色々なIF集   作:超人類DX

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えーっと、すいません閲覧注意です。


限界

 赤と白……。本来なら殺し合うが定めである二つの龍が一人の悪魔の下和解した。

 事情を知らぬ者達にしてみればそう思うし、何より驚異的な戦力と見なされる。

 

 リアス本人は今回の事についてを冥界に報告する事を避け、発覚して追求される日が来るまで黙っているつもりだった。

 第一、その親友の一人はどうであれ先代ルシファーの血族である。連中がどんな反応を起こすかくらい笑ってしまう程度には予想できた。

 

 

「リゼヴィム・ルシファーは生存しているらしく、俺の父と母はそいつに殺された。

まぁ尤もそこら辺は前と然程変わらんし、俺自身奴には恨みも関心も無い。必要なら始末をつけに行くが……」

 

「確かお前の祖父に当たる先代魔王の一人だったか? あの時は既にカスに殺されてたらしいからどんなのかは俺は知らないけど」

 

「まあ、多分お前なら会話して二秒で殴り飛ばそうと思う程度には嫌な男だと思う」

 

「ふーん?」

 

 

 ヴァーリ程の男を兵士の駒で転生させるにはいくらリアスでも容易では無く、複数を使っての転生となった。

 幸い兵士の駒は一個も使ってなかったので、湯水のごとく消費して何とかはなり、今ヴァーリは転生による自身の変化が無いかを一誠を相手に確かめていた。

 

 

「流石だな、世界が変わっても腕は落ちていない様だ」

 

「当たり前だろ。カスが居ないとはいえ、敵が居ないわけじゃあないからな」

 

 

 互いに拳と脚の連打の応酬をしながら、腕が落ちていない事を確かめ合う。

 赤と白……二天龍の片割れを宿す者として謂わば宿敵の関係であるイッセーとヴァーリだが、互いに憎しみは無く、純粋な力比べ程度の手合わせだが、それでも二人の力がぶつかれば大気は震え、地は砕ける。

 

 

「こんな所か。転生悪魔になっても然程変わらない様だ」

 

「リアスちゃんの眷属だからってのが大きいだろうぜ? 俺も全く変化しなかったし」

 

 

 ヴァーリ・ルシファー……転生悪魔生活のスタートは無難なものだった。

 

 

 

 

 

 

 聖剣の捜索の結果、コカビエルは何者かに倒され、聖剣だけが残されていた。

 その報告を受けた次の日、何時も通り地味変装で学園に登校してきたリアスを遠くから眺めながら盗撮をしていたソーナ達は、誰がやったのかを直ぐに悟った。

 

 

「ヴァーリ・ルシファー――白龍皇……」

 

「彼が今回の騒動を鎮圧させた様ですが、あの様子は……」

 

「部長と一緒に居るということはあの人も記憶を持っていることになりますよね……」

 

「私達はあの方の事はそれほど知りませんが、部長さんと兵藤さんの友人なのですよね。だからあんなに部長さんの近くに……」

 

「それだけじゃ無く、兵士として部長の眷属にすらなってるし……」

 

 

 恐らくリアス個人のポケットマネーとイッセーの健在な両親のバックアップにより駒王学園の生徒として急遽転入を果たしたと思われる銀髪の青年にて旧魔王の血筋であるヴァーリ・ルシファーが変装リアスとイッセー……そしてアイカと談笑しながら登校している姿を眺めながらソーナ、朱乃、小猫、アーシア、祐斗――

 

 

「結局最初の話し合い以来リアス・グレモリーと話すことは出来なかった……」

 

「近寄ろうとすると兵藤君が出てくるからね……」

 

 

 そしてソーナの家の力を利用し、上手いこと学生として潜り込んだ悪魔祓いのゼノヴィアと紫藤イリナは徐々に形成されていく悪夢のような戦力保持者達に向かって爪を噛んでいた。

 この時期による転校生ラッシュに一般生徒の女子はヴァーリに騒ぎ、男子はゼノヴィアとイリナに騒ぎ立てていたりする訳だが、本人達にそんな視線の自覚は無い。

 

 

「まずいわ、兵士の位置に前は居なかったから今回はまだ何とでもなるけど、このままだと残りひとつの戦車や二つの僧侶と騎士が……」

 

「じょ、女王は……」

 

「女王じゃなくても眷属にさえなれれば良いでしょう? なんなら私が代わりたいくらいよ」

 

