色々なIF集   作:超人類DX

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ちょいちょい手直しです。
中身は変わりません


尾行中の生徒会長と悪魔さん

 シスターと兄貴。

 俺と似た顔をしてるというのに、俺との違いはまさにそこだ。

 兄貴はどうも人に好かれる体質を持っているというか、人とそこはかとなく付き合えるというか……とにかく友人と呼べる者が少ない俺との違いはそこにある。

 

 

「ファーストフード店内で仲睦まじく食事をする兄貴とシスター……想像で片付けようとすると実にアンバランス的要素だが、 なるほどね……実際に見れば中々どうして微笑ましい」

 

 

 大きなガラスのしきいのお陰で中の様子が見え、兄貴とシスターが笑い合ってる姿を店から少し離れた物陰から見守るのは、駒王学園の生徒会長になれてちょっとテンションが最近調子の良い俺こと兵藤一誠と……。

 

 

「……。何で私があんパンと牛乳片手にこんな真似を……」

 

 

 部下の責任は主の責任……という事で同行させ、目立つからという理由で特徴的な赤い髪をお団子ヘアーに縛ってその上から帽子を被るリアス・グレモリーだ。

 

 

「しかも逆に怪しいせいで凄い見られてるし……」

 

 

 ブツブツと文句を言いながらもちびちび牛乳を飲んでいるリアス・グレモリーを隣に俺はひたすら観察を続ける。

 何やら怪しさで見られてると漏らしてるが、そんな事は無い。

 今述べた通り、リアス・グレモリーに施した変装も完璧だし、俺も俺でこの夜なべした学ラン風の制服のお陰で一見にすれば他校の生徒と錯覚するという確信がある。

 

 

「しかし、こうして見てみると兄貴は結構笑うのだな……」

 

 

 兄貴に置かれた状況が故に始まったこの尾行だが、その最中兄貴はシスターに対して実に愛想の良さそうな笑みを向けているのが分かった。

 それは、俺に対しては絶対向けてこない……いや、今後も無いだろう新鮮味溢れまくりな表情だった。

 

 

「見てる限りじゃ人付き合いは中々に上手いわよセーヤは。

というより、アナタは弟なのに知らないの?」

 

「……。恥ずかしい話、俺と兄貴は仲が良く無いからな……」

 

 

 帽子で目元まで隠れているリアス・グレモリーに、俺は兄貴との仲の悪さを話す。

 兄貴……といっても俺にとっては本当の兄貴とはどうしても思えないんだよな。

 だって5歳のあの時に突然現れたんだぞ? 怖いよそんなの。

 

 

「そういえば、セーヤにアナタの話を聞こうとしたら無言だった上に憎しみに満ちた顔をしてたわね……」

 

「そうか……」

 

 

 やっぱり兄貴は俺が憎いか。

 思えば最初見たときから『何でお前が居るんだ』的な顔をされた気がしたが――む!?

 

 

「まずい……!」

 

「っ……セーヤがこっちを見てるわよ」

 

 

 つい兄貴について考えていて気を緩めていた時だった。

 その気の緩みのせいでかは兄貴にしか分からんが、突然シスターに向けていた笑顔を引っ込め、店の中から外を……細かく言えば物陰の電柱から観察していた俺とリアス・グレモリーの方を見てくるではないか。

 これはまずい、兄貴は何やかんやで凄い奴なので、このままだと簡単に変装を見破られる可能性が高い。

 故に緊急回避行動を速やかに決行すべく、同じく感付かれ掛けてるとちょっぴり慌てた様子のリアス・グレモリーの両肩を掴む。

 

 

「すまないが少しだけ我慢しろ。後で好きなだけ殴っても構わんからな」

 

「え……何を――!?」

 

 

 そして一応彼女に対してあらかじめの謝罪を送ってから、そのままそこら辺に居そうなカップルの真似事……つまり『何か我慢出来なくなったから、つい抱き着いてしまった修行不足の男』を演じるつもりでそのまま兄貴の方に背を向けてから、彼女を抱き締めとく。

 こうすれば変装してるとはいえ、勘の良い兄貴もリアス・グレモリーの姿は見えんだろうし、まさか俺が尾行してるとは兄貴も思ってないだろうから何とか誤魔化す事が出来る。

 

 

「……。おい、兄貴はまだこっち見てるのか?」

 

「え、え、えぇ……何か変なもの見るような目で……」

 

 

 俺からでは兄貴の様子は見えんので、リアス・グレモリーに兄貴の様子をリポートして貰うが、どうにも兄貴はまだ怪しんでる様だ……む……?

