアンタが?」

 

「んー? 気分?」

 

 

 そう言いながら実にニコニコ顔である俺の師匠こと『安心院なじみ』は、隣で?を頭の上に浮かべまくるリアスを一瞥してから、多分魅力的な声を弾ませている。

 

 

「夢の中でより直接弟子であるキミを見に来たくなった……師ならよくある心境だろ?

それとも何だい? 今会いに来たら都合が悪いと?」

 

「いや……そんな事は別に無いが」

 

 

 神出鬼没なのは今に始まった話では無いが、何せ久々なもんだからビックリしてしまう。

 気配すら読ませず瞬時に背後を取る……相変わらずの相変わらずっぷりだ。

 

 

「イッセー? あの……」

 

「あ、あぁ……すまんな。彼女は――」

 

 

 状況についてこれないって顔をしてるリアスに、ちょくちょく話をしていた『師匠』が彼女だって教えようとしたそのタイミングで、なじみが被せる様にして声を出す。

 

 

「僕の名前は安心院なじみ。イッセーくんの師匠的ポジションをやってるだけの只の人外さ」

 

「――――そういうことだ」

 

「……。彼女がそうなのね……」

 

 

 はっはっはっーと妙なテンションで自己紹介してくれたなじみに続く感じで教えてやると、リアスの顔は意外そうだと言わんばかりだった。

 まあ、仕方ないだろな。

 なじみの見た目ってまんま俺等の年代と変わらないしね……。

 死延足(デッドロック)で永遠を生きてるなじみに寿命も老化も無いからな。仕方ないんだよねリアスの反応も。セーラー服姿だし。

 

 

「……って、こんな事してる場合じゃないぞ。早く兄貴を追わんと……」

 

「あ、そうだった。

ええっとこっ――」

 

「ああ、彼と金髪のシスター――アーシア・アルジェントさんなら直ぐ向こうの公園を歩いてたのを見たぜ?」

 

「ちよ……へ?」

 

「なに?」

 

 

 何か今日は横道に逸れる。

 元々兄貴とシスターの観察が目的なのに何故か俺の友達作りな話になってたのがこれで漸く軌道修正出来る。

 

 

「公園か……よし」

 

「僕も行くぜ。生徒会長になったイッセーくんの仕事ぶりを近くで見てーしな」

 

「なに? ふふん、それなら尚の事張り切らなければなら――」

 

「あーそれと、年頃のレディに抱き着いた事について話が聞きてぇ」

 

「うげ……!? や、やっぱり知ってたか……いやだがそれはリアスも気にしてないと……」

 

 

 ネックブリーカはやめてくれ、アレは死ねる。

 デコピンなら……いや駄目だ、脳挫傷になる。

 そもそもその事に関してならアンタ見てたなら知ってるだろ。リアスは許してくれたんだぞ。

 

 

「彼女が全く気にしてない? それは嘘だぜイッセーくん。

キミのその直ぐ信用する癖は長所でもあり欠点なのは相変わらずなのは分かってるが、プラスであれマイナスであれ、キミがそうした事により、彼女に何らかしらの心の変化が現れちゃったのは間違いない。

ね、リアス・グレモリーさん?」

 

「……。だったらどうだと言うのかしら?」

 

 

 お仕置きが怖い俺の言い訳をヘラヘラ笑顔でスルーしながら、懐疑的な顔をなじみに向けてるリアスに話を振る。

 すると、何でか知らないけどリアスの声は挑発的だった。

 

 

「あっれぇ? 何でそんな怖い顔をするのかなー? 僕の言ってる事が間違えてるというのなら何処を間違えてるのか教えて欲しいなー?」

 

「………………」

 

「あー……早く兄貴を……」

 

 

  おい、何だこの変な空気は? なじみもニヤニヤしながら挑発するのは止めろ。

 リアスも無言で睨むの止めろ、即殺されちまうぞ。

 そして俺を無視すんな。

 

 

「おい、もう良いから早く行くぞ!」

 

「へーへー……イッセーちゃんは相変わらず強引だね。ベッドの上でもそうだ」

 