 

 そんな視線より彼女達が焦るのは、ヴァーリという兵士が加入した事で残り少なくなったリアス眷属の座であり、この期に及んでまだ諦めてない元眷属達。

 

 特にソーナのリアスへの執着心はサーゼクスに『過度で無意味な接触はリアスの兄としてやめてくれ』と言われたにも拘わらず――いや、言われたからこそ無尽蔵に膨れ上がっており、イッセー、ヴァーリ、アイカと楽しげに話をしながら歩いている変装状態のリアスを見る目がヤバイ人の目だった。

 

 そのお陰でかつての記憶を持っていなかった自身の眷属に対しての関心が少し薄く、聖剣捜索の手伝いをした匙に対してのご褒美について先日ソーナは、意味深な声色まで使って誘導したのに、起こした行動はただ匙の頭を二秒だけ撫でて終わりだったのだ。

 

 

『何? ご褒美とは言ったけど何をするかまでは言ってないし、これではご褒美にならないのかしら?』

 

『い、いえ……そ、そんな事は……ありません……』

 

 

 勿論二秒だけしか撫でられて終わりな事に不満じゃない訳が無い匙だったが、あまりにも淡白に言われて頷く他無く、彼に好意を持つ一部の眷属がソーナに抗議しようとしたが、本人は聞く耳すら持たなかった。

 

 

「本当ならコカビエルを利用して暴れさせるだけ暴れさせてリアスと共闘して距離を縮める予定だったのに、記憶を持った白龍皇のせいでおじゃんよ……」

 

「あの、その通りになったとしても赤龍帝の彼が立ちはだかるかと……」

 

「チッ……厄介ね。いっそハニートラップでも仕掛けてリアスが幻滅する様に仕向ける――」

 

「多分それも無理だと思います、あの人は乱暴ですけど本当に部長を大切にしてますし……」

 

「そもそも出会ったのは私達があの人に盲目にさせられたからですから……」

 

「くっ……! 綾瀬和正という男のせいで……!!」

 

 洗脳じみた何かはスッカリ解けたものの、別の意味で厄介になっているソーナ・シトリー。

 それはある意味やり口が悪魔らしく、利用するものは利用してまでリアスの親友という位置を取り戻そうとする様は狂気じみたものすら感じる。

 

 

「まぁ良いわ。近々授業参観があるし、その時セラフォルーお姉様を使い、偶然を装ってリアスに接触するわ。

何でも良いから話をしないと頭がおかしくなりそうなのよ……! もうリアスを隠し撮りした写真だけじゃ気持ちよくなれないのよ!!」

 

「こ、声が大きいですわソーナさん!」

 

 

 

 失った反動といえばそれまでかもしれないが……。

 

 

 ところで、上手いこと好意を利用されて良いように使われた匙はといえば、あんまりな結果を眷属仲間達に慰められながら不遇な日々を送っていた。

 

 

「ハァ……」

 

 

 ソーナに惚れて兵士をやってまだ日が浅いけど、それでも惚れた女の為や弟妹の為と身を粉にして悪魔家業を頑張る匙。

 そんな頑張りを一部の仲間に好意を持たれてるがソーナしか見えてないので残念ながら気づいていない。

 

 挙げ句ついこの前例のリアス・グレモリーの眷属になった兵士の男はイケメンに加えて白龍皇ときた。

 なにもかも中途半端な自分に嫌気が刺すのと同時に、あんな赤髪以外はなにもかも地味な女に何であそこまでソーナは執着するのか―――早い話が匙はリアスに嫉妬していた。

 

 

「いくら幼馴染みだからって、避けられてるんだから放っておけば良いじゃんか。

なのに何かにつけて変な連中とリアスがどうのこうのって……」

 

 

 変は連中というのは朱乃や小猫達の事で、毎日毎日口を開けばリアスの事ばかりで自分の事は全く見もしない。

 別に一方的に一目惚れしたからといえばそれまでかもしれないけど、悪魔家業なんて碌にせず毎日遊んでるだけの呑気な連中のどこが良いのか……とついつい悪く思ってしまう。

 

 

「アイカ、もし良かったから今度の休日二人で出掛けないか?」

 

「私その日は先輩とイッセーに稽古つけて貰うから……」

 

「じゃあ俺が代わりにやるとリアスとイッセーに言うから、それなら良いだろう?」

 

「えぇ……? だってアンタ、組み手みたいな事すると然り気無く触るじゃん」

 

