整理する時に消すから本当に嘘なの!
小さな村で生きた少年が発見した時に歯車は現れ、動き出した。
「此処はどこだ……ぐっ!?」
村の近くの森で見つけた血塗れのフラフラな年上の少年。
今にも崩れそうな程に弱々しく見えた少年に小さな少年はその純粋な性格故に善意で駆け寄った。
「人間!? そんな……なんで……いや、というか木だと?」
何故か驚く少年の意図はわからないけど、その尋常では無い傷をとにかく直してあげたかったので出来る限りの看護をしながら、困惑し続ける少年の不可思議なは質問に答える。
「違う世界……? …………………。確かに人間じゃない生物の気配が多々感じられるけど」
「あ、あのアナタは一体……」
「負け犬だよ……ただのね」
人間にだけは善良な茶髪の少年は、相手が自分より年下の子供でしかも治療の手伝いまでしてくれたということもあって割りと素直に自分の身の上話を聞かせてくれた。
とある戦いに敗けて気づいたら全く違う世界であるこの森で倒れていた事や、自分がどうしようもない屑である事……そして――
「ご、ゴブリンがあんな一瞬で……」
「見たことあるようで無い生物だったがまるで手応えが無い……。
てか、今の話信じられるのか?」
「そ、そりゃあ嘘を言ってるように見えませんし、何より凄いというのはわかりましたから!!」
「……………。ちょっと変わってるなキミって子は。
その髪の色も知り合いに似てるし」
彼が龍を宿した取り敢えずすんごい男であることを純粋過ぎてちょっとアホの子にすら見える少年は信じた。
結果、よくわからないまま少年の村に案内され、よくわからないまま祖父に紹介され、ある話でめっちゃその祖父さんと話が合い、気づいたら身寄り無しの少年としてその村の一員となって殺伐としすぎた心を癒していく。
「冒険者? その冒険者ってのにベルは憧れてるのか?」
「うん! もう少し成長できたらオラリオに行って冒険者になるんだ!!」
「ふーん……?」
自分の助けてくれた少年・ベルの夢を毎日の様に嫌な顔せず耳を傾ける少年は彼の祖父からある時言われていた。
『ベルを頼む』
色々と不純な面を持つからこそ話がべらぼうに合ってすぐ仲良くなったせいか、異様なまでに余所者な筈の自分を信用したベルの祖父に何時の頃からかベル少年を見守ってくれとまで言われており、恐らくその理由はきっとベルの祖父が少年の持つ力を知り、知った上で尚化け物と恐怖せず向かい合ったからこそなのだろう。
「その時が来たら言いな。
ベル坊とじーさんには命の借りがあるし、その……なんだ? オラリオってのに行ける日が来たら付いていってやるぜ?」
「ホント!? イッセーと一緒なら心強いよ!」
荒んだ人生を生きて気付く事も無かったが、子供と同じ目線に立てるからこそ好かれやすい少年の一言に心底喜ぶベル。
そしてその日はベルの祖父が二人の前から突然消えた日にやって来た。
「なんで……僕を一人に……」
「ベル坊、オラリオに行くぞ。
冒険者で有名になったらきっと向こうから会いに来るさ」
命の借りを――愛した者を失って以降亡くした生きる意味というの炎を灯した破壊の龍帝は今は小さいけど大きくなる予感がする少年と共に、吐き気がする程嫌う存在がはびこる都市へと。
それはきっと物凄く精神的なストレスを抱える毎日になるのかもしれない。
だがそれ以上に血塗れの自分を受け入れてくれた者への命の借りを返す為に……。
「聞こえるかドライグ?」
『久し振りだなこうして話すのは? そして小僧、お前とは初めましてと同時に礼を言わせて貰おう。
よくぞ俺の相棒の精神を復活させてくれた……イッセー共々この借りは命を以て返させて貰う』
人ならざる存在を片っ端から殺し尽くした破壊の龍帝は今一度甦った。
勿論、異世界でまたしても片っ端から殺す真似はせず、あくまでベルのサポートに徹し、どれだけ吐き気がしようとも無意味に殺す真似はしないとベルの祖父との約束を守るつもりだ。
というか、そのベルの祖父自体が――今語る事ではないので割愛する。
「うー……やっと憧れのオラリオに来れたのに何処のファミリアにも入れないよイッセー……」
「地道にやるっきゃ無いだろ。えーっと何だ? ダンジョンとやらに潜ってモンスター倒して鍛えてからとかでもアリちゃアリだろ?」