「なっ、べ、ベッドォ!?」

 

「? 一緒に寝たのは随分と昔の話だろ? 今は寝相の悪さも大分改善するよう努力を……」

 

「ちげーよ駄目弟子。もっとアダルティーに物は考えろっつーの。ね、リアス・グレモリーさん?」

 

「わ、私に振らないでちょうだい!(師匠というから年上だと思ってたのに……若すぎるわよこの女……)」

 

 

 わーわーと顔真っ赤に喚くリアスを疑問に感じながらも、とにかく早く兄貴の元へと行かなければという方が先決だったので、走ろうとしないリアスを抱えつつ、なじみが参加した状態で俺達は公園へと走った。

 

 

 

 悪魔に転生した俺は、その天敵とも言える存在であるシスターと仲を深めていた。

 リアス部長から彼女に近付くなと言われても尚、俺は何故か彼女をほっとく事が出来なかった。

 

 

「どうだった?」

 

「はい! とっても楽しかったです!!」

 

 

 部長にも仲間にも内緒で会いに行き、丸一日使って彼女と現代の子供らしく色々な所に行って遊んだ後、夕焼けが照らす公園内を二人並んで歩きながらどうだったと聞く俺に屈託の無い笑顔で答えてくれるブロンドヘアーの女の子……アーシア。

 

 

「初めての経験が沢山で……とても楽しくて……」

 

「そっか……喜んで貰えて俺も嬉しいよ」

 

 

 何で此処まで彼女に対して拘ってるのかは分からない。

 何と無く……何と無くそうしなければならない気がしたから……いや、そんな理由では無い。

 俺がそうしたかったからだ。

 そう自分を納得させながらアーシアの話日曜日相槌を打ってると、その時はやって来た。

 

 

「こんな所に居たのね……探したわよアーシア」

 

「っ……! レ、レイナーレ様……」

 

 

 黒い翼を広げながら堂々と俺達の前に降り立つ一人の女はその翼と気配を辿る限り堕天使と見える。

 レイナーレ……そうアーシアが怯えながら口にしたその堕天使は、わざとらしく心配そうな顔をしながらアーシアを、そして俺を見下した顔で其々一瞥する。

 

 

「わ、私はもう戻りたくありません! あんな……あんな酷いことを……!」

 

 

 酷いこと……恐らくこの前俺が黙らせたあの煩い神父が一般人に対して行った事に関してなのだろう。

 アーシアは怯えつつもハッキリした口調でレイナーレとやらに帰らないと宣言する。

 

 

「ハァ……困った子ね。そこの穢らわしい下級悪魔くんにありもしない入れ知恵でもされたのかしら?」

 

「え?」

 

「………」

 

 

 顎でを俺を差しながら悪魔と言うレイナーレに、一瞬何を言われたのか分からず唖然とするアーシアが、恐る恐るといった様子で沈黙する俺を見る。

 

 

「あ、悪魔? セーヤさんが……?」

 

「そうよ、彼も貴方を騙してたのよ? 何の目的があってかは知らないけど」

 

「そ、そんな……嘘ですよね? セーヤさんが悪魔だなんて……嘘、ですよね?」

 

「………………」

 

 

 言えなかった。言えるわけがなかった。

 ひょんな事から出会い、今の今まで隠し通して来た理由は今見せてるアーシアのこの反応にあったからだ。

 ガタガタと震え、すがるような声を出しながらも一歩一歩後退していくアーシアを見て、俺の心は引き裂かれる思いがする。

 

 

「俺は……悪魔だ」

 

「………っ!」

 

「…………」

 

 

 でも……これだけは言いたい。これだけは本心だ。

 俺は……!

 

 

「でも……アーシアは友達だと本当に思ってる。

本当に……これだけは……!」

 

「ふん、悪魔風情が何を戯言を。

アーシア……騙されてはいけないわ、早く此方に来ないとソイツに殺され――」

 

 

 黙れ! お前が余計な事を言うな!!