「……………」

 

 

 転校初日に女子から黄色い視線を占領した銀髪の男ヴァーリがちょうど自分と同じ時期に戦車として転生した桐生藍華と話をしながら廊下の壁にもたれていた自分の目の前を通りすぎていくのを目線で追う。

 黄色い声援じみた声を占領したのは半日程度であり、ヴァーリは同じクラスであったアイカを下手くそに口説くか、軽いセクハラ噛ますせいで所謂残念すぎるイケメン扱いされており、女子の殆どから一瞬にして幻滅されたらしい。

 

 確かに女子に囲まれてどこの国から来たのとか、好きなタイプはだとか聞かれて即答で桐生藍華に惚れて転校してきたと返せば空気は凍るだろうし、逃げるようにして隠れていたアイカに向かって開口一番『うん、今日も素晴らしい腰と尻だなアイカ!』と爽やかに言えばそんな評価に落ちるのも無理無い。

 今だって自分の目の前を通りすぎて見えなくなるまでアイカを口説き続けてるし、どことなく同クラスに居るドスケベグループに似てなくもない。

 

 

「でも楽しそうで良いよな……。それに比べて俺は会長に相手にすらされてないし」

 

 

 赤龍帝も白龍皇も眼鏡属性萌えなのかは知らないが、どちらにせよ楽しそうにやってるのを見てるとため息しか出てこない。

 ましてや連中の行動のせいで惚れた女の機嫌が左右されてるともなれば尚更……。

 

 

 

 何故か匙に嫉妬されてる――なんて知る訳がないリアスはというと、すっかり放課後の溜まり場となった空き教室で何をするかと新しく仲間になった―――――いや、再会したヴァーリを加えてのほほんと話し合っていた時だった。

 突如として溜まり場に使っている教室の隅に転移用の魔方陣が現れ、光と共に姿を現した人物に思わずリアスとイッセーは固まった。

 

 

「………………。何のご用でしょうか? ライザー・フェニックス殿?」

 

「……久し振りだなリアス」

 

 

 以前、二度と関わりたくなくなる程の差を見せつけて茶番な婚約話を粉々にすることで当て馬として利用された、若干の同情を覚えた純血悪魔の男性、ライザー・フェニックスが一人の眷属を連れて現れたのだ。

 

 

「君達に喧嘩を売りに来た訳じゃない。

今日は君達に教えておかないと思ってな」

 

「教える?」

 

「あぁ、リアスが赤龍帝に続いて白龍皇を眷属にした話が冥界中に広まっててな。

勿論君達の性格上、その事を教える様には見えないから、もしかして俺が素の姿のリアスの写真を手に入れた時の様に何者かが情報を流したのでは……と」

 

「…………………」

 

 

 自身に似た金髪の少女を背にライザーは冥界でのリアス達に関する噂について教えると、ピクリとイッセーの眉が動く。

 

 

「あのカス共か……?」

 

 

 以前ライザー側に巣の姿のリアスを隠し撮りした写真を流して茶番を引き起こしたソーナ達の事を思い出したイッセーから僅かに殺意が放たれる。

 

 

「いや待て、もしかしたらアザゼルがサーゼクス・ルシファー辺りに話をしたのかもしれない。

一応俺は堕天使側に居たしな」

 

「まあ、こんなだけどヴァーリって白龍皇って奴な訳だし」

 

「アザゼルさんがか…」

 

 だがヴァーリの考察にも一理あるので一応殺意を引っ込めたイッセーの顔は複雑なものであり、同じく『アザゼルを知るもの』であるリアスも眼鏡越しに複雑な感情がうかがえる様に瞳を揺らしながらライザーに話の続きを聞こうと口を開く。

 

 

「それで、冥界側はなんと?」

 

「サーゼクス様辺りは素直に驚かれていたが特に何をする訳でもなく君を心配していた。

何せ殆どの上層部はキミ達に顔を出すように命令するつもりだからな」

 

「赤龍帝と白龍皇が本物かの確認のつもりで?」

 

「多分な。俺とのレーティングゲームでキミの実力と彼が赤龍帝である事が発覚してから何とか若手の象徴にさせようとしている様だし」

 

「チッ、勝手な」

 

「どこの組織も同じ様なものだから特に思うところは無いが、俺が旧ルシファーの血族である事も連中は把握しているのか?」

 