 

 

「何だ貴様等……。見ての通り俺は『ちょっぴり我慢が出来なくなったからついつい彼女を抱き締めて心の平穏を取り戻してる』ってだけの只の男だ。見せ物では無いぞ」

 

『……………』

 

 

 気づけば、普段は見向きもしないこの寂しい電柱……じゃなくて俺とさっきから妙に動悸の激しいリアス・グレモリーを見てくる人々に向かってアピールをする。

 こうすれば俺は只の変態で片付けられ、リアス・グレモリーは被害者という構図が出来上がるので、彼女の名誉は守れる。

 

 

「い、良いなぁ……あの帽子被ってる人……」

 

「イケメンさんだ……」

 

「うほ、いい男……」

 

「やらないか」

 

 

 

「チッ、散らんな……」

 

「………………」

 

 

 どうやらカップルと勘違いしてくれてるのは良いんだが、説明しても散ってくれない。

 注目されるのは嫌いでは無いが、今注目されると困るのだ……。

 むぅ、仕方あるまい。

 

 

「おい、グレモリー三年。

此処はもう駄目だ……場所を移動するぞ?」

 

「……………」

 

「? グレモリー三年?」

 

 

 一旦場所を離れようと小声でリアス・グレモリーに話し掛けるが……反応が無い。

 

 

「おい、聞いてるのか?」

 

 

 無視を決め込むほど怒ってるのだとすると、こりゃあ覚悟が必要なのかもしれないが、今はそんな事を言ってるん場合では無いんだよ……と、リアス・グレモリーの顔を覗き込んでみると、目を開いたまま固まってた。

 

 

「…………。ハッ!?」

 

 

 そして数秒した後、ハッと意識を取り戻す様な声を出したかと思えば……。

 

 

「な、なにかしら? え、セーヤの様子? うん、例のシスターと一緒に見てるわよ? あらあら、シスターったら顔が真っ赤よ真っ赤! おほほほほほ!!」

 

「はい? おいグレモリー三年よ、そんな大きな声を出すのは――」

 

「仕方ないわね! 取り敢えず撤退よ! ほら来なさい!!」

 

「…………………あ、はい」

 

 

 ちょっと壊れてしまってた。

 そしてそのテンションに押し切られる形で、一旦の撤退を余儀無くされた。

 …………。あかん、師匠の言い付け守ってない上に久々のポカやらかしてしまった。

 これは後で怒られてしまうぞ……。

 

 

 

 ビックリしたぁ。

 何なのよ彼は……。

 私を振り回したり扱いが雑だったと思えば、咄嗟の事とはいえあんな……。

 

 

「済まんかったな。ほれ……好きなだけシバキ倒せ。

それくらいの事を俺はしてしまったからな」

 

 

 突然のこと過ぎて整理が追い付かず、取り敢えずにあの場から彼を連れて離れた私達が今居るのは普通の公園だ。

 そして何を勘違いしてるのか、バッと両手を広げながら私に自身を殴らせようと待つ兵藤一誠……いや、イッセー。

 

「な、何で殴らないといけないのよ……」

 

「咄嗟の事とはいえ女性の身体を許可なく触れたからな。

師匠の言付けすら破ってしまったとなると、どうにも俺は気が緩みすぎている……だから己自身に対しての戒めのつもりも入った罰といったところか」

 

 

 許可無くって……別に変な所を触られた訳じゃないし、あの時は本当に咄嗟だったから何とも思ってないわよ。ビックリしたけど…………と言ってもイッセーは多分納得しないだろう。

 何せその後口にする、常々誰の事だか気にはなってる『師匠』とやらの教えを破った事も気にしている様だし……。

 ホント、アナタの師匠ってどんな人なのよ……。

 さっき聞こうとしたら時は尾行の最中だったから良い答えは貰えなかったけど……。

 ええっと確か『どこまでも魅力的でどこまでもスゲー女……』だったかしら?

