それだけ
フェニックスとの婚約話は消え、その後のリアス達は普段通りの生活に戻った。
冥界との接触をなるべく避け、リアスは両親達をも避け、イッセーはそんなリアスを変わらずに守り通し、その二人の背中を追いかける藍華。
サーゼクスとミリキャス以外の悪魔を基本的に全く信じないからこその悪魔としての誇りだの使命だのをドブ川に投げ捨てる様なこのスタイルについて、多くの悪魔達は批判しているらしいが、そんなものなどクソ食らえなのだ。
「イッセー、先輩の所に行きましょう?」
「おーぅ」
そんな事があって以降、ほぼ接触自体が不可能になったソーナ達が如何にどん底に堕ちているかもどうだって良いイッセーは今、相変わらず持て囃されてる転校生からの辛そうな顔をガン無視し、お弁当箱を持ったアイカのお誘いに乗って席を立つ。
すっかり戦車として仲間になったアイカと同じクラスである事もあって行動を共にする事が多くなったりする訳だが、そのせいで事情を知らないクラスメート達から誤解されてる様だがそれすら本人達にしてみたらどうでも良かった。
「あーあ、すっかり桐生はイッセーと楽しそうだしさー……」
「あれだろ? 三年のグレモリー先輩と何時も昼飯食ってるんだろ? マジで眼鏡フェチだったんだな」
眼鏡フェチと言ってる眼鏡男子とスポーツ刈り少年がイッセーとアイカを見ながら若干つまらなそうにぼやく。
既にクラス内では桐生藍華と兵藤一誠は付き合ってて、しかも三年の髪の色以外は全部が地味なリアス・グレモリーなる先輩とも怪しい雰囲気を持っている――と、基本的にイッセーが不真面目的な解釈をされている。
それであまり責められないのは、アイカ自身がとても楽しげなのと、リアスの容姿自体がとても地味に見えてるせいでそんなに嫉妬心が煽られないかららしいが、果たして眼鏡を外したリアスを見たらどうなるのやら……。
他愛の無い会話をしながら何やらアイカが作った弁当をイッセーが食べる的な会話をしながら出ていく姿を捉えながら侘しく昼飯をつつく二人組なのだった。
「あれからお兄様とは連絡を取り合ってるけど、父や母からは何の連絡も無い。
この前の件で私に対して完全に諦めてくれたのならそれで良いけど、そうじゃないとなると出方がちょっとわからないわ」
「まあ、流石に他と違って殺ってしまう訳にもいかないからなぁ。
それに今日だか明日に何故か天界陣営の使者の人間が来るんだろ?」
「うん、天界陣営といえばあの人を思い出すけど……」
「あー……あの人ね」
「……。ごめん、全然話についていけなくて微妙に寂しいんだけど」
そんな噂も評価も全部引っくるめて知るかで通してるイッセー達はというと、同好会の活動場所として使用してる空き教室に集まり、本日アイカが用意したお弁当を食べつつの他愛の無い会話をしたり、今後起こる何かに対しての準備の話などをしていた。
その上で今飛び出した天界陣営と、それに所属するかつて同志の一人である超越女天使について何やらイッセーとリアスはシリアスな顔をする訳だが、まだまだ転生してから日の浅いアイカは二人の間だけにしか通じてない内容に疎外感を覚えていた。
「あ、ごめんなさいアイカ」
「いえ良いんですけど、天界陣営って響きからしてもしかして天使か何かがイッセーの言うとおり近々来るんですか?」
「正確にはその天使の下部組織となる……ほれ、教会とかあんだろ? それに所属してる人間が来るんだとよ。
何があったんか知らんがな」
「ふーん?」
食堂で買ってきたプッチンプリンをスプーンで掬って口に入れながら話すイッセーにアイカは相槌を打つが、既に二人がまだ何かを隠してるのは見抜いている。
だがあまり強く踏み込んで嫌われたらそれはそれで嫌だし、何かを隠してるだけで二人が意地悪でないことはわかってる為、アイカもこれ以上は質問しない事にした。
「シトリーさんにそこら辺の対応を押し付けてやりたかったのだけど、そういう訳にもいかないらしいから当日はイッセーもアイカもこの部屋に集合ね?」
「はーいよ」
「わっかりました」
確実にこの二人が合体経験があると見抜いててもアイカは失いたくないのだ。
「……」
「……」
そしてこれから起こる事件がイッセーとリアスの抱える秘密を知るものとなるとはこの時思いもしなかった。
何故コソコソするのか。
何故異様な強さを持つのか。
何故二人はそこまで身を寄せ合うのか……。
師も、親も、友も、同志も居ない。
正確には同じ顔をした全くの別人。
師は種族の力を越えられない只の戦争狂で、種族を越えた信頼を寄せ合う相棒も居ない。
包み込む様な心を持ち、されどとある妖怪相手だと物凄く嫉妬心剥き出しな天使も居ない。
友の為に全てを捨て、友の為に命を賭けて世界に反旗を翻して見せた義理の父は只の神器研究狂い。