「なに? キミは旧魔王の血族なのか!?」

 

「あぁ、ヴァーリ・ルシファー……まぁ、ルシファーを名乗るつもりは無いがね」

 

「驚きましたわ、その様なお方まで眷属にされるとは流石リアス様ですわ」

 

「眷属じゃなくて友人よ。上も下もないわ」

 

 

 ライザーと一緒に来ていたレイヴェル・フェニックスの言葉を訂正させながらリアスは近々冥界から呼び出しを喰らうのを予感し、ため息を漏らす。

 

 

「事情はわかりました、お気遣い感謝いたしますライザー殿」

 

「あぁ、俺も当て馬にされた事だしな、何でも良いから連中に一矢酬いてやりたいんだ」

 

 

 また調子の良いことでも言われるのかと思うと面倒だが、拒否する訳にもいかない立場があるのもまた事実。

 もしこれで二人を利用しろとでも言ってきたら今度こそ完全に拒絶してやる覚悟を決めながらライザーに頭を下げるリアスはその視線をレイヴェル・フェニックスへと向ける。

 

 

「それで、用件はそれだけでしょうか? 見たところ彼女は貴方の僧侶でしたが、他の眷属は?」

 

 

 あのライザー・フェニックスとこんなまともな会話どころか情報提供までされるとは夢にも思わなかったし、自分達が知るライザー・フェニックスと比べても妙に落ち着きがある所があるこのフェニックス達にリアスが問うとライザーは『うむ』と頷きながら何やら緊張した面持ちで口を開く。

 

 

「これはその……もし良かったらなのだが――」

 

「この先は私が言いますわお兄様」

 

 

 何かを躊躇うような言い方をするライザーにレイヴェルが口を挟みなかまらリアスをまっすぐ見つめ、頭を下げた。

 

 

「どうか私――いえ、私とお兄様を貴方の眷属にしてくれませんか?」

 

「………………………あ?」

 

「………………………はい?」

 

「おっと?」

 

「割りとビックリなお話が飛び出してきたわね」

 

 

 これでもかと面を食らった顔をするリアスとイッセーにフェニックスの兄と妹は揃って頭を下げた。

 

 

「俺の眷属は母と駒をトレードする形で預けた。

あの時俺はキミ達に完膚なきまでに叩き潰された……だからこそ今までの自分を見つめ直す為にキミ達の強さを知りたい……!」

 

「私も同じです。将軍(ジェネラル)であられる一誠様の持つ圧倒的な力を前に何も出来なかった自分を鍛え直したいのです……!」

 

「「………」」

 

 

 後でヴァーリに言われる事だが、この時のリアスとイッセーは互いに顔を見合わせながらこれでもかという程のシュールな顔をしており、また困惑していた。

 

 

「ま、待ってくださるかしら? 何故私?」

 

「ハッキリと勝ち目が無いと思い知らされた差を植え付けたのがキミ達なんだ。

それと――」

 

「私は貴方様に椅子にされてからというもの、あの日の事が忘れられないのです!!」

 

「……………………そんな事をしていたの?」

 

「いや、調度リアスちゃんが完成体を使ってたから見ようかなと思って……」

 

「完成体だと? あの力を使ってたのかリアスは……」

 

「あの巨大な天狗の様な奴よね?」

 

 

 妙にキラキラした顔をするレイヴェルにリアスが何か言いたげな表情をし、イッセーは慌てて弁解する。

 どうやら力を見せすぎたのが『一周回って』この二人の関心を買ってしまったらしい。

 

 

「レイヴェルが赤龍帝に『お熱』になってしまったんだ。

それと、出きればウチの母のエシル・フェニックスが直接会いたいと……」

 

「じょ、冗談じゃない! 俺は嫌だぞ、何がお熱だ! 知ったことか! 第一お前は綾瀬和正の情婦の一匹だったろうが!!」

 

「アヤセカズマ? どなたですか? しかも情婦? 私はまごうことなく処女ですわ」

 

「ぐっ……持ってないのかコイツは……」

 

 

 変な意味で目を付けられてしまった一誠が全力で拒否しつつ、記憶を持たない者である事を知って歯痒そうな顔をする。

 

 

「勿論ただキミ達の強さを吸収するつもりは無く、この間に母と父からフェニックス家の極意を教えて貰ってきた。きっとキミ達の戦力になれると思う」

 

「極意……?」

 

「風と炎を操るフェニックスの血族の一部が宿す炎ですわ」

 