 

 

「煩い!!」

 

 

 俺はほぼ反射的に赤龍帝の籠手を生成し、レイナーレと呼ばれる女堕天使に殴りかかった。

 突然の事で反応できなかったのか、ガードこそされたものの、レイナーレの身体は吹っ飛んで地面にひっくり返る。

 

 

「ぐっ!」

 

「レ、レイナーレ様!?」

 

「ハァ……ハァ……ハァ……っ……」

 

 

 呻き声を出しながら身体を起こすレイナーレに、先程の怯えも忘れて駆け寄るアーシアがレイナーレを庇うようにして前に立ちながら俺を見据える。

 

 

「や、やめてくださいセーヤさん!」

 

 

 その行動が俺には信じられなかった。

 怯えた目を向けられるのが堪らなく辛かった。

 

 

「退いてくれアーシア……。そいつはアーシアの神器を利用してるだけだ……だから……!」

 

「その腕の神器は……赤龍帝の籠手(ブースデッドギア)……! チッ、こんな下級悪魔に宿ってたのか!」

 

 

 俺の腕に出現している神器を見て毒づくレイナーレをまだ庇おうとするアーシア。

 なんで……なんでそんな奴を庇うんだよ……! 帰りたくないってさっき言ってたのに……!!

 

 

「俺を裏切るのかアーシア? 友達と言ってくれたよなぁ?」

 

「ぅ……!」

 

「コイツ……何だ? 急に態度が……」

 

 

 俺を裏切る……そんなもの許さない。

 何時もしゃしゃり出ては勝手にかっさらっていく一誠を見て俺から離れる奴みたいに……俺を裏切るのなら……!

 

 

『Boost!』

 

「裏切り者は……皆消えろぉぉっ!!!!」

 

「ひっ!?」

 

「ぐっ……クソ、こんな下級悪魔ごときにやられーー」

 

 

 消えてしまえ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストップだ兄貴」

 

 

 荒れ狂うドス黒い感情の赴くまま、倍加させた力を放とうとしたその瞬間、俺が尤も憎む相手である弟の声が真横から聞こえたのと同時に鳩尾に激痛と苦しみが襲い、俺の意識はそのままブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………。兄貴め」

 

 

 危なかった。兄貴の奴、本気でこの二人を殺そうとしてたもんだからついでしゃばる真似をしてしまったが。

 

 

「な、何なのよ……次から次へと」

 

「せ、セーヤさん……」

 

 

 長い黒髪の女と散々尾行してた相手の一人である金髪のシスターが困惑した面持ちを其々見る中、俺は兄貴が完全に気絶しているのを確認してからへたり込む二人の方へ顔を向けると、思いっきり驚かれた。

 

 

「なっ……セーヤさんとそっくり……」

 

「……。悪魔の気配がしない……?」

 

 

 あ、そうか……兄貴と顔がそっくりだから驚いてるのね……。

 うむ……。

 

 

「……。俺は兵藤一誠。見ての通りそこで気絶してる兄貴の双子の弟で、単なる駒王学園の生徒会長だ」

 

「生徒……」

 

「会長……?」

 

 

 簡潔な自己紹介をする俺に、二人はポカンとするがそこはスルーして話を進める。

 

 

「色々あって悪魔である兄貴がシスターをやってる貴様と仲良くしてるのを心配していたとある悪魔の主の依頼で監視させて貰った。

まさか殺そうとするとは思わなかったが……」

 

「殺すって……じゃ、じゃあ私達は……」

 

「うむ、あのままだったら確実に死んでたな。貴様等二人は」

 

「っ……セーヤさん……」

 

 

 すぐそこの物陰でなじみと一緒に見ているリアスを話に出しながら、単なる人間の俺が此処に居る理由を話すと、金髪の少女の顔色は悪くなり、堕天使の方は顔を歪めている。

 

 

「くっ、いくら赤龍帝の籠手だろうと、下級悪魔であるなら油断してさえ無ければ……」

 

 

 どうやら自分の持つ力に対してそれなりの自信があるらしいが、油断してる時点でナンセンスだと俺は思う。

 