少なくとも自分の知れる範囲で調べた結果、この世界は自分の生きた世界とは違って平和なのかもしれないし、誰も死んでない。
けど……けど……俺の心は満たされない。
「コカビエルが遂にやりやがった。あのバカ野郎、ミカエルの所から聖剣を強奪してサーゼクスの実家が管理してる日本の土地で一体化させようとしてやがる」
「へぇ……それで?」
「当然止める。これ以上堕天使の立場を危うくさせる訳にはいかないからな。
恐らくミカエルの所からも何人か人員を派遣してコカビエルを止めようとするから、お前は気づかれない様に手を貸してコカビエルを捕まえてこい」
ある朝の事、以前の世界では転生者の不意打ちにより既に殺され、後々知った話では忘れられたモノが行き着く世界で再起の途中である筈のコカビエルが、実力も精神も遥かでは済まされないレベルでの劣化した状態から成長の気配無く、玩具を使って三大勢力を戦争状態に戻すという、ふざけすぎてる野望を叶えようとしてると、神器研究ばっかりな義理の父に教えられた俺は、奴を止める為に因縁のあの街へと行けと命じられた。
「これは悪魔からの噂なんだが、サーゼクスの妹の眷属に赤龍帝が居るらしいぞ? もしかしたら会えるかもな?」
「……」
「? 興味無いのか? お前の宿敵になるかもしれない相手だぜ?」
「…………別に。とにかく話はわかった、準備出来次第人間界に向かうよ」
……。全ての始まりにて全てが終わった地。
再起と共に転生者を始末し、その元凶である外の神を殺そうと引きずり出したあの地に再び行くことになるとは、これもまた皮肉な運命ってやつなのか。
……どうやらあの土地にあの二人は居るらしいが……コカビエルやガブリエルを見る限り俺の知る二人ではまず無いと見ていいし、性格も違うんだろう。
「大分我が儘らしいなサーゼクスの妹は」
「…………」
勿論実力も。
いや、実力自体は最早どうでも良い。
俺が求めるのは俺の中に宿る相棒以外で気兼ね無くかつてを共有できる仲間……友。
割りと自分は寂しがり屋なのが今更になって自覚した今、俺が求めるのはこの一点のみ。
「じゃあ頼んだぞヴァーリ?」
「……あぁ」
イッセーとリアス。
歳の近かった俺の友に俺は会いたい。
『行くのか? …………俺自身記憶が戻ったのはお前が宿主になってからだったし、赤いのの当時の様子からして持ってたかも会ってみないとわからんが……』
「お前が持っててくれただけでも奇跡と思ってるからな―――過度に期待するのはやめよう」
外の神を殺せた事に後悔は無い。
しかしこれが代償だとしたら最後までムカつく神だったよホント。
真化の極意 ヴァーリ・ルシファー
種族・ハーフ悪魔。
白龍皇
超戦者ver.V
備考……師と友に巡り会う事で至った若き超越者。
To Be Continued...
天界陣営からの使いの姿がかつての裏切り者達だった事に多少驚いたが、それ以上に驚いた――いやショックだったのはあのコカビエルが事件を起こしていた事だった。
正直ショックで凹むが、だからこそ止めなけれいけないとリアスとイッセーはコカビエルを引きずり出す為に街に散らばった聖剣を回収していく。
その過程で周囲がごちゃごちゃとやかましかったし、この騒動に乗じて裏切り者達がしゃしゃり出て来たが、頭に来てたのでイッセーが殴り飛ばして蹴散らした。
そして引きずり出したコカビエルは――
「なぁ、嘘だろ? はは、俺をガキと思ってまだ本気じゃないんだろ? 頼むからオッサンのマジを見せてよ?」
「な、何を言ってるこの化け物がァ!!!」
「コカビエルさん……」
赤龍帝とサーゼクスの妹の異様過ぎる力に困惑し続けるこの世界を生きるコカビエル。
こんなガキに野望の邪魔をされてたまるかと躍起になろうとするが……。
「もう良い、ここまでだコカビエル」
「ガッ!? お、お前はアザゼルが拾った……く、クソ……」
別から現れた白龍皇によって完全に粉々にされる。
その後彼がどうなったのかは誰も知らない。
何故ならそれ以上に運命は引き合わせたのだ。
「ヴァーリ……か?」
「ま、まさかアナタ……なの?」
「…………はは、はははは!! そうか、そうであってくれたのか!! あはははは!!」
かつての友を。
そして――
「キミの方が眷属歴が長いから先輩だな? 俺はヴァーリ、二人の友達さ」
「は、はぁ……」
「まさかアナタを兵士として迎えるなんて思わなかったわ」
「良いのかよ?」
「構わない。寧ろ願ったり叶ったりだ、漸く会えたんだからな」
自覚無しに戦力が対次元レベルになっていくのか?
似非終わり
似非通りになればリアスちゃんの抱える戦力だけがえげつない事に……。
その2
裏情報ですが、イッセーくんとリアスちゃんがイチャイチャしてるのを見抜いた桐生さんは最近モヤモヤしてもじもじしてしまう事があるとか無いとか。
何処がとは言いませんが。