 

 妙な目で見てくるレイヴェルを拒絶するかの様にリアスの手を握りしめるイッセーを、ヴァーリはケタケタ笑い、アイカは『修羅場って奴ね』と変な意味で軽く拗れろとニヤニヤしている中、ただ眷属になり来たのではないとライザーとレイヴェルは各々額に橙色の炎を灯し、その手に太陽を思わせる高密度のエネルギー球体と額の色と同じ橙色の炎を灯し……その色を七色に変色させていく。

 

 

「炎には属性があるのは知っているか? 大空、雨、晴、霧、雷、雲、嵐の七属性。

俺とレイヴェルは現状その七属性の炎を自力で生成できる」

 

「勿論色だけでは無く属性ごとに効果は違います。例えば雷の特性は『硬化』といった様に」

 

「驚いた。こんな力は今まで見たことが無いぞ」

 

「まるで虹みたいに綺麗ね……」

 

「………………」

 

「チッ……」

 

 

 かつてと違う見知らぬ力を持つフェニックスにリアスは純粋に驚き、イッセーは別の意味で厄介になりかねないと舌打ちをする。

 

 

「キミ達にこの炎を捧げる……だからどうか、当て馬で終わる訳にはいかないんだ」

 

「一番下っぱでも勿論構いません…いえ寧ろそっちの方が一誠様に命令して頂けますので……ふふ」

 

「!? 断れリアスちゃん!! 冗談じゃない!! こんなガキのせいで変な誤解でもリアスちゃんにされたら俺は死ぬしかねぇ!!」

 

「落ち着けよイッセー。お前の言いたいことはわかるが、リアスだってお前がそんな気など彼女に欠片も無いことぐらいわかってるさ。

そんな事よりこのフェニックスの力は興味がある―――リアス、二人の灯す炎を『模倣』できるか?」

 

「一応可能だけど、もう少し『視ないと』ダメね。魔力とはまだ別系統の力だと思うわ」

 

 

 眼鏡を外し、瞳孔が開いた目で二人の灯す炎を視て異常性により模倣を可能と断定するリアス。

 レイヴェルという少女が一誠に妙な感情を向けている様だが、イッセーの気持ちは誰よりも自分が知っているという自負もあるので嫉妬などの感情はない。

 

 

「え……それはそれで寂しいんだけど……」

 

「だってイッセーを信じてるから……」

 

「リアスちゃん……」

 

 

 そう、過ごした年月が違いすぎるのだ。何があろうとも負けない自負はある。

 

 

「お二人の邪魔をする等という烏滸がましい真似は致しません。ただ、ペット扱い――いえ奴隷扱いさえしていただければレイヴェルは……あはぁん♪」

 

「だ、そうなんだ」

 

「ず、頭痛薬はないかヴァーリ?」

 

「あるぞ、バファ◯ンの類似品でよければな」

 

「はいお水」

 

 

 殺すか? と本気で思う程度にはレイヴェルの言動に寒気を覚えるイッセー。

 だがそんな気持ちすら吹っ飛ばすのが、眷属にするかどうかを告げようとリアスが口を開こうとしたタイミングで空き教室の扉が壊れる勢いで開けられ、中へと入ってきた連中だった。

 

 

「待ちなさい!! 私は反対します!!!」

 

「「「「………」」」」

 

 

 勢いよく開けられた扉と共にゾロゾロと勝手に入ってきたのはソーナ・シトリーと元眷属達だった。

 

 

「おや、キミ達はリアスの元――なるほどね、周りをウロウロと鬱陶しい気配が複数あったのはキミ達だった訳だ」

 

「また来た……私も前に絡まれたのよ……」

 

「なに? なら大丈夫だ。今度からは俺がアイカを守るさ」

 

 

 ヴァーリの意味深な笑みに若干ソーナ達は圧され、リアスとイッセーの心底冷めた目に若干泣きそうになるが、それでもソーナ達は次々とライザーとレイヴェルの眷属化について異を唱えた。

 

 

「二人を眷属にするくらいなら我々を眷属にしてください!」

 

「今度こそ、絶対に裏切りませんから!!」

 

「お願いします!!」

 

「裏切れば死も覚悟してます!!」

 

「リアス、貴女が大好きなのよ!!」

 

 