「うん……」
イッセーという支え――いや、
だがそんな門前払いな状態の中、只一人――イッセーにとっては最も殺戮衝動に支配されてしまう人ならざる存在――ていうか貧乏でボッチな神と出会してから別の意味での運命が変わる。
「ぼ、僕達をファミリアに!?」
「うん、キミ達が他の者達に門前払いを食らってるのを偶々見て、よかったらと……」
「………………………」
ほぼ本能で物凄く冷酷な目をする少年に若干ビビりながらも、やっと巡ってきたチャンスを逃してなるかと、体型の割りには童顔な少女の勧誘にはしゃぐベル少年。
勿論この勧誘に乗らない手は無く、ベルはイッセーの少女に向ける本能から来る殺意に気づかないままその手を取って喜んでる。
「やったよイッセー! やっと僕達も……あ、そういえばアナタ様のお名前は?」
「あ、うん……僕はヘスティア」
純粋な子だなぁ……と思いつつヘスティアと名乗る神は彼の傍らに付く大人に差し掛かるだろう年齢の少年を見て――
「……………………………キミ、その……あの、気を悪くさせたみたいなんだけど、ご、ごめんね?」
何かもうめっちゃ不機嫌なのを自分のせいと思い、やっと得られるかもしれない家族という事もあって死ぬほど低姿勢になって頭を下げまくった。
それはもう元々の見た目でほぼ壊滅していた神の威厳も泣いてしまうくらいに。
「別に」
それに対してイッセーは正直内心相棒と話ながら、この妙に肩透かしばかりな神らしき少女の力を探りつつ目を逸らした。
約束を守ると誓った以上、そもそもベルの目の前でうっかりバラバラだなんてそれでは前と変わらない。
それだけはダメだと殺戮衝動を抑えながら、何でか低姿勢になりまくりなヘスティアに案内され――何かもう殺意を向けるのもアホに思えるくらいド貧乏な現状を目の当たりにするのだった。
「ば、バイトで食い繋いでいたって――はぁ? 神が?」
「は、恥ずかしながら……。それに上に居た時と違って力は大分落ちてるから……」
「……………………」
『本当にあのじーさんの言った通りだったな。まぁあのじーさんがああいう暮らしをしてるのだからそうなのだろうが……』
「はぇ!? い、今声が!?」
『………しかも俺に気づいてないし、コイツ本当に神か? 俺には只の小娘にしか見えんぞ』
どうにもポンコツ臭しかしない長候補に殺意が引っ込みまくりで馬鹿馬鹿しさすら覚えてしまう。
それもこれもベルという清涼剤のお陰もある訳だが、それにしても神がバイトて……かつてのとにかく自分を脅かす存在を殺そうとする神々を片っ端から殺しまくってたイメージが壊されるくらいだ。
「俺に恩恵は要らねぇ。まぁベル坊のサポート目的で一応加わる体ではあるけど」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 恩恵無しだとこれから先――」
『そう思うなら小娘、俺とイッセーを深く探れ。理由はそれでわかる』
「む……わかった、それじゃあ二人とも脱いでよ?」
言われた通り恩恵貰いの為に脱ぐベルと、嫌々ながらベルに続くイッセー
ベルはその未熟というかもう年相応な地力で若干ガッカリだが、イッセーを調べた時、ヘスティアは息を飲むしかできなかった。
「ろ、神滅具!? そ、それに龍帝!? イッセーくんの中に宿ってのはドラゴンなの!? し、しかも相当強力な!?」
「だってさ、神直々に驚かれたぜドライグ?」
『小娘な見た目に誉められてもな……』
歴戦の戦争屋みたいな絞り込まれた肉体、内に宿す神をも殺す龍帝。
「む、無限に進化し続けるって……ね、ねぇ、本当にキミは誰かに恩恵を貰ったとかじゃないの?」
「スキルとドライグを神ごときの貰い物だと言われるのにはイラッとするが違うよ。
ガキの頃色々とあってここまで鍛えた……ただそれだけだ。で、わかったか? その恩恵ってのは俺には必要ねぇ」
「う、うん……」
既に神を破壊できる域まで到達しているレベルとスキル。
ヘスティアはヤバイのを拾ってしまったとびびるが、イッセーはあくまでベルのサポートに徹し、自分が力を振る真似はしないと言っている。
「よかったなベル坊、お祝いになんか美味いもん食いに行くか?」
「それと探索もしようよ!」
「だな――で、アンタは?」
「あ、う、うん……お金無いよ僕?」