 女……彼を此処まで引き上げたという意味でだとすれば、相当なやり手と感じる。

 

 

「だからって私に殴らせないでちょうだい。

私は気にしてない、だから殴らないわ。

自分に罰を与えたければその師匠とやらにして貰いなさい」

 

「む……むぅ……師匠か。

まあ多分師匠から罰は受けるのだろうけど……またネックブリーカーの刑かな……ハァ」

 

 

 物分かりの良さのお陰で、私から殴られるのを諦めた様子のイッセーから大きなため息が溢れる。

 その姿は年相応の男の子の様に私には見えた。

 

 

「ネックブリーカって、随分とアグレッシブなお師匠さんなのね?」

 

「ああ、見た目は華奢な女なのに嘘みたいな力持ちでな。

太股辺りで俺の首を器用に絞めて来やがるもんだから軽く死ねるぞ」

 

 

 『事実186回は窒息したしな』と、遠い目をしつつも何処か楽しそうに語るイッセーに、どうも納得出来ない気分になっていた。

 こう……もう少し彼を知ってみたいというか……。

 

 

「それなら私も罰を与えてみましょうか……」

 

「え……? あ……うむ……」

 

 

 あれ、許してくれるじゃないの? 的な……何か餌のお預けを食らった子犬を思わせる表情を一瞬だけ浮かべるイッセーに、やはりこうして近くに居るのと遠くから見るのとでは違うように見えて、新鮮味を感じながら私は言った。

 

 

「そうね……グレモリー三年って呼ばれるの嫌だから、前に断られた『リアス』って呼んで貰おうかしら? 今後ずっと」

 

「ぇ、えぇ?」

 

 

 やっぱりグレモリー三年って変よ。いや、変以前に支取三年だの姫島三年って他と同じ括りで呼ばれるのが嫌だというか……あら、イッセーったら案の定、思いっきり困った顔になっちゃった。

 

 

「う、うぅむ……。貴様を名前呼びかぁ。

友という間柄では無いのにそんな気安く呼んでも良いのか?(というか、『なじみ』に『僕以外の連中を名前で呼ぶのは極力避けといてね?』とか言われたし……。あ、でも極力って話だからセーフか?)」

 

 

 ……。ああ、やっぱり親しいって認識はされてないのね私。

 ちょっとショックだけどこれから仲良くなれば良いのよ……眷属云々は無しにしてのね。

 もう誘うつもりは無いし。

 

 

「これからお友達になれば良いんじゃなくって?」

 

「それもそうか……ええっとリアス? で、良いのか?」

 

「ええ。ふぅ、これでやっと一歩進めたって所ね。

アナタって注目はされるけど本当の意味で周囲に人が居ないじゃない? ほら、これで一人出来たわよ?」

 

 

 彼の周りに人は確かに集まる。

 が、集まるだけで本当の意味で近くに居るのは、私が見聞きする限りだとその師匠という存在しか居ない。

 もしかしたら他にも居るかもしれないが、少なくとも学園の人間には居ない。

 だから……なんて偉そうな事は言わないが、誰もその気が無いのなら私が近付いたって文句言われる筋合いは無い。

 それに……。

 

 

「むむ……悪魔と友達は初めてでよく分からん」

 

「普通で良いわよ普通で。もう眷属に誘ったりもしないし」

 

 

 ビックリしたけど、結構ドキッとしたのよね……あの時のイッセーに。

 




補足

なんかほら……今まで不遇だったし。
良いじゃんみてーな?

補足2
師匠のお仕置きコースその1…ネックブリーカ。
完全院さん状態のあのお姿で、ポカをやからした彼の首を太股でロックする。
そしてそのまま『なにも知らなければ恋堕ち確定な笑顔』を見せつつ、じわじわと時間を掛けてる締め付ける恐ろしいお仕置き。


通算305回は喰らってる彼曰く『まだ優しい罰』らしい。

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