 次々と言えなかった事を言いまくる中、ソーナだけリアスに狂気じみた目でベクトルの違う告白をする。

 そのせいで一瞬場が完全に凍りついた訳だが、顔色を真っ青にしたリアスが心の底からの本音を言う。

 

 

「き、気持ち悪い……」

 

 

 いきなり好きだとか言われた挙げ句、目が盛って我慢ならない獣みたいなものなのでしょうがないといえばしょうがないし、本気でショックを受けてるソーナに二重の意味で恐怖を抱くのも無理はない。

 

 

「やめて――いえ、やめてくださいシトリーさん。本当に……本当に勘弁してください」

 

「な、何故!? 何でソーナって呼んでくれないの!? わ、私達友達よね?」

 

 

 何度も友人では無いと言っても、未だ友人だとかそれ以上だとか宣うソーナの精神構造を疑うリアスは今にも飛び掛かって全身をまさぐってきそうなソーナから物理的な意味で距離を取ろうとする中……。

 

 

「お、お風呂入りましょう? 身体洗ってあげ―――がっ!?」

 

 

 それまで大分我慢していたイッセーが鬼の様な形相を――それこそ不可逆のデストロイヤーの如き形相で一歩一歩リアスに近寄ろうとしたソーナの腹部に膝を入れると、胃のものを吐きそうに踞ろうとしたその髪を掴み無理矢理立たせる。

 

 

「このまま毛根引きちぎられてからグチャグチャにされるのと、その煩い声が出る喉を破壊してからグチャグチャにされるの――どっちが良いか選ばせてやろうか? え?」

 

「ぐ……ぐほ……!」

 

『ひいっ!?』

 

 

 この半笑い気味な形相を前に元眷属達はかつて殺された時のトラウマが蘇り、ガタガタと震え始める。

 

 

「間抜けだな、一度裏切った連中が宣える台詞じゃないだろう……」

 

「ちょ、い、イッセーを止めないの?」

 

「あの様子だと何度もリアスに忠告されたんだろう? それを無視してるんだ……少し痛い目を見た方が良い」

 

「またソーナか……一体リアスとの間に何が……?」

 

「どちらにせよ、あの方々に比べたら大分私達はマシに思えてきましたわ」

 

 

 割りと冷静に眺めている者達を背に答えないソーナに向かって髪を掴んで無理矢理立たせていたイッセーは容赦しない拳を頬に叩き込み、廊下まで吹き飛ばす。

 

 

「が……ぎひ……!!」

 

「知らん間にレズ思考とは恐れ入ったぜゴミ情婦風情が。何べん言ってもわからない様だから残りの余生を寝たきりにしてやればわかるのかい? なぁ……なぁっ!!」

 

「がふっ!?」

 

 

 壁を背に崩れ落ちたソーナの顔面にトーキックを放って鼻をへし折る。

 

 

「昔、安心院なじみは言ってたなぁ……?

『大概リアスちゃんが無能扱いされ、蔑ろにされて最後は周囲に裏切られて最悪カスに殺される』って。

じゃあ逆もまた然りだと思わねぇ? だから死ね」

 

 

 顔面が血塗れで、蹴られた際に弾けとんだ眼鏡が無惨な形で一誠の足元に転がる中、数多の世界で蔑ろにされる可能性のリアスについてを語りながらその逆を自分がやってやろうと宣言するイッセーは今度は確実に絶命する威力の蹴りを見舞おうと足を振り上げたが……。

 

 

「もう良いわイッセー……」

 

「む」

 

 

 それを止めたのはリアスだった。

 顔面スレスレまで届いた足が下げられ、不満気な表情でリアスへと振り向くイッセー。

 

 

「何でだよ? こんなのを今まで生かしてやったんだし、とっとと楽にしてやったほうが良いと思うぞ?」

 

「そうかもしれないけど、二度もイッセーがその役目をする事は無いわ」

 

 

 そう言いながらお団子ヘアーを解いて本当のリアス・グレモリーの姿へと戻り、イッセーの隣に立つ。

 

 

「聞こえてるでしょうソーナ・シトリー? これ以上イッセーに手を汚して欲しくないからアナタを生かしてあげるだけ。温情でもなければ慈悲では無いわ」

 

「リ……アス……」

 

「アナタが何を思おうが私にとっては迷惑でしかないの。

今だけはフェニックスの涙を借りてそこで震えてるアナタの『仲間』に治療させるけど、これが最後の警告――今度は私が直接アナタ達を始末する」

 

 