「この現状を見てアテになんかするか、こんな事もあろうかとベル坊の田舎で稼いで貯めた小遣いがあるんだよ」
「…………お世話になります」
あくまでベルの為に。
ヘスティアにとってベルはまさにストッパーであるのと同時に、ベルの身に何か……それこそ他の神々がなんかやらかした後の事を考えると胃がキリキリ痛むが、取り敢えずお腹は減ったので、無駄にドヤってるイッセーにご馳走になるのだった。
これは壊れた少年の再生録。
「やったなベル坊!! ひとりでゴブリンを倒せたな!!」
「い、いやダンジョンの中だと最弱――」
「あ!? おい神サマ? 今ベル坊の成長に対してなんつった?」
「凄いよベル君!! 今日はお祝いだね!!」
「イッセーとヘスティア様に褒められるともっと頑張れます!!」
取り敢えずイッセーに合わせてベルを誉めて伸ばす教育にヘスティアが勤しんだり……。
「ぼ、僕その……」
「ほぅ、どこぞのファミリアのメンバーの女に一目惚れねぇ? じーさんの孫だぜ確かに」
「ちょっと待って! えっと、それってどこの誰?」
ベルの一目惚れのサポートを無理矢理付き合わされたり……。
「げっ!? だ、ダメだよ! あのロキのファミリアに所属してるだなんてダメ!!」
「ええっ!? な、何でですか!?」
「だ、だって僕……アイツ嫌いだから……」
「向こうの長をか?」
「うん、た、多分イッセーも嫌いなタイプかも……」
「ふーん? じゃあ偵察してくるわ」
異様にベルの一目惚れした女性が所属するファミリアの長を嫌うヘスティアをめずらしがってイッセーが偵察に出て。
「ベル坊の女の趣味は悪くはないが。確かにあの長は無いな」
「でしょ!? でしょう!? やっとイッセーと通じ会えた気がするよ僕!!」
ベルの一目惚れした女性以外のロキ・ファミリアは無いわと帰って来て話したら妙にヘスティアが喜んだり。
「ベル坊、男は度胸だ。取り敢えず押して押して押しまくれ!」
「で、でももし断られたら……」
「ばか野郎!! それで行くんだよ!!」
めっちゃ間違ってるナンパ法を伝授したり。
「おいヘスティア……あのロキって神殴って良いか? てかぶっ殺して良いか?」
「ど、どうしたのさ唐突に!? ま、まさか何かされたの!?」
『ベルの小僧のサポート中、出くわしたあげくしつこく付きまとわれてな。それでイライラしてるらし――』
「殺すのは無しだけでひっぱたくのはアリだよイッセーくん!」
対ロキになると異様に息が合い……。
「貧乳に生きる価値無し!!! 食らえ、10倍ドラゴンッッッ――」
「なっ!? ひ、貧乳は関係ないやろ!!」
何かついついプッツンしてフェイバリットぶっぱなそうとしたり……。
「ストップストップ! 落ち着こうイッセーくん、大丈夫だ、あんまりしつこい様なら僕がなんとかするから……! それにほら、ベル君が見てる前だよ?」
「む……」
ちょっと周囲にバレ始めてる異様な力を持つ人間を御した現場を見られてヘスティアが凄い奴みたいな扱いになったり……。
「な、なんやねん……なんやねん……!」
「ペッ! クソが、二度とそのツラ見せんなよ絶壁が。
これならまだヘスティアとバイトしてた方が有意義だったぜ」
「アレに負けた気分にさせられて嫌やっ!! それと絶壁言うな!!」
その反対にネタ枠にさせられそうになる方も居たり……。
「ベルが俺の無神臓を……」
「あ、そうか……恩恵だよベル君の」
ベルきゅんが凄い事になったりと……まぁなんやかんなヘスティア様の緩さのお陰で殺戮衝動が消え始めた破壊の龍帝なのだった。
「ええやん! ちょっとイッセー君を貸してーな!」
「嫌だ! というかしつこいんだよ! ベル君とイッセー君は僕の家族でアンタには指一本触れさせないよ!!」
「またやってるよあのお二人……大変だねイッセーも?」
「最後までうざかったクソガキといい……頭痛くなる」
本気と書いてマジな嘘、終わり。
補足
ベルきゅんのおかげで理性が働いてデストロイが抑えられてるという奇跡。
ベルきゅんを皆でベルきゅん様と呼ぼう。
その2
何かヘスティア様が残念すぎて殺戮衝動が削がれたらしいが、他に関してはなんかひとつでもガソリン投下されればヤバイ。
その3
戦力。
ネオ白音たんに負けて逃げたルートとはいえ、デストロイ状態の戦力です。