 

「自分の力に自信を持つのは結構だが、それで死んだら馬鹿を見るだけだぞ? それに、兄貴はキレると何をしでかすか分かったもんじゃない」

 

「な……に、人間ごときが偉そうに説教するな!」

 

「説教じゃない忠告だ。現に貴様は殺されかけたんだぞ?」

 

「ぅ……」

 

 

 見下す……蔑む……結構だ。

 それが原因で早死にしてしまうのも本人の責任でしかない。

 だが、俺の目の前でそんな光景を展開させたら遠慮無く止めさせて貰う。

 目の前で殺す殺されるなんて見たくないからな。

 言葉に詰まり、俯く女堕天使と何やら手から光を出しながら女堕天使の身に触れている金髪のシスターを見下ろす俺は『さて』と二人に向かって口を開く。

 

 

「これで終わりにしてお別れと洒落混みたい所だが、事情が変わってしまった。

まずは堕天使の貴様……ここいらの領地を任されているリアスと話をしてもらおうか?」

 

「なっ!?」

 

 

 気配に気付けなかったのか、ギョッとした顔をする堕天使。

 どうやらリアスと会うと都合が悪いらしいが……もう遅い。

 既にリアスとなじみが物陰から出て来て此方に来てるからな。

 

 

「な、何で……? そんな気配は……」

 

「気配なんて空気と同化させればいくら貴様でも察知は困難だった……単にそれだけの話だろ?」

 

 

 お陰で俺等は気兼ねなく観察が出来たしな。

 まさか兄貴が二人に手を上げようとは予想外だったけど。

 

 

「……。ありがとうイッセー、予想以上にセーヤの精神が不安定になるのが早くて焦ったけど」

 

「なに気にするな。身内に属する者が目の前で誰かを殺める姿は、いくら仲違いしてても見たくはないのでな」

 

 

 ちょっとだけ疲れた様子のリアスが俺の隣に立つと、堕天使とシスターがビクッと身を震わせる。 

 

 

「あ、悪魔……それに」

 

「リ、リアス・グレモリー……と、誰よアナタ」

 

 

 そしてリアスより更に少し遅れて俺の隣に立つ長い髪を持つセーラ服姿の女……安心院なじみ。

 見た目は普通の少女にしか見えないが故の二人の反応は仕方なく、なじみも二人に対して人の良さそうな笑顔を見せている。 

 

 

「僕はしがない人外。まあ、テキトーに空気扱いでもしてくれたまえ」

 

「「……」」

 

 

 サラッと人外と自称するなじみをシスターも堕天使も……そしてリアスですら何とも言えない表情を浮かべていた訳だが、まんまその通りなんだよお三方。

 

 

「先ずは貴女の目的を教えなさい」

 

「……」

 

 

 さて、これで依頼もフィナーレかもね。

 俺となじみ……そしてリアスの三人を堕天使とシスターが困惑した表情で見てくるのを感じつつ、取り敢えず兄貴には申し訳無いがもう暫く寝てもらう事にしようと、目線でなじみに合図を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ……大信者さんの嫉妬

 

 

どこかのどっか

 

「安心院さんが人間と一緒に居る。しかも師弟って何だよ? 僕が頼んだ時は『僕は暇と見せかけてやっぱり暇じゃないから断るよ』って言ったのに。

しかも安心院の太股に挟まれて締め付けられてるとかなんてご褒美を罰だって?

うん……その人間とはキッチリお話をしたいね……いやホント」

 

 

 そう笑顔で呟くのは、どっかの誰かの赤髪美男子だったとか。




補足

登り詰め過ぎた事で、兄貴の精神は不安定になってます。
リアス譲もだから『依頼』をしに来たんです。

元々彼の精神の不安定さは把握してましたので。プラスそんな状態で尚且つ赤龍帝なので、いっそ管理した方が安全なのかもしれないという苦肉の策です。


補足2

マイナス一誠よりも関係が深いせいで、大信者さん『達』からは思いっきり嫉妬されまくりだったりするのを……………知らないけイッセーだった。

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