 この世界ではあまりにも強すぎる巨大な魔力を放ちながらリアスは宣言する。

 

 

「アナタとは友達になれないし、なりたくない。

学生の内は顔を合わせるだろうし会話もしなくてはならない時もあるけど――それ以外で私の周りをうろつくのはやめて。

それでもわからないなら――――イッセーではなく私がアナタ達を殺す」

 

 

 何があっても永久に相容れないという再三の拒絶を。

 

 

「ライザー・フェニックスさんにレイヴェル・フェニックスさん、アナタ達の申し出を受けます。どうかその力を私に貸してください」

 

 

 例え間違いでも……。リアス・グレモリーは己の信じた道を選ぶ。

 

 

「よろこんで……我が王」

 

「この力、アナタ様の為に」

 

 

 地獄を共に生きた仲間と共に。

 

 

 

 

 

 フェニックスの涙により顔は元に戻った。

 だがそれで終われるほどソーナの立場は低くない。

 

 

「聞いた話では、リアス・グレモリーの将軍がソーナ・シトリーに暴行を働いた様だが、間違いないな?」

 

「…………。事実です」

 

 

 冥界に呼び出され上層部に事情聴取を受けるイッセー。

 

 

「赤龍帝といえど転生悪魔が純血悪魔に暴行を働いた罪の重さはわかっている筈だ」

 

「…………。我が主であるリアス・グレモリーに不埒な事を宣いながら迫り、それから守る為です」

 

「なるほど、その事はライザー・フェニックスからの証言もあるし、ソーナ・シトリーの傷もフェニックスの涙で治癒している。だが暴行を働いた事実は変わらないので貴様に罰を与える――――本日付でリアス・グレモリーの将軍を剥奪する」

 

「……………」

 

 

 やってしまった裁判。

 

 

 

「待て! 主を守るために彼は動いたのだ! 剥奪はやりすぎだ!」

 

 

 それを庇う唯一の魔王。

 

 

「ならば暴力ではなく話し合いに持ち込むべきだったのでは? それにこやつのやり方は明らかに過剰防衛だ」

 

「何度も警告を無視し続けた相手の事は無視しろというのか!?」

 

 

 それでも覆らない。

 

 

「剥奪だとよ……へっ、所謂はぐれ悪魔ってやつかな?」

 

「す、すまない……僕の力が足りないばかりに……!」

 

「いえ、アナタが謝ることは無いです。寧ろ……ありがとうございます、リアスちゃんのお兄さんで……」

 

 

 何度も謝る魔王に笑う赤龍帝。

 

 

「くそ……何が魔王だ! こんな事の為に先代と戦った訳じゃないんだ!!」

 

 

 去った後も己の無力を呪う魔王。

 そんな魔王の元に一人の人物が現れる。

 

 

「よっと……やっと出てこられた。お、キミは別世界のサーゼクス君じゃないか」

 

「き、キミは一体……」

 

「僕? ふふん、僕はしがない人でなし。そしてこの子は……」

 

「その子供です」

 

 

 人でなしを自称する少女の様な女性と、魔王の息子に似た赤髪の少女……。

 

 

「なるほどね、事情はわかった。やっと大当たりを引いたらしい。

これまでは無能姫扱いされて他所から転生した連中に蔑ろにされるとか、片っ端から女を奪われてから変態扱いされて蔑ろにされる二人ばっかりだったんだ。

これでやっと僕とこの子の知る二人と再会できそうだぜ」

 

「あの……本当にどうにかできるのでしょうか?」

 

「大丈夫です、僕のお母様は凄いんです」

 

 

 何故か二人を視ていると胸が擽られる魔王に人でなしを自称する母娘は微笑む。

 

 

「この安心院さんに任せなさい。飛車角落ち状態だろうが三順でひっくり返してやるから―――――あぁ、それとキミの嫁さんには気を付けてね? どうやらギリギリ死に損ねたカスを『飼ってる』らしいから」

 

「は?」

 

 

 意味深な台詞を残し。

 

 

 

超絶大嘘です。マジです

 




描写しないところで通算八度目で遂にプッツンしてしまい、リアスさんも覚悟入ってしまいましたとさ。


その2
あー、すいませんフェニックスさんサイドの私の悪癖発動してしまいました。

その3
エシル・フェニックスさんが割りと地味にチート入ってるというか……まぁシュラウドさんもですがその流れでこんな事に……。

その4
まあ嘘やしさ……

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